見たまえ!青ざめた血のアーカイブだ!   作:めろんムーン

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47.ステータス詐欺

 

 

 

ガチッ!キンッ!

 

 

 

ガァン!!ガキィンッ!!!

 

 

 

 剣戟の音が花畑に響く。

 そこは狩人の夢、その墓所。

 庭園とも言える、大樹の麓の花の園だ。

 

「ぐっ……くっ!?」

 

シャン!

 

 

 そこで俺は──

 

 

「チェックメイト、です」

 

 

 ──ヒトミに、刃を突きつけられていた。

 

 

 

 

 

 ……やがて幾瞬の時が過ぎた後、彼女はその刃を下ろし、緊張を解く。

 対する俺も、息を整え立ち上がった。

 

「はぁ……なるほど。()()だ。()()()()()()()()()()()()()()

 

「カオリさんの戦い方は完全に()()()()でしたからね」

 

 

 

 俺とヒトミがやっていたのは模擬戦。

 ヒトミが言った、『俺の身体が弱い』という事実を決定的に裏付けるためのもの。

 

「しかしどうして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 ヒトミの肉体は俺の身体と同じく全ステータス99、レベル544……のはずだ。

 彼女が実際にそう言い、そしてその肉体こそが彼女が一番慣れ親しんだ強さなのだと。

 故に彼女と俺は同じ強さの筈なのだ。

 

 なのだが……

 

 

 実際に戦ってみると、彼女と鍔迫り合いをすれば筋力の差で押し負け、剣を振るえばまるで俺を指導するかのように()()()()()されるほどに技術の差は開いていた。

 

「ふむ……」

 

 先ほど俺が戦った際に流した血を指に取り、眺めるヒトミ。

 その、血よりも鮮やかな赫の瞳は俺の血を眺めて……ひとつため息をついた後、その血を何事もないように()()()()()

 

「おい、拭わなくて良いのか」

 

「これぐらいなら勝手に身体が吸います、ほら」

 

 手を開けばそこに血はなく、荒れ一つない彼女の掌が存在していた。

 

「……リゲインか」

 

「ええ。それはともかく……カオリさんの肉体、ひいてはカオリさんそのものの弱さの原因がわかりました」

 

「もう少しオブラートに包むなりできないのか……?」

 

 そんな俺の言葉を無視しつつ、彼女はいつのまにか近くにいた人形が用意した黒板の側に立ち、チョークを手に取った。

 

 ……どこから出したんだそれ、いや狩人の夢の中ならば自由自在なのはそうなんだけども……

 

 

 

「カオリさん、あなたの身体……正確には元は私の身体ですが、その肉体にはセーフティロックがかかっているようです」

 

「セーフティロック?」

 

 なんだそれ、初めて聞いたぞ?

 というより、そんなものがかけられること自体が驚きだ。

 ずっと俺の身体は自由自在に動かせていると思っていたのだが……何の制限がかかっている?

 

「明確にわかるのは()()です。まず先に言っておくこととして、カオリさんの肉体は表示ステータスこそ99ですが、その実、内情のステータス的にはそれぞれ20程度です」

 

 そう言い、彼女はカツカツと黒板に文字を書いていく。

 まるで教師のようだ。いや、狩人歴なら向こうの方が確実に上なのだが。

 

 ちなみにステータスやメニューなどの俺にしか見えないもの、あれは目の前のヒトミが上位者の権能で整えたものらしい。

 システム構築すらできるとは、目の前の上位者は何でもアリだな。

 

 にしても99が内部数値20は流石に詐欺では?

 合計レベルは単純に考えて120程度ってことだろ?

 

 

 

 

 

「一つ目は筋力。カオリさんの無意識で、本気で物を扱っても自分が普段の日常生活で困らない程度に抑えられています……これ自体は手加減の範疇ですが、戦いの際にこの制限を外せていません」

 

 なるほど、無意識のうちの手加減を外せていない……外すのになかなか苦労しそうだ。

 筋力は裏切らない、どこかのだれかもそう言ってたし早急に何とかしたいところ。

 

 

 

 

 

「二つ目は血質です」

 

「血質?」

 

 俺は前世で攻略していた時、もっぱら血質ビルドを愛用していたんだが……

 その血質が低い、だと?

 この身体は目の前の、ヒトミが元々使っていたもの……つまり、狩人の身体のはずだが。

 そもそも血質ってどう下がるんだ?

 

「カオリさんの身体は本来、血質が物凄く高い状態でした……が、上位者となったことでその血質は限りなく下がってしまっています」

 

 なるほど、血質は獣性と直結している……故に神秘と相反する。

 そのために血質が低くなっているのか……今までキヴォトスで血質武器を使っていなかったからわからなかった……

 

「こればっかりは……地道に血質を高めるしかないでしょう。輸血液を使う、上位者の権能による虫と獣血の精査、純度の向上……血の透析……」

 

「一朝一夕で何とかなるものではなさそうだな……」

 

 

 

 

 

「三つ目は技術。カオリさん、実戦経験少ないですよね?」

 

「ああ」

 

 俺が戦ったのはこちらの世界でのみ。

 戦ったのはツルギ、ミネ、アズサ、美食研究会、そしてアリウスモブたちか?

 実戦経験が少ないとは確かに思うが……

 

「狩人には『狩人の業』と呼ばれる、最低限の技術があります。カオリさんは今、それに従って体を動かしているだけの、いわば自動人形です」

 

 なにそれ初耳!

 自動人形って……ミコラーシュのとこにいる木偶みたいなもんってことか?それはやだな……

 

「狩人の業……簡単に言えば、ゲームの定められたモーションを身体が勝手に出してくれるやつです。システムアシストです」

 

「随分と俗っぽいな」

 

 どこで覚えてきたんだそんなの、もしかしてゲーム開発部とか行ってきた?

 君、元はヤーナム人だよね?

 

「こればかりは技術ではなく技量……実戦経験を積まなければどうにもなりません」

 

「実践経験……なるほど……」

 

 つまりは、システムアシストを無くしてマニュアル操作で戦闘できるようになれ、というわけだ。

 

 

 

「とは言え、カオリさんにも良い点はあります。身体の頑丈さ、スタミナの無尽蔵さと神秘の扱い、そして量……これらはレベルを明らかに超えた量を保持しています。古狩人や獣でも歯の立たぬ、上位者ならではと言いましょうか」

 

 ふむ、頑丈さにスタミナに神秘……確かに全力で戦ったというのに、先ほどの模擬戦で俺は疲れていない。

 

 頑丈さも、それ自体が体力に直結してくる重要な要素だ。

 こればかりはどうしようもないと思うので、最初から頑丈な上位者で良かったとも思う。

 

 神秘に至っては意識するだけで自在だ。なるほど、並大抵のものにはできない……

 それこそ神秘の扱いはミコラーシュのそれすら凌駕していると言えよう。

 

「これらの利点を押し付ける戦い方を意識しつつ、技量、筋力、そして血質を改善し経験を積めば……古狩人に引けを取らない強さになると、私は思います」

 

 目の前の彼女はそう締めくくり、チョークを置いて黒板を片付けたのだった。

 

 

 

 

 

「……それで?実戦経験を積めば良い、というのはわかるが、どうすればいい?ここでお前と戦い続ければいいのか?」

 

 俺はヒトミにそう問いかけるが、ヒトミは首を振りそれを否定した。

 そして、懐に手を入れ……彼女は()()()()を取り出す。

 黄金に輝く、宝物の如き、古臭い形の杯。

 

「……それは……!」

 

 それに私は見覚えがある……無いわけがない。

 それは狩人ならば誰もが夢見る楽園、理想郷への入り口……!*1

 我らが地底、導きの古代遺跡へと繋がる、強者の扱う願望機……!!

 実家のような安心感すら覚える、その杯は──!!!

 

聖杯です」

 

 

 

「Oh! Majestic!」

 

 

 

 素晴らしい、転生先でも地底人になれるとは!

 それを出すということはつまり、そういうことだろう!?

 全ての地底を踏破し、冒涜的なほど漁り、そして血晶石を求めよと!

 三デブを、銃デブを、オーラデブを、貞子を、血い渇を、脳喰らいを、エブたそを、獣魔術師を、番犬を、銀獣を、恐獣を、白痴の蜘蛛を、アメンボを、ガゴを、狩人を、獣憑きを、オーラ犬を、サソリを、幽霊を!

 潰して、潰して、潰して潰して潰して潰して潰して!いいってことなのだろう!?!?!?

 

 

「落ち着いてください、目がいつもと比べて少しだけキマってますよ」

 

「ああ、すまない」

 

 ふぅ、続きを聞かねば……

 急がば回れともいう、しっかり説明を聞かねば後々よろしくないことは起こるものだ……

 

 

 

「カオリさんにはお察しの通り、地底に潜ってもらいます。この狩人の夢、そして地底は時間の狭間、眠った直後に起きることもできればキヴォトスでの夜明けに起きることもできるので……何時間聖杯に潜っても、キヴォトスに影響はありません」

 

「!?!?!?」

 

 ら、楽園や……楽園はここにあったんや……

 

「コホン、なるほど。ならばすぐに行こう。今行こう」

 

「はい、そうしましょう!」

 

 

 

 俺はヒトミに渡された聖杯を手に、墓石に向かって儀式を行い……最初の、『トゥメルの聖杯』を作成していた。

 

「最後にひとつ……」

 

「?」

 

 ヒトミが、転送直前の俺に声をかけた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。実戦経験が積めますからね」

 

「なるほど、理解した……寄り道をしろというわけか」

 

「はい」

 

 

 薄れゆく景色。

 その、最後の数瞬に、彼女の声が聞こえた。

 

 

 

「では、良い地底を…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行ってしまいましたか」

 

 カオリさんが聖杯へと赴いた後、私は人形さんに淹れてもらった紅茶を嗜んでいました。

 

 会えたカオリさんとすぐに離れるのは悲しいですが……正直、初めてのカオリさんとの対面は刺激が強くて今も心臓バクバクなので、離れて正解だったかもしれません。

 下手をすれば爆発していたかも……文字通り。

 

 今、私の隣にいるのは人形さん……果たしてこうしてゆっくりとお茶会をするのはいつぶりでしょうか。

 あの獣狩りの夜が終わってから、文字通りの幾星霜が過ぎてしまいました。

 

「この紅茶も久しぶりです……ね、人形さん」

 

「はい、ヒトミ様……いえ、()()()

 

 そう言い直した人形さんに対し、私は手でそれを止めます。

 

「その呼び方はもうおしまいでお願いします」

 

「かしこまりました」

 

 ニコリ、と笑い、私はまた紅茶を一口飲みます。

 

 この狩人の夢を作ったのは私……もっと言えば、()()()したのは私です。

 月の魔物の権能を奪い、上位者となり……しかしこの夢は、囚われた狩人たちの数多の夢と混ざり合ったために崩れ去ることはなく。

 支配権を得た私はここの幼い主人として、人形さんによって育てられました。

 

 カオリさんに力を譲る前に、カオリさんの深層心理に干渉して理想の環境と……そして読み取った『Bloodborne』のシステムを再現して、カオリさんの身体に適応しました。

 私がやったことのフィードバックが、身体を移したのと同時にカオリさんに中途半端に行われたせいで、カオリさんは自分がやった事と私がやった事の区別がついていなかったようですが……

 

 

 

 そんなことを考えていれば、夢に気配が集まり……

 

 ()()()()が、夢へと転がり込んできました。

 

「はっ、はぁっ、はぁっ……!人形!カオリはいるかい!?って、君は……!?」

 

 セイアさん……カオリさんが血を分け与えた人。

 

 ……むぅ

 

 …………まぁ、赦しましょう。

 私は今、満足していますし……何やら急ぎのようですから。

 

 私はニコリと笑いかけ、口を開きました。

 

 

 

「初めまして、セイアさん……カオリさんは今、聖杯に出ています。代わりにお話、聴きましょうか?」

 

 

 

 

 

 

*1
諸説あり




時空未知

極夜に囚われたセリカ

side after 聖杯、又は山を登る船(2)

コラボ2話目でございます……ありがたい、ありがたい……
時系列的には今回の話の後となっています。投稿遅くなって申し訳ない……
修行の甲斐あって、カオリはコラボ先では今話より強くなっている……かも?



坂本歪田様に描いていただいた月乃ヒトミです

【挿絵表示】

や、ヤンデレだ……!

ヒトミちゃん、もといレティナの命名規則は異邦のキャラにつけられる英語名です。
そして名無しの存在に、ゆかりのある単語を組み込んで名前を付けるのと同じように、彼女は『網膜』の名を付けられました
名付け主は一体誰なんでしょうねぇ……ちなみにこれはプレイヤーネームではありませんので、カオリが付けたわけではないです



ああ、ゴース、あるいはゴスム……
我らの感想が聞こえぬか……
けれど、我らは高評価を諦めぬ!
何者も、我らを捕え、止められぬのだ!

オドンと月の魔物の扱い

  • 『姿なきオドン』と『月の魔物』は別存在
  • 『姿なきオドン』と『月の魔物』は同一存在
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