見たまえ!青ざめた血のアーカイブだ!   作:めろんムーン

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133.見たまえ!青ざめた血のアーカイブだ!

 

 

 

 第1サンクトゥム、アビドス砂漠。

 ビナーに取り囲まれた生徒たちの元に、不可解で名状しがたい騒音が轟き──直後、ビナーの身体が跳ねる。

 

 

■■■■■■■■■■!?

 

 

■■■■■■■■■■■■!!!!!

 

 

 凄まじい咆哮はしかし、ビナーが巻き上げた砂によって見えず、生徒たちはただその主がビナーと暴れていることを察することしかできない。

 

 

『作戦地域にビナーに匹敵する高エネルギー反応……!』

 

「な、なによ!何が起きてるわけ!?」

 

 

 やがて、ビナーが巻き上げていた砂が収まっていく。

 赤い空はいつのまにか暗(・)雲(・)に覆われて、赤に照らされる青という形容の難しい色になっている。

 

 そして見えてくるのは、ビナーと戦う見覚えのない存在──7本腕の怪物だった。

 見上げるほどの巨体を有する異形は、ビナーを締め上げる。

 網目状の外骨格のようなものに覆われた特徴的な頭部からはビームを発射し、ビナーの装甲を破壊していた。

 このような生き物が存在していた──そんなことが信じられないほど異様な存在に、対策委員会と便利屋が絶句する中……ヒトミが、つぶやく。

 

 

『アメンドーズ……ビルゲンワースに伝わる神格です。恐らく──今回は味方です』

 

 

『っ!わかりました……!みなさん、アメンドーズと協力してビナーを撃破してください!』

 

「うへー、すごいね、何が起きてるかわからないや〜……でもまあ、やるしかないよね」

 

 

 

■■■■■■■!!!!!

 

 

 

 違いを痛感する静観の理解者は、『理解』の及ばぬ憐れなる落とし子に抑えられる。

 生徒たちもまた、ビナーを撃ち倒すため駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 第2サンクトゥム、ミレニアム郊外閉鎖地域。

 ヒナ、ツルギ、エイミ、ワカモを迎え撃とうとしていたケセドの軍勢が、突如崩れる。

 それを成したのは、人よりも大きな蜘(・)蛛(・)の(・)群(・)れ(・)だった。

 

 

『作戦地域に多数の特異現象反応……!注意してください!』

 

「部長、たぶん──あれは、味方」

 

 

 蜘蛛たちはその強靭な肉体で機械兵やゴリアテの抵抗をいなし、鋭利な前足で切り裂き、突き刺し、体当たりなどで破壊する。

 それは少なくともケセドとは敵対し──そしてこちらに向かってこないことから、協力できる存在のようだった。

 

 やがて、後方から奇妙な音と共に彼らの主が現れる。

 

 

カラカラカラカラカラ……

 

 

 それは長い身体を持つ巨大な虫。

 白くでこぼことした頭部におびただしい数の目玉を備え、背中には淡く発光する植物のようなものを生やしたそれは、ヒナたちを一瞥すると身体を揺らした。

 

 

『っ!これは信号……?「白痴の蜘蛛、ロマ」……これがその存在の名前……?』

 

 

 ヒマリが呟く中、ヒナたちはそれを前にして目配せし合い──信じて、背中を預ける。

 

 

「正体が何にしろ、今は嬉しい助けね」

 

 

 慈悲深き苦痛を持って断罪する裁定者は、『慈悲』すら届かぬ白痴の蜘蛛と相対する。

 そしてヒナたちも、今度こそサンクトゥムを攻略するため前に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 第3サンクトゥム、廃墟遊園地スランピア。

 クロを相手に一人で奮闘していたトキだったが、遂に5分の制限時間に達してしまっていた。

 

 

「くっ……ここまでですか」

 

 

 武装は既にパージしており、ここからはパイルバンカーのみを装備した軽装のアビ・エシュフで戦わなければならない。

 その上、エネルギーは残りわずか……時間稼ぎにも怪しいラインだった。

 

 しかし、膝をついていたトキに──巨大な影が覆い被さった。

 

 

「!?」

 

 

……フー……グルルルルルル……

 

 

 トキが見上げて目に入ったのは、巨大な白い獣の姿。

 長く白い、美しい毛並みを持つ獣は、まるでトキを守るように座していた。

 

 細いながらも強靭かつ鋭い爪の生えた手足がトキへの攻撃を弾く。

 被さった布により目元は見えないが、犬に似た形状の頭部には鹿を思わせる枝分かれした2本の角が生えている。

 ソレが睥睨すれば、クロは縮み上がり必死になって攻撃を再開した。

 

 更にそこに、どこからかシロが合流する。

 大きく傷ついたシロもまた、獣を見て震え上がった。

 

 

『作戦地域から、発信……?「教区長エミーリア」って……』

 

「新たな助っ人が参戦です!」

 

「あれ本当に助っ人なの!?」

 

 

 追い詰められ逃げ出したシロを追って、アリスたちもまたトキに合流する。

 困惑しつつも、無邪気なアリスの言葉に頷いたトキを見て、ゲーム開発部やRABBIT小隊もまた目の前の敵に集中することにした。

 さらに、トキのマシンハンガーがアバンギャルド君に運ばれやってくる。

 貯蓄されていたエネルギーは残り少なかったが、それでも戦闘に耐える分程度は残っているようだった。

 

 

「……ありがとうございます、ユズ」

 

『と、トキさんが時間を稼いでくれたから、シロを追い詰められました……!ありがとうございます……!』

 

「……いえ」

 

 

 満更でもなさそうなトキを尻目に、RABBIT小隊もまた一斉攻撃の準備を整えていた。

 いつのまにか不可思議な色に変質した空にヘリが現れ、その標準をシロとクロへと向ける。

 

 

「細かい確認は後にしましょう。今は作戦を優先します」

 

『おっけ〜了解〜。ここは屋根もないしやりやすいね』

 

 

 

キュオオオォォォォォォ!!!!

 

 

 

 カラスとネズミ、2匹の忘れられた象徴は──1匹の巨大な獣の餌食となる。

 これから始まるのは、壮大な蹂躙劇であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 第4サンクトゥム、カタコンベ内バシリカ。

 砂嵐に晒された生徒たちが、突如鳴り響いたオルゴールに困惑する中。

 『影』が、辺りを塗りつぶし──晴れた時には、砂は一欠片も残っていなかった。

 

 

「一体、何が……」

 

「……っ!後方に、巨大な存在が……!」

 

 

 サクラコが見つけた存在は、黒い、黒い影。

 それはやがて形を明瞭にし、はっきりと主張した。

 

 黒い布を纏った巨躯の怪物は、その背に烏羽を生やしている。

 8本の腕は華奢で細長く、しかし内6本には薄く鋭い刃が備えられていた。

 その頭部は存在せず……代わりに、フードのようになった布だけが、不自然に浮き動かされている。

 神聖な聖職者であるヒエロニムスと対になったかのような、暗黒の死神を象ったような存在──それが、その場にいた。

 

 

「……なんだ、あれは一体」

 

「わーお……」

 

『……通知?識別名「メルゴーの乳母」……?』

 

 

 重厚な威圧感が場を満たす中、ハナコの端末に送られてきた一つの通知。

 それこそが、かの上位者を示す名であった。

 

 

『■■■■■■■■■■■!!』

 

 

 ヒエロニムスがメルゴーの乳母に咆哮し、幾つものエネルギー弾と光線が発射される。

 しかしメルゴーの乳母はそれをものともせずに肉薄し、ヒエロニムスの肉体を刃で切り裂いた。

 

 

『っ!皆さん、少なくともあれはヒエロニムスと敵対しているようです!』

 

「つまり、あれと協力すればいいわけですね」

 

「……理解した。任せてくれ」

 

「変わらず、救護を行います」

 

「オッケー!任せてよっ⭐︎」

 

 

 偉大なる太古の教義に、闇夜を統べる上位者が立ちはだかる。

 本来逆の二柱が激突し、己の存在を証明し合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 第5サンクトゥム、要塞都市エリドゥ。

 危機が迫る生徒たちの前に現れたのは、雷光を纏った黒獣であった。

 その姿は四足の獣、されどその身に骨と毛以外の一切はない。

 内臓も、筋肉も、皮もなく、しかし機敏に跳ねるその獣はホドの光線を稲妻で相殺してみせた。

 

 

「っ、あれは何……?」

 

「骨が動いてる!すごい!」

 

「今のうちに戦列を整えろ!カムラッドが送ってくれた救援に応えるのだ!」

 

『多分先生が用意したわけではないと思うけど……うん?これは電磁パルス暗号?……「黒獣パール」、それがあの獣の名前かな』

 

 

 パールが放った電磁パルスの一端を解析したチヒロが、その名を読み上げた。

 パールが応えるように、強烈な放電をホドに向けて行った。

 それはホドの電磁防御を貫通し、アームや砲の機能を短時間の間だが麻痺させる。

 

 

『とにかく、あの獣と協力してホドを倒して』

 

『温泉開発チャンスだ!メグ、やれ!』

 

 

「わかったわ!変数を計算に入れて……」

 

「にはははは!なんだかよくわかりませんが行きますよー!」

 

「OK!任せてよ部長!」

 

「総員突撃!不甲斐ないやつは粛清だからな!」

 

 

 不気味な空模様の下、ホドを前にして生徒たちが闘志を見せる。

 輝きに証明されし栄光は、『栄光』を永きに渡り見続けてきた不死の黒獣に通ずるのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 遥か、空の上。

 地上からおよそ75000mの高度に位置するこの場所で、月(・)乃(・)カ(・)オ(・)リ(・)はキヴォトスを見下ろしていた。

 

 そこは、大気圏と宇宙の境界線。

 しかしカオリは、全く意に介した様子もなく、生身でソ(・)レ(・)に立っていた。

 

 頭(・)上(・)に広がるのは、本来存在できないはずの高空で不自然にキヴォトス全面を覆う青(・)い(・)雲(・)。

 

 それは、血に酔ったように赤い空と混ざり合い──血の抜けた死体のように、青白く、紫がかった空へと変質していく。

 

 

 

「……秘匿は破られた」

 

 

 

「キヴォトスの終焉、それに抗う者たち」

 

 

 

「例え全てが無駄だとしても、例え全てが過ちだとしても」

 

 

 

「決して諦めぬ彼女らに、青(・)ざ(・)め(・)た(・)血(・)の祝福を」

 

 

 

「私はここに、一つの物語を紡ごう」

 

 

 

「血と死に塗れた、獣たちの饗宴を」

 

 

 

「狂気に冒された、宇宙的恐怖の根源を」

 

 

 

「我らが故郷、ヤーナムの、悍ましくも美しい、悪夢の物語を」

 

 

 

「……我らの神話、Bloodborneを」

 

 

 

 彼女はそう言うと、天に向けて手を開く。

 まるで、歓迎しているように。

 あるいは、待ち侘びていたかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見たまえ!」

「青ざめた(ブルー)血の物語(アーカイブ)だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の言葉に呼応するかのように、天に現れたるは赤い月。

 本来そこに存在し得ぬほど近く、大きいそれは、各地に現れた異形の存在たちへと力を与えていた。

 

 

 

 そして──突如、彼女が振り返る。

 その瞳は────わたしたちと目(・)が(・)合(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)。

 

 

 

「何者も、我らを捕え、止められぬのだ」

 

「……なあ、貴(・)公(・)ら(・)」

 

 

 

「何も心配することはない」

 

 

『何があっても、悪い夢のようなものなのだから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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