その後、夜遅くまで補習授業部の勉強は続いた。
「コハル、質問。この問題なんだが……」
「ん?この問題は……えっと?」
「コハルも知らない問題か?」
「ううん、参考書で見たような……ちょ、ちょっと待って」
「たしか、持ってきてたはず。んしょっ」
コハルが取り出すは、『R-18』とがっつり書かれたエロ本。
「この参考書に載っているのか?」
「うん、この参考──あれ?」
「エッチな本ですねぇ」
「え、エッチな本ですよ……?」
「ふむ、実に性的な本だな……」
“エッチな本だね……”
「う、うわぁぁぁぁあ!?な、なんで!?」
「コハルちゃん、それエッチな本ですよね?まぁある意味参考書かもしれませんが。隠しても無駄です、『R-18』ってバッチリ書いてありましたよ?」
「ち、違う!見間違い!とにかく違うから!絶対に違う!」
「私の目は誤魔化せませんよ、確実にアレなことをする本でした。それも、結構ハードな……」
「トリニティでも、いえ、キヴォトスでもなかなか見ることができないレベルの内容とお見受けしました。きっと肌と肌がこすれ合い、敏感な部分を擦り合わせ、嬌声が飛び交い理性が飛び去るような……!」
「性行為など全てそんなものではないか?」
“カオリ、キヴォトスは学園都市だから……未成年が大半だからああいう本は存在してるだけで割と過激なんだよ”
「そんなものか……そうだな、知らぬ間に赤子を孕ませられるようなこともないものな」*1
“……うーん、カオリの居た場所の治安が圧倒的に悪い”*2
「どうしてそのような本を持っているのですか?確か校則でも禁止されていたと思いますが……?」
「い、いや、そのっ……こ、これはほんとに私のじゃなくて、えっと……」
「でもそれ、コハルちゃんのカバンから出てきましたよね?それに、合宿所まで持ってくるなんて……お気に入りなのですか?」
「……??!!??」
「そうですか、あの真面目なコハルちゃんが、エッチな本を……」
「……いえ、なるほど。そうですね。考えてみたらそんなに変なことでもありませんね?」
「予行演習もバッチリ……つまり、合宿のために必要なものなんですよね、コハルちゃん♡」
「こ、これは違うんだってばあぁぁぁぁぁああ!!」
「?」
「少しかわいそうになってきたぞ」
“そうだね”
「そ、その、ハナコちゃん、そのあたりで……」
「あっ……やり過ぎてしまったかもしれませんね、本当にごめんなさい……お話が合うかと思ったのですが……」
「うぅ……ううぅ……」…スンスン
「えっと、コハルちゃん……その、正義実現委員会としての活動中に差し押さえた品を、つい入れたままにしてしまった……とか、そういう感じなんですよね?」
「……うん。私、押収品の管理とか、してたから……これは、本当にその時のやつで……」
「なるほど。そういえば、トリニティの古書館の地下には何やら、禁書がたくさん積まれているという噂も聞きましたし……正義実現委員会がそういったものも含めて、色々と差し押さえているとしても、何も不思議ではありませんね」
「……禁書?政権批判か?それとも宗教批判?」
“どうだろうね……学生のものだし平和なものだと思いたいけど”
「うーん……であれば、押収品ってできるだけ早く返してしまった方が良い気がするのですが、どうしましょう?今のうちにこっそり行って、バレないように正義実現委員会のところに戻してくれば大丈夫じゃないですか?」
「えっ今?」
“それならコハル、一緒に行く?”
「せ、先生が?」
「……そうですね。先生が一緒であれば、万が一ハスミさん辺りにバレたとしてもそこまで怒られないでしょうし……」
「ところでコハルちゃん、それはそれとして、もし他にもお勧めがあればぜひ♡」
「う、うるさいっ、バカっ!!」
こうして、先生とコハルは正実本部へいった。同時に、見られている感覚も消えた。どうやら今は先生に視点がついていくらしいな。
「カオリ、あれは結局何だったんだ?」
「知らなくていい、アズサ。アレは洗脳書の類だ」
「な、なんだと!?コハルはそんなものを!?洗脳を受けているのか!?」
「いや、問題はない。洗脳された気配はなかった」
「そ、そうか……よかった……」
「アズサちゃん、どうかそのままでいてくださいね?」
「どうしたんだヒフミ」
「うふふ……純粋ですね♡」
「ハナコ?」
時間は過ぎて。
「ふぅ、スッキリしました!」
「もうお風呂に入ったんだ。早いねヒフミ」
「うふふ、そうですよね。なにせ、ヒフミちゃんは朝にシャワーを浴びられず、今日一日あるがままの香りで──」
「わわっ!そ、その言い方は恥ずかしいです……っ!うう、寝坊さえしなければ……」
「……でも、それは私たちの模試を準備していたからだ。ごめん、ヒフミ。もし明日の朝も起きるのが辛かったら言って。今度はヒフミの体を洗ってあげる」
「い、いえ、それは遠慮させていただこうかと……!?」
「自分で洗えばいいでしょ!子供じゃないんだから!」
「……元気だな」
“どうしたのカオリ、年寄りみたいなこと言って”
「いや、わいわいとできるのは羨ましいと思ってね……ヤーナム自治区は排他的だったし、元いた場所もそこまで他人を受け入れる場所ではなかった」
“そっか……混ざってみれば?”
「いや、問題ない。もう1人には慣れたし、そういう気質になった」
“そっか……”
「うふふ、親交を深めるためにプールに全裸で飛び込むのはどうでしょう♡」
「プールで全裸!?駄目よ!エッチなのは死刑!そもそもあんた昨日は水着ちゃんと着てたじゃない!」
「あら……?よく思い出してみてください、コハルちゃん。私が昨日プールで着ていたものを……」
「え、あ、あの水着が何……?」
「あれは、本当に
「!?!!?」
「み、水着じゃなかったらなんなのよ!」
「あら、カオリさんがやっていたじゃありませんか。し・た・ぎ、です♡」
「……!?!?」
「でも、私が着ていたのがもし水着じゃなかったとして、何が変わってしまうんでしょうか?すでにカオリさんが下着だったのに」
「え、えっと……」
「そもそも、水着と下着の違い……それはなんでしょう?防水機能?お肌の保護?デザイン?露出の範囲?」
「コハルちゃんは、私のものは見た目で判断できず、水着だと思っていましたよね?」
「……???」
「実はあれが下着だったとして……その『真実』かもしれない何かは、どうすれば証明できるのでしょう?」
「証明できない真実ほど無力なものはない……そうは思いませんか?」
「な、なにを言ってるのかわからない……け、結局どういうこと!?」
「あの水着可愛かったですよね、というお話です♡」
「……はぁ!?全部冗談!?」
「……なるほど、5つ目のアレか」
「アズサちゃん?」
「ふむ、5つ目というと……『楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか』だったかね?私も友人に聞いたことがある」
この世界のセイアから直接は聞いたことないけどね……
“カオリ?”
「そうだ、カオリ。私も友人に聞いた話だが……キヴォトスに伝わる七つの古則。たしか、その五つ目。誰も証明できない楽園は存在し得るのか……そういう禅問答みたいなものだったと記憶している」
「カオリちゃん、アズサちゃん……どうしてその話を……その話を知っているのは……」
「もしかして、2人とも、セイアちゃんに会ったことがあるんですか!?」
「……」
「ふむ?」
“セイア?”
「……セイア?」
「ティーパーティーの、セイア様のことでしょうか?」
「……すまない。この話はただ、どこかで聞いた記憶があるだけだ」
「そうさね。私も、どこかの物好きから又聞きしただけさ」
「そうでしたか……そういえば、アズサちゃんもカオリちゃんも転校生でしたね……Vanitas vanitatum ……それに、ビルゲンワース啓蒙学院……ということは……」
「……いえ、何でもありません。もう遅い時間ですし、そろそろ寝た方が良さそうですね」
「では、今日も一日お疲れ様でした!」
深夜……
アズサがどこかに出かけようとしていた。
「アズサ、どこへいくんだい」
「……!?……カオリか。すこし、見張りをしにな」
「見張りは全て私に任せると言っていただろう……そんなつまらない嘘をつかず、出かけたいと素直に言えばいい。私は見逃してやるさね」
「……わかった。次からは言おう」
「ああ……それとだが、密会は避けた方がいい。無線機でも持ち込むことさね」
「!!」
「みんなにバレないようにね」
「……わかった」
アズサ行っちゃった……まぁまだ裏切るのを覚悟してないしな。
「ハナコ、聞いていたのだろう?」
「……はい」
物陰からハナコが出てくる。
「人には知られたくない秘密というものがある。君ならばはっきりとわかっているはずだがね……」
「……そうですね、あんまり探るのはよしておきます」
「まぁ、君の秘密の場合は……ヒフミと先生ならば必ずわかってしまうだろうが……」
「……そうですね」
そうしてハナコも戻って行った。ふぅ、一件落着だな!!
コハルちゃん、騙されやすそうで不安です
ヤーナムの市街から谷を挟んだ東側に、聖堂街と呼ばれる街があり…… その最深部には、小説の源があるという、古い大聖堂があります
「青ざめた血」がなんなのか、それは分かりませんが
なんであれ、特別な小説の話であれば、そこが手掛かりになるのでは
ごほっ、ごほっごほっごほっ