見たまえ!青ざめた血のアーカイブだ!   作:めろんムーン

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ナイトレインすごく楽しいですね
デスイビルジョーと暴走特急ケンタウロスと発狂山羊、強すぎませんか?

この先独自解釈があるぞ


64.古狩人、黄金、鴉羽

 

 

 

 高台にある落下防止の鉄柵の隙間から、地下墓を眺める。

 地下墓中央のモニュメント、その付近にひとつの人影が見えた。

 それは黄味がかっていて、古く見える。

 肩で息をし、血走った目で周囲を見回すその姿は、明らかに正気じゃない。

 本来なら、その姿を一目見て帰るだけ。

 けれど、その姿に私は見覚えがあった、()()()()()()()

 

 

()()()()()()……?」

 

 

 お父さんの相棒、お母さんのお父さん、そして私のおじいちゃん。

 古狩人ヘンリックが、そこにはいた。

 

 

「!!」

 

「っ!」

 

 

 私がポツリと声を漏らした瞬間、彼はぐりんと首を回して私の方を見て……目があった。

 

 

「やらなきゃ、いけないの……?」

 

 

 長く変形させた大斧を右手に、散短銃を左手に。

 おじいちゃんが高台に向かってくる間に、身体は自然と準備を終わらせる。

 おじいちゃんはあっという間に高台まで登ってきて、私にその武器……ノコギリ鉈を振るった。

 

 

「■■■■■!!!!」

 

「ぐっ……!?」

 

 

 ノコギリ刃と斧の刃がぶつかり、硬質な金属音が辺りに響き渡る。

 膂力は()()()()()、だけど技術は正気を失っても尚おじいちゃんの方が上。

 カチあった刃をおじいちゃんは受け流すように逸らして、斧を地面へと振り下ろさせる。

 あっ、と思った瞬間には、首筋にノコギリ刃が迫っていて────

 

 

「はあっ!」

 

 

────背後から伸びてきたノコギリ刃の鞭に叩き払われた。

 それと同時にぐい、と首根っこを引っ張られて下がらされる。

 ふわりと風が通っていくのと同時に、黒いカラスがおじいちゃんに襲いかかっていくのが見えた。

 

 

「あんたの相手はあたしだよ」

 

「■■■■■ーーーー!!!!」

 

 

 そう言っておじいちゃんを蹴り飛ばし、高台から降りるアイリーンさん。

 それと同時に、私の肩に手が置かれた。

 

 

「イズ、大丈夫かい?」

 

「お姉さん……どうして……?」

 

 

 おじいちゃんの鉈を弾いたのは、お姉さんの仕込み杖だった。

 安心したように笑うお姉さんに、私はどうして助けてくれたのか思わず聞いてしまう。

 こんなところにいるなんて、なんでわかったんだろう。

 

 

「アイリーンと会話していたら何やら嫌な予感がしてね。あの古狩人についてイズと話したというから、もしかしたら……と」

 

 

 そう言ってアイリーンさんの方を見れば、彼女は地下墓の中心付近でおじいちゃんと激戦を繰り広げていた。

 素早い二刀の振りはおじいちゃんに払い落とされて、逆におじいちゃんの斬撃はアイリーンさんが紙一重で避ける。

 けれど、技術が卓越しているからか……避けきれなかった攻撃が、徐々に双方に傷が増えている。

 そしてそれは、アイリーンさんの方が多かった。

 

 

「……とりあえず、加勢しようか」

 

 

 そう言ったお姉さんに頷いて、私たちはアイリーンさんの方へ駆け出した。

 

 

 

 

 

 古狩人ヘンリック。

 アイリーンによれば、イズの祖父……ガスコインの義父。

 あまりに強すぎたがために、死に場所を得られなかった古猛者たる彼は、正気を失い、暴れ狂っていた。

 

 

「おじいちゃん!正気に戻って!」

 

「■■■■■!!」

 

「無駄だよ。あんたを殺す寸前でも手が止まらなかった奴だ……戦いな」

 

「っ!でも!」

 

「戦わないなら死ぬだけさ、ね!」

 

 

 ヘンリックへと叫ぶイズを諭しつつ、アイリーンは襲いかかってくるヘンリックに応戦する。

 彼の技術は正気を失っていたとて健在であり、アイリーンでもよそ見をできる相手ではない。

 

 

「イズ!」

 

「お姉さん……おじいちゃんが……」

 

「……残念だが、正気を失った狩人というのはもうダメなんだ」

 

「……どうしても、やらなきゃいけないの?」

 

「……ああ」

 

 

 苦虫を噛み潰すように答える。

 正気を失ったガスコイン……彼女の父親を狩ったのは、他でもない私だ。

 その私の言葉だからこそ、一度『そうなって』しまえばどうにもならないと心の底では理解してしまっているのだろう。

 

 

「ちっ、そっち行ったよ!」

 

「■■■■■■■■!!!」

 

 

 咄嗟に避けると同時に、元いた場所の近くにあった墓跡に深く傷が入る。

 そのまま突っ込んできたヘンリックに変形前の仕込み杖で応戦しつつ、私は叫んだ。

 

 

「イズ!!」

 

「っ……!おじいちゃんっ!ごめんなさい!」

 

 

 同じく回避していた姿勢から立ち直り、変形後の斧と散短銃を構える彼女。

 今にも泣きそうだが、それでも彼女は戦うことを決めた。

 そうさせてしまったことに胸が締め付けられつつも、古狩人を相手に立ち止まる余裕はない。

 

 こうして私たち三人は、かの狩人を狩ることになった。

 

 

 

 

 

 容易く神秘の防護を貫く攻撃力、アイリーンに劣るとはいえ凄まじい速度、そして正気を失っているというのに驚くほど正確な弾き、回避。

 牽制に放つナイフやパリィを取る射撃も酷く性格で、私とアイリーンの二人で挑んでいるというのになかなか決定打を与えられない。

 おそらく一人で挑んだのであれば、イズを含めこの中の誰一人として彼には勝てなかっただろう。

 

 

「■■■■!!!!」

 

「そろそろくたばりな!」

 

 

 しかし、数の暴力というのは侮れない。

 こちらにも熟練の狩人たるアイリーンがおり、新人であり相手が正気を失っていたとはいえ古狩人たるガスコインを狩った私、そして膂力とセンスにおいては群を抜いているイズがいる。

 いかに古狩人とはいえ人間、身体を動かす関節や筋肉が損傷すれば動きは悪くなり、輸血させる暇を与えず攻撃すれば、打倒は不可能ではない。

 

 私が振るった仕込み杖のノコギリ状の鞭が、動きの鈍ったヘンリックの片腕に絡みつき拘束する。

 

 

「■■■■■!!!!」

 

「今だアイリーン!」

 

「案外やるじゃあないか」

 

 

 拘束した一瞬で両膝の裏を切り裂き、ヘンリックを地面に倒れさせるアイリーン。

 

 

「っぁぁあああああ!!!」

 

 

 その後ろから迫ってきていた斧が、ヘンリックの首へと吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

「はぁ……全く、厄介だった」

 

「……」

 

 

 荒い息を吐く私、疲れたようなアイリーン、そして溶け消えるように消えていくヘンリックを見つめるイズ。

 三者三様を見せる中、最初に話し出したのはアイリーンだった。

 

 

「あんた、余計な助太刀だね……それに、あんたもあまり勝手なことをするんじゃない。次は守ってはやれないよ」

 

 

 私、そしてイズを見てそう口にする彼女。

 イズは少したじろぐような様子を見せる。

 

 

「でもまあ、感謝するよ。あんたらのおかげで、正気を失ったあいつを倒せた。なかなかやるもんだね……あんたには気の毒だが」

 

 

 その言葉に、彼女の小さな肩が震える。

 けれど涙は溢さず、ただ自身の不甲斐なさを噛み締めているようだった。

 親も、そして残った祖父もこの場所で死んだ。

 彼女がどんな心境なのか、想像もつきそうにない。

 彼女の家族を、彼女の手で殺させてしまったことに胸が締め付けられる。

 

 

「……あんたら、あんまり手を汚すんじゃあないよ。あんたは狩人、獣を狩ればいいんだ。狩人狩りなど、あたしに任せておけばいいのさ……」

 

 

 そうアイリーンは言うが、それが不可能なことはこの場の三人全員がわかっていた。

 いつどこで正気を失った狩人と出会うかわからない。

 アイリーンを呼ぶことができる保証もない。

 いざとなれば自分で対処しなければいけない、ということを覚悟しなければいけない。

 

 

「……あたしは少しここで休んでいく。あんたたちはどうする?」

 

「……ふむ」

 

 

 イズを見る。

 先ほどから震えて、俯き、動かなかった彼女は、ゆっくりとこちらを見る。

 その瞳は虚ろに見えて、しかし何かの模様が映り込んでいるようにと見えた。

 何が映り込んだかはわからない。

 しかし、直感的に私の頭に閃いたのは『継承』の二文字。

 一体、どういうことなんだい……?

 

 

「……私は、このまま獣狩りをする」

 

「……そうかい。あんたは?」

 

 

 イズが答え、私へとアイリーンの目が向けられる。

 イズがどこへ進むのか、イズは何になったのか。

 聞きたいことは色々あるが、彼女は今そういう話をできるような状態ではないだろう。

 ならば私は今できることをやるだけだ。

 

 

「少し気になる場所があってね。聖堂街の向こうへ行く予定さ」

 

「……そうかい」

 

 

 それっきりアイリーンは声を出さず、墓石に腰掛ける。

 イズはなにやら心ここに在らずといった感じで、こちらを見たまま動かない。

 

 

「……ではね」

 

 

 何やら後味が悪くなりつつ、私はこの場に残った灯を使い夢へと帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仕込み杖を+3まで強化し、エミーリアとヘンリックから得た血の遺志でレベルを上げる。

 

 

レベル :28

体力  : 9

持久力 :17

筋力  : 9

技術  :15

血質  : 6

神秘  :22

 

 

 上げたのは持久力+2、技術+1、神秘+2。

 基本はこの三つを挙げていくことに注力すれば問題ないだろう。

 そうしてレベルを上げ、人形の元から離れようとした時、人形が私を呼び止めた。

 

 

「セイア様、少しお待ちください」

 

「ふむ……どうしたんだい?」

 

 

 人形は何やらそばに置いていたらしい袋を開くと、その中身を私へと差し出してきた。

 それは黒い……衣服だろうか。

 綺麗に折り畳まれたそれは、どうやら狩り装束のようだった。

 

 

「セイア様。これは私からの……贈り物です」

 

「ふむ……どうして急に?」

 

 

 見るからに質の高いそれは、カオリの着ているものにも引けを取らない。

 今私が着ているのは『ヤーナムの狩装束』、カオリも着ていたものだが……

 

 

「少しでも、セイア様が健やかに夜を越えられますように……と」

 

 

 そう言った彼女は、折り畳まれた衣服を広げ私に見せた。

 黒いコート、ズボンに羽根を模した帽子。

 しっかりと尾を通す穴の空いたズボン。

 過度な装飾のない、暗闇に溶けそうなその装束は、一目見ても良いものであるとわかる。

 

 

「こちらは『狩人の装束』……工房の用意する、一般的な装束です。これを、私がセイア様に合ったものへと、仕立て直させていただきました」

 

「なるほど……ありがたく受け取るよ、人形」

 

 

 貰った狩り装束に早速袖を通す。

 今までの狩り装束と違い、私の為に仕立てられたからか身体にしっかりと合う感覚。

 帽子は耳に挟むように被り、マスクをする。

 ベルトを締めれば、気持ちも引き締まるような気がした。

 

 

「どうだろうか、少しは様になったかな」

 

「はい、セイア様。()()()にも負けず劣らず、一人前の狩人に見えますよ」

 

「それはよかった」

 

 

 もうかなりヤーナムにも慣れてきてしまったね。

 大聖堂、血の源というのはよくわからなかったが……()()()()が真実なら……

 あの合言葉を伝えた向こうに、何かがあるのだろうか。

 

 

「……ん?」

 

 

 ふと、足元を見れば、そこには何やら謎の物体が落ちている。

 肉……肉塊……か?

 そしてその真ん中に、カビのように膨らんで芽生えた半球。

 それは何やら、瞳のように見えた。

 

 

「……なんだろうか、これは」

 

 

 なにやらとても、()()()()

 これが示すものが、何なのか……

 

 

 水の音が、頭の中で響いた。

 

 

 




前話は特殊タグ周りでのミス大変失礼いたしました……

セイア編が長いという声を頂いております、誠に申し訳ない……
セイアがエデン条約に深く関わってくる都合上、抜いてしまうと行き当たりばったりで書いている作者がそこまでの道のりがわからなくなってしまうので書かざるを得ないのです
ダイジェストにしろ?はい……仰る通り……
次回から大幅に加速する予定です、すでにプロットの1/3は終わっているので

そしてご要望のあったカオリの話、そして本編をセイア編と並行してやるか検討中です
セイア編前に入れた小話も後ろにずらします、セイア編完結後に話数と話の順番を揃えるという形にしたいと思うのでしょうが、どうでしょうか。
本編はエデン3……ではなく真夏のウィッシュリストです

これに伴い、来週はアンケートの結果確認とそれに伴う新話執筆の関係でお休みさせていただきます。ご容赦ください。

セイア編と本編

  • セイア編を続け、終えてからメインに移る
  • 両方を混ぜる(完結後に別に纏め直す)
  • 両方を混ぜる(合わせて一つの章にする)
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