ヒーロー食堂   作:規律式足

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 活動報告にて頂いた案をさっそく書いてみました。



二話 相澤消太とにゅうめん

 

 友人ってもんは歳を重ねるごとに作るのが大変になってくる気がする。

 それも親友ともなれば、三十超えるともう無理なんじゃないかなと思う。

 昔からの付き合いはどうしたと訊かれるだろうが、あいにくと学生時代はヒーローになる為に一番頑張っていた時期。

 雄英高校に入学時点で沢山の同世代を蹴落として、入学してからはひたすらに一番になる為に競争だ。

 同期に恵まれなかったんだろうな。

 周りには己を高めるより他者を陥れるヤツばかりだった。

 卒業してヒーローになったら、更に苛烈な手柄の奪い合い。収入に直結し、生活のかかった文字通り命がけの戦いだ。

 一度だけ、同じ夢を持つ先輩と共に歩んだこともある。けど方針の違いから決別し、そのまま和解することなく死に別れてしまった。

 だからかもな。

 この二人が眩しくて羨ましいと思うのは。

 学生時代から途切れることなく友情を繋ぎ続け、共に同じ道を歩んでいるのだから。

 

 

「合理的じゃないだろ」

 

「ゼリー以外食わないといい加減死ぬぜイレイザー」

 

 イレイザーヘッドとプレゼント・マイク。

 プロヒーローにして雄英高校教師二人のご来店だ。

 

「らっしゃい。飲みにきたのかい?」

 

 ランチラッシュの料理は最高。

 だが唯一の欠点として学生食堂であるが故に酒類の取り扱いが無い。

 教師の勤務時間中の飲酒は厳禁だから当たり前だが、寮制になったことで勤務時間外の自室での飲酒すら難しい。寮監であればなおのことだ。

 だからわざわざ私服で敷地外のウチまで来たなら酒目的だと思うのが普通だ。

 ちなみにイレイザーヘッドは私服もコスチュームもほぼ同じ。

 

「ああオレはビールとツマミを頼むぜ」

 

「明日は休みだがほどほどにしろよ」

 

「イレイザーは固形物を食えよ」

 

 ツマミ、焼いた鶏団子に甘辛いタレでもかけるか。串に刺せば鶏つくねだな。

 用意しながらマイクから話を訊けば、イレイザーヘッドがゼリー食以外食わなくて心配だから強引に胃に優しいものを食わせようと連れてきたらしい。

 ならランチラッシュに頼めばと首を傾げたら、

 

「粥はもううんざりだ」

 

 ヴィラン連合の一連の騒動からリカバリーガールのチユーと入退院を繰り返したイレイザーヘッドは胃に優しい食べ物代表のお粥を食べ飽きるレベルで食べ続けたらしい。

 白米押しなランチラッシュも胃に優しいとなるとお粥一択になるらしく、もはや見るのも嫌とか。

 

「ま、きちんと生米から炊くとなると一時間単位で時間が必要だからあらかじめ予約されないとこっちも厳しかったな」

 

 オジヤや雑炊なら直ぐ出来るが、お粥となれば時間はいくらでもかかるからな。

 

「とにかくイレイザーに胃に優しいモン頼むぜマスター」

 

 となるとどうするか。

 粥以外となれば麺類。

 だがうどんはカレーうどんを求めるインドの皆さんに食い尽くされた。

 残った麺類は、と。

 ふと壁を見ればまだ剥がしてないオススメのメニューが目に映った。

 これにするか。

 

 

 

「この鶏団子美味い。ビールに合うぜ」

 

「ヒーローが飲酒とか人気に関わるだろ」

 

「この店に限れば問題ないぜ。なにせコスチューム着たまま飲める店って評判だからな」

 

 コスチューム着たヒーローお断りな飲食店はけっこうある。

 ファン達による騒ぎは軽い営業妨害になるからだ。さらにメニューのコメントなんてされたら、良い評価なら宣伝になるが、悪い評価だと下手したら閉店まで追いやられる。

 ヒーロー側にしても、食事時間をサボりと騒ぐ輩もチラホラいるためコスチュームを着たままの外食は基本的には避けるのだ。

 ウチは営業時間が営業時間で客層が客層だから騒ぎなんて滅多にならないがね。店内での撮影も撮られる側の許可がなければ厳禁だ。

 

「はいよ、鳥団子入りにゅうめん」

 

 あっさりめのスープに入った温かいそうめん。鳥団子も他の肉類よりは油が少なく身体に優しい。

 さらに生姜をほんのり効かせてるから温まる。

 

「お、旨そう」

 

「一日六食限定なんだろ?他のお客に申し訳ないんだが」

 

 生姜の香りに食欲をそそられたイレイザーヘッドだが、貼紙に気づいて遠慮しだす。

 けれどその心配は杞憂だ。一日六食と書いてあるが実際はいくらでもだせるのだから。

 常連の大食いのまゆみちゃんが限定って書いた方が頼みたくなると教えてくれたからね。

 そう告げようとしたら、

 

「いいですか?」

 

 単身赴任の斎木さんのご来店だ。

 

「えっと、鳥団子入りにゅうめんはもうお終いでしょうか?」

 

 限定品に弱くて並ぶが、何度も目の前で売り切れる運の悪い人。

 だからイレイザーヘッドの前のにゅうめんを見て、今日は駄目かと思ったようだ。

 

「ちょうど一人前残ってるよ」

 

「ああ良かった。ここだけですよこんな私でも限定品にありつけるのは」

 

 本当は落ち込まないよう斎木さんの分を残してあるけど、喜んでる姿を見れば本人に言えないよな。

 斎木さんの様子に手を付けてないにゅうめんを譲ろうとしていたイレイザーヘッドも、後一杯あるという言葉に安心して食べはじめた。

 

「美味いな、マスター」

 

「温まりますよねえ」

 

「クウー、本当に美味そうだな。一口くれよイレイザー」

 

「固形物食えと誘ったのはお前だ。今回は諦めろ」

 

 旨そうに啜る二人の姿に食べたがるプレゼント・マイクだが、茶碗一杯の鳥団子二つのにゅうめんを分けるのは無理があるよな。

 

「一日六食限定だもんなあ。次来たら売り切れてるだろ絶対」

 

「運が悪かったな」

 

 羨むプレゼント・マイクにイレイザーヘッドはニヤリと笑った。

 斎木さんが帰ったら本当のことを教えてやろうかと思ったが、二人の会話も楽しそうだし、このままにしておくか。

 親友と会話をしながら食事する。

 そんな時間はとても貴重で大切なことなのだから。

 

「ご馳走さま」

 

「ビールもツマミも美味かったぜ。次はにゅうめんリベンジだ」

 

「こだわるなお前」

 

「一口も分けてくんねえんだもん」

 

 イレイザーヘッドに絡むプレゼント・マイク。来店時と同じように仲良く二人は店をあとにした。

 にゅうめんを食べ終えた斎木さんも既に帰宅して、店には俺一人だけとなる。

 

「アンタともっと話しておけば良かったよ」

 

 カウンターにグラスを置き酒を注ぐ。

 まるでそこに亡き人が居るかのように。

 

「なあサー・ナイトアイ先輩」

 

 客が来るまでの僅かな時間。

 盃を傾けながらそこへ語りかけた。

 まるでイレイザーヘッドとプレゼント・マイクのやり取りのように親友同士の如く。

 

 

 





 頂いた案を元に書いてみました。
 最後、主人公がもっていってしまった感が。
 親しい人も、仲の良い人もいる主人公ですが、友人という枠組みにおさまる人は殆どいません。
 だからこそ変わらない友情貫く二人は眩しいものでした。
 なお、単身赴任の斎木さんは深夜食堂の原作キャラです。
 
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