噂のアイツ?
「せんせ、お嬢! もう一人、メンバー欲しくありませんか!?」
弧白が負傷してから更に数ヶ月後。突然声を上げた火垂に、弧白は「もう一人?」と首を傾げる。
「あー? もう一人?」
「そうですっ! 私達はこれまで三人でやってきましたが、どうにも限界があると感じていますっ」
「うーん、それは確かにそうだけど……そう言ったって、どこから連れてくるんだ? まさか海未さんと同じ勧誘の仕方するのか?」
「やめてさしあげて? あれ、ナンパみたいで結構びっくりするから」
「いや流石にお嬢にやったのと同じ手はしませんよ?」
「じゃあ私にしてきたあのナンパは何だったんだ……」
平たい目で見つめる海未に「いやいや、あれは正当な勧誘方法ですよ? 現にお嬢はずっと一緒にいてくれますし」と団子を頬張る火垂。
「確かに。俺は正直、海未さんは数ヶ月したら離れるものだと思ってた」
「何だかんだ一緒に過ごして半年過ぎたね。それと、新しい人を勧誘するのは私も賛成。これ以上負傷者が出ても困る」
「となると、勧誘方法と年齢だよね。ハンターズギルドに申請というか、募集の紙でも貼ってもらう?」
弧白の言葉に「それが出来たら苦労しないんだよね」と苦い表情をする海未。
「どういう事?」
「はは……少し事情があって」
海未は笑って誤魔化す。言えない事情があることを悟った火垂が「ま、そういう事もありますよね」とお茶をごくごく飲む。
「───失礼、そこの若い子達。少しいいですかな?」
ふと、一人の男性に話しかけられる。位置的に男性の真ん前にいた海未がアイルーのように大きく飛び退いて火垂の後ろに隠れる。
「わぁ、流石双剣使い。お嬢は跳躍力も素で高いんですねぇ」
全体の装備を見た時、火垂を除き、海未、弧白は瞬時に血の気が引く感覚を覚えた。
「全身ゴア・マガラ装備……」
「先程、メンバー追加のお話をしていたと思うのですが……良ければ、ワシを入れて欲しいと思いましてな」
話し方からして、かなり年を刻んでいる人物のようだ。少しだけ警戒心が薄れた海未は「聞いていらしたんですね」と男性を見る。
「それにしても、全身ゴア装備かぁ……」
「ねぇ海未さん、この人もしかしてゆ───」
「ストーップダメダメダメ! 弧白さん、それ以上はいけない!!」
弧白の口を塞ぎ、海未は大きな声をあげる。何の事か分かっていない火垂は「ゆ……?」と首を傾げていた。
「もがご、もごごがごご?」
「うんそうだね分かったよ! すみません、ちょっと会議してもいいですか!」
「ん? おお、構いませんぞ」
男性から了承を得て、海未は弧白と火垂の首根っこを掴んで少し離れた場所に連れていく。
「ぶはぁっ、海未さんよく話せるね!?」
「いや、武器をよく見てよ……太刀だよ? 操虫棍なら確定だけど、まだそうとは限らないじゃん」
「ねぇお嬢、『ゆ』って何ですか?」
「コラッ、そんな言葉どこで覚えたの! 忘れなさいったらもうっ!」
「『ゆ』しか言ってませんよ!?」
小声で話しつつ、海未は考える。
一昔前、いわゆる『迷惑系ハンター』という存在が、バルバレやドンドルマ付近で出没していた事がある。海未や弧白の年齢の世代なら、名前を聞いただけで嫌そうな顔をする人の方がほとんどである。
全身ゴア・マガラ装備に、操虫棍を持っているのが特徴的で、「粉塵撒いて」だの「尻尾きって、役目でしょ」だの「ハチミツちょうだい」だの、ありとあらゆる場面で他人任せで横暴な態度を取り、言う通りにならないと逆上してくる……そんな存在だった。
海未は過去に、この手の迷惑系ハンターに出くわした事があった。その時も同じ特徴をしていた事から同一人物かと思われるが、未だに全身ゴア・マガラ装備のハンターを見ると少し身構えてしまうのが現実である。
「どうするの、海未さん?」
「何で決定権が私にあるの?」
「とりあえず一戦行ってみて、ダメだったら追放って形にした方がいいんじゃないですか?」
「……そうする?」
「まだあの存在とは限らないし、一度一緒に行ってみよう」
会議が終わり、弧白が前に出て「一度クエストに一緒に行ってから決めませんか?」と提案を出す。男性は快く了承し、「若いもんと狩猟に行くのは久々ですな」と笑っていた。
「俺は弧白です」
「えっと、私は海未と呼んでいただければ」
「火垂でーすっ!」
「弧白さんに、海未さんに、火垂さん。覚えましたぞ。ワシは
五十歳とは思えない礼儀正しさに少々驚きつつ、海未は軽く会釈をしてクエストボードに向かう。
「満さん、ゴア・マガラ得意なんですか?」
「ん? あぁ、得意ですぞ」
「じゃあこれで。得意なら、やれますよね」
そうして海未が迷う事なく取ったクエストは「ゴア・マガラの討伐依頼」。弧白が嫌そうな顔をしたのが視界の端に見えた。
「……ごめんじゃん」
「俺、ガンランスで行くけどいい……?」
「いいよ。じゃあ私は……」
アイテムボックスに半身を突っ込み、がさごそと中を漁る海未。もはやボックスに食われているようにも見える。
「お嬢、ボックスに食べられている……?」
「こうして見ると、頭から罠に引っかかったモンスターのようですな」
「広域化の護石に、調合分のグレートと……」
そうして独り言を呟きながらボックスから取り出したそれは、大きな銃器。ヘビィボウガンだった。
「……珍しい、双剣しか使えないのかとばかり」
「お嬢、ヘビィボウガンを持つんですか?」
「ゴア・マガラに双剣で行くのはちょっと無茶だからね。だから、昔からゴア・マガラにはヘビィボウガンって決めてるんだよ」
「おぉ、いいですね」
海未が持っているのは、「金獅子砲」と呼ばれるヘビィボウガン。ラージャンの素材で作れる武器である。
「ラージャンヘビィだ。それって結構反動大きかったよね?」
「そうそう。弧白さんがぶっ倒れる前にシバいたラージャンの素材で作った」
「耳が痛い言葉が聞こえてきた気がする……」
チッチェの手続きを済ませ、各々団子を食べた後に出発口へと向かう。一人だけ異質な存在感を放っている、ゴア・マガラ装備の彼を連れて。
新キャラ登場です!!!やっと出てきてくれたね満おじちゃん
愛嬌のあるいいおじちゃんです、設定集の方も時間がある時に更新します
海広エルガド編もあと二章くらいの予定ですが、もしかしたらちょこーっと伸びるかもしれないです
あと原作ゲームのストーリーの時系列を少し改変してますので、また変わった感じで楽しめるかと思います!!
次回の更新を、暫し待たれよ!