「あ、お嬢おかえりなさい!」
更に二日後、エルガドに戻ってくると早速火垂がお出迎えをする。むぎゅむぎゅと抱きつかれ「はいはい、ただいま」と背中に手を添える。
「大丈夫だった?」
「全然! ソロで行っても余裕でした! せんせと満さんも無事ですよ!」
「良かった。長らく空けちゃってごめんね」
ふと、港の方に誰かが歩いていくのを海未は見かける。特徴的なワインレッドの頭髪、王国軽装騎士装備のその女性───フィオレーネは、港で海を見つめていたガレアス提督の方へ歩いていく。
「フィオレーネさん……!」
「えっ!?」
海未を引っ提げたまま、火垂は辺りを見回す。フィオレーネ! とチッチェの声がする。見ると、チッチェがフィオレーネと再会のハグをかましているようだ。
「海未さん、おかえり」
「フィオレーネ殿が戻ったようですな」
「あ、ただいま、二人とも。良かった、薬が効いたんだ」
「フィオレーネさんが戻ってきたのも、お嬢のおかげですよ!」
「私は頼まれてやっただけだよ」
その様子を少し遠くから見ていたバハリが「一件落着だね」とお気楽に呟く。しかしタドリはそれとは裏腹に、真面目な顔をしている。
「これからでしょう」
「わーかってるさぁ! ノリが悪いねぇ」
バハリは皆の元へ歩いていく。視線がバハリに集まる。
「さぁーてみなさぁん!
反撃の時間です」
バハリは、ニヒルに笑った。
*
「海未ちゃんはおかえり。フィオレーネは復帰おめでとさん!
不幸中の幸いというか……キミが倒れた事で色々と分かった。感謝してるよ!」
「ああ、話は聞いている。だが、私のためにエルガド全体に迷惑をかけてしまって……すまなかった。
特に海未殿。私のために、危険なクエストにまで行くことになって……」
フィオレーネは頭を下げる。「無事で何よりです。それに、助太刀もいましたし、私は大丈夫ですから」と、頭を上げるように促す。
「そうそう! 無事で何より!」
「迷惑など微塵もかかっておらぬぞ、フィオレーネ殿」
「……フィオレーネ、海未殿らもこう言っておられるのだ。もう己を責めるな。不在だった分は、これから騎士としての働きで挽回すればよい。
……さて、バハリ。先程「反撃の時間」と言ったな。
補足したか、メル・ゼナを」
「ええ。現在、城塞高地に降り立っています」
「……城塞高地」
「皮肉なもんですね。メル・ゼナに滅ぼされた提督の故郷……そこに降り立つとは」
「城塞高地が、提督の故郷……!? それは初耳でした……」
フィオレーネに続き「城塞高地がガレアス提督の故郷!?」「頭がこんがらがってきちゃった……」と火垂、海未が声を上げる。
「誰にも言ってないからね。俺は長生きしてるから、当時を知ってるってだけで。
それより、今はメル・ゼナだよ、フィオレーネ。元凶を、ようやく見つけたんだ」
「……ああ、そうだな。
確実に城塞高地にて仕留めて、全てを終わらせてくれる……!
海未殿、それと他の御三方の誰か、共に来てくれるか。貴殿らがいれば、私に怖いものなどない」
「いやいやいや! ちょっと待った! フィオレーネ、キミはお留守番だ!
病み上がりなんだぞ! ついさっきまでウイルスでウンウン唸っていたのに、何を馬鹿な!」
「そうですよフィオレーネさん、病み上がりなんですから」
「そーだそーだ!」
「もう治った。オマエもタドリ殿も、完治だと言ったではないか。
それに、この四人を見ていると……「猛き炎」に身も心も熱くなる。ジッとしていられないんだ。
もちろん、無茶はしない、約束する。提督、バハリ、出陣の許可を、どうか……!」
懇願するフィオレーネを見て呆れたように溜息をつき「……キミたちのせいだぞ?」とバハリは言う。
「エルガドにいる誰も彼も、キミたちの堂々たる姿に心身が燃え上がって、実力以上のパワーを出しちゃうんだ。もちろん、俺もね?」
「え、私らのせいですか?」
「俺らなんかやっちゃいました?」
「せんせ! それは禁句です!」
「平和が一番、ですなぁ!」
「ちなみに俺は、メル・ゼナを補足するまで十日近く、一睡もしてないけど超元気! 何これ!」
「それは寝てください」
海未の鋭いツッコミが入る。
「……海未殿ら、フィオレーネ。
メル・ゼナ討伐の任務を遂行せよ。
……ただし、「無事に戻ってくること」。これも任務とする。いいな」
「ハッ!
やるぞ、四人とも。我らならば成し遂げられないことはない。今までやられっぱなしだったこの屈辱を、百倍にして返してやろう」
「はい」
「分かりました」
「ヒャッホー! 暴れるぞ〜!」
「腕が鳴りますなぁ! ……と言っても、一人余りますな?」
「それなら満さん、誰かが倒れた時の予備としてついて行くっていうのはどうです?」
弧白の提案に「おぉ、それはいい!」と満は賛成の意を示す。
「メル・ゼナは一度倒したことがあるけど……あれとは別個体?」
「完全に別個体だね」
「そっかぁ。動きが違ってくるのかな」
「気を引き締めて行きましょう! 気炎万丈!」
「……とりあえず、さ。
装備、整えてきていい? 本気用の装備に着替えてくる」
「じゃあ、お昼に出発口集合でどうです?」
「賛成。じゃ、また後で」
さっさと指揮所を去っていく海未。「ああーもう! お嬢速いです〜!」と、後ろをついて行く火垂。取り残される男子二人。
「……賑やかですね」
「平和が一番! ですなぁ!」
ほっほ、と笑う満の朗らかな雰囲気に引っ張られ、弧白もつられて笑ってしまった。
「……バハリ」
「お! 俺にも任務ですか!? なんでも言ってくださいよ! 俺、今頭が冴えに冴えてるんで!」
「寝ろ」
「……はい」
レゾナンス型大剣はいいぞ。
あとセブンに売っているKOGUMA SNACKのハニーバター味が美味しい。食べる手が止まらん。
エルガド編あと2話で終わります。もう少しお付き合いいただけたらと思います。
7月初旬に終わればいいな!気炎万丈〜!!