時空未知様の『極夜に囚われたセリカ』とコラボさせていただくことになりました!ありがたい、ありがたい……詳しくは後書きにて!
では、本編をどうぞ!
「……さて」
狩人の夢、工房にて。
上位者であり本来の月の狩人たる少女が服を着るのを、俺は待っていた。
予想通りであれば、俺が操作している時に常に着せていた服を着ているのだろう。
そう待っていれば、スッと工房から出てくるその上位者。階段を降りてくると、俺の前までやってくる。
ちなみに人形は今は紅茶の準備中だ。
「お待たせしました!」
「ああ、ようやく落ち着いて話せるか」
工房から出てきたその少女は、ウェストコートに丈の長いコートをさらに羽織った衣装。
胸元には翠色のブローチと、レースのような布。
背中にはマントがあり、下半身はズボンにブーツ……
とても見たことがある……というよりも、Bloodborneプレイヤーならほぼ見たことがない人はいないだろう。
DLCパッケージを飾ったあの『時計塔のマリア』の狩装束だ。
俺がBloodborneをやっていた頃は聖歌隊装束・処刑隊装束・マリアの狩装束・人形の服・ヤマムラ装備・ヤーナムの狩装束を組み合わせて着ていたな。
聖歌隊と処刑隊は高貴さが、マリアとヤーナムの狩装束には高潔さが、ヤマムラ装備には異邦の流浪人ぽさが、そして人形の服は可愛らしさがあったから。
まぁたまに全裸アルデオや全裸檻、全裸患者頭、全裸王冠なんかもしてたが……
「……ん?帽子はどうした?」
「狩人の夢で被るものでもないと思いまして」
そうか……?ゲールマンも人形も被ってたが……?
まぁ、室内室外の価値観で言うなら狩人の夢は家のようなものだし、別にいいのかもしれない。
帽子は被っていない代わりに、髪を結って前に出したルーズサイドテールにしている。
人間離れした美しさだ、傾国の美女と言われても信じてしまいそう……まぁ、啓蒙がなければそこまで影響されることはないと信じたい。
啓蒙がない人間がこの娘を見ても、普通の少女として認識する……はず。
曲がりなりにも上位者の依代、完全に正しく認識するには啓蒙が必要なのだ。
「さて、これからのことを話そう……まずは座れ」
「……はい」
服を着たのち、改めて俺に抱きつこうとしていた上位者を人形の用意した椅子に座らせる。
気を抜いたら一瞬で捕獲されかねん……
「まず、お前は私と共にキヴォトスに来ること」
「はい!」
にっこりと笑う上位者。
嬉しくて仕方がないとでも言いそうな顔をしている……が。これ、キヴォトスに行けるのが嬉しいんじゃなくて俺と一緒なのが嬉しいの、おかしいと思うんだが。
「俺がナギサに掛け合い、お前を俺の姉妹として「伴侶として」……しま「伴侶です」……勘弁してくれ」
押しが強すぎるんだが???
あと俺まだこいつを嫁にしたつもりないんだが???
「伴侶がダメならお嫁さんか……妻でも……あ、パートナーとか……!」
「全部同じじゃないか」
せめて付き合いから始めるとかさ、そういうのあるじゃん!
どうして既に結婚まで終わってるんだよ!!
早いよ!!流石に早い!!
「……とりあえず。俺がお前をビルゲンワースからの関係者としてトリニティに入学させる……いいな?」
「はい♪」
返事だけはいいんだが……全く……
まぁともかく気を取り直さなければ……ペースに呑まれるな……
「トリニティに入学した後は基本、俺……私と行動してもらうことになる。お前にとっては関係ないだろうが」
こいつと話していると素の「俺」が出てしまって危険だな、狩人のミステリアスな雰囲気に「俺」は似合わない……
ヴァルトールみたいな気高い雰囲気なら別だろうけど、俺こと月乃カオリは方向性としてはミステリアス美少女な狩人だからな!
「ふふ……これからカオリさんと一緒にいられるの、嬉しいです♪」
「あー、うん、そうだな……」
花のような笑顔でそう言われると何だか恥ずかしくなってくるな……
「さて、キヴォトスに行くとなると一つ問題がある」
「何でしょう?」
はて、なにも思い当たらない、といった風に首を傾げる上位者。
しかしコレは大きな問題なのだ、なぜならキヴォトスにおいてどころか全ての事象において、コレがなければ非常に不便であるから。
それはすなわち──
「お前の名前だ」
「……なるほど」
そう返事をするが、目の前の上位者はふむ、と考え込むと首を傾げた。
プレイヤーネームはいつ確認しても文字化けして読めず、また俺も思い出せない。
見る限り目の前の上位者もまた、名乗り出ないところを見るに名を思い出せないか、もしくは持ち合わせていないのだろう。
「……どうしましょう」
「……ふむ。なら、俺が名前をつける。苗字は「月乃でお願いします」……わかった」
元々姉妹ということにするつもりだったから同姓にするのは別に構わないのだが……絶対、「姓名が同じだから夫婦です!」っていうだろこいつ。
姉妹って周知しておかないと後で大変なことに……というか絶対面倒なことになるな。
主にコハルとかハナコとかそこら辺で。
ふむ、それにしても名前、名前……万華鏡のような世界にいて、月の魔物を引き継いでいて……
月の魔物といえば赤い月……?
こいつの目は……赫……
万華鏡は視覚効果……ふむ。
「そうだな……お前の名前は……月乃ヒトミ、でどうだ?」
俺がそういうと、彼女は目を閉じて──にこり、と優しく美しい笑顔を俺に返した。
「ふふ、気に入りました。私、瞳の上位者、レティナはこれより月乃ヒトミと名乗ります」
……まて、お前普通に名前あるの???
さっきの「何も覚えてません」みたいな顔フェイクだったわけ???
「……おい」
「……えへへ」
今自分で名乗った名前の『レティナ』は確か英語で『網膜』、か?
目に入った無数の光を受け取り認識する器官……だから
となれば最初からヒントは与えられていたわけで、自然と強烈な瞳に目がいくのも当然なわけで……一杯食わされたってわけか!
こいつ、やっぱり食えない奴だな……
「ところでヒトミ、キヴォトスに行くならヘイローを付けなければいけないが……」
「ヘイロー……ああ、光輪ですね」
ヒトミの肉体にヘイローはついていない……そもそも俺の身体についてるヘイローだって何か効果が
肉体に後付けで神秘を練り回して具現化しただけで、正式なヘイローじゃないから銃弾なんかも俺にはしっかり通る。
実際ツルギ戦で俺はゴリッゴリに怪我してたしな。
俺が無事なのはひとえに狩人、上位者の肉体だから。
上位者とて肉体強度は普通の範疇だ。そう、『Bloodborneの中での』普通だが。
通常の銃弾が効きづらいと明記されている獣を狩り殺す武器で狩っている存在が、通常の生物と同じ強さなはずがないからな、そういうことだ。
そんな相手に大怪我させられるツルギの攻撃力が単純におかしいだけ?それはそう。
学園最強格たちは多分こぞって俺の防御を抜いてくるから、どうにか対策しないとなぁ。
さて、話を戻そう。
「ヘイロー……カレル文字でいいでしょうか」
「いいんじゃないか?」
俺も同じだし。
「では……えい」
ふぉん、とヒトミが指を振れば、頭に現れるのは
「……カレル文字、『瞳』か」
「はい。見捨てられた上位者、星の娘たる彼女の声を表すものですが……私にピッタリではないですか?」
「ああ」
カレル文字は表音文字。音を示し、文字そのものに意味を持たないものだが……
このカレルの元となった彼女の声は、果たして何の意味を持っていたのだろうか。
「ところでカオリさん」
「なんだ?もう準備も終わりだろう。数日の間はここにいてくれ、私がナギサと話をつけるまで」
「はい、それはいいんですけど……」
「……?」
何やら言い淀むヒトミ。なんだ、何が言いたいんだ?
「カオリさん、どうしてその身体、そんなに弱いんですか……?」
「…………は?」
「狩人様、紅茶をお持ちしました……狩人様?」
タイミング悪くやってきた人形が目にしたのは、ポカンとした表情で口を開いたカオリが、信じられないといった目でヒトミを見る様子だった。
時空未知様
『極夜に囚われたセリカ』
side after 聖杯、又は山を登る船(1)
こちらが作者様と作品のページになります!何話か書いていただけるそうで……感無量です……!
Bloodborneの陰鬱とした世界観を素晴らしく表現している作品ですので、Bloodborneが好き、曇らせが好き、という方は是非お読みください……!
坂本歪田様に描いて頂いた月乃カオリのイラストです
【挿絵表示】
服の描き込みが素晴らしい……美しい……
ありがとうございました!
……ああ、ああ、あんた…… 高評価してくれ……
あいつが……
おぞましい、醜い獣がやってくる……
ああっ……呪われたルドウイークが……
感想してくれ……感想して……くれ……
オドンと月の魔物の扱い
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『姿なきオドン』と『月の魔物』は別存在
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『姿なきオドン』と『月の魔物』は同一存在