残業で時間が無いなら、寝る時間を削れば良いのだ。
こう暑い日が続くと、かき氷が食べたいって注文が多くてサ、店でも出すことにしたんだ。ただし、セルフサービスだけどね。
面倒だってお客もいるけど、自分でやるのが好きだって人もいてね。サラリーマンの立石さんなんか作る方が好きなんじゃねぇかな。
とはいえ、そんなウチの夏限定セルフサービスかき氷なんだけど、
「できました、どうぞ」
「ありがとう♡ショートきゅん(野太い声)」
「ショートくぅ~ん、私のもお願〜い♡(主婦が電話にでた時のような裏声)」
ここ数年でえらく評判なんだよ。
なぜかって?
「♪〜」
万年ナンバー2ヒーローと呼ばれ、後にオールマイトの引退によりナンバー1ヒーローとなったエンデヴァー。その息子として名が知られ、雄英高校体育祭にて華々しくデビューし、それ以降の事件の活躍で若手ながら知らぬ者はいない、氷炎ヒーロー・ショートこと轟焦凍が作ってくれるからね。
今じゃもうウチの夏の風物詩になっているくらいだよ。
「どうぞ」
「ありがとう♡ショートくん♡(媚を売る時の裏声)」
この時期になると彼目当てのお姉さん達(年齢性別問わず)の来店が急増するんだよな。
「楽しいかい?」
「この先、ヒーローを引退したらかき氷屋をやろうかなって思っています」
無表情ながらも楽しげにガリガリとかき氷機のハンドルを回す轟焦凍。
「良いわ〜ん(野太い声)」
「癒やされる〜(年齢を誤魔化す裏声)」
その様子を涎を垂らしながら見つめるお姉さん方(という名の魑魅魍魎)。イケメンは何をやっても絵になるよな。
ウチでの評判ぶりからホストクラブも真似をしてホストがかき氷を作るイベントをしてるくらいだ。
ま、本家本元天然イケメンのショートにはどうしたって勝てないみたいだがね。
「楽しいです」
「そうかい」
大爆殺神ダイナマイトの宣伝により雄英高校生がインターン帰りなどで遅くなったらウチに寄るようになってからしばらくして轟焦凍も来店した。
最初の頃はオールマイトのサイドキックだった俺の過去話目的だった。豚汁定食をモソモソ食べながらしきりに話をねだってきたもんだ。
当時の俺がやってたのは戦闘と救助以外はポンコツなオールマイトの後処理ばかりだったんだがね。あとはハニートラップの対処とか。
そんなサイドキックの役割や務めを熱心に聞いてたショート。
だが、俺が夏になったからとかき氷機をだして試しに作ってみせたらそっちに夢中になった。
かき氷を初めて食べたとか言われた時は反応に困ったがね。
それからはセルフサービスなのに他のお客の分もひたすら作るようになったんだ。彼はかき氷機を回すのが楽しくて仕方ないようだ。
好きでやってると本人は言ってるけどバイト代をだすべきかね?
ショートのかき氷は随分と評判だしな。
そんな事を考えていたら、
「店主よ、余にはイチゴ小豆メロンを頼むぞよ」
「はいよ」
来日中にわざわざ訪れたエジプトナンバー1ヒーロー・サラームがかき氷で一番高いヤツを注文してきた。
面倒な品だが仕方無いな。
全くウチに来るたびにコレだ。
まずはショートに新しい氷を渡して通常の三倍量削ってもらう。
次に専用の器にカットしたメロンをズラリと並べる。バランスよく配置したら削った氷を盛る、宇治金時にも使う甘い小豆を各所に散りばめ、アルプス山のような天辺にタラリと赤いイチゴシロップでかけて完成。
「お待ち」
「うむ、コレよコレコレ」
両手で持つのも大変なソレを喜色を浮かべながら受け取り、そのまま勢いよく掻き込む。
頭がキーンとならんのかね?
それもまたかき氷の醍醐味だが、サラームは器を一度も下ろすことなく食い切った。
最後にズズーっと残ったシロップを飲み干し、額をおさえる。
「馳走になった、満足したぞ店主とショートよ」
「どうも」
「そら良かった」
エジプトナンバー1ヒーローであり、国内有数の資産家であるサラームの賛辞。
舌は結構庶民なのかもな。
ドヤ顔のショートと共に滞在先であるホテルへ戻るサラームを見送り、夜は更けてゆく。
「そろそろ夏も終わりかね」
「え?」
その一言でショートが絶望顔になるのも毎年恒例だな。
そんな夏の一夜の話。
かき氷。
深夜食堂原作だと、ホステスと親しくなったおじさんと初恋と浮気が絡む可哀想なやるせない話。
ショート。
かき氷作りとかの単純作業がかなり好きなイメージ。
ショートのかき氷。
テレビ取材は断っているがかなり有名。
夏はコレ目当ての客多し。
サラームとイチゴ小豆メロン。
魔神英雄伝ワタル2とのパロネタ。
だって似てたからつい。