「はぁ……はぁ……ゲホッゲホッ!」
「ほら、水だ」
「……あり、がと……」
やはり、相当傷付いているらしい。
「……ふふ」
「何故笑う」
「秘密」
「そうか」
この巫女を俺が拾ってから早くも四日。
毎日の様に、巫女さんは血反吐を吐いている。
「ねえ、
「なんだ」
「あなたの話、聞いても良い?」
「俺の話?」
「うん、
「……物好きだな、あんた」
人間嫌いの癖に、人間だった時の過去を聞きたがるとは。
「簡単な話だ。人の俺は、野盗に襲われて致命傷を負った」
「……」
「そして、妖のワシは、妖同士の争いと、自己の否定か何かで消えかかっていた」
「え?」
「理由は聞くな。オレは俺たちのことを全て把握している訳じゃない。むしろほとんど覚えていない」
「死の直前の出来事と、そのきっかけになったことが精一杯だ」
「……そう」
「そして、もう一人……よくわからない奴、俺でも、ワシでもない何か」
「?」
「……穢れか、よくわからない何かだ。怨霊の様な何か」
「まぁ、それも消えかけていたのには違いない」
「……」
「とにかく、三者三様、消えかけ死にかけの欠片どもが集まって、
「咄嗟の出来事にしては、思いの外上手くいったらしい」
「えっと、今は誰、なの?」
「オレだ」
「……人間ってこと」
人間嫌いの巫女が顔を顰めた。……一人称が同じというのは面倒だな。
「違う。全く別の何かになった」
「え?」
「言っただろう、半端者だと。言葉の通りだ」
「あ……」
人と妖と、もう一人。それらが混ざり合った半端者、怪物がオレだ。
「とうの昔に、個々人の人格は消え去った。混ざったと言っても良いが」
「そうなんだ」
「ああ」
「……じゃあ、なんでこんな場所に?」
「こんな場所?」
「人間も妖も、誰もいないから」
「それも、単純なことだ」
何故も、何も。すぐに思い付くだろう。
「半端者には居場所がない」
「っ……!」
「あんたは、人としての居場所が無さそうな感じだが」
「なっ」
「当たりか、どうでも良いな」
「……」
「人とするには少々不気味だ、妖とするには少々人間味が過ぎる」
そういう
「おまけに、こんな性格だ、そもそもとしてあまり他者に好かれない」
「……」
「聞きたいことは、それだけか」
「……あ、あと一つだけ」
「なんだ」
「……えと、何の妖、なの?」
「ああ、まだ見せたことがなかった」
「え?」
「酒を取って来る」
「え、え? それってどう言う……」
「見てればわかる」
「取ってきた」
「……匂い、凄いね?」
「だから、あんたとは離れた場所に置いていた。オレの自作だ」
「素人が作った、腐りかけに近い」
「というか、実際酒だとは思えない変な味がしている」
「なんでそんなもの飲んでるのかなっ!?」
「……それは、妖としての領分だからな」
「見ていろ」
持って来た、到底飲むものとは思えない液体を呑む。
「うわぁ……え、大丈夫?」
「問題ない。……
「え? ……って、髪が……え? え!?」
驚いているな。まあ突然、目の前の奴が
「……オレは、人の体は男だ」
「だが、妖としては女、の様な体をしている」
「そして、
「あんたに身近なものならば、
「……どうした?」
「な……え……」
巫女は、どうも処理しきれていないらしい。放っておけば治るか。
「……やはり不味い」
オレでは仕入れる
「ね、ねぇ」
「治ったか」
「……寂しくない、の?」
「何がだ」
「誰とも、一緒にいられないことは」
「寂しいのだろうな。悲しさもおそらくある」
「あんたの様に、憎しみもあるのかもしれない」
「じゃあ、なんでこんな場所に……」
「……オレを構成するものは、生きたいと願ってこうなった」
「なら、オレは一番強い願いを叶えるだけだ」
「……」
「別にあんたもそうしろとは思わない」
「死後、怨霊にでもなって人を殺し尽くそうがオレは否定しない」
「……そう、なんだ」
どこか、悲しそうな顔をした巫女。……ふむ。
「……オレは、おそらく寿命は長い」
「あんたがもし、そうする、した、し終わったその時までオレが生きていたのなら」
「隣で不味い酒を呑む、その程度はなんら難しいことじゃない」
「……!」
「それだけだがな」
「……ふふ、ありがとう」
「どういたしまして」