見たまえ!青ざめた血のアーカイブだ!   作:めろんムーン

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先週は申し訳ありませんでした
月末で忙しくてアイデアが浮かばなかった……


66.悪夢の中で

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 疲れ果てた私は、ぐったりと倒れ込み空を仰ぎ見る。

 アメンドーズは強敵で、不可思議な力や目から放たれるレーザー、巨体を活かした質量攻撃はどれも私を簡単に殺し得た。

 計16回、それが私が屠られ、上位者狩りを成すまでに息絶えた回数。

 

 

「にしても、これは一体……」

 

 

 チラリと手に持つ()()()()()()()()()に目をやる。

 アメンドーズにも引けを取らない神秘を持ったその杯は、悪趣味にも拘わらず目を惹かれるような魅力がある。

 正体はわからないものの、何か重要なものだろうか……とりあえず戻ろう、夢へ。

 

 

 

***

 

 

 

「狐の狩人の方でしたら会いました。最初は獣かと思い攻撃するところでしたが……理性が残り、共にこの街を清潔にする同志だと分かったので、今は情報を共有する関係として協力しています」

 

「そう……」

 

 

 聖堂街の端で、アルフレートさんと話す。

 大聖堂の右に行ってみたけれど、気が付いたら戦いは終わってて……一番奥まで行ってみたけど、古教会があるだけで何にもなかったから帰ってきた。

 アルフレートさんが言うには、私が戻ってくる前にセイアお姉さんが通り過ぎて行ったらしいけど……すれ違わなかった。

 

 

「ふむ……大聖堂の右側は行き止まりだった……では、別の方向へ進みたいと言うことですね?」

 

「うん」

 

「でしたら、残るは大聖堂の左側、この街の谷底、そしてこの先の森でしょうか……」

 

 

 森……禁域の森というところ?

 一度行ってみたいけれど、その前に……谷底に行ってみたい。

 元々行くつもりだったけどアルフレートさんと会ってやめた場所だったし、行くなら先にそっちかな。

 

 

「なるほどなるほど……いい選択だと思います。旧市街は今や焼き捨てられた街ですが、いまだに獣の鳴き声は聞こえる場所。きっと燃え残った獣たちが、今も跋扈しているでしょうから」

 

「……うん」

 

 

 今はただ、獣を狩ればいい。

 ゲールマンさんもそう言っていたから……私はそうする。

 

 

 

***

 

 

 

レベル :34

体力  : 9

持久力 :17

筋力  :10

技術  :20

血質  : 6

神秘  :22

 

 

 筋力を1だけ伸ばし、残りの血の遺志を全て技術に注ぐ。

 これで思い通りに肉体を動かしやすくなってくるはずだ、直感に対する反応速度も上がってくるだろう。

 武器も強化し、『仕込み杖』を+6にする。

 

 

「人形、この杯が何かわかるかい?」

 

「これは……聖杯です。ヤーナムの地下に広がる遺跡、それに干渉するための……」

 

 

 レベルを上げた私は、懐から頭蓋の杯を取り出し人形へと尋ねる。

 彼女曰くこれは、地底に広がる神の墓地へのチケットなのだとか……

 ()()()()()()()()()()と言われるこれは、その中でも獣に関連した聖杯なのだという。

 これも興味はあるが……神の墓地というだけあるのか、警鐘が頭の中で響くぐらいには危険度が高いらしい……後回しにするのが賢明だろうね。

 

 

 

***

 

 

 

 次の行き先を決めようと思い、一度オドン教会で目覚める。

 最初に目に入るのは、()()()()()()赤いドレスに金髪の女性──アリアンナだ。

 

 

「あら、あなた……あなたの言うとおりだったわ。ここはまだ安全みたい。ありがとう、感謝するわ」

 

「ああ、構わないよ。ただのお節介みたいなものさ……ところで、君と一緒に誘った男性は?」

 

 

 私はアリアンナをここに避難するよう誘ったのだが、彼女がいた建物の向かいに住んでいる男性にも共に避難しないか、と誘ったんだ。

 彼も例に漏れず癖が強かった……こちらを悪者だと決めつけ、非難し続けてきたのだ。

 まあ、最終的には避難してくれることになったのだが……

 

 

「彼は……一度ここへきたのだけれど、『こんなところに居られるか!』と言って……その扉の奥へ行ったわ」

 

「……そうか」

 

 

 ちらり、と目を向ければそれは地下室……ひいては地下墓の入り口。

 つまり、彼は聖堂街から離れ、ヤーナム市街へと向かったということだ。

 ……どこへ行ったかは想像に難くない、きっとヨセフカの診療所だろう。

 あそこ以外に行く場所もないのだから……

 

 

「……まあ、行ってしまったものは仕方がない。行くあては見当がついているから、彼の様子は後で見に行くことにするよ」

 

「そう……無事だといいのだけれど」

 

 

 

 

 

「……さて、お婆さん……お婆さん?」

 

「ああ、なんだってこんなことになっちまったんだい……ヒヒ、ヒヒヒヒッ……ヒヒヒヒヒッ……」

 

 

 様子がおかしい。

 狂ったように笑い声をあげ、頭を抱えてぶつぶつと何かを呟く。

 気丈に振る舞っていた以前とはまるで違う姿に、私は思わず怯んでしまう。

 

 

「ヒヒッ、ヒヒヒヒ……!ヒヒヒッ、ヒヒヒヒヒッ……!ヒヒ、ヒヒヒッ……ああ、昔はよかった。楽しかったねえ……ヒヒ、ヒヒヒヒッ……!」

 

 

 それは正に精神を狂わせた者の振る舞いであり、こちらが声をかけても反応はなく、ただ引き攣った笑いを上げるのみの存在になってしまっていた。

 

 

「お婆さん……」

 

 

 何度声をかけても反応のない彼女にほとほと困り果て、とりあえずアリアンナと赤衣に様子を見るよう頼み込む。

 彼女は一体何故狂ってしまったのか……それに、私は一つだけ心当たりがあった。

 

 懐から取り出すのは、『血に酔った狩人の瞳』。

 人形によると持ち主を悪夢へ導くらしいこれは、アメンドーズを倒した今、私の直感がもっとも反応するものとなっていた。

 導かれながらオドン教会を出た、その時──、

 

 

 

ゴゥン!

 

 

 

「っ!またっ……!あっ……?ぁ……」

 

 

 気がついた時にはがっしりと大きな手に掴まれていた。

 骨ばった6本指の手を持つその怪物は()()()()()()であり、それが()()()()()の外壁に取り付いていた。

 安全な筈のオドン教会、その外に居たのがこんなものであるというその事実に戦慄する。

 

 アメンドーズが握り込んだ私を直視した瞬間、頭の中に情報の濁流が流れ込む。

 それはどこか遠く、明るく狂ったヤーナムの聖堂街。

 まるで悪夢のようなそれは、私を、あるいは私の直感を惹きつけて止まなくて、ぐしゃりと身体を潰されるのも意に介さず私はそれへと惹き込まれた。

 

 

 

 

 

だから奴らに呪いの声を赤子の赤子、ずっと先の赤子まで

 

 

 

 

 

***

 

 

 

【進め、百合園セイア】

 

……君は一体、何者なんだい

 

【私は君の一部。君が別世界の人間(キヴォトス人)であったが故に生まれた、例外(イレギュラー)

 

……それも、神秘というわけだね

 

【君は直感や……そして啓蒙といったものに、非常に()()()()。それは因果であり、素質である】

 

因果……

 

【君の素養、強靭な神秘、そしてかの上位者の力により私はここまで()()()

 

……

 

【百合園セイア。力を求めるならば、私を使え。()()が、君の力となる】

 

導き……

 

【邂逅は、近い】

 

……

 

…………

 

……………………

 

 

 

***

 

 

 

「……」

 

 

 目覚めの気分は、あまり良くはなかった。

 辺りを確認すれば、どうやらオドン教会の中。

 そして、外は()()()……夜ではなかった。

 

 

「……しかし、夜が明けたわけではないらしいね」

 

 

 遠くから聞こえる轟音。

 獣の唸り声、硝煙と鉄、そして血の匂い。

 そして何より、見覚えのある景色。

 頭に流れ込んだ『明るく狂ったヤーナム聖堂街』の情報と寸分違わぬ、悪夢。

 【狩人の悪夢】、そう呼ばれる世界がここであった。

 

 

 

 重たい鉄塊が、獣の肉を薙ぎ裂く。

 狩人の悪夢を彷徨うのは血に酔った古狩人であり、そのなれの果ての獣。

 古狩人が用いるのは獣狩りの黎明期に存在した重厚なものであり、その質量による一撃は容易に生命を砕く。

 更に、血に酔った狩人というのは半ば獣へと変異した存在……ガスコインのような急激な変化ではなく、長きに渡って変質してきた肉体は、その強靭さによって私の刃を防いでいた。

 

 

「手強い、ねっ!」

 

「Arrrraaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

 

 仕込み杖のように鞭状となる鉄塊の武器、爆発する金槌、分厚い曲刀、高威力の狙撃銃、そして散弾銃。

 銃弾が脅威にならぬとて、ここを抜けるのは並の生徒では不可能だと思えるくらいにはここの環境は過酷だった。

 ここを切り抜けられるのは、あの剣先ツルギか……空崎ヒナぐらいだろうか、あとは噂に聞く00……美甘ネルか。

 

 

 

 聖堂街と同じ作りのこの街を、古狩人を倒しつつ走り抜ける。

 大階段を上がり、転がってきた燃える大玉を避け、大聖堂の前へと辿り着く。

 大聖堂の中から大斧を持った巨漢が現れ周囲の獣と狩人を倒し、そちらに気を取られている間に私は聖堂の大広間へと至った。

 

 

「……聖職者の獣?いや、これは……?」

 

 

 そこには、祭壇に横たわり燃え盛る、聖職者の獣がいた。

 炎はその身体を焼き焦がすが、()()()()()()、燻っている。

 まるで『薪』であるその獣の手に、私は一つのペンダントを見た。

 

 

「これ見よがしに医療教会の大聖堂にいる獣が持っている、となれば……」

 

 

 この世界にもすっかり順応してしまったな、と思いつつその『瞳のペンダント』を拾い上げ、懐へと仕舞う。

 幸いペンダントを取った瞬間に獣が動き出すこともなく、私は『導き』に従い先へと進むのだった。

 

 

 

***

 

 

 

 導かれた先は、血の川。

 虫のような怪物や狩人たちに対処しつつその川を遡れば、一人の男と出会った。

 汚く、ボロボロの身なりをしているその男はしかし、随分と理性的なようだ。

 頭は視線を悟らせぬように包帯を巻いているが、血に酔った存在と違い完全に巻ききっている訳でもないらしい。

 

 

「あんた、獣……ではなさそうだな。驚いた、まさか獣化したような姿だというのに瞳が蕩けていないとは」

 

「ああ、特異な生まれでね……」

 

 

 説明せずとも真意を察する彼は、相当に聡いようだ。

 歴戦の狩人たちの中でも、一人頭抜けた実力があるのだろう……この狩人の悪夢の中で、正気を失わぬほどの実力が。

 

「ふむ……まぁいい。お前もここに迷い込んだのだろう?俺も同じだ……ここは狩人の悪夢。血に酔った狩人が、最後に囚われる場所さ」

 

「ふむ、概ね予想通りといったところだね。私はここに自ら来たのだが」


「……なら、あんたも見たろう?まるで獣のように、さまよう狩人たちを。あんなものが行く末だなんて、憐れなものさ……だからあんた、悪いことは言わない、囚われないうちに戻りたまえよ……それともなにか、悪夢に興味があるのかね?」

 

 

 彼はギラリとその瞳を光らせ、こちらを探るような質問を投げかける。

 どう答えるのが正解なのか分からないが、私の目的のためにもこの悪夢の先に興味はある……そういう意味で、私は頷いた。



「……ほう、それはそれは……悪夢の内に秘密を感じ、それを知らずにいられない……あんたもう、ビルゲンワースの立派な末裔というわけだ。そういう狩人なら、この悪夢は甘露にもなる」

 

 

 ビルゲンワースの末裔……?

 一体どういう意味なのだろうか、ビルゲンワースと狩人には関係がある……?



「だが、注意することだな。秘密には、常に隠す者がいる……それが恥なら、尚更というものさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど、あれはこういうことか」

 

 

 血の川を遡り、ついに辿り着いたその源泉。

 もはや血の海と言えるほど一面に広がった赫の上には、大量の『()()()()()()』が山のように重ねられている。

 建物の地下、死体遺棄場となったそこには、一柱の怪物がいた。

 

 

「……ああ、ああ、あんた……助けてくれ……」

 

 

 その死体の山から一人、血濡れの人物が這いずってくる。

 皮を剥がれ、肉を露呈させたその存在は、血の海に浸った真紅となっていた。

 


「あいつが……おぞましい、醜い獣がやってくる……」

 

 

 ごしゃり、という音を立て、怪物が此方へと歩み寄る。

 多足多腕、雑多に人間が混ざり合ったような冒涜的な肉体。

 肩には口のような器官が形成され、その中にぎっしりと隙間無く敷き詰められた『目玉』。

 背に大剣を背負うその怪物の顔は、半ば人の面影を残しつつ馬のように変貌した、悍ましく醜い獣だった。

 


「ああっ……呪われたルドウイークが……赦してくれ……赦して……くれ……」

 

 

 

ヒョオオオォォォォォォォ!!!!

 

 

 

 絶大なプレッシャーが、此方を見留めた獣から放たれる。

 アメンドーズすらも超えたあまりの威圧感に冷や汗が伝う。

 

 

 

 醜い獣、ルドウイーク。

 

 かつての英雄との戦端が、今開かれた。

 

 

 




この低レベルでルドウイーク倒さなきゃいけないの正気ですか?
レベル1縛りより楽とはいえ……無理筋……
テストプレイを行っているのですが、作者はいまだに攻略できていません(二週間連敗中)
流石に……来週までには倒さないと(チャートの組み直し的な意味で)まずい

本当は血の川で絶句するセイアちゃんを書いたり、クソ強獣狩人に八つ裂きにされたり、ガトリングに蜂の巣にされたりするのを書きたかったのですが、尺の都合上カット&出番は別の場所へと行ったのでした

セイア編と本編

  • セイア編を続け、終えてからメインに移る
  • 両方を混ぜる(完結後に別に纏め直す)
  • 両方を混ぜる(合わせて一つの章にする)
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