ヒーロー食堂   作:規律式足

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 活動報告で頂いた案を元に書いております。確約はできませんが、思いついたら書きます。
 
 今話は平均的ケイデンスさんから頂いた案です。ありがとうございました。



六話 出水洸汰と焼き飯+野菜あんかけ

 

 営業時間が深夜から朝方のウチだけど、頼まれたら昼間に開けることもある。

 そういった場合は大抵子供が来る時だ、子連れ狼のギャンブラーみたいな遅くとも気にしない人もいるにはいるが、そもそも子連れで歩く地域じゃないからな。

 頼んできたのは大爆殺神ダイナマイトこと爆豪勝己。なんでも一年の林間学校でお世話になったヒーローチーム・ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツのメンバーであるマンダレイが引き取った少年・出水洸汰君にどうしても食べたいものがあるとお願いされたらしい。

 

「焼き飯ねえ」

 

 そら注文されたら作るけど、わざわざ店で頼むもんかね。

 

「悪いなマスター、なんか家で作るような焼き飯が食いたいそうだ」

 

「ウチ(ヒーロー食堂)も店なんだけどなあ。マンダレイは作ってくれないのかい?」

 

 出水洸汰君の事情は知っている。

 亡くなった彼の両親ウォーターホースご夫妻とは一緒に仕事したこともある。まああくまで同業程度の付き合いだがね、ウチに来たこともないし。

 しかしあのマンダレイなら、引き取った子供に適当なモノを食べさせたりしないと思うのだが。

 

「きちんと、し過ぎなんです」

 

「どういうこった?」

 

「そういうことか」

 

 俯いたまま気不味そうに呟く洸汰君。

 その言葉に大爆殺神ダイナマイトは理解できずに首を傾げて、理由を察した俺は納得した。

 

「壊理も居るからか、レシピ通りの分量できっちりと作るんです」

 

「料理なんてそんなもんじゃねえの?」

 

 爆豪の言うことはもっともである。レシピがあるならレシピ通りにするのが普通だ。だが、

 

「毎日三食、家族の為に食事を用意する母親がレシピ通りに作って回せるわけないだろ。急ぐ為に強火で手早くやったり、材料をあるものでやったりと、その場その場でアレンジするんだよ」

 

 料理をレシピ通りに作れば、ほぼ間違いなく材料が余る。食堂やレストランなら他の客に使えば良いが家庭ではそうもいかない。家にある食材でやり繰りする苦労、それが母親にはあるのだ(父親がやる場合もあります)。

 無論、レシピ通りに作った方が旨いだろう。だがレシピ通りではない家庭の味というものがあり、それを求める客は実のところかなり存在するのだ。

 ウチも「美味し過ぎなくて実家みたい」と褒めてるんだか、貶されているような言葉をよく貰うしな。

 

「そうなんですっ!!食べたいの訊かれて焼き飯食べたいって言ったら鉄鍋使った本格シーフードパエリアを出されて、美味しいけど、美味しいんだけど、なんか違う」

 

 自分のワガママだと自覚している洸汰君は最初は熱くなって言ったが申し訳ないのか徐々に小さくなっていた。子供だからそこまで気を遣う必要無いと思うけどね。

 

「ママの作った焼き飯は、もっとこう有り合わせの材料で、フライパンで作ってべちゃっとしていて、味付けも適当な感じでした。

 でも、それでも美味しかった」

 

「レシピ通りで旨いと、駄目なのか?よくわかんねえな」

 

 ま、爆豪君にはそこら辺の機微はまだわからないだろうね。俺もだが両親を亡くしているからこそ、もう食えないソレを強く求めてしまうものさ。

 

「家庭を持ったことのないマンダレイには、家庭の味はまだ厳しいんだねえ」

 

「マスターも女遊びは散々するが未だに未婚だよな。なんで家庭の味がわかんだよ」

 

 黙れ小僧、商売だからだよ。

 おふくろの味を求める客がどれだけいると思ってやがる。業務用のカニクリームコロッケがおふくろの味だったカリスマフィギュア原型師とかもいたがね。

 

「とりあえず注文されたからには作るよ。爆豪君にはタイ風激辛焼きそばで良いか?」

 

「おう、極辛で頼む」

 

「作ると目が痛くなるんだけどなあ」

 

「しかしワガママな注文で悪いな」

 

「すいません」

 

 昼に店開けるのも含めて確かにワガママな注文だけど。

 

「チャーハンとチキンライスとドライカレー(ピラフタイプ、キーマタイプではない)とエビピラフをいっぺんに頼むおばちゃんグループよりマシだよ」

 

「似たようなモン別に頼むなよ」

 

「グループなら全員同じモノにすれば良いのに」

 

 作るのも面倒だけど絵で描きわける方も大変だったろうな。

 なにはともあれ焼き飯作りだ。

 肉はチャーシューではなくハムかソーセージを刻んでだな。野菜はあのやり方にするか。

 爆豪のタイ風極辛焼きそばは奥のキッチンでゴーグルとマスクを装着して作る。ラー油を手作りする時もこうしないと目と喉をやられるからな。

 

 調理を終えて、二人に料理を出す。

 有り合わせ焼き飯とタイ風極辛焼きそばだ。

 

「美味しそう」

 

「はは、期待でワクワクしてくるぜ」

 

 洸汰君が嬉しそうで何よりだ。そして爆豪よ、料理を食うのは冒険じゃねえ。

 焦げのチラホラある焼き飯をスプーンで掬って食べる洸汰君。飛び上がる程に美味しくはないだろう、マンダレイが作ったシーフードパエリアの方が旨いだろう。でも、どうやら彼が食べたかった味ではあったようだ。

 

「ママ」

 

 その目から涙が溢れてしまうくらいに。

 

「辛え、辛えよ、旨い。ヒャハハハ」

 

 少し黙っとけ大爆殺神ダイナマイト。辛味の刺激はエンドルフィンを分泌させて気持ち良くなるらしいから、テンション上がるのは仕方無いがな。

 

「ほら、これはサービスだ」

 

 洸汰君にさらに野菜あんかけをつけてやる。あんかけといっても野菜炒めに水溶き片栗粉でとろみをつけてオイスターソースで味付けしたもんだがね。

 すると洸汰君は驚いたように目を見開く。

 

「ママもこうしてくれたんだ。余った野菜炒めも食べれるようにって。栄養とれるようにかけてくれたんだ」

 

 中華風の炒めもんは、そのまんまご飯や麺にかけても旨いし、単品でつまむより食べやすくなるからな。

 

「美味しい、とても美味しいです」

 

 子供には最適なんだよな。

 亡き母の味、とまではいかない。

 それでも懐かしい家庭風の料理を洸汰君は涙を流しながら食べきるのであった。

 

 

 食事後、店をでる爆豪に気になったことを尋ねてみた。

 

「なんで洸汰君をお前さんが連れてきたんだい?親しいのは緑谷君じゃねえの?」 

 

 林間学校での折、緑谷君こそが洸汰君のヒーローになったのだと聞いていたが。

 すると爆豪勝己は言いにくそうに顔をそらしながらその理由を口にする。

 

「サーナイトアイの件で未だにマスターと向き合う覚悟が持てないそうです」

 

 そうか。

 なら仕方ねえよな。

 でも、

 

「デクやルミリオンが死んで、先輩が生き残るなんて未来は想像すらできんがね」

 

 故人をよく知るがゆえにそうなったことに納得できてしまうものだ。

 だから生き残った彼らに思うところなんてない。

 

「そのうち気が向いたら来い、とだけ伝えてくれ。塩まいて追い払うなんて真似はしないからよ」

 

「わかった伝えておく」

 

 疑問もとけて、本日特別の昼営業は修了した。

 さて、片付けてから一眠りだ。

 

 





 平均的ケイデンスさん。
 こんな感じでよろしいでしょうか?
 頂いた案に+アルファして書いてみました。

 中華一番(古い)で出たエビチリかけチャーハンて美味しいですよね。レトルト同士の組み合わせでもかなりいけます。
 マンダレイの料理についてはオリジナル設定です。一人暮らしかチーム仲間との暮らしが長いからこうならないかもしれませんが、幼子二人引き取ったから気合を入れてる感じです。
 なお、家庭を知らない壊理ちゃんはよくわからない感覚だそうです、闇深っ!?
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