あれから一週間が経ち、第3次特別学力試験が明日へと迫ってきた。まぁ俺には試験自体は関係ないことだが……とりあえず、この一週間のことを、軽く振り返っておこう。
第2次特別学力試験から帰ってきた先生たち。原作通り、ゲヘナでの逃走劇の後に試験会場を爆破されてしまったそうな。
その後、先生と補習授業部の皆は必死に勉強した。第3次特別学力試験までの一週間、本当に必死に。全員が合格を目前にした点数を取れるようにもなった。
アズサは原作とは違い、俺の助言通りに通信機を持ち込んでいるようだ。おかげでハナコにつけられたりはしていない……まぁ、もう完全に正体に気が付かれているけど。効果的には夜の出歩きが原作と比べてかなり減っている程度だな。
先生はナギサやミカに連絡したりしていたみたいだけど、無意味だったようだ。まぁナギサは完全に先生と道を分ったと思っているし、ミカはこの後の一大イベントに備えてるはずだからね。
そんな中、俺はといえば──ミネのところで俺が思い至ってしまった、特大ガバを調査しようとしていた。そう、ツルギに俺の血が取り込まれている可能性のことだ。
結論を言えば、ツルギには俺の血が取り込まれていた。戦っている最中に再生しあうもの同士が、互いに血塗れになっていたらまぁそうなる。傷が治る間に、傷口に入った俺の血液が取り込まれでもしたんだろう。
これはまずい、と思い『獣血』や『虫』、『精霊』なんかがどのようになっているかを調査したのだが……
何を言っているかわからないと思うが、俺もどうしてそんなことになったのかわからない。
おそらくツルギの神秘と『精霊』がよくわからない化学反応を起こしたり、ツルギの血と『獣血』が何かよくわからない相互作用を生み出したのだと思うが……
ヤーナムの、そして上位者の血に適応したツルギは、その強靭な肉体が出会ってからの1週間で完全に別物と思えるほど強化されていた。
思えば、美食研究会を俺があっさりと倒した時にもすぐに辿り着いていたな。原作なら補習授業部と戦闘後、美食研が逃走する時間的余裕があったくらいには到着が遅かったはずなのだが……
ああ、ツルギが本気で戦った時のスペックがまだわからない……どうしようか。観測しておかないと不味いような気がする。
とりあえず、出血などをした場合は消えるようにしておいた。ツルギにも説明してあるので問題はない。
さて、振り返りはこれぐらいにしておこう。現在俺は、補習授業部の合宿場の屋上にいる。
ヴァァァァ
足元には、みんな大好きな使者。今日も今日とて盗み聞きだ。
最近暗躍ばかりだな。まぁ本筋を乱さないようにしてるのはあるが。
『アズサ、日付が変わった。明日の午前中だ、約束の場所で命令を待て』
『ま、待ってサオリ、明日は……』
『何か問題が?』
『ま、まだ準備ができてない。計画よりも日程を早めるのは、リスクが大きすぎる』
『いや、明日決行だ。これは確定事項、しっかり準備をしておけ。明日になれば、全てが変わる。私たちアリウスにも、このトリニティにも、不可逆の大きな変化が起きることになる』
『……』
『トリニティのティーパーティーのホスト、桐藤ナギサのヘイローを破壊する……そのためにお前はここにいるんだ。お前の実力は信頼している。上手くやれ、百合園セイアの時のように』
『……分かった。準備しておく』
『……アズサ。忘れていないだろうな、「vanitas vanitatum」』
『……全ては虚しいもの。どんな努力も、成功も失敗も……全ては最終的に、無意味なだけ……一度だって忘れたことはない』
はい、アズサとサオリの会話。今回は無線機越しだが、原作と会話内容は変わらな──
『……そうか。ん?アズサ、少し待て』
『……?』
──おや???
『……マダムから連絡だ。
『!!?』
ファッ!?俺!?
『……ま、待ってサオリ。カオ──んんっ、月乃カオリは剣先ツルギと同等の強さ、急な予定変更で捕えられるほど甘くはないはず。日程を早めるだけなのとは訳が違う』
……まぁ、そうだな。ミカを抑えている間に攻撃されれば確かにきついが、あの程度の数で抑えられるほど甘くもない。ミカ以外にツルギやミネほどの火力を持っているやつもいないからな……
『だから懐柔、不可能の場合は捕獲と言われている。兵力については、動員も4部隊分は増やす、問題はない』
『……分かった』
だからって4部隊増えるのは流石に厳しいなぁ!?まぁ原作通りなら幾分か余裕があるけど、それにしたってきついなぁ!?!?
俺はツルギと違って範囲殲滅苦手なんだよ!!他の子達もいるから発狂させる手段もあんまり取りたくないし!!
狩人にとって一番避けるべきなのは集団戦なんだよ!!
『懐柔はお前がやれ、この数日間共にいたお前の方が効果が高いだろう』
『……わかった』
ああ、決定事項なんだ……どうせベアトリーチェのことだし、懐柔じゃなく捕獲がメインなんだろ。どうせ生徒のことは実験材料程度にしか見ていない。それにしてもベアトリーチェお前、本当に俺と敵対するつもりか?
俺を捕まえるくらいならヤーナム自治区に攻め入る方がまだ楽だと思うがね。結界の補強の時に構成を弄って、外に出すとやばそうなものは通り抜けようとする時に夢に送る状態にしてあるからベアトリーチェが回収しうるものはないと思うが。
いや、だから俺を捕まえるのか?ヤーナム自治区から唯一出てきた俺を。黒服も同じように俺に接触してきたしな。
「黒服」
「クックック……どうしましたか?」
俺が声をかければ、いつの間にか背後にいた黒服が俺に応える。
いや怖えよ。いるのは知ってたけど本当にいつのまにかいるから気がついた時にビビるんだよ。
「マダムは私が始末する。他のゲマトリアに、狩りへの邪魔立てを許すな」
「ええ、分かりました。根回ししておきます。研究成果は……」
「ヤーナムに関するものがあればそれらは全て抹消。それ以外はサンプルや理論含め全て吸収してかまわない」
「クックック……了解しました」
そうして夜の闇の中に消えていく黒服。これで根回しは問題ないな……黒服は優秀だから、要点だけ伝えれば上手く動いてくれるのもありがたい……最近は黒服になんだか執事的な立ち回りをされている気がする。
それにしても最近はこうして暗躍していてもめっきり上位世界……プレイヤーたちの視線を感じない。まぁ補習授業部の物語も大詰め、そちらの方向ではよく感じるしそっちを映しているのだろう。
あとは……この後に備えて、とある対策を講じておくか。うまくいけばいいが。
学生ならば
中からは四人の女の子の声と、一人の男性の声。先ほどからなにやら騒がしい。
そして、その部屋へと入る扉の前で俺は、ぼーっと立っていた。まぁ、中の話を聞いてるだけなんだが。
部屋の中で行われている会話自体は原作通りのものだ。ティーパーティーの対応、正義実現委員会の配置、アズサの告白、そして真意……
まぁ、そろそろ俺も介入しだす頃合いだ。先ほどのベアトリーチェの件もそうだがね。とりあえず、今はこの部屋に入るとしようか。
『……カオリちゃん、入ってきてください。いますよね?』
ドアに手をかけた瞬間……ドアの向こうから、声をかけられた。
……ま、バレてるよな、ハナコになら。
俺は素直に部屋に入り、そこにいた面々……先生、ヒフミ、コハル、アズサ、ハナコに姿を現す。
「……気が付かれるとはね。上手く隠れていたつもりだったが」
「カオリちゃん……」
「カオリ!?」
「……」
“……やっぱり、いたよね”
「うふふ、それはもう……全て聞いていましたよね?」
ニコニコと微笑むハナコ……今は何よりその微笑みが怖いのだが。
こんな可愛い子があんなえげつない脳破壊を天然でするんだもんなぁ……
浦和ハナコには人の心がわからない。(嘘)
「明日の試験が妨害されること、アズサがトリニティの裏切り者だということ、その真意、そしてこのままではいけないこと……全て聞いていたさ。そしてハナコ。君には策があるのだろう?そうでもなければ、わざわざ私を呼びはしない」
「ふふ、そうです。何せここには正義実現委員会のメンバーと、ゲリラ戦の達人と、ティーパーティーの偏愛を受ける自称平凡な人と、トリニティのほぼ全てに精通した人がいます」
「……策?」
「へ、偏愛……!?」
「その上、ちょっとしたマスターキーのような『シャーレ』の先生と……そして、学園最強クラスのイレギュラーな戦力が1人います」
“ま、マスターキー……まぁ……”
ハナコのナチュラルな鍵扱いに先生が少し傷ついてる……
やってることはほぼそうだから否定しきれないよ、先生。
「この組み合わせであれば、きっと……トリニティくらい、
「……はい!?」
「ちょ、ちょっと待って!?ハナコ、さっきから何言ってるの!?」
「……」
「……くくっ」
“……ふふ”
先生はこういうの好きだよね。まぁナギサに怒ってるのもあるだろうけど。それにハナコが何をやるかもわかったみたいだ。
「何をするも何も、ただ試験を受けて合格するだけです♡まぁ、ちょーっと寄り道が大きくなりますけど♡」
「さぁ、今こそ力を合わせる時です。行きましょう!」
ツルギ強化フラグ一丁!!
あなたの知る通り、医療教会は血の小説の担い手です
ただ、私のような狩人は、教会の内情に詳しくはないのですが……
血の小説、その源となる
また、聖堂街の上層は、古い小説の作者たちの住まいです
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