見たまえ!青ざめた血のアーカイブだ!   作:めろんムーン

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5.歴史

 

 先生が来た翌日の朝。支度を終えた俺は馬車の前で先生を待っていた。

 

 “ごめん、待たせちゃったね”

 

 そう言って先生が校舎から出てくる。これで当面はビルゲンワース啓蒙学院を使うのは事務官ちゃんだけになるな。獣に襲われないように特殊な加護を与えておいたから安心していいよ。

 

「ああ、問題ない。先生にどうヤーナム自治区を紹介するか考えるだけの時間を得られたのだからな」

 

 “紹介?”

 

「ああ。我々はこれからトリニティ本校へ向かうが、先生は結果としてこの自治区とトリニティを往復するだけなのだ。それでは味気ないだろう?」

 

 “なるほど。馬車の中から見える景色だけでも紹介する、と……”

 

「そういうことさ……」

 

 ちなみに馬車を操ってくれる御者は、すごいガスコイン神父に似てる。しょっちゅう何かにえずいてるぞこの人。

 

 馬車が動き出すと同時に、私は解説を始める。ちなみに解説するのは『ブラボ世界の』ヤーナムの知識だ。

 

 

 

「今わたしたちがいた校舎は、名をビルゲンワースという。かつての古き時代、ビルゲンワースの創始者たちは、『脳に瞳を得る』ことで【上位者】に至ろうと試みた。ここヤーナムに存在していた地下遺跡より古代人の死体を持ち帰り、彼らが得ていた神秘の力とそれを与えた上位者の研究をしていたのだ」

 

 “【上位者】に至る……?”

 

 ああ、崇高についてこの時間軸の先生はまだ知らないのか?ゲマトリアあたりがポロッとこぼしてそうなもんだけど。そうすれば話が早いんだけど。

 

「【上位者】というのは、端的に言えば神だ。ヤーナムの外では【崇高】とも言うらしいがね?」

 

 “【崇高】……”

 

「そして、長き時の中で、上位者は幾度もその存在を示してきた。

 

 いつからか現れ、人々が崇拝しだした

【姿なきオドン】。

 人々に力を与え、そして裏切られた上位者

【ゴース、あるいはゴスム】。

 星々に見放され、見捨てられた星の娘

【エーブリエタース】。

 憐れなる落とし子

【アメンドーズ】。

 太古の時代、この地で生まれた赤子

【メルゴー】。

 メルゴーを守護する夢の上位者

【メルゴーの乳母】。

 狩人の夢の上位者

【月の魔物】」

 

 “けっこう神様いるんだね!?”

 

「何を言う。多神教など外の世界では普通だろう?」

 

 “まぁ確かに……”

 

「そして、数多の上位者と接触した人々は、それに救いを求めた。自らが上位者になろうとしたのだ。実験により人為的に生み出された、【星界からの使者】。上位者ゴースによって瞳を授けられ、上位者へと至った【白痴の蜘蛛、ロマ】。人は、上位者に成れてしまった」

 

 そして、俺でもあるこの身体、『狩人』もまた……

 

 “人為的に……”

 

「しかし、人が神になるには代償がある。儀式により街に狂気が振り撒かれ、病は蔓延し、死が普遍のものとなった」

 

 

 

「今では嘘のようだろう?もう古い古い過去のことだ」

 

 実際に(ゲームの)過去のことではあります。

 

 “なるほど……そんな歴史がこの街にはあったんだね”

 

ちなみに馬車は、ビルゲンワース→禁域の森→ヤーナム聖堂街→ヤーナム市街→ヤーナムの外、というふうに移動する。

 

 このガスコイン神父みたいな御者さん、地味に禁域の森を馬車で走破してるのだ。こんな起伏があるところをほぼ大きな揺れなしで走っている。すごい。これからは「ヤーナムのライダー、ガスコイン神父」とでも呼ぼうかな?まぁ本人にはバーサーカーの資格しかないだろうけど。

 

 そんなことを考えていると、禁域の森からヤーナム聖堂街に出る。この世界の『禁域の森』は別に禁域指定じゃないから、馬車が乗り入れられるようにだいぶ入り口が整備されてるんだ。

 

 

 

「ここは、ヤーナム聖堂街。上位者を祀り、街に蔓延した古い病を『血の医療』によって根絶した、『医療教会』の本拠地だ」

 

 “血の医療?”

 

「このヤーナム独自の医療のことだ……特殊な医療でね、体質に合わなければ死に至ることもある……しかし、体質に合いさえすれば、多くの病を跳ね除け治療し、肉体を強靭にする力がある」

 

 “へぇ……”

 

「簡単に言えば、特別な血を体に取り込むのだ。今持っているが、見るかね?」

 

 “じゃあお言葉に甘えて”

 

 俺は懐から輸血液を取り出してみせる。

 

 “これが特別な血なの?”

 

「ああ。これを血の医療を受けたものが取り込めばたとえ死の淵の傷でも一瞬で治ってしまうほどだ」

 

 “へぇ……”

 

 そんな話をしているうちに聖堂街を抜け、ヤーナム市街へ辿り着く。通ってきたのは『聖職者の獣』の出る大橋だ。獣狩りの夜じゃないから封鎖されていないからね。

 

 

 

「ここは、ヤーナム市街だ……まあ、普通の市街地さ」

 

 “まぁ、流石に市街地はね……”

 

「強いて紹介するならば、街の住民はある必殺技を覚えていることだ」

 

 “えっ?必殺技なんてあるの?”

 

「ああ。名を『ホワイ』という。自分を襲ってきた外敵に対し『ホワイッ!』と叫びながら松明を押し当てるのだ。相手は死ぬ」

 

 “物騒すぎるっ!?”

 

「かつての悪い治安の名残さ。今はこの『ホワイ』のおかげであまり犯罪率は高くない」

 

 “そういえばこの自治区に来てから一度も銃声を聞いてないね……”

 

「だろう?」

 

 さすがは導きのホワイだ……*1

 

 

 

 しばらくして、やっとヤーナムの外に出た。やっぱ入り組みすぎだよあの街。

 

「どうだっただろうか、先生。楽しめたかね?」

 

 “うん、楽しめたよ。あと、狩人のあの自治区への愛も感じたかな”

 

「ならばよかったよ」

 

 そら9年も同じゲームに引きこもってりゃ愛すぜ……なんか半分ぐらい地底で過ごしたような気もするけど……

 

 

 

 “そういえば聞きたかったんだけど、『狩人』ってのはなんなの?”

 

 おお、あえて説明しなかったのに……まぁぼかしつつ説明するか。

 

「狩人と言うのは、ヤーナムに古くからいる獣を狩る役職のことだ」

 

 “あ、普通に狩人なんだね”

 

「ああ。ヤーナムには非常に害獣が多く、放っておくと市民が襲われ食い殺されてしまうのだ」

 

 “ええ……”

 

「だからこそ、狩人というのは獣を狩り、食い止めるのだよ」

 

 “なるほどね。君も狩人なのかな?”

 

「だからこそ、こう名乗っているのだ。もっとも、私は、ヤーナム自治区ではなく外の狩人だがね」

 

 

 

 “そういえば、君は外の人間なのになんでヘイローが付いてるの?”

 

「さてね……私にしても気がつけばついていたのだから……そんなことよりも私はこのキヴォトスでは銃を撃っているのに相手を殺さないことに驚いた。私の居た場所では敵対すれば相手を殺すか自分が死ぬまで戦いが続いたものだが。私も何人も殺したものだ」

 

 “殺っ………!?”

 

「……?東洋でも少し前に革命が起き、人斬りが横行したと聞いている。殺しは普通のものだろう。何を驚いているのだ」

 

 ここで、先生と狩人のカルチャーショックを匂わせる発言をしておく。上手くいけば今後、俺の戦い方にとやかく言われることもないかもしれないからね。

 

 

 

 ここで補足をしておこう。Bloodborneの時代設定は、19世紀ビクトリア時代だと言われている。ビクトリア時代とは、実在したイギリス帝国を1837年から1901年まで統治していたヴィクトリア女王の時代だ。

 

 この頃の日本は、1837年に大塩平八郎の乱が起きている。その後は、安政元年(1854)の日米和親条約締結による開国、慶応3年(1867)の大政奉還による政権移譲など、幕末の動乱の時期なのだ。某抜刀斎の漫画や、銀髪の万屋の漫画なんかはこの時代をモデルに描かれている。

 

 その後、1868年に明治時代に入り、1886年にノルマントン号事件。1889年に大日本帝国憲法発布、1904年に日露戦争。

 

 おそらくその辺りの時代の日本人であろう『ヤマムラ』くんを基準として東洋人を見ることで、先生が価値観の違いに気付くように話す。

 

 

 

「そう言えば先生は西洋風の格好をしているじゃないか……私の知る東洋人、名をヤマムラというが……ブカブカのズボンを履き、上は幾重にも布を前で閉じて羽織り、腰に刃を佩いていた。東洋の島国ではそれが基本だと聞いていたのだが……」

 

 現代知識と、ヤーナム時代の価値観を混ぜて喋っていく。原作の狩人は記憶喪失だけど、今は現代知識を持った俺だ。有効活用させてもらおう。

 

 “ブカブカのズボンは袴、上は……着物かな?それとも羽織か……そして腰に刃……刀か……侍?いや流浪人……”

 

 “…………ねえ、狩人。君が知ってる中で、一番最近起きた世界的な出来事って何かな……”

 

「おや、すごい難しい顔しているじゃないか……世界的な出来事……そうさね、私のいた国とその連合が、北方の帝国と戦争をしていただろうか。なかなか苦しい戦いで、辛勝だったと聞く」

 

 あ、先生が頭を抱えた。

 

 “その時代でその帝国との大規模な戦争なんて一つしかない……”

 

 

 

 ちなみに言ったのは1853年から1856年のクリミア戦争だ。当時の人間で情報に疎い人は、この程度しか知らないだろうからこんな言い方になった。『先生』はしっかりと単語からわかってくれたみたいだけどね。

 ブラボの年表の具体的な年代がわからないから、まだ日本が幕末のものを選んだ。俺は少なくとも『ヤマムラ』は幕末の人だと思ってるからね!

 

 あと、ヤマムラはDLCの実験棟の地下牢、つまり狩人の夢に囚われている。しかし、彼は黒獣パールに挑む際、条件を満たしていれば呼ぶことができるため、ヤーナムの現代時間軸的にもいると考えられる。正確な年代は本当にわからない。解らないことが考察につながるから俺は好きだけど(フロム脳)

 

 

 

 “……狩人とキヴォトスの常識にはかなり違いがあるみたいだから、しっかり合わせていこうね……とりあえず、人を殺すのはダメだから……”

 

 あ、先生が考えすぎて疲れたみたいな顔してる。そうだよね、150年くらい前の、完全に価値観の違う、生きるか死ぬかの動乱の時代出身者とどうコミュニケーション取ればいいかわからないよね。殺しましたって明言してる相手のどこに地雷スイッチあるかもわからないし。

 

「ああ、了解だよ……先生」

 

 

 

 

 

 その後は何事もなく、トリニティについた。

 

 ついたらティーパーティーに挨拶に来るように言われているそうなので、先生についていく。

 

 にしてもでかいなトリニティ本校!本校舎だけでヤーナム市街とヤーナム聖堂街を合わせたのと同じぐらいの広さはあるんじゃないか?

 

 “ついたよ”

 

 おお、ついにナギサ様とご対面か。エデン条約が控えててピリピリしてるだろうから刺激しないようにしないと。

 

 

 

 

 

 先生が大きな扉を開けて、ティーパーティーの活動場所であるあの広いテラスのような場所に入る。ここ、名前ついてるのかな……?

 

 そして、正面には長い机と、見覚えのある白い椅子*2に座る、立派な白い翼の生えた、栗色の髪をした美人な生徒。

 

「あなたが『狩人』さんですね?」

 

「ああ、そうだとも……トリニティ総合学園生徒会、ティーパーティー現ホスト、桐藤ナギサ」

 

 

 

 さて、これからどうなるのかね?

 

 

 

*1
でもこれで一周クリアしようとするとエミーリアで詰む

*2
ナギサのMy椅子




なんでこいつブルアカ二次創作で世界史と日本史交えた年代考察やってんだ……?作者も狩人くんちゃんもフロム脳だからか……



作者ページの活動報告にリクエストボックスを設置しました。狩人くんちゃんの名前を募集していますので、そこにコメントしてもらえると候補に入ります。
ナギサ様と会った後、幕間とか設定とか挟んだくらいに締め切ろうかと考えています。
ー追記ー
締め切りました。
リクエストボックス自体は有効です。見てみたいシーンなどがあればリクエストして、どうぞ



……ああ、毎日投稿が、海に還る……
感想と評価に底は無く、故にすべてを受け容れる
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