決意が満ちた。
謝れたことによりそれ以降、大分素直になったユキを隣に自分じゃ珍しいくらいに仲良く下校する。
話の内容は専ら停電についてである。そこから枝分かれするように普段の私生活についてで、やっぱりユキはパン派だそうだ。ご飯は嫌いじゃないにしても準備に時間がかかるから苦手だそうな。少食らしくリンゴをまるごとかじったり、ブドウでジュースを作ったりが主らしいってな。
自炊するのかと訊ねれば割りとするんだと。場所によっちゃ飯マズで有名な場所もあるから少し気になってたんだよな。食堂のと比べてるもんだから言わないだけでって、そりゃ普通だろうと突っ込みを入れた私は悪くない。悪乗りと思いつつも弁当を頼めば二つ返事でOK貰えて吃驚した。自分以外に食べさせるのは懐かしいからと言ったときのあいつの顔を見つめる程度には。
頭で考える前に誰にと訊いてた私には引いた。幼馴染みの同性と聞いて脱力した自分にもうドン引きした。朝倉じゃねぇんだから踏み込みすぎである。もしも異性だったらどうなってたんだか……。深く思考が沈みかけると唐突にユキが「あっ」と思い付いた様に声を出した。
「チサメは嫌いなものある?」
「食べ物に関しては特にはない。が、何を作る気なんだよ」
「パンが多いから、コンビニで食べたサンドウィッチを真似したいと」
「あー、それなら心配もないな」
「辛いの平気?」
「人並み。具になんか入れんの?」
「具じゃないけどカラシを少し」
「カラシ? なんでまた」
「薄く伸ばして具を固定するの。マヨネーズも混ぜるからそんなに変な味にはならないしパンも持ちやすくなる。筈」
筈とか付けるもんだから不安になるのはしょうがないわな。大丈夫かと目で訴えれば合っていたはずの視線は横にずれていく。本気で不安になるから止めろよ!?
「前に家電を揃えたときに調べた。けどお店のよりは美味しくないから」
「またそれか! それはもう気にするなっての。一旦置いてろって」
「……オープンやサブマリンも良い、でも運びにくいから普通でいい?」
「オープンとかサブマリンとかはよくわからんが任せる」
「わかった。量は?」
「コンビニのやつで考えると三つ位あれば足りると思う。余ったらエヴァンジェリンやらにでも分ければいいんじゃね?」
「……! そうだね。そうする」
余計なこと言った気がするので鞄に入る量にしろと歯止めをかけといた。私自身大人数で食べるの苦手なのもあるしな。お祭り騒ぎのあいつらとは壁を作っておきたい、切実にだ。一度輪に入ったら休みの日すらお祭り状態は確定だろう。休みの日まであいつらのテンションにのまれるのはごめんだ。……ん? 休み?
「そういや、ユキは休みの日なにしてんだ?」
「んー」
「食品サンプルでも練り歩いてんのか?」
「それ初めましての時だ。お店巡りは確かに好き。知らないもの多い。見るの楽しい。道具集めも楽しい」
「まぁここは大抵揃うし、店も多いからなぁ」
「チャオお店開いてた。驚いた! すっごい」
興奮してるのか喋り方が可笑しいのはご愛嬌ってやつだな。帰り道にある売店に並んでるサンプルにもよく止まって眺めるからほんとに好きなんだろう。超の店はクラスでも人気だと伝えたら絶対に行くと息巻いてたが、食べてまた意気消沈しないといいんだがな。
その後も私にしては珍しく話に花を咲かせユキの部屋に。歓迎会は確かに参加したが生活感が増えて寝具が増えていた。あぁそういや先生泊めたんだったな。
家具の類いも前より増えてた。ボタンの数が少ないのは全部に共通してたけど。ボタンというか機能増えると使い難いんだと。炊飯器もそれがネックであまり手が出せてないっぽいな。老婆心ながらもそれでパン作れるぞと言ったら目を見開いて驚いてたな。ま、それはおいおいだ。今は目的を果たそう。
「メモの準備できた」
「じゃ、ヤバめなのからな」
「お願い」
最近買い込んだって言ってたから警戒しつつ冷蔵庫を開くが案外余裕だった。でもユキの冷蔵庫は一人暮らし向けの安いタイプで冷凍物は危険信号なのは変わらなそうだな。クーラーボックスである程度は緩和できるだろうけどでっかいのはちと無理臭い。
最初に考えていた通り、アイスを処理することに。掬う道具やらも買い込んでいたようで見てはいないが一通り揃ってるんだろう。普段何に使うかわからない道具の類いが。取り分けて対面に座りそろそろ良いだろうと口を開く。宛がない訳じゃないんだよな、怪しいのは多いから。
「で、悩んでたのは危ない話ってのか?」
「うっ……そう」
「そうかー……それってよ、ネギ先生関連か? それともマクダウェル?」
「……」
「やっぱ言えないよなぁ。アイス減らそ──」
「チサメ、これ」
進まない会話をしても意味無いかと冷凍庫にてを伸ばそうとしたが慌ててユキに向き直す。これと言われて山なりに放り渡されたのを両手で掴む。掴んだものを見てみれば掌大の宝石だった。
「なんだこりゃ」
「危ない目に遭ったら、ここを考えて軽く上に投げて」
「は」
「少しだけ言う」
「……わかった」
「内密に処理。バレると危険。知れば戻れない。弱さは死」
物騒な言葉だった。もしかしたらさほど危なくないと気軽に思ってた。ゲームで普段耳にするが、何て言うのか……重みが段違いだった。
「私は、守れるか不安。貴女を、関係を」
「……だから言えないのか」
「その勇気がない。考え過ぎとエヴァに笑われた」
「うちのクラスは考えなさすぎなんだ。お前は変わらなくていいと思うぞ」
「ごめん」
「謝んなって。私が軽視し過ぎたせいだろ。謝るのは私のほうだって、ごめんな」
「そんなことない」
口を開く事に気が沈んで行くのが目に見えるようだ。視線はかち合っているが実際に肩は下がり、先程から唇を噛み締めていた。
「なぁ」
「……なに」
「もしもさ、もしも私が巻き込まれてさ、その一端を知って危なくなったら──」
「守る。絶対に」
「相手を害してでも、私が死んでも」
「絶対に助ける。嫌われても、あいつに頼ってでも絶対に」
覚悟が足りなかったのが痛いほど解った。死んだら守れないと茶化す気にはならないほど念が籠っていた。そうなったら頼る、だから言えないのは全部言わなくていい。そう答える前に体が動いた。抱き締める形になったが顔を見ないで話せるのは少し楽だと思えた。顔色を伺わなくて良いのは本当に気軽だから。
「悪い」
「……?」
「変なこと聞いた。それから、もしもの話でも真剣に答えてくれてありがとうな。でも私は守られるだけじゃ嫌だ。せっかく知り合えた、友達になれた。何かしたいと思ったんだ。困らせただけかもだが」
「そんなことない。言うのは怖いけど、言いたくない訳じゃない。それは伝えたい」
「あぁ、伝わった。何かあればお前を頼る。桜咲たちにも頼る。それでいいか」
「エヴァも頼りになる」
「頼らせてもらうさ」
あやすように回した手で背中を撫でる。恥ずかしいのかユキは逃げようとするがその場合はガッチリと抱き締める。こっちが隠してることは些細なことだがもはや吹っ切れた。
「なぁ、今度私の趣味に協力してくれないか。停電終わってからでいいから」
「……趣味?」
「そ。悪いようにはしないから」
「良いけど。私に出来る?」
「出来なきゃ言わないさ。それと」
「それと?」
「いつか、許可でももらって、お前のしてること、お前のこと、お前の悩んでること話してほしい。嫌わない、嫌いにならないから。口で言うのは確かに信用できないかもだが、話したいって思ったときでいい。認めてくれてからでいい」
「うん。わかった」
名残惜しいからゆっくりと体を離す。目線を合わせて告げる。
「じゃ、この話は一旦終わりだ。長く続けて悪かった。アイス、処理しようぜ」
「お願いします」
「任された!」
いつか、いつか心のそこから支えたいと、そう思った。危なくても、死にかけても、それでも。
畜生ッどう足掻いてもちうちゃん視点だと真面目路線に変更される‼
結界の効きにくさにより話がこじれる。アスナ相手だと3000文字ほどの内容が会話三行で終わるんだろうなぁ……。
百合は容量用法正しく守ってお使いください。百合成分を学ぶ教材は無いものか……。
今頃のエヴァちゃん。
準備をするのに無理をして風邪引きかけ。体の怠さを本人は寝不足程度に思っている。