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基本的に私は賢くない。後先考えずに突っ込んで自爆……とは行かないにしろある程度傷ついて物事を解決してきた。誰かを傷つけて結果を出してきた。夢物語のように綺麗な終わり方をしたことなんてなかった。どんなに頑張っても結局はあの剣を使って初まりに戻って……。脱線した、今それは関係ない。とりあえず私は賢くない。それはわかっている。だけどこの現状、どうすればいい?
「んぅ……むにゃ……」
来ても良いとは言った。慣れない国で知り合いの知人に縋るのもわかる。不安そうな顔で泊まっても良いかと訊かれたら私じゃなくたってきっと彼を家に入れるだろう。だからすぐさま彼用の簡単な寝具を買った。その上でわざわざ彼にベッドを譲り、私は床に布団を敷いて寝た。それで起きたらこの状態だった。私に半ば抱きつくように寝ている先生が目と鼻の先だ。戸惑わずに居られようか。何のためにベッドを譲ったと思っているのか……。いや性別的には合っていて間違いなのは私かもしれないが。それと現状は関係ないと思う。多分。
色々な経験をした私だがこの状態は初めてなのでどう反応したらいいかわからない。そもそも相手は私と違って身も心もこどもなのでなにかしようって気にもならない。が、一応異性なので礼儀とかそういうのは弁えてもらいたい。現状のまま彼をアスナたちの部屋に行かせると彼女たち(主にアスナ)の休まる時間が減るだろう。でも普段の先生を見る限りこれは無意識に近い行動だと思う、若しくは習慣だろうか。だとすれば指摘するべきなのだろうか。
なんだかんだ言って戸惑っている私に結局妙案なんて思いつく訳もなく、彼が起きるまで私は動けないままだった。
とは言え遅刻するような時間でもなかったのは大助かりだった。このまま抱きつかれて遅刻なんてしたら先生にも悪い。なによりチサメにどやされる。起きて話してみればやはり習慣だったようでひとしきり謝られた。が、きっとまたやらかしそうなので謝られても困るだけだった。あんなに自然に入り込まれたら自戒したところで効果があるとは思えなかった。
……あ、先生の朝食はどうしようか。一応買いだめや保管庫に食材はあるから足らない事は絶対にないから安心だが、好みに添えるかは別だろう。
「先生、好き嫌いある?」
「い、いえ。今のところは特にないです」
「美味しいかは別としてすぐ作る」
今のところはってことはまだよくわかってないってことかな? 十歳なら偏食しててもおかしくはないし。今ある材料も種類過多って訳じゃないし適当に二、三品作ればいいだろう。ご飯ものは好きだが炊飯器というのに使い慣れてないせいで時間が掛かる、私は基本的にパン派だからそっちなら用意もすぐに終わるだろう。なんなら私は強心薬なりなんなり飲んでその分先生のご飯に割り当てようか……いやそれだと先生一人が食事することになるか。せっかく来てくれたのにそれは忍びない。……早いとは言え考える時間も惜しいので適当にスープとサラダで済ませよう。
朝食を一緒に摂った……誰かと食事をしたのは久しぶりだった。私兵は容姿は人だがそんなもの必要なかったし、私も落ち着いて食事したのなんてあいつに会う前くらいだった。こうして食べるのも悪くない。美味しいって言ってもらえたし頑張った甲斐があるというものだ。
朝食だけ食べて「はい、さようなら」というのも酷いので一緒に登校することに。遅刻するような時間でもないのでのんびりと先生と会話する。内容は専らクラスメイトのことだった。私もまだ全員と馴染めているわけではないので偏った情報になるけれど、私の印象含めて先生に話した。セツナとマナに関しては私から言う必要もないだろうから少し濁したけれど。途中、先生が「どこまで知っているんですか?」といった疑問をぶつけられたのでこっちの魔法関係は知らないと正直に答えた。ニュアンス的に合っているだろう。最初に馴染めてないって言っているし間違いないだろう。そしてこれは言わないといけない。
「先生」
「はい、なんでしょうか?」
「私は先生の味方、だけどマスターは敵」
「ますたー?」
「だからもしかしたら敵対するかもしれない。そうなったらごめん」
「あのっ、それってどういう――」
「あーっ!! 一緒に登校するなんてゆっきーずるぅーい!」
「おはようございますフウカ。部屋割りが定まってないらしいので仕方なく」
「おはようございますーユキさん、ネギ先生」
「フミカもおはようございます。先生、もしもまた困ったら気軽にどうぞ」
「わ、わかりました」
一方的ではあるが一応伝えた。マスターの名前も教えてないしエヴァの楽しみを奪ったりもしてないだろう。
先生は戦闘に関しては素人なのだろうか? いや年齢のことを考えればエヴァに勝てる見込みなどありはしないがタカミチが言うには英雄の息子だから普通のこどもよりは出来るだろう。エヴァの方がやり手なのは確かだが、現状の彼女は弱体化している。あれ程の魔法使いが
その私の見立てが正しければ戦闘力の善し悪し関係なく先生にも一応勝機はあるだろう。でももし、もしも万が一、先生やエヴァどちらかが過剰な攻撃をした場合にだけ私は出張るとしよう。エヴァがもしそれをやったら大人げないと言葉責めもやむを得ないが。……先生は色々と拙いようだし要注意するべきか。深く考えていると肩を軽く叩かれそちらに顔を向ける。
「ユキ、お前さ、なんでお前あの先生と一緒に登校してんだ?」
「おはようチサメ。先生の部屋割りが決まってなかったらしくて」
「おはようさん。でよ、担任になるっての急に決まったわけじゃないんだろ? なのにか?」
「学園長が見逃してたとか」
「だとしても女子の部屋に行かせるか?」
「最初はコノカたちと同室だったらしいからそれよりはいいと思う」
「あぁ、確かにそれよりはいいな。お前一人部屋だし」
「そうだね」
「……なぁ、無理をする前にちゃんと言えよ」
「努力する」
「はぁー……前向きな言葉が返ってきただけ良しとするかぁ。じゃまた休み時間に」
「わかった」
前向きに答えてしまったけれどこちら側ではないチサメに本当のことを告げて彼女は信じてくれるだろうか。案外、なんでもっと早く言ってくれなかったのだと叱られそうだと思うのは私の妄想だろうか。……いずれにせよ現状話すのは危険な気がする。
もしも、彼女の身が危うくなれば完全武装で護りに入ろう。竜の心臓を使ってでも。
「高畑さん。災難でしたね」
「先生と寝泊まりしたんだね。どうだった?」
「セツナ、マナ、おはよう。先生は年相応だった。まだ習慣が抜けてないみたい」
「習慣なんて直ぐに変わることでもないですからね。私も大変でしたし……そういえば先生の部屋が最初、お嬢様の部屋だと聞いたのですが……」
「学園長の指示」
「……学園長……お嬢様と、こどもとは言え異性と同室にするとは……」
「何か企んでいそうだね」
「やっぱりそう思う?」
「お嬢様はとてもお優しい……先生の困った顔を見たら直ぐに協力するでしょうね」
「それを見越して?」
「そんな……まさか……」
そうセツナが呟くと「……だとしたら」と深く考察し始めた。途中マナがおーいと声を掛けるがまったく意に介さなかった。コノカの事となるとよくあるってマナが教えてくれた。
ふと、先生の方に顔を向ければアヤカがネギ先生に詰め寄っていた。早口なのでなかなか聞き取れないがニュアンス的には困っているなら私を頼ってほしい。だろうか? 普通の先生なら大丈夫(そもそもこども先生の時点で普通ではない)だが事が事なだけにそれもうまくいかない。先生的には断れない性格のようなので前向きな言葉をかけていた。その頃には魔法のことをうまく隠せれてるといいんだけど……。
「おい、話がある。休み時間に来い」
「ん、わかった」
さて、とうとうマスターに呼ばれたけれど一体何の用だろうか?
お久しぶりです。お仕事変えたら暇がなくて焦りました。
もう少しPC触れる頻度が上がればいいのだけれど……。
結局先生は初日に主人公のお宅に泊まることに。それもこれもタカミチの出席簿のせいなんや……。
ドグマオンライン気になるけれど触る暇がない。
誤字などは後日確認しますー。