覚者と世界   作:朱莉

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見知らぬ女

 

 

 しくじった。

 学園での習慣である夜の警備で私は思わず舌打ちをした。

 言い訳をいうわけでもないが鬼の一匹に隙を突かれ転倒し行動不能に陥った。

 このかお嬢様を護衛するために力をつけたのにも関わらず一方的にやられ龍宮の援護も期待できない状況に落ちやられ今の現状に至る。

 

「なんや、少しあっけないのぅ嬢ちゃん」

「うるさい」

 

 鬼にそう言われ私は悔しく唇を噛み小さく悪態を吐く。

 そして鬼は契約者のために「すまんな」と言い責務を果たそうと己の武器で私に止めを刺そうと腕を振るう。その事実に私は思わず目をつぶった。

 しかし何時までたっても衝撃がこない。

 目を開ければ目前の鬼が魔法でできた矢に穿たれ消える瞬間で、矢が飛ばされた位置であろう場所からは私より少し大きいかと思われる少女が現れた。日本語ではない言葉を私にかけながら。

 その少女の顔はわからない。体格は女性のソレであり髪型もその通りなのだが鼻から首にかけて異形の口を模したマスクを覆っているせいで顔がわからない。

 見た目少女なのだが少女の格好も怪しく、よく言えば物語に出る盗賊、悪く言えば変質者の格好だった。どのみち褒められた格好ではないのだ。

 背には異様な形の弓、腰には短剣やら長剣、そして特殊な形の矢筒。御伽噺の……それも物語の終盤で戦争にでも行くような重武装がその少女の怪しさにより一層拍車をかけていた。

 

 私の考えがわかったのかわからないが少女はマスクを慌てて下に下げ私に微笑む。

 助けた私を安心させるように伝わっていないとわかっていながらも心配そうな声をかけてくれた。

 そんな彼女が悪い人とは思えない、思えないのだが……。

 見覚えもない。鬼から私を助けてくれたのだが、私には学園からの責務がある。

 心苦しいと思いつつもその少女に私は夕凪を構え口を開く。「あなたは何者ですか?」と。

 

 というかやっておいてなんだが、日本語がわからないのか少女はあたふたしていた。どうして良いのか知れず戸惑っていた。

 そもそも日本語を喋っていない時点で日本語が通じないのに私は何をしているのだろうか。世界共通の言葉で示せば良かったのだろうか。確か……ふーあーゆー? もう少し英語を嗜んでれば良かった。今更ながら後悔した。

 

 

 そして更なる問題が起きた。いや起こしてしまったのは紛れもない私なのだが、突然の事態に私は動揺しすぎていたのだろう。

 一見してみれば私が夕凪を相手に構えながら倒れこむ、こんな現状を学園関係者が見ればその少女を敵だと言っているようなもの。助けてくれたという事実を私は自らの行動で否定している。

 これがもし、相手の手を取り言葉が通じないからとは言え話している姿だったならこんなことはなかっただろう。

 先の話に出てきた龍宮の援護が期待できないというのは今はほかの鬼と戦っているからという理由の上での話だった。

 つまりは今は鬼もおらず援護はできるということ。そしてそうなればこの現状を見た龍宮の行動は簡単なものだった。

 

 

 軽い発砲音。知っている者からすればそれは彼女の射撃音。目前の少女は聞きなれない音なのか首を傾げるが咄嗟に跳躍し後ろに引いた。

 彼女が引いたことにより龍宮の弾丸は虚空を穿つことになる。そんなことわかっていたというようにタン、タタンと連続して発砲音が鳴る。

 そしてその次弾は少女を穿とうと迫る。同じ場所から撃たれたと思えない立体的な射撃を少女は戸惑いつつも避けていた。とある一点を睨みつつ。

 

 

 

 

 私、龍宮真名は焦っていた。

 仕事仲間である桜咲刹那が負けたということよりも狙撃場所を悟られるわけにはいかないと跳弾でその不審者を撃ち続けているのにも関わらず、私を見続けている不審者に。

 一発目を避けたのはわかる。あれは威嚇を込めた一撃。中れば御の字程度。

 だがそれよりも後の次弾は別。あれは刈り取る気で放った攻撃。それすらも避けて私と視線が合う。それこそが私の焦り。

 

 見た感じ不審者はなんの力も使っているように見えない。武装こそすれそれほど驚異に思えなかったのは間違いだったか……。いや違う、私は少なからず奴を侮っていたのだろう。刹那が負けたからといえ私よりも強くはないと勝手に侮っていたのだ。

 

 私の魔眼をもってしても力を感じないのに不審者はこちらを見ていた。スコープ越しですら霞んで見える距離をなんの疑いもなくそこにいる私と視線を合わせ続けているのだ。

 口の動きを盗み見れば「Incomprehensible」だろうか。訳が解らない? そんなの私が言いたいよ。

 刹那をあそこまで追い込んで、それでいて私の攻撃を躱し続けるお前が一番訳が解らん。

 だが、その逃亡劇も終わりだと言わんばかりに私は空になったマガジンを捨て新しいマガジンを装填したその時だった。

 背にある武器(弓だろうか?)を構え矢を真上に放った。矢など構えた描写はなかったことから、矢は十中八九魔法でできた矢だろう。相手の行動の意図が掴めず私はそれを目で追った、追ってしまったのだ。

 それを真上にだ。放たれる矢を、その攻撃を目で追ってしまった私を誰が責めようか。

 

 白いその矢の正体はすぐにわかった。気付く頃には遅かった。あれは……。

 

 放たれた矢は見上げた先で軽い空砲音とともに破裂した。

 

 白いと思っていたのは強い光だ。それが空中で爆発した……そう思えるほどに強い光を出した。まるで夜が朝のように思えたほど強い光を出した。擬似太陽と思える程の光。

 夜に慣れた目が突然の光にあてられ腕で庇う。攻撃としては上等な手段だろう。

 何より姿を晦ますには充分な破壊力だった。

 

 光が消え視線を戻した時には刹那は立ち上がり、他の魔法先生から鬼が消えたという報告が殺到するレシーバー。そして最初から居なかったかの様に消えた不審者だった。

 

 後に合流した刹那から詳細を聞けば、過剰防衛だったと思い知らされたわけだが。

 

 




閃魔光ってそんな効果だったっけ? → ランタン節約に使っていたのでその応用。

言葉って大事。 → 何かのフラグ。(になるといいなぁ)

刹那ってそんなに馬鹿だったっけ? → ご都合主義()

マスク装備は愛用してました。うまく顔が作れなくて。

▽他人視点、▼主人公視点となっています。


2015/2/17 変更。刹那視点での 「空砲音」 を 「発砲音」 に変更しました。
感想にてお伝えいただきました。
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