123.【幕間】お散歩日和の今日この頃
やあ、諸君。
俺だ、月乃カオリだ。
いやー、エデン4章は派手にやらかしました。
なんかヒトミ奪われたあと無性にムカついてベアトリーチェぶっ殺しかけたというかぶっ殺したんだが、どうにもあれは上位者としての本能の方に引っ張られたらしく。
いまだに俺は暴走した実感がないんだけどなぁ……あんだけ怒ってた実感も今はない。
まあ、俺とヒトミは一心同体。
上位者は赤子を求めるが、俺たちは互いに惹かれ合うから……赤子を求める上位者と同じような状態になっていたのかもしれないな。
ああでも、実はベアトリーチェが人間態に戻ったあたりで正気には戻っていた。
どうやらヒトミは神秘封じを利用して俺から姿を隠すという芸当をしてたらしく、彼女が神秘を隠すのをやめ、知覚できるようになったことで本能が治まったらしい。
でも今更止まるわけにもいかないし、黒服に言ったベアおば処刑をやめるわけにもいかないからとりあえず私はやったんだぁーーーー!(動詞)をしたというわけだ。
その後のメンシスの下は完全におふざけだったけど、そろそろ第三者の立場で最終編に備える必要が出てきたから先生から離れる機会を手に入れられてよかった。
本来の世界線ではセイアが色彩に見られたせいで最終編が始まるわけだが、この世界のセイアは神秘強度が桁違いだし、俺たちの夢に保護されているお陰で色彩に暴露したところでなんともない。
だから代わりにヒトミがその役割を担ってくれたらしい……伝えてないのによく色彩に自分から顔出してくれたよね、
ちなみにベアトリーチェだが意識だけ拾って黒服と同じように時計塔に放り込んでおいた、今頃たくさん切り刻まれてるだろうな。
とまあそんな振り返りはさておいて、今何をしているのかというと。
要塞都市
要するにパヴァーヌ2章が進行中なわけね。
色彩が齎す被害、俺がいるせいでどうやら原作よりもだいぶ酷いことになりそうなので、ちゃんとアリスが覚醒してくれるか見守りにきたというわけだ。
にしてもネルとトキのバトルはすごいな、あそこまでの高機動戦闘は全盛期のイズセイア決戦くらいしかないだろう。
というかなんかネルもトキもやっぱり強くなってるらしいな、エレベーター内に追い込むまでにネルは四肢靱帯断裂、左鎖骨、左腕骨折、右大腿骨ヒビ、鼓膜破裂の大怪我を負わされていたが、それでもど根性でエレベーター内でトキを完膚なきまでまでにぶちのめす大活躍を見せた。
流石にエレベーターから出た後は膝をついたようだが、それでも気絶せずキメ切ったのまじかっこいいし、終わりまでちゃんとことの顛末を見ていたのはバケモノとしか言いようがないな。
だが、基礎身体能力が上がっていてこのど根性を見せるネルをそこまで追い詰めたトキもまた、その実力は推して然るべし。
アビ・エシュフ自体の性能は変わっていないようなので、純粋な実力でこれを成したからすごい。
そして、アリスは無事にゲーム開発部の仲間に帰ってきた。
原作と変わらぬ覚悟を持って、仲間と一緒に進む希望を持って。
よかったよかった……よし、見られる前に撤退しよう、情報工作してる今見られるわけにはいかない。
え?情報工作ってなんだって?
『メンシス』の姿でキヴォトスの至る所に姿を見せては消えることだが。
既にブラックマーケットやゲヘナでは『檻を被った怪人』として噂になっているようだし、この調子で先生になんかしてますよアピールを欠かさず続けていこう。
印象は強い方がいいからね!
いやー、にしても男性体は久々だ。
キヴォトスに来てからずっと口リだったからなぁ……
でも逆に普段との感覚のズレで落ち着かないというか、なんというか……本体からすればどちらも等しく矮小だから変わらないはずなんだが、俺の魂自体はまだ人の枠に近いんだろうな。
まあこのメンシスの身体は生理機能ないからトイレとかはあんまり関係ないが……あ、カオリには何故かあるぞ、いらないだろ、絶対ヒトミの仕業だ。
裏で慣れないながら四苦八苦したもんだ……もちろん(別に不埒なことはして)ないです
あ、そうだ(唐突)
上位者の本能に引っ張られたことが原因かなんなのか、掲示板くらいなら見れるようになったゾ。
この独白を見れている存在がいるのかどうかはまだ知らないが、まあ自分の情報整理としてやってる面もあるので気にせず続ける予定だ。
ほいじゃ暇になったし……特に興味はないけど、黒服が回収したベアトリーチェの研究成果でも見に行くか〜
***
キヴォトスのどこか、暗闇にて。
三人の大人が、集まっていた。
彼らはゲマトリア、キヴォトスの闇に巣食う大人である。
「黒服、急な召集とは何事だ」
「まだこちらもやることがあったのですが」
「そういうこった!」
マエストロとゴルコンダ&デカルコマニーが抗議するも、黒服はそれを手で制し、至って真面目に彼らに向かって語り始める。
「……本日はお客様が来ています」
「ほう、客か」
「ここに……はて、いったいどのような方なのでしょうか」
「お待たせするのも悪いので、入ってきていただきましょう」
黒服がそう言うと、闇から出るのは一人の大人。
制服にローブを着込み、まるで教授のような服装で現れた彼の頭には、大きな檻が被せられている。
その顔は認識できず、ただ
そしてその圧は、この場の誰よりも強いものだった。
「諸兄、お初にお目に掛かる。我が名は『メンシス』……ビルゲンワースの悪夢を統べし大人だ」
彼の姿を見た瞬間、マエストロは木をガコンガコン鳴らしながら後退り。
デカルコマニーは胸に抱いた額縁を落としかけ、その中に後頭部しか見えぬゴルコンダは明らかに震えていた。
「な、なん、な……黒服っ……!!」
「どう言うことですか,これは!我々は彼の逆鱗に触れることはしていないはず!!」
「そういうこった!?」
二人は黒服に抗議をするが、当の黒服はどこ吹く風。
諦めたような、憐んでいるような雰囲気を出しながら、彼は二人を見ていた。
「安心して欲しい。本日は、挨拶に来たのだ……貴公らの仲間であったベアトリーチェを消してしまったことは済まなかった、謝罪申し上げる」
「……あれはビルゲンワースに手を出した時点で我々の仲間ではない。気にすることはない」
「ええ。彼女はそうなるべくしてそうなったのです」
「そういうこった!そういうこった!」
即座に梯子を外されるベアトリーチェに悲しき今。
マエストロとゴルコンダ、そしてデカルコマニーは即座に彼に敵ではないアピールを行い、どうやってこの場を無事に切り抜けるかだけを考えていた。
メンシス……カオリはそれを見て内心爆笑中なのだが、彼らはそれを知りようがない。
「私が邪魔者なことは承知している。しかし、私は貴公らに伝えねばならないことがある」
「ベアトリーチェが、『色彩』を呼び寄せた。然るのち、あれは到来するであろう」
「なんだと……!?ベアトリーチェ、なんということを……!!」
「はぁ……マダム、流石に擁護はできませんね」
「クックック……」
黒服は回収した実験内容から予期していたとはいえ、確定していなかった情報。
それを伝えられたことで、ゲマトリアたちは皆狼狽していた。
メンシスはそれを伝えると、要は済んだとばかりに身体を白い靄へと変える。
「では、さらばだ。重々、備えるといい……」
彼がそう言い立ち去ると、黒服は即座に詰められることになるだろう。
袋叩きにされないだけマシというレベルでマエストロたちはビビらされて激怒していた。
そして、彼らは備え始める。
キヴォトスの終焉、ゲマトリアの宿敵に備えるために。
***
いやーゲマトリアは面白いっすね。
反応がいちいち楽しい。
こりゃネタキャラになるのも必然ってもんよ。
っと、パヴァーヌから十数日、今日からつい先日。
デカグラマトンの方もひと段落ついたようだ。
水没していく自販機に黙祷!を捧げ、俺は廃墟の機械部品を適当に回収して売るなりなんなりしておいた。
金はいつ何時でも入用だからな!
にしても暇だ、流石に暇だ、色彩が来るまでやることがないせいでとても暇だ。
おい色彩あくしろよ!オラオラ来いよオラァ!!!
最近真面目な雰囲気だった反動で暇だと落ち着かないんだよな。
まあいいか、ゆっくりとしていよう。
晄輪大祭とか、カイザーの動きを見ながらね。
***
「はあっ……はぁっ……」
空高き、天空の花畑にて。
ベアトリーチェは、荒い息をしながら蹲っていた。
キヴォトスでの最後の記憶は、あの車輪が振り下ろされる場面。
次に目を開けば、ここにいた。
ここはどうやらキヴォトスではないらしく、また自身の装備も何もかも存在しないため、己の身一つで探索をしなければならなかった。
しかも凄まじく重い扉をやっとこさ開ければそこにいた死体女に切り刻まれ、ならここから飛び降りれば戻され、ここで待っていれば時間経過で謎の生命体──肥大化しパーツのない頭部と全裸のバケモノ──が湧いてきて殺される。
しかしベアトリーチェは諦めない、必ずや返り咲いてみせると息巻いて、彼女は今日も切り刻まれる。
彼女の心が折れるまで、あと──