覚者と世界   作:朱莉

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やりたいこと

 

 

 事前に知っていたとは言え本当に来るとは思わなかった。高畑を名前呼びしている理由も一緒の苗字だったかららしく一人納得した。クラスに来た時に少し話してみたがユキ(そう呼んでくれと頼まれた)はやっとやりたいことが出来るって喜んでいた。その時に私も自己紹介をした、あの時に言い忘れて少し落ち込んだのもあって少し声を大きくしちまって朝倉が目を光らせていたから後でどんな目にあっちまうか考えるだけで嫌になる。

 あいつの頑張りが成就して欲しいと切に願うのは一度関わってしまったからだろうか。でもやっぱりすぐにそれが叶う事はないようだった。

 あの時に言っていた「人達」っていうのはやっぱり桜咲たちの事を言っていた様であいつらと何があったのか一切わからないがあいつら尋常じゃないくらいにユキを避けている。何度か教室で話そうと試みているあいつを見るが何かと理由を付けて逃げるのだ。その度にあいつが落ち込むのを見て嫌気が差す。あいつの頑張りを知らないでそんな行動で示すのは見ていて嫌だった。

 

 だからこそ私は珍しくいつもの傍観をやめて行動に出ることにした。知り合いだって言っていたマクダウェルは最初の行動でわかったが、絶対にからかうだろうから手伝わないだろうし、高畑に相談するほどあいつは器用じゃなさそうだしな。そう思って探し歩けばすぐにあいつは見つかった。想像通りで嫌だったが疲れたようにため息を吐くあいつを見付けすぐに声をかける。落ち込みすぎて私がいることすらも気付けていなかったようで心底驚いたような顔をするこいつを見て内心笑ってしまう。探していたって面と向かって言うのは少し癪なので軽い嘘を言うが言ってから思い出す。こいつにそういう態度はダメだ、疑うことを知ら無さ過ぎて全て本音に捉える。言っちまったことを捻じ曲げるわけにもいかずにとりあえず概ね知っているが問い質す。そうして返ってきた言葉にやっぱりかと思わず癖の一種になってしまった動作をしてしまう。やってからハッとなるがその私の動作であいつはまた落ち込んでここから去ろうとしまうがそうはいかせない。何のためにお前を探してたと思ってんだ! ユキの肩を掴み思いを伝えてみれば消え去りそうな声で「本当に?」とか聞いてきやがる。お節介だと言われたとしても一言マクダウェルに何か文句言ってやりたくなる。多分だがこいつは頼られるのに慣れきってるせいで頼ることに慣れてねぇ。そんな奴をからかうのは本当にその事態を軽く見ているか嫌いな奴だからだ、マクダウェルはその前者だろうから事の大事さを知ら無さ過ぎる。ユキの性格を今のところ理解できてるのは私だけなのか? それともやっぱりココ(麻帆良)だからなのかはわからないがそう思わないと気がすまない。

 しかもそう問い返すってことは私も信用されてないってことになる。それも今まで誰もこいつを助けてやらなかったからだろう。だからこそ私はあいつの言っていた言葉で言い聞かすことにした。普通の言葉で取り繕うよりも自分が言った言葉で返された方が簡単だろうしな。思い描いた通りに事が運んで笑みを深くするが……さてどうやって橋渡しをさせようか。

 

 

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――――

 

 

 話を聞いてみれば些細なことだった。不器用にも程があんだろ……。「二人に謝りたい」のは知っていたが、「同時に謝りたい」のは流石に予想外だった。なんでも後に謝った方に悪いんだと。気持ちは同じくらいなんだからそう思うのは可笑しいと思うんだ、頭が固いというか何というか……まぁそう思うのは悪くないんだが行き過ぎるとこうなっちまうのか……。

 龍宮のヤツは今のところキツそうだが桜咲の方は一応いけそうだな、ただこいつが龍宮の方に感けている間に離れるだけらしいからそっちから行けばいい。そうして桜咲を味方というか巻き込んで龍宮の逃げ場をなくせばいい。謝りたい気持ちは同じなんだから後先の優劣なんてあるわけないんだ。そう言ってみればユキはまた驚いたように「あっ」と声を漏らす。だけどやっぱりそれも不安なのだろう、すぐに表情が暗くなる。思わず舌打ちしたくなるがそうはいかない、流石に同じ轍は踏まない。

 

「私が付いて行くから安心して謝れ、つか絶対謝れ、逃がすな、追ってでもお前の気持ちを伝えろ。そうすれば悪いことにはならねぇから」

 

 そう言ってやればあいつは渋々だが頷いた。「嫌われない?」とか気にしていたがそう思うのは可笑しいだろ、お前を嫌う前に私だったら避けてる自分を嫌うね。

 龍宮が逃げるとなると部屋に駆け込んでも辛そうだな、桜咲は呼べば来るだろ、あいつそこんところ義理堅そうだしすっぽかすにも予定がないとやらなさそうだしな。呼ぶのは私がやるか? 普段話さない私が大事な用事だって言えば警戒はするだろうが絶対に来そうだな。下手にこいつが誘うよりもいい効果だろう。

 

「日程とかは私が決めてやるよ。悪い日とかないだろ?」

「特にない。頼りきりでごめんなさい」

「へっ、気にすんな。……友達だろ?」

 

 普段言わないくさい台詞をさらっと言える自分に驚くが悪い気分ではなかった。こいつも私のその言葉に驚きつつ間髪入れずに「うん!」と答えてくれやがる。こういうのも悪くないな……。

 

 さてと、行動するのは早いうちが良い、明日からすぐにでも行動するか?

 

 

 

 

 




視点変更長谷川編。頭の固い主人公を手伝ってくれるそうです。

「―」のあたりは時間が経ったとかそういう描写です。

くさい台詞を言ってからシラフに戻って赤面する人……私です。


2014/12/14 追記
2014/12/19 脱字があったので修正。
こういう悪く → こういうのも悪く
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