Bloodborne十周年、おめでとう!!
セイアちゃんのエミュが不安定な上にふわっとしてるのは許してください
この子難しいよ……
51.古都ヤーナム、悪夢の始まり
私は、絶望していた。
夢で見た、キヴォトスの滅び……滅亡の運命。
幾度も、幾度も滅ぶ世界を、私は夢で予知し続けた。
いつも見るのは、
白銀の彼女は、一人、また一人と仲間達が消えていくのを、ただ見ていることしかできなかった。
機械仕掛けの少女は遂に救われること叶わず、箱舟と共に軍勢でもって滅びを齎す。
居場所を失った彼女達に差し伸べられた腕は千切れ、時代に流されゆくこの地で彼女達は沈んだ。
そして、
過去の因縁は、例え忘れたとしても這い出てくる。
生きているだけの骸、何者も信じられぬ籠の中の鳥、そして血に濡れた魔女。
普通の少女、信じられぬ少女、足掻き続ける少女、何も知らぬ無垢な少女。
様々な人間の思惑が複雑に絡み合い、掛け違えるごとに滅びの夢は増えていく。
火に包まれた落陽の日。
足掻き続ける少女はかつての仲間を殺し、あるいは力及ばぬ生徒は一人また一人と斃れていく。
彼女達の元へやってくるのが
けれど、けれどね。
悪夢は巡り、そして終わらない。
人と人、そして機械仕掛けの諍い……それだけであったのならば、どれだけよかったことか。
無数の滅びは、私の希望をも粉々にして行った。
あるときは獣によって、人々は喰い殺される。
あるときは触手によって、人々は養分とされるだろう。
あるときは機械によって、あるときは人によって、あるときは
人々は傷つき、ヘイローは砕け、死に至る……
もはや希望は潰え、生徒に未来無し。
私は諦観を抱いて、一人夢に囚われ続けた。
しかし──
月乃カオリ、
夢の支配者たる彼女は、私の希望となり得た。
【楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか】
もし楽園というものが存在するのならば、そこに辿り着いた者は、至上の満足と喜びを抱くが故に、永遠に楽園の外に出ることはない。
もし楽園の外に出たのであれば、つまりそこは真の悦楽を得られるような、『本当の楽園』ではなかったということ……
しかし彼女はこの問いに、一つの解を持っていた。
人間は、相反する欲を持っており……それは決して、一つの楽園如きでは満たせるものではないと。
故に、彼女は自らが作った楽園の外に出るのだという。
彼女が語ってみせたそれは、光明であった。
彼女がそうしたように、
例え万物を満たすようなものではないとしても……
青春が、幸福が、享受できるような……
そんな楽園を、私は望みたいと思った。
故に私が願うは滅びを退ける力。
キヴォトスを救う方法。
カオリはそれに、一つの方法を提示した。
キヴォトスの外、悪夢の街。
病に沈んだ医療都市、ヤーナム。
救いようのないその地で、力を得ること……
例え悍ましくとも……私は越えてみせる。
これは、試練だ。
未熟な自身に打ち勝ち、救い手となる覚悟はあるか。
……為すべきことを、為すまでだね。
私はカオリに言われたままに、ヤーナムと楽園を繋ぐ鏡へと触れ──意識を失った。
一瞬の浮遊感を感じた後、私の身体はベッドか何かに寝かされているような姿勢で固定されていた。
(これは……?)
先ほど確認した通り、身体は動かない。
目だけで辺りを見回せば、ベッドの脇には見知った白髪の少女の姿がある。
(……カオリ……?)
その少女は月乃カオリ。
私をヤーナムに導いた、狩人の夢の主。
彼女は普段とは違いシルクハットを被り、見たこともない神父のような装束を着ていた。
(……何が……ん?)
気がつけば声も出ない。
カオリの力によるものだろう、彼女は不思議な力をよく行使する。
何かするのだろうか……そう考えていると、カオリが口を開く。
『ほう……「世界を救う力」ねえ……』
『確かに、君は正しく、そして幸運だ』
『まさにヤーナムの血の医療、その秘密だけが……君を導くだろう』
『だが、よそ者に語るべき法もない』
『だから君、まずは我ら、ヤーナムの血を受け入れたまえよ……』
『さあ、契約書を……』
そう告げるカオリ。
その口ぶりはどこか演技めいていて、一種の祭事のような雰囲気が場に流れていた。
それに私は勘付くと、思考に掛かっていた眠気のようなモヤが薄れ、
(……あぁ、これは最終確認ということだね。私が、己を犠牲にしてでも滅びを救う覚悟があるか……そして、何があろうと挫けぬ、折れぬ意志を持つことができるのかと……)
(……ならば、私は血を受け入れよう。どのような道を歩もうとも、キヴォトスを救い、そして
セイアはそう思案し、こちらに見せられた契約書を確認した。
百合園セイア(血の医療終了後)
レベル :20
血の意志:0
過去 :セクシーセイアですまない
体力 : 9
持久力 :14
筋力 : 9
技術 :13
血質 : 6
神秘 :19
(……ふむ)
(……)
(……待て、セクシーセイアとはなんだい!?)
バッと顔を上げ、カオリを注視した私。
全く見慣れぬどころか、自分の名前の入った謎の文字列に、
しかし、私のその混乱の目配せは通じなかったのかカオリはそれを了承と受け取り、契約書を回収した。
(カオリ!?)
いつのまにかサインの部分には私の字で署名がなされている。
『よろしい。これで契約は完了だ』
『それでは、輸血を始めようか……なあに、なにも心配することはない』
『何があっても……悪い夢のようなものさね……』
恐ろしく、そして何かに誘うようなその声を聴いた瞬間、腕に鈍痛を感じ、私は意識が遠のいていく。
必死に抵抗し、抗議の声を上げなければいけないと思ったが……抗うことはできず、ゆっくりと意識は闇に包まれていった。
ポトン……
ポトン……
(…………?)
何かが垂れる音がして、ゆっくりと意識が戻ってくる。
あれから一体、どれだけの時間が経っただろうか?
辺りには、濃い血の匂いが充満し……腕には異物感がある。
おそらくは、輸血をしているからだろう。
雫が垂れるような音も、輸血している器具からでていた。
ざば……ざば……
何か液体の溢れるような音を聞き、私はふと横を見た。
首が動く、と思ったのも束の間、目の前にいる存在に釘付けになる。
グルルルルルル……
そこにいたのは、黒い獣。
四つ脚の、恐怖を感じさせる恐ろしい猛獣。
(あ、あれは……夢で見た獣……!?)
そう、私はキヴォトスの滅びの未来でこの黒い獣を見たことがあった。
黒い獣や、
やがて市民すらも獣たちと同様に暴れるようになり、数は無限に増えて行く。
ヘイローを持ち高い防御力を持つ生徒たちは軽い傷を負うのみで殺すには至らないが、尋常でない膂力で抑えつけられた上で攻撃され続け、長い時間をかけて仕留められる。
それが繰り返され、ついにはキヴォトスは獣によって滅ぼされる……そんな未来。
(ぐっ……体が動かない……)
逃げようと体をよじろうとするが、金縛りにあったかのように微動だにしなかった。
その間にも黒い獣は着々と歩み寄ってきて、私にその凶爪を向けようとしている。
その爪の動作は
(ぐっ…………くっ…………!)
こんなところで訳もわからず死ぬのは嫌だ、と逃れようとするが……抵抗虚しく獣はついに爪を私の眼前に向けた。
(……あぁ、これで終わりか)
そう思い、目を瞑った。
しかし、痛みがやってくることはなかった。
ガシャン!!
(…………?)
何かが割れるような音と共に、熱気が私の身体を襲う。
しかしそれは私を害することはなく、離れていった。
目を開けてみれば、そこには燃えている黒い獣。
それはのたうちまわり、火を消そうとしている。
(いったい、誰が……)
そう思った瞬間、お腹の上に重たい感覚が。
チラリと見れば、そこにはいつも夢にいる使者がいた。
ふと気がつけば、獣は姿を消している。
(……守ってくれたのかい?……ありがとう)
心の中で思うことしかできないが、感謝するよ。
ヴァァァァァ……
その声に応えたのか……一人、また一人と使者たちはどこからか現れて、私の身体へと登り、取り囲んでいった。
あぁ……セイア様……
あなたがどうか、望むものを手に入れられますよう……
(人形……)
どこからか聞こえてきた声。
その声を聞いた瞬間、私の意識はまたもや暗転したのだった。
…
……
…………
……………………
(ん……)
次に目を覚ました時、金縛りは解けていた。
ゆっくりと身体を起こすと同時に、身体が今までより格段に軽く動くことに気がつく。
「これは……」
柔らかく折れそうなほど細かった肉体は常人並みの太さと筋肉を得て、ほぼ体力のなかったはずの肉体は最低限のスタミナを感じる。
鼻が良くなったのか血の匂いを鮮明に感じ取ることもできるようになっていた。
「……なるほど、これが狩人の……超人的肉体か。これが輸血だけで手に入るのだというのだから恐ろしいね……いや、悍ましいと言うべきか」
そう言って、部屋を探索する私。
薬品棚以外に目ぼしそうなものは何もなかったが、ふと椅子の上に置いてある手紙に気がついた。
〝「青ざめた血」を求めよ。狩りを全うするために〟
「……兎も角、外に出ないうちは何にもならないだろうね」
すぐ近くの古い木の扉を開け、私は窓から入ってくる夕日の光を浴びながら目の前にあった階段を降りていく。
その後頭部には、カンタベリー十字と呼ばれる形の黄金のヘイローが輝いている。
しかしその輝きの末端は、星界を想わせる昏い色へと変化し。
星々を思わせる光の粒が、周囲を舞っている。
そして、明るかったはずのその瞳には。
昏い夜空が、果てしなく広がっていた。
「……あれは」
階段を降りた先にあったのは、大きな病室。
多くの担架が置かれ、その上にはすでに息絶えた獣の姿の市民が数多くいた。
先生以外に初めて見る、『人間の』男性。
しかしそれらは動物のような毛皮に覆われ、見るも無惨な死体となっている。
キヴォトスでも獣人というものは一般的だが、あちらの獣人は獣ベースの見た目なのに対し、こちらの獣人は人間の素体に毛皮が生えたような見た目をしている。
ぐちゃ…ぐちゃ……ぴちゃ…ぴちゃ……
そして、聞こえてくる水音。
私は輸血後に強くなった嗅覚により、すでにその正体がなんであるかもわかっていた。
柱の陰から覗けば、そこにいたのは先ほど寝ていた時に見た黒い獣。
ところどころ身体は焼け爛れ、かなり傷ついているようだった。
その黒い獣は死体を漁り、病室を荒らしていた。
瞬間、脳裏に過ったのはカオリの姿。
そして、『獣狩り』という言葉。
(……狩り、か……獣を仕留めることが、この世界で成すべきことか。命を奪い、その経験を糧にする。忌み嫌われるべき行為ではあるが……)
私はそう思案する。実行するか逡巡するが、獣はいつこちらに気がつくかわからない。
やがて私は迷いを振り払い、その獣を狩ることを決断した。
そっと、背後から近づく。
音を立てないよう細心の注意を払って黒い獣が気がつくギリギリまで接近する。
黒い獣の食べている死体に気分が悪くなるが、強い意志でそれを捩じ伏せる。
どう攻撃しようかと思った時、唐突に身体は戦い方を知っているように手刀を振りかぶる構えを取り、力を溜め始めた。
(……なるほど、狩人の技……というやつか。技術は身体に染み付いている、と……カオリが何かしたのか、はたまたあの血が原因か……)
そう考えながら、私はその拳を黒い獣の尻に叩き込んだ。
(っ……!!)
ガァっ!?
突然の攻撃に、大きく体勢を崩す獣。
私は無防備となった黒い獣の臀部に、さらなる追撃を入れる。
強引な貫手によって私の手は獣の身体を貫通し……
内臓を掴んで、引き摺り出した。
ゴアアッ!?
ベシャッ、という音が撒き散らされる大量の血と、
「はっ……はっ……!」
それを、冷たい目で見る
そして、獣は内臓を引き摺り出されてもまだ息があった。
なら、やることは決まっているだろう?
「ふーっ…!ふーっ……!……はぁ……はぁ……」
手が痛い。
ふと見れば、血に染まった自分の拳と腕。
目の前の物体を、死体に変えた、悍ましい肉体。
「……何も、わからなかった。何も、理解できなかった」
極度の興奮状態になったのだろう。
内臓を強引に引き抜いた辺りからの記憶が
「……これが、殺害。殺傷の罪」
自我すらなくなる悍ましい行為。
こんなものを、自分はこの先大量に為さなくてはならないのだ。
しかし……私は、殺すことに何も感じてはいなかった。
悲しみも、恐れも……あるのはただ、命を奪った結果の罪悪感だけだった。
返り血で真紅に染まった私。
いつもの白い服ではない、赤いベストと黒いフード、輸血あとのついた包帯と黒いズボンは、全身真っ赤になっていた。
一つの命を奪い、殺した。黒い獣を殺したことで、何かを得たような感覚もした。
頭の中で何かが囁くような感覚。
これは果たして何なのか……
「はは……これほどの行為で手の皮ひとつ剥けないとはね。まるで物語の怪物だ……どちらが獣なのやら」
そんな自分への恐れを誤魔化すように、嘲笑気味に笑う。
血の医療の凄さに驚くと同時に、悍ましさを実感した。
話だけではわからぬ世界を、体感した。
「……ごめんよ」
命を奪った罪悪感を忘れないように、言葉にする。
自身への恐怖を捩じ伏せ、死の重みを背負ってなお、私は出口と思わしき方向に目を向けていた。
「……行こうか」
「……」
重い鉄の門を開け、ヤーナム市街へと足を踏み入れる。
どうやら今までいたのは『ヨセフカの診療所』という場所らしい。
道中にあった死体から、『輸血液』を手に入れていた。
手癖が悪い、と言われるかもしれないが……私の中の何かが、「取らなければならない」と、その行為を強く訴えていた。
診療所の敷地にある門を抜け出た目の前には、巨大な大橋が上の方に架かっているのが遠くに見える。
そのさらに奥にも高さは違うが同じように一本橋がかかっているようだ。
ヤーナム市街は馬車が横転し、獣、人の死骸が普通に転がっているような場所だった。
「こんな場所でカオリは力を……いや、力が無ければ死ぬからこそカオリは力を得ることができたのか」
進んでいくと、私は第一村人……第一市民を発見した。
(……あれは、大人の男性か)
診療所に横たわっていたり死体になっていたのは何人も見たが、動いている大人の人間の男性は先生を除けば初めて見たね。
最も、彼もまた獣臭が濃くなり毛深くなっていて、普通の人とは言えない状態ではあるけれど。
コートにハットを被り、右手には松明を掲げ、左手に持った斧を引き摺り歩く男。
口からは唸り声が漏れ出ており、もはやマトモには見えない。
(……やるしかないね)
どう見ても正気ではない状態でウロウロしている彼を見て、私は彼を敵だと判断した。
こっそりと相手の死角ギリギリまで移動し、相手が最も近づいて背を向けた瞬間に背中に寄って手刀を振り下ろす。
「ふっ!はっ!」
狩人の肉体となった影響か、体が変質している途中の男の方が脆いのか。
私の手刀は男の体を容易く割き、抉っていく。
しかし、いかにキヴォトスの人間であり狩人になった私とて、スタミナは無限ではない。
「ホワイ!ホワイ!!」
「!」
一瞬私が攻撃を緩め、スタミナを回復しようとした瞬間、男は右手の松明を左右に振った。
「くっ!?」
ばっ、と急いで身を翻す。
普通の人間よりも身長の低い少女の身体であったからか、なんとか半身を捩り回避することができた。
「はぁっ!」
ジリジリと通り抜けていった松明の熱を感じながらも、男が松明を振った隙を逃さずに私はトドメの手刀を放つ。
高い位置に放った手刀は首にめり込み、ついに男は力尽きて倒れた。
「はぁ……はぁ……ふぅ……」
男を殺し何かを得る感覚を、
「……すまない」
今度は我を失わなかったことに安堵しつつ、それに少し嫌気がさす。
殺しで安堵するなど、屑の所業ではないか。
しばらくして落ち着いた私が周りに他の敵はいないかと辺りを見回すと、通路の壁……建物の脇に謎のレバーを見つけた。
「……なんだい、これは?」
周りを見回せば、上に梯子が。
「……あれを下ろすレバー……?随分と変な構造だね……」
レバーの隣にあった死体が持っていた輸血液を拾い、懐にしまう。
(……先ほどから普通に死体を漁っているのに危機感を覚えるべきだろうに……何をしているんだ、
診療所の黒い獣を殺した直後にあった死体から輸血液を回収したために麻痺していた感覚が、やっと戻ってきていた。
レバーを下ろせば上からガシャン!!と音を立てて梯子が落ちてきた。
「……ん?」
梯子を登ろうと思った時にふと左を向けば、通路の奥に荷物の積まれた場所に混じって横になっている男が二人。
「あれは、死体……いや、生きているね」
狩人になって持ち前の獣耳も感度が良くなったのか、彼らの呼吸音が離れた場所でも微かに聞こえていた。
(……待ち伏せ、というところかな。武器を手に入れるまであの様な場所は近づかない方が良さそうだ)
そう思い、私は向き直って梯子を登っていった。
カンカンカンカン……
長い梯子を気をつけて登っていく。
下を見ると、既に落ちればただでは済まない高さだ。
ちょうど中頃まで来た時、
キュァァァァァァァァァァァォォォォォ!!!!
「!?」
手前の大橋が接続している、こことは対岸の街の方向から大きな咆哮が聞こえてきた。
(……あれほどの咆哮をする怪物のような獣がこの街にはいるのか……?)
先ほどの黒い獣とは比較にならないとはっきりわかるほどの格の違いを感じ取り、私は声の主に身震いをしつつ梯子を上りきった。
(……灯篭?)
梯子を上り切った先にあったのは、咳込む音の鳴り響く民家と、民家の前の道のど真ん中に不自然にある灯り。
(……)
近づいて調べようと手を伸ばしたその時、ポゥ……という音と共にその灯篭が点灯し、使者たちが灯りの根元に出てきた。
「……使者たち……ということは、これは狩人の夢に戻るための灯火ということか」
すぐにそう看破した私は、すぐに夢へと帰ることを願った。
……
目を覚ませば、そこはいつもの狩人の夢。
「……帰ってきたか」
普段と違うのは、右側の階段に沿った墓石のいちばん手前……『Father Gascoigne』と書かれた墓石の前に、使者たちがいること。
そして、自分の姿はいつもの服装ではなくヤーナムの服装だった、ということだ。
階段の脇の石垣の前に立っている人形に近づく。
「……やぁ、人形」
「おかえりなさいませ、セイア様……ヤーナムはいかがでしたか?」
「……どういえばいいんだろうね」
初めての命を奪う行為と、命を懸けた戦い。
死体を漁ることや殺しに悲しみを抱かず、されど罪悪感だけは抱く自分にも少し嫌気がさす。
武器すら使わず、命を直接この手で奪った感触は残っている。
そして、
「……私はこの、悲しみすら抱かない心と……頭の中で囁く、呪詛を背負わなければならないのかい?」
ゆっくりと言葉を紡ぐ
「はい、セイア様……その心は、『獣』。その呪詛は、『血の遺志』。狩人様はそれらを強靭な意志で捩じ伏せ、力とします」
人形の言葉に少し考え、
「……『獣』か。言い得て妙だね……獣は獲物に慈悲など与えない。殺した獲物に悲しみを抱くこともない……なら、この罪悪感は人の証か」
「はい、セイア様……殺しに罪を抱く。それは人間性足りえるでしょう」
それを聞き、
自分が人であることを、人に認められたからだろうか……
「……『血の遺志』は、呪詛だね。怨嗟の声、当然だ」
そう、ぽつりと呟くように聞く。
しかし、人形はその言葉に首を振る。
「いいえ、セイア様……それは死してなお残る強烈な意志。自身を殺した者へ託す希望です……確かに強烈な遺志は人を蝕みます。しかし、それを呑み込み力に変えることで、狩人はより力を得ます」
その言葉は、
「……希望、か。なら、私はこれを背負ったうえで、前を向かなければならないね」
罪の証明、遺志の継承。
それはひとりよがりだとしても、歩んだ道が無駄ではなかったことを意味する。
そこまで歩んだ過程が無意味ではなかったことを、示すことができる。
それは正しく希望である。
優しき希望は、深々と降りしきっていた。
「私は獣を狩る。遺志も罪も背負おう。キヴォトスを救うために」
強い意志を眼に宿し、
希望を胸に、覚悟を胸に。
狩人、百合園セイアは、ここに
というわけでセイア編、スタートです
セイアの語りが何処かおかしいのは、そういうギミックだからです。
一体なんでなんだろうなぁ……
今章は曇らせが火を噴きます……
独自解釈のオンパレードですが、どうかお許しください
章タイトルは個人的にとても気に入っています、気が付いてくれた人いたかな
レベル周りは以前に書いたものと変わっております
血の医療が上手く作用したってことでお願いします
セイアのステータスを再現する場合、過去『悲惨な幼年期』で始めた後に、アイリーンさんのいる建物(造船所らしいですよ)にある『狂人の智慧』を手に入れて啓蒙を得れば、ボス戦に入らずにレベリングできます。
神秘に10振っている以外はそのままです。
武器に関しては、以前投稿した話にセイア使っている武器が書いてあります
以前はノコ鉈と書いていたのですが、現在は別のものに修正済みです。