「クックック……【悪夢】と『秘密』とは……素晴らしいものを聞きました。彼女らの『崇高』がどうなったのかは気になるところですが……今はこちらが優先ですね」
そう言いながら、自身の工房へ戻ってきた黒服。
「クックック……以前、生徒の精神に作用するためにゴルコンダと共に作り出したこの装置が役立つ時が来るとは……」
その手には、一つのヘッドギアが。
「作成した時に、フルダイブ型としてヘッドギアにしたものの、扱いにくさから没になったこれが日の目を浴びるとは……わからないものですね」
その後、いくつかの道具を扱い改造を加えていく。
「彼女は【悪夢】は生徒たちが協力して『神秘』によって作られた、と言っていましたね……ということは、ヤーナムの生徒たちが作り出した【悪夢】とは、『生徒たちの集合意識』なのでしょう」
そう言って、ヘッドギアを完成させ、寝具に寝転ぶ。
「クックック…一つの世界を作れるほどの神秘が混ざり合い、そして神秘の世界を形作り維持しながら本人は恐怖へと変貌する……神秘と恐怖が両立するとは……見せていただきましょう、その『真理』と『秘儀』を。そして『秘密』を暴かせていただきましょう」
ヘッドギアを被り、必要な数値を設定して、起動する。
そうして、黒服の意識は夢へ落ちていった。
ファァァアアン……
カーン……カーン……
ぼうっとしていた様子の黒服の意識がハッキリとする。
「……クックック、成功したようですね……さて、ここはどこなのか」
周りを見渡せば、向日葵のような何やら見慣れぬ美しい花がある方向に向けて一面に咲き誇る花園。
中央には一際大きな、大樹のようになった花があり、異様さを醸し出している。
花園の周りは石造りの通路で囲われており、そのさらに向こうには手すりが設置されていて、その向こうは雲が広がっている。
「……庭園、でしょうか?花は……見知らぬ品種ですね。分析はしたいですが、後回しにしておきましょう。外は……」
黒服が確認すると、手すりの外は
「雲海、ですか……その割には気圧、酸素濃度共に地上並み。夢ならでは、というところでしょうかね?」
空を見上げれば、曇り空。キヴォトスの天の頂にある、巨大なヘイローは見えない。
「やはりここは【悪夢】のようですね」
目覚めた場所の後方には、何やら大きな建物と、自分では開けるには苦労しそうな大きな扉。外壁を確認すれば、雲海を突き抜け遥か下に続いている。
「ふむ……こちらも確認したいですが……やはり本命は、
目覚めた場所の前方、花たちが向いている方向を見上げる。
「……あの建物はなんなのでしょうか?しかし、あの中には強大な神秘が感じられますね……迎え、というわけでしょうか」
そう呟き、庭園の端、目覚めた場所とは反対側にある建物の入り口に近づく。目の前には、大きな扉。
黒服は、その扉を押し開けようとして……
「クックック……重い扉ですね……」
全力で押しても扉は少ししか動かなかった。
10分後。非常に重かった扉をやっとこさ開き、中に進む黒服。
少し進んだ先には広間があり、正面の壁には巨大な機械仕掛けの時計。壁を切り抜き作られているようで、向こう側から光が差し込んでいる。
壁は蝋燭が規則正しく並び、壁に沿って燭台が並んでいる。
床はグレーチングのようになっており、その上に乱雑な板が張られているが、下が透けて見える。その下の見える範囲は雲海であり、仮にこの地面が崩れでもしたら死を逃れる術はないだろう。巨大な時計の付近はしっかりとした床のようだ。
そして、巨大な時計の前、光が差し込んでいる位置に、女性が一人項垂れて足を組み椅子に座っている。
黒服には、彼女が凄まじい量の神秘を秘めていると確信するだけのプレッシャーが感じられた。
「彼女が、この夢を作った生徒の一人でしょうか?眠っているのですか…?」
そう呟きその女に近寄る黒服。
観察してみると、見慣れぬ帽子に高貴さを感じる上着。手は手袋に覆われており、下半身は丈夫そうなズボン。
帽子に隠れて顔は見えず、しかし帽子の端から見える髪の毛は白髪。
右腕は椅子から零れ落ち、無造作にさがっている。
そして、その腕からは、血が垂れ、下に血溜まりを作り出していた。
「……死んでいるのですか?ですが、彼女から感じるこの圧倒的な神秘……クックック、死してなお利用価値は高そうですね」
そうして彼女に近寄り、手を伸ばしたその時。
ガッ!グッ!
伸ばした腕を突如として動き出した女に掴まれ、引き寄せられた。
「なっ……!?」
驚く黒服の顔の真横に、彼女の顔が来て、囁かれる。
「死体漁りとは、感心しないな……」
優しくも、脳に響き耳に残る声。
彼女はゆっくりと引き寄せていた黒服を元の姿勢に戻すと、手を離した。
「っ……!!」
喋り出そうとした黒服の息が詰まり、何歩か後退りしてしまう。それほどのプレッシャーが彼女から放たれている。
「だが、分かるよ。秘密は甘いものだ」
女はゆっくりと椅子から立ち上がり、どこからか上下両刃の剣を取り出して右腕に持った。
「だからこそ、恐ろしい死が必要なのさ」
両刃の剣を前に持ち、力を込め、短い方の刃を引き抜く。
「…愚かな好奇を、忘れるようなね」
古狩人、時計塔のマリアは、今、目覚めた。
─【BGM:Lady Maria of the Astral Clocktower】─
どこからか音楽が流れ出す。
どこからか聞こえてくる教会の鐘のような音と、弦楽器をベースにした低い音程の近寄ってくるかのような音楽のそれは、黒服に【やってはいけないことをやった】という罪の意識を芽生えさせる。
ゆっくりと歩いて近寄ってくるマリア。
「クッ……会話に乗っては、くれませんよね」
どう見ても殺意マシマシな刃を両手に持っているのだ。会話のフェイズはすでに過ぎている。
後ろに振り向けば、入ってきた入り口は霧のようなものに塞がれていた。
「……クックック……『秘密には、常に隠す者がいる』とはこういうことですか……なるほど」
戦う術は持ち込んでいない。
ダンッ!ブォン!!
マリアが振るってきた刃を、黒服は必死に避けつつ打開策を考える。
「クックック……一体っ、どうしたらいいんでしょうかっ、ねっ!」ファン!!フォォン!!
素早い剣戟に黒服は避けることで手一杯であり、逃げ道は霧によって塞がれている。そもそも、速度に関して言えば圧倒的にマリアのほうが上なのだ。仮に逃げたとしてもすぐ追い付かれるだろう。
「八方塞がりっ!ですねっ!」フォン!!ヒュオン!!
元々戦闘要員でもなく、戦う力がない黒服。負けの約束されたレースが、今始まったのだった。
「あははははっ!あっはははははっ!!黒服が無様に逃げ回っているよ!!いい気味ではないか!!」
それを鑑賞してる悪い生徒が一人。
そう、俺です。
「いや、笑い事ではないと思うんだが……彼は大丈夫なのかい?」
訂正。鑑賞してるのは二人。
一緒に鑑賞しているのは【実装待機芸人】のセイアだ。
「いまそこはかとない悪意を感じたんだが?」
「気のせいさね」
にしても黒服君、律儀に秘密を破りにくるとは……期待以上に面白い!!
あ、『星輪樹の庭』と『時計塔』は俺が夢で再現しました。もし突破できた時のご褒美として、『漁村』も用意してある。戻ることは想定していないので実験棟は中身作ってない。
狩人の夢に干渉しようとしたやつを強引に案内して、マリア様に叩き切ってもらうだけの防衛機構として作った。
すでにメンシスと教室棟は俺が解体したし、辺境に繋がったところでなんの旨みもない上にあそこはそもそも繋がりづらい。必然的に狩人の夢に干渉してくることになるのだ。それを罠に嵌める。我ながらいいトラップだ(恍惚)
星輪花の咲いている方向を、全てマリア様のいる方に向けて思考誘導するおまけ付き。
マリア様は俺の記憶にあるマリア様を再現したものだ。ちなみに、人形ちゃんには『同じ見た目なだけの人だから気にしないでね!』と伝えてある。この世界では繋がりはないからね。
ちなみにこのマリア様、俺が再現したヘイローがついてる。
ヘイローが、ついてる(大事なことなので2回)
つまり、黒服では倒せないどころか俺でも正攻法なら倒せるか怪しい。元々頑丈で超人な狩人にヘイローとか再現して付与しちゃダメだよね!!
ちなみにヘイローの効果はなんてことはない。防御力アップだ。
マリア様の基礎ステにキヴォトス人の耐久力を加算しているだけ。
……銃どころか、ノコ鉈とか弾かれそうなぐらい硬そうなのは見なかったことにする。
「おーい、カオリ。いいのかい?黒服を見ていなくて」
「ああ、すまない。思索に浸っていた」
さて、黒服くんは今必死になって逃げている。俺が調整してるから、夢で死んでもやり直すか目が覚めるかだから問題ないんだけどね。
「アレは本当に大丈夫なのかい?」
「ああ……死んでも最初の位置に戻るだけさ。一度死んだら私が直接会いに行くさ……ネタバラシさね」
「……趣味が悪いと思うのだが」
「秘密を探ると時にはこういうこともあるという警告さ……」
「……そうか」
ちなみにセイアちゃんは死ぬ瞬間をちゃんと見届けたいらしい。それが彼女なりの弔い方なんだとか。本編より覚悟決まってないっすか?*1
「あ、死んだ」
「……そうだね」
黒/服になってしまった……ナムー……さて、そろそろ行くか。
「はっ!?」
私は今、確かに彼女の振るった刃を避けきれず両断されたはず……それがなぜ、元の庭園に戻っているのでしょうか……
「……アレには勝てませんね。神秘は防御力の増強にしか使っていないにも関わらず、あの技量に身体能力……」
神秘の測定装置をチョーカーにしてつけていたのが幸運でした。なかなか有意義なデータが取れました。
「……クックック……しかし、もう死ぬのは御免ですね……どう脱出しましょうか」
しまってあった帰還用の装置はさきほど両断された時に一緒に破壊されてしまいました。発動までに5分もかかる非常に扱いに困る装置だったので、彼女の攻撃を避けながら起動しても無駄だったでしょうね。
それにしても……確かに両断され、身体が機能を失う感覚があったのですが……まるで夢のようで、死んだ実感が湧きませんね。面白い体験でした。二度とやりたくはありませんが。
「フフフ……派手にやられたな、黒服……」
!?
「あ、貴女は……!」
カオリさん……なぜここに……
「警告はしたさね……秘匿を破らんとし、死んだのは貴公の責任だ」
……そうですね。
「ええ、ええ。わかっています。彼女は秘密の番人。このようなことも当然の結果でしょう……ですが一つ、聞きたいことが」
「……なにかね?」
「……ビルゲンワースは悲願を達し、『崇高』に見えたと貴女は言いました……その『崇高』はどうなったのです?」
「……ほう?どう、とは?」
「『崇高』とも言えるほどの強大な神秘は確かに数十日前、ヤーナム自治区、ビルゲンワース啓蒙学院の方面から観測できました。しかし、それより後は観測できていない……同時期に貴女を観測できるようになりましたが」
「ふむ……」
「貴女が言った【悪夢】の中に存在しているのかと思いましたが……
あの神秘が現れたとき、確かに天の頂のヘイローが動いたのですから。
「貴女がたは、本当に『崇高』にまみえたのですか?」
「……貴公、よい研究者だな」
雰囲気が変わる。空気が変わる。
「洞察に優れ、無遠慮で、神秘に酔っている。よい研究者だ」
その冷たい声に、背筋が凍る。
「確かにビルゲンワースは、『崇高』に達したよ。しかし、『崇高』とは理解できぬ存在だ……」
先ほどの剣を振るう彼女など、目の前の
「『崇高』は、『上位者』とは、『神』と同義、高次元の存在。人に、御し切れるはずもない。同時に、あまりにも強大なその存在は世界に許容されるはずもない」
計測装置が狂う。理解したくないと脳が叫ぶ。
「わからないだろうか?ここを作った存在は誰なのか。なぜ、生徒たちが協力したと言いながら、あったのは死体ひとつだったのか」
思考が真実に辿り着く。蒙が啓かれていく。
「なぜ、私が、ここにいるのか」
ああ、なるほど。そういうことですか。
セイアが見てないことを確認して、黒服に
黒服、啓蒙+10
ちなみに作者は黒服がブラボ世界に行ったらメンシス学派になると思ってます
アンケートは、ネタ切れを防ぐために他作品のネタも適度に使っていくかのものです。ブラボメインにダクソやエルデ、ACネタを差し込んでいく感じ。ブラボメインを変えるつもりはありませんので安心してお気軽にご投票ください。
ああ、小さな彼らは、このハーメルンの住人です
あなたのような読者様を見つけ、感想を行い、高評価をする……
言葉は分かりませんが、かわいらしいものですね
この小説に他フロム作品の要素は
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入れるな!!
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ソウルライクならヨシ!
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AC系ならヨシ!
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両方ヨシ!!むしろ入れろ!!