ご容赦くださいな
私は!演出が派手な方が!!好き!!!!
アズサさんとサオリさんが激突するのを尻目に、私は千景を収納します。
流石に四方八方を囲まれた状態は私でも面倒が勝ちますから、少し楽をしましょうか……
「さて、貴女方はどこまで私を追い詰められるでしょうか」
落葉を取り出し、柄から刃を引き抜き二刀に。
手数は多い方がいいですからね。
「っ、撃て!」
ミサキさんの号令と同時に銃弾の雨霰が降り注ぎますが、水銀弾を使っているわけでもないですし障害になるものは叩き切って他は無視。
そうそう、この銃弾斬りを出来るようになるまではかなり時間がかかりましたね……実戦で使う機会ができてよかったです。
並行世界の、アシナ?という土地のシノビ?とやらの剣捌きが出来るようになるまでかなり苦労しましたからね……
「っ、早く仕留めないと……各学園の予備戦力が来る」
「チッ……!仕留め切るには時間が足りないか……!?」
どうやらサオリさんはアズサさんを制圧したみたいですね。
まあアズサさんの戦い方はゲリラ的なものが向いています、正面きっての戦いは経験不足も相まってサオリさんには敵わないでしょう。
「ぐっ……ヒトミっ……」
「ビルゲンワースに誑かされ、堕ちるところまで堕ちたか……やはり貴様らは、存在自体が許されないものだ」
「過激派って恐ろしいですね……存在を否定されるなど早々ありませんよ、生まれるべきではなかった……というのはヤーナムで何度目かに言われたこともありますが」
はあ、なんだか相手をしているのが面倒ですね……復讐に取り憑かれて視野狭窄となった暴徒の相手をするなど私の役割ではない筈なのですが……
早くカオリさんとお茶したいので帰りたい……と、おや、これは……
ヒュルルルルルルル……
ドカァァァン!!
ティーパーティー傘下の砲撃部隊と、風紀委員会の予備部隊ですか、ちょうどいいところに爆撃してくれました。
土煙が舞って周りが見えないうちに退散してしまいましょう、アズサさんも無事に逃げ出したようですし。
しかし、アズサさんはあのペロロ様?とかいうののぬいぐるみは置いていってよかったのでしょうかね?
まあ、気にしないでおきましょうか。
***
「アコ、状況は」
『トリニティ側から、襲撃はゲヘナのものだという勘違いをされていて現在攻撃を受けています!こちら側は防衛陣地を形成し、救助者を回収しつつトリニティの攻撃を凌いでいるところです……!』
「わかった。トリニティ側へ攻撃禁止、青白い生徒とアリウス分校が敵よ。トリニティ側へは先生と正義実現委員会から話を通してもらう、それまで凌いで」
『はい!』
救急車内にて、ヒナ、ハスミ、先生の三人は状況把握に努め、それぞれがこの混乱を収めようとしていた。
「イチカ、今回の騒動はゲヘナによるものではありません。正義実現委員会はゲヘナとの戦闘停止、負傷者の救助と治安維持を優先してください……え?ツルギが既に到着して指揮をとり始めている?わかりました、ではそちらに従うように……」
“なんとかなりそうだね……問題はティーパーティーかな”
「ティーパーティーは正義実現委員会の上位組織、過激派が暴走すれば私たちでは止められませんから……」
はあ、とため息をつくハスミに、ヒナは同情したような目を向ける。
「……どこも、上に振り回されるのは同じね」
「同情されたくはありませんが……そうですね……」
ちょうどその時、救急車が止まる。
どうやらゲートに差し掛かり、それが閉められていたために停止させられたようだった。
「ゲヘナの救急車がなぜここに……!」
「今の状況わかってるの!?」
混乱の中、トリニティとゲヘナの軋轢によって責められるセナ。
しかしその背後から、先生たちが声をかける。
“ごめん、通してもらえないかな”
「先生!?」
先生が現れたことで、そしてその後ろからハスミが現れたことで混乱が生じるも、説明を通し無事に納得してもらうことに成功する。
“……〜〜ってことでね、通してもらえないかな”
「わ、わかりました、どうぞ……!」
「今回はゲヘナも被害者です、彼女たちを責めるのは控えてください」
「は、はい……」
無事に門を抜け、現在指示を出す中枢となっている場所へ急ぐ。
ハスミとヒナタのおかげで連絡を受けることができ、すぐに到達することができた。
部屋に入れば、そこにいたのはシスターフッドの行政官と……ハナコだった。
「先生!ご無事だったんですね……!それにハスミさんと、ヒナタさん……それにヒナさん……!?」
「気にしないで、私はすぐにゲヘナ側の対応に回るから……外にセナも残しているし。今回の件に関して、ミサイルの発射はゲヘナ側からではないと…………言えるわ、
「そうですか……」
ヒナの言葉を聞き、瞬時に脳内の仮定や作戦を練り直すハナコ。
シスターフッドの解析によると、ミサイルはラムジェットエンジンではないらしく、それ以外を発明する技術力は……
“今回の主犯はアリウス分校。今私たちと戦っているのはユスティナ聖徒会だよ”
「……!!となると……ユスティナ聖徒会、エデン条約、あの襲撃、アリウススクワッド、第一回公会議、古聖堂、発射地点とタイミング、カタコンベ、アミューズパークの怪談、アリウス自治区の位置、戒律の守護者、エデン条約、『エデン』……!!っ、これを解決する方法は……先生……」
“どうしたの?”
ハナコは少ないヒントと先生、ヒナの会話からその全てを導き出し──真実に至る。
その瞬間、ハナコの目から光が消える。
そして、震える口を、ゆっくりと開いた。
「これを解決する方法は……
“……”
「トリニティとゲヘナの同士討ちこそ避けられましたが……このままでは、トリニティとゲヘナは本当にキヴォトスの地図から消えるでしょう。かつて、『第一回公会議』の後、アリウスがそうなったように」
会議室となった室内から、音が消えた。
それは、天才、浦和ハナコの導き出した結論。
エデン条約への介入と不可思議で超常的な力の前に、なす術などない……そういう結論。
だが──
「待ちたまえ。まだ、打つ手はあるかもしれないよ」
──それに待ったをかけるべく、到着した人物が一人。
その人物を視認したトリニティの生徒たちは、皆、目を見開いた。
長い金髪に、尖った狐耳。
白い制服は袖を余らせているが、紛れもなくティーパーティーのもの。
そしてそのティーパーティーの中で、最も権力を持つ3人が1人。
「────セイア、ちゃん…………!?」
ティーパーティー、百合園セイア、帰還。
***
同時刻、古聖堂爆心地付近。
「いたい……助けて……」
風紀委員会や正義実現委員会の救助活動は行われていたが、巻き込まれた生徒の数はかなり多く、救助に対して人手が足りていなかった。
後から参加した救護騎士団やトリニティの自警団も、それは同様であり……今この瞬間にも、救助を求めつつも助けられていない生徒たちがいた。
いまここには、瓦礫に挟まれ身動きが取れない生徒がいた。
だが、そこに────救いの手が、与えられる。
「救護!!」
「……え……?あ、あなたは……!?」
重い瓦礫を退かして現れたのは、青い翼と髪をもつ一人の生徒。
それはずっと、行方不明だったはずの人物。
「無事ですか!」
「は、はいっ!ミネ団長!!」
救護騎士団団長、蒼森ミネ、帰還。
さらに──金色の少女もまた、彼女についてきていた。
「イズさんはあちらをお願いします!」
「わかりました!」
ビルゲンワース啓蒙学院一年、イズ・ガスコイン。
ミネがセイアを連れてトリニティへと帰還する途中で偶然出会い、ミネを手伝うために彼女もまたついてきていた。
「救護開始!」
ミネ、イズ、そして風紀委員会や正義実現委員会といった面々の活躍により、これより6時間以内に負傷者の全救助が完了することとなる。
***
「先生、君はキヴォトスの外側からきたものであり大人だ。となれば、契約、取引……そういった『約束』の持つ重要性について、よく知っていることだろう。単純な紙切れ、或いは口約束に過ぎないとしても……『約束』というのは、時に何かを強く拘束し、定義付けることもある。契約、戒律、約束……こういったものは、キヴォトスにおいても重要な概念だ」
セイアは先生へとそう語りかける。
宇宙色の瞳は先生の心を騒めかせるが、今は彼女の話を聞くのが先だった。
「例えばトリニティの経典には太古の始まりの『神性』、そしてそれとの間に締結された10の或命が描かれている。その他にも、私たちは原初において『約束』を破ったから楽園を追放されたのだ……そのようなことも書き伝えられている」
「思い出してほしい。『ゲマトリア』はアビドスの生徒に何かを強いることはできず、ただ『契約』を要求していた。そしてその契約が成立しないとなれば、ゲマトリアは退くしかなかったことを」
“……ゲマトリア……なんで、君がそのことを……”
先生が思い出すのは、アビドスにいたゲマトリア……黒服。
彼はアビドスでブラックギリギリのグレーな契約を様々な手法で通し、カイザーと結託してアビドス高校を……ひいては、小鳥遊ホシノを追い詰めていた。
「『エデン条約』、これがただの学園間での約束であるのは明らかだ。しかしこの条約が行われる『特別な場所』、そして条約締結のために集まった代表者たちの資格といった要素により、これはより大きな意味を持つ『約束』となった」
「今回の調印式は、歪曲されつつも『公会議』の再現となっている。そしてその約束である『戒律』を守護するユスティナ聖徒会を、特殊な方法で『
「これがゲマトリアの言う、『大人のやり方』……実に汚いね。まあ……まとめると、アリウスの裏にはゲマトリアがいて、アリウスは倒れることも死ぬことも無い強大な軍隊を手に入れた……ということだね。私たちがかつて追放された楽園……『エデン』、その名を冠する条約のもとに」
そこまで語りきると、セイアは先生とハナコを見つめた。
ハナコはセイアのその瞳が変質していることにも、気配が変わっていることにも気がつくが、あえてそれには触れない……まだ、その時ではない。
「ハナコ、確かにこれは君では……いや、生徒では解決できないだろう。だがしかし、ここには先生がいる。『大人のやり方』には、『大人のやり方』で返す……そうだろう?先生」
“うん、そうだね”
先生は頷き、その様子に皆が安堵する。
そして、ハナコに向き直った。
“ハナコ、今はこの問題は解決できないかもしれない。だけど、必ずどうにかする方法があるはずだ。だからこそ、今できることを精一杯やろう……!”
「……!はい、先生!」
ハナコの目に、光が戻る。
同時に、彼女の頭脳がいますべき最適解を導き出し、周囲の生徒に指示を出していく。
見えぬ希望をそれでも掴むため、今できる最善を成すため……全員が、動き出した。
***
ヒナさんたちの尽力とセイアさんたちの帰還によって、両学園はなんとか紛争にならず安定したようですね……
救助も終わりましたし、アリウスも勢力を整えるために一時撤退。
ここからが、本当の戦い……ですが。
『人殺しになった私は、もう友達ではいられない』
『私はこれから人を殺す』
『アズサちゃん……ダメです、行かないで……待ってくださいアズサちゃん……』
アズサさんとヒフミさんの決別、そして……
サオリさんとの決戦、その敗北。
『虚しいな、アズサ』
『また逃げるのか、だが奴はまた帰ってくる……なにせ、この「友情の証」とやらを落としていってしまったからな』
『ピッ、ピッ、ピッ……』
『……ん?何だ、中に……っ!!これは、セイア襲撃の時に渡した……!!』
ドカァァン!!
『ごめん……ごめん、ヒフミ……私は、これでもう二度と……』
罪人としての咎を背負ってしまった、アズサさん。
その心に、深い傷を負って……彼女はそれでも、その道を進むのでしょうね。
けれど、けれどね。
悪夢はいつか覚め、決して終わらぬものではない。
望むのは、ハッピーエンドなのですから……
絶望など、今だけのものでしょう。