万魔殿到着が11:40なのにそのすぐ後に落としたミサイルの被害映像がサオリのスマホでは15時なんですよね。万魔殿お散歩してた?
とある、地下。
調印式が焔に包まれた、その時。
「……っ!目が……!?」
「……やあ、おはよう」
***
15:00 :通功の古聖堂近辺
「アコっ!!伏せてっ!!」
「えっ!?」
空崎ヒナは、飛翔する二本のミサイルを認識した瞬間、叫びながら
同時に開かれるのは、その背の悪魔の翼。
一発目のミサイルが、古聖堂へと着弾する。
直後、衝撃波となった音と共に爆炎がヒナへと襲いかかった。
「はぁっ!!」
その衝撃波を、ヒナは勢いよく身体を回転させ、翼を伴った回転蹴りにより、パリィの要領で
「きゃっ!?」
車から聞こえてくるアコの悲鳴を耳に入れず、続けて襲いかかってくる爆炎……そしてその先へ向けて彼女は既に自身の武器を向けていた。
愛銃である『終幕:デストロイヤー』から、眩い紫光が放たれる。
カァーオ!!
ヒナが放った全力の一撃が、爆炎に穴を開け空へと昇る。
それは今まさに
ドカアアァァァァァン!!
調印式会場の上空で、凄まじい爆発が起こる。
激しい爆風と熱が地上を襲うが、それでも限界まで被害は抑え込まれていた。
やがて静まった時、そこにいたのはただ一人。
ゲヘナ最強、空崎ヒナその人だった。
(襲撃……被害状況確認。周囲は瓦礫、恐らく無事なのは一握り……)
(飛んできたのは恐らく巡航ミサイル、それも対空防御システムが迎撃できないほどの速さで……出遅れて一発目を抑えられなかった……)
本来であれば一発目を防ぐことすら不可能、しかし彼女にとってそれは知り得ない。
ここ
(ラムジェットエンジン……それだけの技術を持っているところは……いや、それだけでこれだけの被害にはならない、恐らく古聖堂にも初めから爆薬が仕込まれていた)
(シスターフッド、トリニティ……いや、自分たちを巻き込むようなことはしない筈。だとしたら……ミレニアム……動機がない。だとしたら誰……?)
(……いや、今はいい)
この間、約1秒。
その1秒で、ヒナは次の手立てを考えていた。
「アコ!無事な風紀委員を集めて救出作業!私は先生の救出に行く!襲撃は適宜対応!」
「は、はい!」
ヒナがそう言って駆け出そうとした時、目の前に複数の生徒が立ち塞がった。
その中の一人、水色髪の生徒が声を上げる。
「ひ、ヒナさん……無傷なんですけど……」
声を振るわせ、信じられないといった顔をするヒヨリが、無線機に手を添えながら話している。
「ど、どうしましょう……あれで無傷なんて……すごいですねぇ……強すぎますねぇ……」
『………………どうしようもない。ヒナだけは通すな』
「は、はい…………そういうことみたいでして……あの、すみませんねぇ……えへへ……痛くしないでくださいねぇ……」
どう考えても無理だという顔をしながらも、彼女はヒナへと銃口を向ける。
それと同時に、彼女の周囲にいたガスマスクの少女たちも、ヒナを囲むように展開した。
「アリウス分校……なるほど。
「やっぱり……辛いことばかりですねぇ…………」
ゲヘナ、否、キヴォトス最強。
風紀委員長、空崎ヒナ、行動開始。
***
15:03 :通功の古聖堂上空
「キキキキキッ!成功だ!これぞ計画通りっ!キヒャヒャヒャヒャッ!」
「マコト先輩、一体何を?」
羽沼マコト。
ゲヘナ学園の生徒会、
彼女は現在、ゲヘナ学園で手配した新型飛行線に乗り、ミサイルの被害を観察していた。
「これで邪魔者は全て消えた!ティーパーティーも、あの目障りだったヒナも!分かるかイロハ、これぞ、一石二鳥ってやつだよ」
イロハ、と呼ばれた赤毛の少女にそう自慢しながら、彼女は有頂天になっていく。
「何を隠そうこのマコト様は、トリニティを恨んでいるアリウスと前々から結託していたのさ!ティーパーティーの内紛も、クーデターも、私は最初から知っていた。全ては今日の計画のために!」
「クーデター?いつの間にそんなことを……つまり先輩は、最初からエデン条約を結ぶ気はなかったと?」
「ああ、そんなことこれっぽっちも興味ないね!私の関心はずっと、邪魔者どもを片付けることだけ!いつまで経っても姿を現さないティーパーティーの奴らを誘き出すため、あくまでそのために条約へ同意するフリをしていたのさ。そのついでにヒナまで片付いた、こんなラッキーなことはない、キキキッ!なぜミサイルの二発目が空中で爆破したかは知らんがな!」
マコトはまだ、ヒナが完璧に無傷など知りようもない。
なんかうっっっっすらと嫌な予感がしたような気がしたが、あれで無事なわけがないと決めつけていた。
「そのためにアリウスは多大なサポートをしてくれた。この飛行船だって私たちの友好の証としての贈り物……敵の敵は味方ということだよ、キキキキキッ!」
高笑いしたマコトは余韻を楽しんだ後、目を細めイロハに指示を出す。
「……さあ、アリウスに連絡を。本格的にトリニティの殲滅戦を始めようじゃないか。ヒナにナギサ、私の邪魔者はもう誰もいない!今こそトリニティを、キヴォトスの地図から消し去る時だ!」
しかし、それを受けたイロハはため息をつく。
そして呆れたように彼女は口を開いた。
「あの、マコト先輩。そのアリウスが下手したらトリニティ以上に憎んでるのが、私たちゲヘナなんですよ。どうして私たちと手を組むと思ったんですか?」
「…………」
「何ぃっ!?」
「ねえねえ、このたくさん置いてある箱って何?『取扱注意』『可燃性』って書いてあるけど……」
船内の端で遊んでいた金髪の幼い少女、イブキが声を上げる。
それを聞いて諦めたような顔をしたイロハが、手に持っていた本を閉じた。
「まぁ、つまりは……またマコト先輩が騙された、と……」
カッ
ドカアアァァァァァン!!
***
15:05 :通功の古聖堂近辺
通功の古聖堂、その近辺にある建設中のビルのクレーンの上にて。
炎上爆発する飛行船を見ながら、サオリは無線機へと手を当てた。
「チームⅡ、報告を」
『こちらチームⅡっ……現在、古聖堂で
「……なんだと?」
無線機から聞こえてくるのは、凄まじい轟音と、身の毛もよだつような悍ましい笑い声。
こうも思い通りにいかないものか、とサオリは歯を噛み締める。
そこに、割り込みで無線が入ってきた。
『ち、チームⅢ……ヒナさんに一蹴されました……』
「くっ……どうなっている……!!すぐにチームⅡに合流しろ、私も向かう!」
『りょ、了解です……』
荒げた息を整えるため、彼女はマスクを取り深呼吸をする。
そして、目を細め……その瞳の奥にある憎悪の炎を、激しく燃え上がらせた。
「トリニティ、そしてゲヘナよ……これまでの長きに渡る我らの憎悪、その負債を払ってもらう……!!我々アリウスが楽園の名の下に貴様らを審判してやるのだから……!!」
***
……
…………ぃ!
……………………先生!
「先生!目を覚ましてください!」
“……っ、アロナ……?”
倒れていた身体を起こす。
どうやら私は、並べられた机の上に寝かされていたらしい。
……というか、なぜ『シッテムの箱』の中に?
「先生、大丈夫ですか!?気を確かに……!」
“一体何が……”
「古聖堂が爆破されて、なんとか先生は守れたのですが……」
「もう、これ以上は力が限界で……なんとか、逃げて……」
“っ、アロナ、アロナ!?”
私の呼びかけを最後に、意識が現実へと引き戻される。
その視界に最初に入ったのは、燃える瓦礫の山と……目の前を歩く、
(“今のは……!”)
そう思ったところで、思い出した。
たしか、爆発の前……カオリに、覆い被さられて……!
“カオリ!”
咄嗟に振り向いた。
私は、瓦礫に造られた隙間に
振り向いた場所には。
下半身が潰され、上半身だけが確認できる状態のカオリがいた。