衛宮切嗣・高咲侑「NEO SKY, NEO MAP」   作:我来也

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書けば書くほど、なんか違う方向に向かってる気がするが、これはこれでいい。


第3話

 衛宮切嗣は、虹ヶ咲スクールアイドル同好会のメンバー、いや正式にいうなら“高咲侑”との不思議な縁を持ち続け、彼の日常が徐々に変化していくのを感じていた。だが、そんな彼の心にはまだ消えない影が残っていた。かつて自らが手を下した数々の命、それを守るために選んだ道が本当に正しかったのか、そうした問いが彼を苦しめていた。

 

 夜の帳が降り始めた頃、切嗣は衛宮邸に戻り、居間で夕食のジャンクフードを広げた。しかし、その味は思いのほか淡白に感じられ、彼は一口食べるごとに過去の光景が頭をよぎった。だが、そんな重苦しい気持ちを振り払うように、切嗣はスマホを手に取りふと、先ほど侑と登録したLINEの画面を開いた。

 

「…さて、どうしたものかな。」

 

 つぶやきながら、彼は侑に何かメッセージを送ろうか迷った。ライブのことを聞きたいわけでもない。ただ、あの無邪気で純粋な彼女ともう一度会話をしてみたいという気持ちがあった。それが、彼の心のどこかで湧き上がる不思議な感情だった。

 

(今までは士郎やイリヤ、大河ちゃんたちから話しかけてくることが多かったからかな。)

 

 切嗣1人が住むには余りにも広い衛宮邸。かつての世界では誰かが必ずいたが今は1人、さらに今日、高咲侑という女の子と色々関わってしまった影響か余計に一人ぼっちの寂しさを感じる。

 

 そんな自分を冷静に見つめ直し、切嗣はスマホを置き、ハンバーガーを一口かじる。すると、LINEの通知音が響いた。相手は誰だか分かってる。切嗣はスマホを手に取り、画面を確認するとそれは案の定、侑からのメッセージだった。

 

『切嗣のおじさん、今日は色々とありがとう!今度のライブ、絶対来てくださいね!ちゃんと案内しますから!』

 

 その短いメッセージには、侑の明るさと優しさが詰まっていた。切嗣は微笑みを浮かべ、返信する。

 

『ありがとう、侑ちゃん。ライブ、楽しみにしているよ。』

 

 そう送った瞬間、彼の心は少しだけ軽くなった気がした。

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

 切嗣のおじさんからの返信はいかにもおじさんらしいシンプルな内容だった。

 

「ふふっ、おじさん返信短いなー!おじさんらしいけど。」

 

 今日勇気を出して連絡先を尋ねてみた。自分でも内心驚いてる。異性のましてや同年代でもない全身黒ずくめの衣服を着てる怪しいおじさん。

 歩夢の言うとおり、普通なら自分から声をかけたり、ましてや連絡先を聞こうだなんてしない。だけど私は何故か気になって話をしたり連絡先も聞いた。

 きっと、ライブを見ていた時に見せてくれたあの表情を、あの眼差しの理由を知りたいんだと思う。私や他のお客さんとは違う視点から見ていた貴方の気持ちを。

 

 少しベランダに出て外の空気を、風に当たろう。ガラガラと戸を開きベランダに出ると、少ししてから隣の部屋からもガラガラと戸が開き隣に住む住民であり親友の上原歩夢もベランダに出てきた。

 

「侑ちゃん、彼方さん帰りは大丈夫そうだった?」

「大丈夫だよ、歩夢。帰る時は温かいココアを()()()ちゃんと飲んでたから!」

「ん?“貰って”って誰から?」

「ん?それはね、この前話してた黒いおじさん。今日もたまたま会っちゃってね。」

 

「そのおじさんからココアを貰ったんだー!」って話そうとしたところ歩夢がその言葉を遮る。

 

「ゆ、侑ちゃんまた不審者のおじさんに会ったの!?あれ程危ないって言ってたのに!」

「あ、歩夢!?」

 

 歩夢は心配そうな顔で続ける。

 侑はそんな歩夢の様子を見て、少し困ったように笑った。確かに、歩夢の言うことはもっともだ。黒ずくめの服装をしており目が死んでる謎めいたおじさんと日常的に何度か接触してるのは普通じゃない。だが、それでも侑は彼に対する好奇心を抑えることができなかった。

 

「歩夢、大丈夫だって。確かにちょっと怪しそうな人だけど、悪い人じゃないって分かるんだ。」

 

「でも、侑ちゃん…」歩夢は少し言い淀んでから、慎重に言葉を選んだ。

 

「侑ちゃんがそう思うのは分かるけど、私たちには分からないことがいっぱいあるよ。そのおじさんだって、どんな人か本当は知らないじゃない?」

 

 その言葉に侑はしばし黙り込んだ。歩夢の言葉には一理ある。自分でも、切嗣のおじさんがどんな人なのか、まだよく分かっていない。ただ、ライブで見せたあの表情が、どうしても侑の心に引っかかっていた。それは、何かを失った人間のような、そんな悲しみと後悔が入り混じったものだった。

 

「…分かってる、歩夢。でも、私はもう少しおじさんのことを知りたいんだ。何か、心に刺さってるものがあるのかもしれない。それを無視するのは、なんでかな…ダメな気がして…。」

 

 侑の言葉に、歩夢は黙ってしまった。しばらくの間、二人はただ夜風に吹かれながら、無言のままベランダに立っていた。

 

「それにね、歩夢…今日、おじさんがココアをくれた時、すごく優しい表情をしてたんだ。普段は全然笑わない人なのに、その時だけは、少し微笑んでくれた気がしたんだ。」

 

 ここ何度か切嗣のおじさんと会い、会話をした時何度か微笑んで笑ってくれてたけど、どこか無理をしているかのような笑みだった。でも、温かいココアを渡してくれた時は素直に気遣ってくれた優しさのある微笑みだった。

 

 歩夢は侑の言葉を聞いても、まだ心配は消えないような完全には納得していない表情を見せていた。

 

「でも、無理しないでね。何かあったら、すぐに私に言って。私は侑ちゃんの味方だから。」

 

「ありがとう、歩夢。」侑は微笑んで、歩夢の手を取った。「大丈夫、私はちゃんと分かってるから。歩夢に心配かけるようなことはしないよ。」

 

 そう言うと、二人は再び夜空を見上げた。星が瞬いている夜、静寂の中で風が吹き抜ける。歩夢はしばらくそのまま佇んでいたが、やがてふとしたことで思い出したように口を開いた。

 

「そういえば、侑ちゃん。今度の週末、同好会のみんなと一緒に遊びに行かない?」

 

「うん、いいね!どこに行くの?」

 

「お台場に新しいカフェができたみたいだから、そこでランチしようかなって。」

 

「楽しみだね。あ、でもその前にちょっとだけ寄り道してもいいかな?」

 

「どこに?」

 

「…うん、ちょっとだけ会いたい人がいるんだ。」

 

 歩夢は少し驚いたようだったが、すぐにその驚きを隠して微笑んだ。

 

「分かった。じゃあ、早めに集合しようね。その後でみんなで合流すれば大丈夫だから。」

 

「ありがとう、歩夢。楽しみにしてるね!」

 

 侑は再び元気を取り戻し、歩夢とともにベランダから部屋へと戻った。夜も更け、明日への期待と少しの不安を胸に抱きながら、侑はベッドに横たわった。

 

次の日、侑は再び切嗣に連絡を送ることにした。前日、歩夢と話した内容を振り返りながら、自分の気持ちを整理するためにメッセージを打ち始めた。

 

『ねぇ、おじさん…。少し話したいことがあるんだけど、週末に時間があるかな?また会えると嬉しいんだけど…』

 

 送信ボタンを押した後、侑は何故か少しドキドキしながら返信を待った。普段、そんなにメッセージを気にしない侑が、ここまで気を使うのは珍しいことだった。それだけ、このおじさんとのやり取りが侑にとって特別なものになりつつある証拠かもしれない。

 

 しばらくして、侑のスマートフォンが振動した。切嗣からの返信だった。画面を開くと、そこにはシンプルな一言が書かれていた。

 

『了解。』

 

 それだけの言葉だったが、侑は少しほっとしたように笑った。切嗣のおじさんらしい、簡潔で無駄のない返信。しかし、その裏にはどこか優しさが感じられるような気がした。

 

「ふふっ、やっぱりおじさんらしいな…」

 

 週末が待ち遠しくなり、侑は自然と笑顔を浮かべながらベッドの中で考え事をしていた。何を話そうか、どうやって聞き出そうか。そんなことを考えながら、やがて侑は深い眠りについた。

 

 週末が訪れ、約束の時間がやってきた。侑はいつものカジュアルな服装で出かけ、少し早めに待ち合わせ場所に向かった。切嗣との再会に緊張と期待が入り混じり、彼女の心は高鳴っていた。

 

「やっぱり、こうして待つのはちょっとドキドキするな…」

 

 侑はそう呟きながら、スマートフォンを手に取り時間を確認した。まだ少し早い。しかし、彼女の中では既に切嗣に会いたい気持ちが強くなっていた。

 

 数分後、切嗣が黒いコートを羽織り歩いてくるのが見えた。侑は自然と微笑みを浮かべ、手を振った。

 

「切嗣のおじさん、こっち!」

 

 切嗣はその声に気付き、侑の方へと向かってきた。彼の目は相変わらず死んでるが表情はどこか優しく彼女に対して笑みを浮かべた。

 

「待たせたかな?」

 

「ううん、大丈夫だよ。私が早く来すぎちゃっただけだから。」

 

 二人は軽く挨拶を交わし、近くのカフェに入ることにした。カフェの中は落ち着いた雰囲気で、周りにはあまり人がいない。侑はこの場所を選んで正解だったと感じた。

 

 席に座り、メニューを見ながら侑は切嗣に尋ねた。

 

「おじさん、何か飲む?」

 

「んー、そうだね…。コーヒーにしようかな。」

 

「じゃあ、私も同じのにするね。」

 

 二人は注文を終えると、静かな時間が流れた。侑は少し躊躇しながらも、切嗣に話しかけた。

 

「ねぇ、おじさん…実は、前から聞きたかったことがあるんだ。」

 

「何だい?」

 

 その冷静な声に、侑は少し緊張しながらも続けた。

 

 

 

 

「おじさんは、どうしてあのライブを見に来たの?」

 

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