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火の海の中、ペロロジラは進む。
敷設された防衛ラインを無造作に消し飛ばす破壊の化身は、既に爆心地から市街地へと移動していた。
ネルは、ビルからビルへと飛び移りつつその巨体に銃撃を浴びせる。
「硬すぎるだろ!!」
ネルの攻撃は、ただ飲み込まれるようにその巨体に消えていく。
ダメージを与えられているのかもわからないが、少なくとも注意程度は引けているようだった。
突如、ペロロジラの片目がぐりんとネルの方に向き──直後、ビルを数棟纏めて消し飛ばす。
「っ、危ねぇ……!!」
ネルは既に、一つ向こうの通りに移動していたが、今起こされた破壊力に驚きを隠せなかった。
もし一撃でも喰らえば戦線離脱は免れないだろう──最悪は、死体も残らず消え去る。
「やるじゃねえか……!まだまだ行くぞ!!」
勝機の見えぬ戦いの中、ネルはそれでも不敵に笑う。
移動するペロロジラに、複数方向から兵器群による攻撃が行われる。
それは機関砲であったり、誘導弾であったり、取り寄せた対空砲であったり……とにかく様々な種類の攻撃が浴びせられる。
だが、ペロロジラは嫌がりはすれど足は止まらない。
その目が怪しく輝くと──幾つもの閃光が、防衛ラインに浴びせられる。
『第15防衛ライン崩壊!!』
『ハイランダー装甲列車団壊滅っ!!』
『10km圏内の防衛ラインが全て突破されましたっ……!!』
「くっ……!」
ペロロジラはおそらく、サンクトゥム防衛のために10km圏内のあらゆるものを粉砕するつもりなのだろう。
そしてそれが終われば今度は更なる広範囲を、だろうか?
「ヒフミ、右!」
「うひゃあぁ!?」
ついさっきまで戦車が走っていた道が溶解する。
お返しとばかりに戦車砲がペロロジラへと発射されるが、やはり有効打にはならず、反撃のビームが何発も飛んできた。
「先ほど兵器を一つ拾ってきてよかったですわ。アレに、ライフルなどが効くとは思えませんから」
「アカリ!弾薬!」
「はい、大丈夫ですよ」
「いっけ〜!」
給食部の車に乗せられたバルカン砲が火を吹き、ペロロジラに直撃する。
しかしこちらも、あまり効果はないようだ。
ペロロジラにダメージが期待できる兵器群は、防衛ラインの破壊と共に大半が消失してしまっている。
このままでは負ける──そう、思われた時。
巨大な影が、ペロロジラに飛びついた。
キャォォォォオオオ!!!!
それは、あまりにも醜い獣だった。
蕩け、歪み、異形と呼んでもなお足りぬその異容は、正気を疑うもの。
馬のようなソレは、巨体から幾本もの足を生やし暴れ狂う。
右頭部より生えた目玉の塊はさながら口の様に蠢き、見ることすら憚られる悍ましいものだった。
巨大な大剣を背負い、ボロ布を纏っている彼の背景には、果たして何があるのだろうか。
ソレはペロロジラの4分の1しかない体躯だったが果敢に飛びかかり、その鋭い爪でペロロジラの身体に取り付いた。
暴れ、噛みつき、引っ掻き、ちぎり、殴りつける。
忌避的で原始的なその戦い方は、ペロロジラに確実にダメージを与えていた。
■■■■■■■■■■■■!!!!!
オアォォォォオオオァァ!!
ペロロジラがビームを放とうとするが、身体に取り付いた醜い獣には射角が取れない。
せめてもの抵抗で辺りのビルに叩きつけ、引き剥がそうとするが……醜い獣は機敏にペロロジラの上を移動し、避ける。
「面白そうな奴がいるじゃねえか!!」
そしてそこに、ネルもまた駆けつけた。
醜い獣の戦い方は難易度が高いとはいえこの怪獣の攻撃手段を封殺できる唯一のものであることを彼女は見抜き──そして、自らも行えるポテンシャルを持っているのならやらない手はない。
「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」
ネルは、走る。
ペロロジラの身体を、水平に。
そして銃弾を撃ち込みながら、ペロロジラの身体が柔らかいことを利用して大きく踏み込み、垂直に登り始めた。
「アズサちゃん!あの怖いのに当たらないようにしてください!」
「わかった。次弾装填」
「今ですわ!」
「発射発射!!」
「いっけ〜!」
「一斉射撃!射程距離が届く全ての兵器群は攻撃しろ!」
『『『了解!』』』
ペロロジラからの攻撃が、醜い獣とネルによって控えめになった今……反撃のチャンスが訪れていた。
クルセイダーちゃんから放たれた砲弾や美食研究会が掻っ払ってきたバルカン砲、その他まだ無事な防衛ラインや破壊を免れた兵器群からの一斉射撃がペロロジラを襲う。
それは確かに、大きなダメージとなって、その宇宙色の巨体を揺るがしていた。
「「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」
■■ ……■■■■■■■■■■■■!?!?
一斉攻撃によって、ついにペロロジラが体勢を崩す。
すわ、倒れるか──そう思われた時、ペロロジラはその翼で踏ん張った。
「なにっ!?」
『っ!超高エネルギー反応!!』
ペロロジラの瞳に、凄まじいエネルギーが収束する。
それは、ビナーのレーザーをも凌ぐ密度のエネルギーであり──ペロロジラそのもののエネルギー総量にも迫るほど。
ありったけの神秘をその一発に込めた──破滅の一撃。
『射線予測完了!目標は──シャーレ!?』
「っ!?」
その言葉に、作戦本部があるシャーレもざわつく。
先ほどまで散々見せたあの高出力が向けられれば、シャーレなど……それこそ周辺ごと、確実に消し飛ぶ。
そうなれば少なくとも、確実に先生は死ぬ。
「先生、退避を!」
「先生……!」
リンやアユムたちが先生を避難させようと集まる中──先生は、じっとペロロジラのいる方角を見つめていた。
「ですがっ……先生がいなくなっては、この作戦そのものが……!」
先生はその言葉と共に、大人のカードを取り出す。
それは光り輝き──しかし、突如として先生はそれを下げる。
そして、上を見た。
「……えっ……?」
ペロロジラのエネルギーが、臨界に達する。
なんとか狙いを逸らそうとこの場の全ての戦力が集中砲火を浴びせかけるが、四つん這いのようになったペロロジラの狙いはブレずにただ一点、シャーレを狙い続けていた。
ギユァァァオァアオオオオオ!!
醜い獣が目を塞ぐように頭に覆い被さるが、もう遅い。
その光線は──全ての障害を破壊し、シャーレへと放たれた。
ギギィィィィィィッ!!!!!
覆い被さっていた醜い獣は、光線をまともに食らい数kmを吹き飛ばされる。
彼は数十棟のビルを巻き込みながら停止したが、その身体は灼きつくされ、至る所がぐしゃぐしゃになって……その背から、大剣が落ちた。
光線は射線上のあらゆる障害を焼き溶かし、シャーレへと一直線に迫り来る。
蒼白になる作戦本部の面々のなか、先生と──そして覚悟を決めたリンだけは、やってくるその光をただ、見ていた。
だが──その光は、届くことはなかった。
突如として、
光線は光の柱に直撃し、しかしそれを折ることはできない。
正面から受け止めたエネルギーを、光の柱は散らし……そして、相殺した。
「なっ……あ、あれは……!?」
「……これは」
アユムが瞠目し、リンがどこか納得したような瞳を向ける中──通信が入る。
『やあ、先生。君の良き生徒、ティーパーティーの百合園セイアだ』
シャーレの前に立つセイアは、突き立てていた聖剣を構える。
はるか地平線の先、ペロロジラに向けて。
『先生、君が生徒を信じ過ぎているのは些か問題だね。後で周りから説教されるといい』
「本当です。先生、後でお話がありますからね」
リンに肩を掴まれる先生に微笑みながら、セイアはペロロジラの方角へ向き直る。
そして、同じ頃。
ペロロジラの上に、雷雲が立ち込めた。
辺りには雲ひとつないのに、その雷雲だけは不自然に滞留し──そして突如、青白い稲妻が、ペロロジラへと降った。
■■■■■■■■■■■!?!?
四つん這いのような姿勢だったペロロジラの背に稲妻が直撃し、そして一人の少女が怪獣の前に降臨する。
それは、斧を持った金髪の少女──イズ。
雷光を纏いながら、彼女はペロロジラの背に仁王立ちしていた。
「凄い出力……」
その手に持つのは、ダンベルのような形状をし雷光を放つ不思議な物体。
トニトルスと小さなトニトルスを直列に繋げ、生身の人間が耐えられないような出力の雷を発生させる、カオリがお遊びで作った魔改造兵器。
イズはその
セイアもまた、すぐにペロロジラの元へと辿り着く。
兵器群の再編や、C&Cの救出活動も終わり、人が集まり始める。
更に──吹き飛ばされていた醜い獣の前に、セイアと同じ翠緑の光が現れる。
う、うう……ぅぅぅ……………うう……?
それは、導きの光。
輝ける、月の光。
ああ……
蕩けた瞳に、光が戻る。
それは理性の光、人間の叡智の輝き。
ずっと、ずっと側にいてくれたのか
醜い獣は、立ち上がる。
剣を掴み、掲げて。
それは聖剣、希望を紡ぐ幻想の刃。
我が師
導きの月光よ
翠緑の風が、赤い空の下に巡る。
ボロボロの身体はいつしか治り、彼は真っ直ぐに……ペロロジラの前に立ち上がった。
『
『ああ……ヤーナム自治区の、私の……師匠のような人の、なれの果てだ』
『しかし、あれは……』
セイアは、かつての戦いを、そしてつい数時間前までその魂に寄り添っていた彼を想う。
そして、表には出さないが……カオリの思惑にもなんとなく気がつき始めていた。
そして、ペロロジラの背後にも。
新たに立ち上がる、巨大な影があった。
『私の秘密兵器の出番も、やってきたようですね?』
『サンクトゥムのエネルギーを利用して、物理法則を超越する現象を起こす、一種の特異現象』
『お願いしますね、みなさん』
「「「「「おう!!!」」」」」
「行くぞ!!無限回転寿司戦隊・カイテンジャー究極体のロボット!!」
『カイテンFX
光に包まれ、巨大な存在が姿を現していく。
それは寿司の合体ロボット。
男のロマン、巨大化スーパーロボットであった。
「サンクトゥムからエネルギーが減少していきます!」
「ペロロジラのエネルギー、再び増大!復活しました!」
「各地のサンクトゥムに、未確認の特異存在を確認!味方と報告されています!」
「キヴォトス全域に色彩とは別の特異現象反応!!」
「気候・天候条件を無視した
「先生?」
報告を受ける中、先生は独りごちた。
リンがそれに気付き先生の名前を呼んだが、彼は首を横に振りなんでもないと示す。
そして──改めて、先生は全生徒に宣言した。