101.調印式
さて、夏季休暇も終わり、幾日。
ポストモーテムは終わったが、まあ起きてた内容について触れておこうか。
色々と並行して起きているのだが、羅列するのならば「セイア爆破事件の考証」「シスターフッドの行動指針変化」「アズサの事情聴取」「ナギサの謝罪面会」かね。
「セイア爆破事件」だが、『セイアが午前3時ごろ爆破され、ヘイローを破壊され死亡』、『ミネが発見したのちセイアの遺体とともに失踪』『現在は昏睡状態』という経緯だ。
まあこのうちヘイローを破壊され死亡、というのは完全なるフェイクだったわけだが……学園最高権力の一人であるミカが犯人だったのだから、ミネの判断は正解だったということだ。
そして現在昏睡状態なのは……まあ言わずともわかると思うが普通に彼女が起きてこないだけ、完全に夢の中で覚醒はしているからね。
シスターフッドの行動指針変化については、彼女たちが無干渉主義をやめ政治に関与していくということ。
その過程でハナコが力を貸すことになるらしいがそれは彼女の問題だ。
アズサの事情聴取ではアリウスの存在とスクワッドが明らかになる……というもの。
ナギサの謝罪面会はその名の通り関係者一人一人に謝罪したものだ。
そういえば彼女は無事に先生に謝れたのかね?
そういえばミカにも会いに行ったらしいがこっぴどく言われて帰ってきたのだったか……
この事件は「人と人は分かり合えるのか」が主題だからね、まだまだ途上な今ではわかりあうのは無理な話だろう……
まあそんなこんなあったが……もうすぐエデン条約の調印式が始まる。
始まるぞ、激動の時代が。
***
『今この動画をご覧の皆さん、こんにちは!クロノススクール報道部のアイドルレポーター、川流シノンです!』
『本日はついに締結される、ゲヘナ学園とトリニティ総合学園の「エデン条約」の調印式。その現場に来ております!』
『私は今、「通功の古聖堂」の前にいるのですが……すでに現場には熱がこもっており、互いに譲らまいと張り詰めた空気になっております!』
『誰かが一歩間違えば、この場が大惨事になりそうなほどの雰囲気です!感じられますでしょうかこの空気感!犬猿の仲とでも言いましょうか、呉越同舟と言いましょうか!私たちの良く知るトリニティとゲヘナの様相です!』
『……はい?余計なことを言うな?早く進めろ?仕方ないですね、今日も画面外から飛んでくる言葉が拳に変わる前に、ちゃっちゃとお話を進めていきましょう!』
先生と隣でニュースの動画を流しつつ、俺は呆れた様子で調印式の様相を見ていた。
「あれだけ敵対心丸出しで上手くいくのかね」
“きっと上手くいくよ”
今回の私はただの見物客だ、ちょっと先生を見かけたから近くに来ただけでね。
あ、イズとヒトミはあんまり関係ないから適当にどこか散歩してるか何かしてるはずだ。
ちなみにここ『通功の大聖堂』はゲヘナのトップである羽沼マコトからの指定だ。
ここは『第一回公会議』行われた因縁の地でもある。
そしてここは最近まで廃墟であり、今回調印式に当たって大々的に改装したのだが……まだ地下は手をつけられていないらしい。
聞くところによるとカタコンベがあるらしいぞ?
まあお察しの通り十中八九企みがあるのだが別に私は無関係だし気にしない……むしろこの後の演出を考えているくらいさ。
さて、エデン条約が締結されるとどうなるか。
ゲヘナとトリニティは『
これは互いの間のトラブルを協力して解決しよう!ということになるんだが……まあ、問題起こすのは大体ゲヘナ、つまり向こうはあんまり得しないんだよな。
さて、ニュースを見ているうちに先生は適当に散歩に行こうとしているし……俺も仕込みをしつつ先生についていくか。
***
『おっと、噂をすれば影!ゲヘナの万魔殿が、新型飛行船に乗ってやってきたようです!』
『ゲヘナ学園の議長、すなわち生徒会長の羽沼マコトです!さすがと言いますか、ものすごいカリスマです!多分!あれがゲヘナの生徒会長としての威厳!』
『そしてトリニティ総合学園におけるティーパーティーのホスト、桐藤ナギサも古聖堂に到着したようです!両学園の主要人物が、次々と集まってきています!』
『そろそろゲヘナの風紀委員長も到着とのことで、周囲の雰囲気はますますヒートアップする一方!皆さん、引き続きこの様子をご覧くださ────ブツッ』
「……準備は?」
「……問題なし」
「は、はい、終わりました、チェックできてますし、色々と確認も……」
ニュースを消し周囲の少女たちに問いかけたのは、アリウススクワッドのリーダー、サオリだった。
「あの人形との接触は?」
サオリの問いかけにアツコが手話で返せば、サオリはわかったかのように頷いた。
「……なら問題なさそうだな。
「……監視からの報告だとあの古聖堂にいるって」
「……好都合だ。これで全ては整った」
サオリは拳を握り締め、静かに決意を固める。
「こ、これから辛いことになっていくんですね、みんな苦しむんですね……ですが、仕方ありません」
「……そう、それがこの世界の真実」
「……」
「そうだ。この世界の真実を、奴らに知らしめる」
サオリは静かに銃を取り出し、無線機をつけて声を出した。
「アリウススクワッド、作戦開始」
ついに、時代が動き出す。
***
「……っ!?」
「アズサちゃん、どこに────えっ?」
補習授業部の卒業パーティーをしていたカフェの中。
急に立ち上がり駆け出したアズサに驚いたヒフミが次に見たのは、蒼い空と────
***
「そろそろトリニティですね……委員長」
「はぁ……そうね────?」
古聖堂へと向かう、ゲヘナ学園風紀委員会の車。
そこから空を見上げていたヒナの目に映ったのは、何か白い────
***
「キヒヒヒヒ……っ……?」
古聖堂にて警護を行っていた正義実行委員会。
その委員長、ツルギは悪寒がし咄嗟に外を見た。
彼女が認識したそれは────
***
「……なに?」
“どうしたの、カオリ”
「いかん────
古聖堂の中、先生について回っていたカオリ。
彼女が血相を変え、それを先生が認識する前に、彼女は先生へと
その、直後────
***
ヒュオォォォォォオオオン!
アズサが外に出て最初に耳にしたのは、何かを切り裂くような爆音。
(まだ、終わっていなかった……?いや、これから始まる?サオリ、まさか──)
空から鳴り響くそれに釣られて、アズサが見上げれば、そこにあったのは──
天を裂くかのように飛来する、
ドカアアァァァァァン!!