衛宮切嗣・高咲侑「NEO SKY, NEO MAP」   作:我来也

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思いつきで書き始めたこの謎のクロスオーバー作品。

自分自身もこの作品は最終的にどこへ向かうのかわかりません。


第4話

 切嗣は侑の質問を受けて、少しの間黙り込んだ。彼の顔には表情がなく、目はどこか遠くを見つめているようだった。それでも侑は、その目の奥に何か深いものがあるのを感じ取っていた。彼は何かを考えている───そう、確信できるほどの空気がそこに流れていた。

 

 カフェの静かな空間には、二人の沈黙が満ちていた。注文したコーヒーが運ばれてきても、まだ切嗣は答えを出していなかった。侑も急かすことなく、ただ静かに待っていた。

 

 そして、やがて切嗣は低い声でぽつりと呟いた。

 

「…ただの偶然だよ。」

 

 その言葉に、侑は一瞬肩透かしを食らったような気持ちになった。もっと何か深い理由があると期待していたからだ。しかし、その一言だけでは終わらないと彼女は感じていた。切嗣が偶然と言った裏には、もっと別の意味が隠されているのではないか。そう確信して、侑はもう一度問いかけた。

 

「偶然って…どういうことですか?」

 

 切嗣はゆっくりと目を閉じ、そしてもう一度彼女の方を見た。鋭い眼差しではあったが、どこか哀愁が漂っているようでもあった。

 

「…そのままの意味だよ。たまたまあの辺りを散歩していて、何かイベントをしてるのが聴こえたから、ふと立ち寄っただけさ。」

 

 彼の言葉はまるで、自分の感情を押し殺すかのような冷たさだった。だが、その背後にある苦しみや孤独が、侑にはうっすらと見えていた。

 

「ふと立ち寄っただけ…」

 

 侑はその言葉を反芻しながら、切嗣の表情を探る。彼は嘘をついていないように見えるが、何かを隠しているのは間違いなかった。彼女はその「何か」を知りたいという思いを、再び心の中で強くした。

 

「おじさんがあのライブで見せた顔、他のお客さんが見せるようなものじゃなかった。」

 

 そう、お客さんが見せていたキラキラしていて世間一般の人たちがいう『感動』とは違う。あれは正に何かを失い続けた者がようやく『希望』という何かを見つけたような嬉しくもどこか哀しさを秘めた顔だった。

 

「私はそれが気になって、どうしてもおじさんのことを知りたいって思ったの。」

 

 知りたい。どんな人生を歩んだらあんな表情を見せるのだろう。

 侑の真っ直ぐな言葉に、切嗣は再び黙り込んだ。だが、今度は少し違っていた。彼の目の奥には、わずかな動揺が見て取れた。彼女の言葉が何かを刺激したのだろう。それは間違いなかった。

 侑は切嗣が話し始めるのを待ちながら、カップに手を伸ばしてコーヒーを一口飲んだ。苦味の中にわずかな酸味が混じり、彼女の緊張を少し和らげた。

 

「……ハハハッ、僕はそんな変な顔をしていたのかい?」

 

 切嗣の言葉に侑は思わずハッとする。切嗣は逃げたのだ。いくら彼よりずっと歳下の子どもでも分かる“誤魔化し“だ。

 

「おじさn」

「確かに、あの時は()()あった後だったから他の人たちと違う見方をしていたのかもしれないね。」

 

 私は、おじさんの本当の事を知りたくて話し始めようとしたが、その言葉の先を聞きたくないのか、話を被せて話をし始めた。

 『“色々”あった後…』それが何なのか気になるが、そこをまた深く掘り下げようとしてもきっとおじさんは答えてくれない。単純に話せないような内容なのか、私を子ども扱いしてるのか、だ。

 

「それより…」

 

 侑が1人考え込んでいると、今度は切嗣から話の話題を振る。

 

「侑ちゃんに聞きたいことがあるんだった。侑ちゃんはスクールアイドルの何処に惹かれたんだい?」

 

 侑は思わず目を瞬かせた。予想外の質問だったからだ。彼の問いかけは、侑は一瞬、何を答えたら良いのか迷ったが、正直な気持ちを伝えることに決めた。

 

「スクールアイドルに惹かれた理由…ですか?」

 

 彼女は少し考えながら、テーブルに置かれたカップを見つめた。

 

「きっかけはせつ菜ちゃんのライブを偶然見た事…。」

 

 歩夢とダイバーシティで見た優木せつ菜のライブ。あの時、心の中に湧き上がるトキメキの気持ちを思い出しながらただ黙って聞いている切嗣に話す。

 

「だから私は“スクールアイドル”で夢をもらって、夢をくれたみんなを応援したくて同好会にいるんです…!」

 

 そう話し始めた侑の声は、徐々に力を帯びていった。言葉にしながら、彼女自身も自分の気持ちを再確認しているようだった。

 切嗣は黙って侑の話を聞いていた。彼の表情は変わらないが、その目には彼女の言葉をしっかりと受け止める意思が見えていた。

 侑が話を終えると、少し恥ずかしそうに笑った。

 

「そうか…。」

 

 彼はその言葉を反芻しながら、静かに呟いた。一瞬、微かに笑ったように見えた。しかし、その笑みはどこか儚く、侑の言葉とは反対に何かを諦めてしまったような印象を与えるものだった。

 

 ああ、そうか。この人は…

 

 「侑ちゃんは、きっとその夢の景色を見られるよ。君には、他の誰かに代わることのできない強さがあるからね。」

 

 切嗣の言葉は、侑にとって少し意外だった。彼がこんな風に誰かを励ますようなことを言うとは思わなかったからだ。しかし、その裏には、切嗣自身がかつて遠くへ行こうとしたものの、何かを失ってしまったという思いがあるのではないかと、侑は感じていた。

 

「おじさんも…昔、夢を…夢の景色を目指してたんですか?」

 

 侑がそう尋ねると、切嗣は短く笑った。しかし、その笑い声はどこか寂しげだった。

 

「目指してたよ。でも、僕にはその景色は見えなかった。見る資格もなかったのかもしれないね。」

 

 侑は言葉を失った。切嗣の言葉には、計り知れない重さが感じられた。彼がどんな過去を背負っているのか、侑には分からない。けれど、何かを成し遂げようとして、そして失敗したという苦しみがその一言に凝縮されていることだけは、痛いほど伝わってきた。

 切嗣の言葉は、侑の胸に深く響いた。彼の過去がどれほど重いものであったとしても、それを知ることができるのは、まだ先の話だ。だが、彼の言葉が持つ意味を無視することはできなかった。

 

 私は我慢出来なかった。

 

「ねぇおじさん、ちょっと一緒に来て欲しいところがあるんだ!」

 

 侑はイスから立ち上がり切嗣の手を握り前のめりになっている。

 切嗣も突然のことで、「え?」と呆気にとられる。

 

「え?ちょっと…どこに連れて行こうと…!?」

「スクールアイドル展だよ!」

 

 おじさんの事なんて何も分からない、どうしてこんな辛い表情を見せたりするのか、どうしてあのライブの時哀しくもどこか希望を見出した嬉しい表情をしていたのか、まだよく分かっていない。

 悲しいこと、辛いこと、何かに躓き悩んでること、色々な事があって上手くいかない時がいっぱいあるかもしれないけど……

 でも、その時は私が、私たちがいるから!

 

 だから切嗣のおじさん、私が、私たちが元気になれるように最高にトキめくスクールアイドルを、魅せてあげるね!

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