衛宮切嗣・高咲侑「NEO SKY, NEO MAP」   作:我来也

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第6話

 侑の心の片隅には、先ほどの切嗣のことがずっと引っかかっており、侑は少しだけ寂しさを感じていた。彼との短い交流で、何か特別なものを共有したような気がしたからだ。だが、今はそれを言葉にすることはできない。彼女の心に残ったのは、彼が持つ深い哀愁と、儚い笑みだけだった。

 

「歩夢…」

 

 侑は少し考え込んだような表情で、歩夢に話しかけた。

 

「さ、侑ちゃん。みんなのところに行こう!」

 

 だが、歩夢は対象的に明るい表情で侑に話しかける。が、真面目な表情に戻り侑に真剣に話す。

 

「切嗣さんの事が気になってるのは分かるけど、今日は元々私たちと遊ぶ約束だったんだからね?」

「う、うん…。」

「それにいきなり切嗣さんを連れてきたら皆びっくりしちゃうし、皆や切嗣さんも変な気を使って楽しく遊べないんじゃない?だから今は切嗣さんの事は忘れてちゃんと遊んで、切嗣さんを紹介したいならちゃんと皆に一度話そ?」

「歩夢…!」

 

 歩夢は切嗣のことをどう思ってるのかは分からない。おそらくあのベランダのやり取りから察するにあまり印象は良くないと思ってる。だけど、歩夢自身の気持ちよりも、私の気持ちを尊重してあの時の言ってくれたように私の味方でいてくれる。

 

 侑は気持ちを切り替え、歩夢の手を取り、スクールアイドル展の奥へと歩き出した。

 

 スクールアイドル展の中は、様々な展示が目白押しだった。アイドルたちが実際に着用した衣装や、ライブ映像の特別上映、さらには観客が一緒に踊れる体験型ブースもあった。侑と歩夢は、興奮した様子でその展示を次々と見て回った。

 

「ここ、せつ菜ちゃんが最初に歌った場所の再現セットだって!」

 

 歩夢が指差す先には、せつ菜が初めてパフォーマンスを行ったライブのステージが再現されていた。観客がステージに立って、せつ菜の足跡をたどることができるようになっている。

 

「わぁ…本当にここで歌ったんだね…!」

 

 侑は感動の面持ちでそのステージを見つめ、実際にそこに立ってみると、まるで自分がせつ菜になったかのような気持ちになった。

 

「ねぇ、侑ちゃん。」

 

 歩夢が話しかける。

 

「侑ちゃんあの人の、切嗣さんだけのスクールアイドルになってみたら?」

「え?切嗣さんだけのスクールアイドルに?」

 

 歩夢からの意外な提案に思わず聞き返し、かしげる。なぜ私がスクールアイドルに?という疑問もあるが、なぜ切嗣のおじさんだけのスクールアイドル?という疑問の方が強い。

 

「うん。侑ちゃんはさ、いつも私たちみんなのことを考えて、いろんな人を応援してくれるけど…」

 

 歩夢は少し照れくさそうに目をそらしながら続けた。

 

「切嗣さんだけのために、侑ちゃんが何か特別なことをしてあげるのも、素敵なんじゃないかなって思ったの。」

 

 侑は一瞬戸惑った。その考えは全く予想していなかったし、自分が誰か一人のためだけにアイドルとして何かをするというのは、これまでとは違った形の夢だった。けれど、切嗣に対する思いが心に引っかかっているのも事実だった。

 

「切嗣のおじさん、…すごく辛そうで、寂しそうだったよね。」

 

 侑は小さな声で呟いた。歩夢はそっと頷き、

 

「うん、そうかもしれない。でも、侑ちゃんの明るさや優しさなら、きっと彼の心に少しでも光を届けられると思うの。」

 

 その言葉に、侑はハッとした。彼女はこれまで、自分が持つエネルギーや情熱で、たくさんの人たちを応援してきた。それは、自分が楽しんでいることで周りの人をも幸せにするというシンプルな信念だった。でも、切嗣に対しては、もっと深い感情が湧き上がっている。

 

「私が…切嗣さんのために何かできるなら…」

 

 侑は少しずつ、その考えに納得し始めていた。

 歩夢は微笑みながら、

 

「だからね、今は一緒に遊ぼうよ。切嗣さんのことも大事だけど、まずは私たちみんなとの時間を楽しんで、その後に彼のことを考えても遅くないと思うの。」

 

 侑はその提案に頷き、歩夢の手をしっかりと握った。

 

「うん、そうだね。ありがとう、歩夢。私、少しだけ気持ちが楽になったよ。」

 

 その後、侑と歩夢は他の仲間たちと合流し、スクールアイドル展を存分に楽しんだ。彼女たちは、展示された衣装やグッズを見ながら笑い合い、ライブ映像を観ながら一緒に歌ったり踊ったりした。

 しかし、侑の心の中では、やはりどこかに切嗣の存在が残っていた。彼との再会があるかどうかはわからないが、もしまた会うことができたなら、侑は彼のために何か特別なことをしたいと思うようになっていた。

 夕方になり、スクールアイドル展を後にした彼女たちが夜の街に出た頃、侑はふと立ち止まり、夕焼け空を見上げた。

 

「歩夢、ありがとうね。今日は本当に楽しかった。」

 

 歩夢も空を見上げて、微笑んで答えた。

 

「ううん、私も楽しかったよ。侑ちゃんが笑ってくれてるのが一番嬉しいから。」

 

 そして、侑は小さく呟いた。

 

「いつか、切嗣さんにもこの景色を見せてあげたいな。」

 

 その言葉に、歩夢は静かに頷き、二人はまた手を繋いで、仲間たちの元へと戻っていった。

 

侑の心には、切嗣との特別なつながりと、スクールアイドルとしての新たな夢が芽生えていた。それはまだ形になっていないけれど、彼女にとって大切なものとして、これからの道を照らし出すものになるに違いない。

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