予定していたそうりきせんはエデン4の後です
今更ですがイズちゃんのバトルスタイルはゴッドフレイなのでよろしくお願いします、四股踏みしたらジャンプで回避しましょう。
白い花畑を見下ろせる狩人の工房に、金属音が響いていた。
中にいるのは金色の髪を持つ二人の少女……イズとセイアである。
特に用語なく立ち寄っただけだったが、彼女達が何をしているのか気になったので寄ってみることにした。
「……おや、珍しい。君たちが装備を弄るとは」
二人が工房内で触っていたのは、何やら細長い棒の先に刃と機構の付けられたもの……銃槍である。
2人はそれを解体し、なにやら改造を行おうとしているようだった。
「やあ、カオリ。イズの装備について少しね」
「カオリさん、こんにちは。少し、工房を借りてます」
「ああ、構わないよ……イズ、少し雰囲気が変わったか?」
「……?そうですか?」
この前、先生と少し遠出していたようだが……以前の硬い雰囲気よりは少し自然体に戻った気がするな。
罪を背負うのと、常に罪悪感を抱くのは同じではない。
自責に囚われるのは、自らを罰されたいという独りよがりになってしまうからな。
己の罪を受け入れ前に進むことが大切だ。
「いや、気にしないでくれ。それよりも、セイア……それは何をしているんだ?」
「これはイズの遠距離武器を増やそうと試行錯誤しているところだね。いかに身体能力が高く接近戦が強かろうと、私たちが生きているのはキヴォトスだ。君のような近接武器しか使わない異端者は除くが、基本的に私たちは遠距離の武器しか使わない」
しれっと刺されたね?
いや違くって。
俺は仕掛け武器を世に知らしめるという崇高なる目的があってぇ……
「だが、それでは単純に力不足な場面が多くてね。特に彼女の散弾銃は獣や人には有効だが、炸裂弾、小口径なのも相俟って貫徹力に乏しい」
「ふむ……」
確かに、獣狩りの銃器というのは獣を狩るための銃。
獣の強靭な肉体に通常の銃弾が通りにくいために作られたもので通常のものよりも性能が良いとはいえ、それは19世紀という未だ未発達だった技術レベルでの話。
現代や未来の銃器であるキヴォトスのものと比べれば、獣狩りの銃器と単純威力は同じ程度と言えるだろう。
さらに、比較をするならば獣と生徒の耐久力は生徒の方が勝り……その上、耐久力なら上位者クラスの戦車や航空機、挙句ゴリアテなんて兵器も大量にある。
神秘の上乗せがあるとはいえ、散短銃のみで切り抜けるのは難しいのも道理だな。
「そこで、この投槍が輝くわけだ」
「ほう、投槍」
セイアの合図でイズがその槍を俺に渡す。
よく見てみれば、それは変形機構を取り払われた、内部に空間があるだけの槍。
銃槍が空槍になっただけでは?と思いつつその中を除けば、そこにはみっちりと黒い砂が詰められていた。
「……銃槍の中身に爆薬を詰めて、変形機構の蓋で封じたのか」
「その通り。手持ち爆雷というわけだ……名付けて雷槍」
「それ以上はいけない」
その名前の武器は鎧のでっかい人とかを爆殺するためのやつだから。
……まあ考えはわかった、戦車やヘリにこれをイズの膂力でぶん投げれば装甲を貫通してブッ刺さり、中の火薬が炸裂してその兵器を破壊するというコンセプトだろう。
はっきり言ってめちゃくちゃ強い、重装甲の敵でもこれをくらいば爆砕されるだろうことは想像に難くないからな。
銃槍が可哀想だけど……
「……ふむ、密閉や圧縮も完璧だ。これであれば想定通りの運用ができる筈だ」
「カオリが保証してくれるのならばありがたい。さ、イズ、あとこれをもう何本か作っておこうか」
「はい!」
セイアとイズが作業に戻っていくのを見届ける。
彼女達もなかなか手先が器用だな……人形が一部手伝っている部分もあるようだが。
……あれを見ていたら俺も創作意欲が湧いてきた、少し何か改造するか……
***
よし、色々いじってオモチャとか割と兵器寄りなのとかいくつか出来たぞ。
まあ俺が使うことはないと思うが……ヒトミさんとかセイアとかイズが遊ぶ分にはいいだろ。
「狩人様。少しよろしいでしょうか?」
そんなことを合点しいろいろしまっていたところ、後ろから声をかけてきたのは人形。
彼女から声をかけてくるのは珍しいな、一体なんだ?
「どうした、人形。この直列トニトルスで遊びたいのか?」
「いえ……セイア様とイズ様が、先ほどお帰りになられました。その際に、狩人様にご要望があると……」
「ほう」
言われてみれば結構な時間遊んでいたから気が付かなかったな、しばらくは待っていたんだろうが俺が没頭しすぎて二人は先に帰ってしまったか。
「お二方から、聖杯を開通してほしい、と……」
「ああ、なるほど……」
キヴォトスで暴れるわけにもいかないし、腕を鈍らせるわけにもいかない。
確かに暴れる場所は必要だろうなぁ……
となれば、俺が利用した聖杯を使い回すかな……
あれはどうやらカオリの元いた世界の聖杯らしく、この狩人の夢のリンクしているので適当に作っても適切に動作するからな。
セイアとイズはヤーナムとのリンクを俺が切断したから使えないが、聖杯への接続をしてやれば入ることも自分で作ることもできるだろう。
「よし、わかった。繋げておこう……聖杯を作るための方法は人形は知っているね?」
「はい、狩人様」
「なら問題ない、あとで二人に教えてやってくれ」
チョチョイとイズとセイアの縁をいじり、聖杯へ参加できるようにする。
まあ人形も教えてくれるだろうし、心配ないだろう。
さて、やることやったし俺もキヴォトスに戻ろうかな。
先生も暫く関わっていないが、まあそろそろ……うん、そろそろ大きく動く頃だろうし。
「さて、人形。ここは頼んだよ」
「はい、狩人様。いってらっしゃいませ」
こうして人形の言葉を背に、俺はキヴォトスへと戻っていくのだった。
***
トリニティの外れにて、一人の少女が、散歩をしていた。
仕立ての良い衣装は貴族を感じさせ、その銀髪は少ない光を散らし瞬く。
彼女はいくらか街の明かりから逸れ、やがて人気のない路地裏まで辿り着いていた。
「……出てきてください」
彼女の一言に応じて、人気のなかった路地裏が騒がしくなる。
至る所から彼女に向けて銃口が向けられ、前後を大人数が塞ぎ、囲い込んだ。
少女を取り囲んだのは、ガスマスクをつけた一団。
アリウス分校の生徒たちである。
「月乃ヒトミだな。ついて来てもらう」
「貴女たちは……アリウスですか」
「拘束しろ!」
リーダーらしき少女が命じると共に、ヒトミが双剣……落葉を抜き放つ。
そして、飛来した複数の銃弾を切り払った。
「全く、芸がないですね」
「それはどうかな」
呆れた様子のヒトミに対し、上から網がいくつも降り注いだ。
同時に、足元に一本の缶が転がってくる。
それは、煙を吹き出し即座に路地裏に充満した。
「これは……スモーク、いえ催涙ガス……?」
こんなもの効きはしないとヒトミは思いつつ、彼女は網を斬り払う。
それに続けて煙を振り払おうと身体を動かそうとした時、それは起こった。
「……あら?」
「……それだけ吸って平気な顔をしているとはな。0.1mgでクジラとかを動けなくする薬なのだが……」
「どこかで聞きましたね、それ……なるほど、それで」
ヒトミはどうにも身体が動かし難く感じていた。
気怠げで、例えるなら徹夜明けで寝たのに1時間程度で強制的に起こされたかのような、身体が重く固いあの感覚。
「だが身体は動かし難いらしい。付けろ!」
「はっ!」
煙から出て来た一人の生徒が、ヒトミの背後からその腕に手錠をかける。
それは金でできていて、一見意味のないものだったが……付けられたヒトミにとっては、違いは歴然だった。
「マダムから渡されたその特別性なら、いかにお前でも動けまい」
(……神秘封じ)
膝をついた彼女に、捕縛のため幾本も縄がかけられる。
やがてヒトミは完全に捉えられ、担ぎ上げられた。
そして、リーダーがどこかに無線をかける。
「……マダム。捕縛、完了しました」
『……手間をかけさせられましたが、無事に終わって何よりです』
その無線から聞こえるのは、大人の女性の声。
ヒトミは目を細めると、後ろ手にされた状態で何やらモゾモゾとしていたがやがてやめた。
それは諦めか、あるいは……
「……やられました。まさか、大人が関わっていたなんて」
『見破りますか……やはり、あなたには私の役に立つだけの価値があります。傷つかないよう、丁重に扱いなさい。儀式は、ロイヤルブラッドを確保してから行います』
女性は満足げに指示を出したのち、無線を切った。
それと同時に、アリウス分校の生徒たちも移動を始める。
口に轡を嵌められ声も出せぬ中、ヒトミは暗闇に蠢く影を見ていた。