覚者と世界   作:朱莉

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 あ、明けましたねおめでとうございます。



叶う?

 

 

「ごめんなさい」

「……」

 

 私は時代錯誤が酷いようなので謝り方をタカミチに聞いた。私の知っている方法でもいいのかも聞いた。それで問題はないと言ってくれた。けど私は心配だった。チサメにずっと任せっぱなしは嫌だから、待っている間に私は私のできることをやっていようと心に決めた。

 だから別の人にも訪ねた。茶々丸に、チャチャゼロに、エヴァに、学園長に、クラスメイトにはまだ聞いてないけど……。

 エヴァは今忙しいらしく茶々丸もそれに伴い軽くしか話せなかったが一応答えは得た。

 

 それでもやっぱりみんな、私の考え方は不器用だって言う。私も言われてからそう思った。優劣なんてないんだって。でもその気持ちは大事だって言ってくれた。

 タカミチは私のことを心配してくれて「僕に出来ることがあったら手伝うよ」と言ってくれたが男性に頼ったこともなく適当にはぐらかしてしまった……今更ながらこどもの意地っぽくて泣きそうになる。

 

 でも、そうやって得ただからこそ私は私の行動を大切にしたい。

 

「――ッテ言ウケドヨ、流石ニズット縛ラレルノハ面倒ダゼ」

「……ごめんなさい」

「暇ナノハ認メルガ、コウイウノハアンマリ教エテヤレネー。ソレデモイインダナ?」

「構わない。今度何かしらで返す」

 

 呆れたように言うチャチャゼロは尤もだと思う。ずっと相手してくれたもんね、相手役頼んで本当にごめん。

 

「礼ハイラネェ……逆ニ遊ンデクレタ礼ダ、コレクライナラ任セロ」

「……ありがとう」

「土下座モイイケドアンマリヤンナヨ? ヤリ過ギハ安クナル」

 

 相手役ありがとうございます……。

 

 

 

――――――――

 

――――――

 

――――

 

 

「場所ニヨッチャ土下座出来ネェカラ腰曲ゲルダケデイイナ」

「わかった」

「曲ゲ具合ハ最敬礼デイイダロ」

「このくらい?」

「ソレダト下ゲスギダ」

「……これくらい?」

「ソノクライダナ。マァ後ハ千雨ッテヤツ待チデイイダロ。当タッテ砕ケテコイ」

「ありがとうございました」

「オゥ!」

 

 時計を見ればチサメが約束してくれた時間より少し早い程度だった。割と余裕を持って練習したつもりだったのだが思いのほか白熱していたらしい。練習してやるものではないけれど手持ち無沙汰というか先も言ったが何もしないで待つのは性に合わない。あとは待ち合わせた場所に待機すればいいんだったか……。うまくいってくれればいいのだけど……。

 

 待ち合わせ場所に向かってみれば満身創痍なチサメが迎えてくれた。見るからに疲れた表情をしていた彼女に何かあったのか訪ねようとも思わない、彼女はきっと言葉では言い表せないくらい凄いことを成し遂げたんだと思う。私のことを友達だと言ってくれた彼女に私は何を返せばその行動に返せるのだろうと今から悩まなければいけなさそうだ。

 そう思っていたがお返しは私の用事が完了すればいいらしい……彼女は私に何を望んでいるのだろう……今の気持ちを表すならば彼女の願いを世界を敵に回してでも叶えることくらいなら造作もない。そのくらい衝撃的なことを言われた。

 当たって砕けてこいと言われたので自信がなくともやることはやろう。

 

 その合流したチサメから「間違ってたぞ」と言われるまで字を間違ってることに気付かなかった私はもう砕け散った気分だったが。

 

 

 

 

 確かに気になったら知りたくなるけど……。

 私の下駄箱で何かをやっていた長谷川さんは颯爽と去っていく。しどろもどろで意味はよくわからなかったけどなんだったんだろうか……。とりあえずあまり親しいとも言えないので靴を仕舞おうとして違和感に気づいた。――何か入ってる?

 手に持っていた靴を下ろして下駄箱を覗き込む……手紙? なんで下駄箱なんかに……? 警戒しつつ靴と手紙を入れ替えるようにしまって手紙を見る。私宛なのは書いているが誰から来たのかわからない……私宛なのだから中身をみてもいいのだろうが……というよりこれは長谷川さんが入れたのか? それとも確認した時にこれを見つけたからあの態度だったのか? 

 とりあえず立ち往生していても邪魔なので鞄に入れて教室に向かう。中身は休み時間にでも確認しようか。

 

 休み時間に入り手紙の中を確認すべく教室から離れる。あの教室の人たちに見つかれば大事にされかねないので警戒しつつ開く。文面は少なく一文だけだった。

 「放課後、屋上にて持つ」

 鉛筆で書かれているその文字は何度も消された跡があった。慣れないながらも必死に書いたことが伝わるほどに。字を間違っているけれど気にならないほどに真剣に書かれていた。概ね彼女が書いたのだろう。私の勘だが間違ってはいないと思う。中身を見た手紙をポケットに入れ教室に戻る。

 高畑さんか……それにしても高畑さんの編入には驚いた。一応学園長から直に聞いていたけれど英語交じりという訳もなく住むのに不自由はなさそうだ。……不審な点は大いにあるけれど。例えば授業中や休み時間の時に視線を感じ警戒すれば彼女が見ていることが多い。私がそれに気づいて首を傾げればはっとなって視線は消える。

 私と龍宮が一緒に行動しているときに話しかけてくれるのだが言葉尻を濁されて何を伝えたいのかよくわからない。そうすると高確率で龍宮が離れてしまう。私としては初見にあんなことをしてしまったので顔を合わせ辛く、しかし非はこちらにあるので彼女の言葉を聞こうとするがお嬢様の護衛もあるので幾らか経ってから心苦しいが離れる。それは何かを伝えようとしている人に対して失礼だとわかっているけれど私の一番はお嬢様の護衛だ、心苦しいがそうしてしまう。

 最初、彼女が伝えようとしているのは龍宮相手にだと思っていたのだがそれも違うようで私にも用があったらしい。でなければ手紙なんて出す訳もない。きっと初めて会った時の事を言いたいのだろう。私としてもあれは酷いことをしたものだ。後悔先に立たずとはよく言ったものだった。弱気になるが手紙まで出してくれて行かないわけにはいかない。

 

 そうして放課後に向かってみれば高畑さんと長谷川さんが屋上にいた。高畑さんの顔色は青く、長谷川さんは教室で見かけるように面倒そうな顔だった。

 

「あの……その」

 

 吃るように話す高畑さんの背中を長谷川さんがゆっくり撫でる。励ますように「伝えたいんだろう?」と声をかける姿を見て、いつの間にそんなに仲良くなったのだろうかと感心する。

 そして高畑さんは呼吸を整えると思いっきり頭を下げた。最敬礼よりも深く下げられた頭に思わず後退る。なぜ彼女が頭を下げるんだろうか。

 

「あ、あのっ! あの時は迷惑をかけてごめんなさい」

「……? なぜ高畑さんが謝るのでしょうか、貴女に非はないはずですが……?」

「警戒させたこと、謝りたかった。タカミチにも言われた、謝りたいと願って言葉学んだ。どうしても……伝えたかった」

 

 頭を下げていて顔は見えないが後半は泣き声になっていた。長谷川さんの「すまん。少し待っててくれ」との声で高畑さんは出口に連れられて行き、しばらくして長谷川さんだけが戻ってきた。

 戻ってきた彼女から高畑さんの事を聞く。

 

「――って事なんだよ。詳しくは聞いてないんだが桜咲たちに謝りたいんだってずっと言ってたんだ」

「……たち?」

「お前と龍宮だよ。ずっと謝りたいって悩んでんだ。で、私はその協力者っつーか……まぁ迷惑だと思うが受け取ってやってくれや」

 

 面倒そうに言うが表情は真剣だった。てっきり非難されると思っていたがその逆で、逃げていた私はとても酷い事をしていたと思い知らされた。迷惑だと思う? そんなこと思うわけない。

 

「高畑さんは今どちらに?」

「ん? 何するんだ?」

「謝ってきます。それと間違いを正しに」

「間違い?」

「……彼女が謝る必要はないんです。例えそれが彼女のやりたいことだったとしても彼女は一切悪くない」

 

 悪いのは私で、龍宮もそれを勘違いして、そうして彼女が泣いた。それはおかしいんだと伝えなければいけない。

 

「終わったら聞いてもいいか? 詳しくじゃなくていいからさ」

「……わかりました」

「今頃は自宅だろうよ。これ、地図な……じゃ、あいつのこと頼んだ」

「はい!」

 

 渡された地図を確認し足早に向かう。裏面を見てみれば長谷川さんの字だろうか、【ついでに、もう一人も連れて行ってくれ】と書かれていた。なるほど、確かに。

 今の時間なら彼女は部活だろうか……あまり遅くなっても高畑さんに悪いから早く行かねば。

 

 





若いっていいなぁ……。字の間違いは若かりし私を参考にしています。


間違いって誰かに言われないと直せないんですよね。
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