見たまえ!青ざめた血のアーカイブだ!   作:めろんムーン

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少なめです
最近執筆時間があまり取れておらず、こうなってしまって申し訳ない
もう少ししたら夏休みなので……


69.異なる地にて

 

 

 

ギャァァァアアアア!!

 

 

YOU HUNTED

YOU HUNTED

 

 

 

 

「ふう……」

 

 

 魔女を切り捨てた聖剣の血を払い、背中へ据える。

 カレル文字を扱うための工房道具があるという、ヘムウィックの墓地街……その最奥、ヘムウィックの魔女という存在が、ここの主だった。

 仲間を召喚し、拘束の魔法のようなものや周囲を吹き飛ばす魔法、姿が消える魔法……魔女に相応しい力の持ち主だったけれど、タネが割れて仕舞えば倒すのは楽だったね。

 

 そう思いながら、かつて監禁されていただろう狩人の遺体から工房道具を引き取った。

 何やら焼きごてのようなデザインだが……一体どう使うのだろうか……

 とりあえず懐へと仕舞い、私は来た道を引き返した。

 

 

 

 現在、聖剣は+8の強化をしている。

 ルドウイークがあれだけ強かったのに無強化だったのにも驚いたが、それだけ彼の戦闘経験と技量が高かったということなのだろう……

 たとえ、月の光の狂気に魅入られたとて、それは無くならなかった。

 

 地下死体溜まりの先は、ルドウイークによれば医療教会の昏い部分らしい……が、私が今の段階で進むのは止められた。

 そこは既に魔境と化していて、歴戦の古狩人でも突破するのは至難なのだと……

 

 だから、私はより強くなってから進むことにした。

 手始めにカレル文字とやらを手に入れるために、ヘムウィックに来たのだが……

 

 

「……これはどういうことだい?」

 

 

ヒヒーン!

ブルル……

 

 

 私の前には、二頭の馬がいた。

 否、馬だけではない、彼らが引く馬車まであった。

 それは乗り手を待つように戸を開けている。

 

 

 

 馬車が現れたきっかけは、ヘムウィックの墓地街の辻にあった大きな墓石へと近づいたことだった。

 ふと、馬車の一点を見て気になり、懐から一通の手紙を取り出す。

 カオリが以前くれた、「カインハーストの招待状」……その印と、この馬車についた紋章が同じものだった。

 

 

「ふむ……乗れということかな」

 

 

 思い立ったら吉日、というわけで乗ってみることにした。

 なに、いざとなれば徴で帰ればいいだけさ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「どうした、終わりか。なら、さっさと来た道を引き返すことだな」

 

 

 目の前の狩人が私にそう言う。

 幾度となく弾丸に撃ち抜かれて、獣に裂かれて、爆発と炎に身体を焼かれて……その先に待っていたのが、目の前にいる歴戦の狩人だった。

 ()()()()()を携えた彼の技量は一級品で、数手で致命傷まで追い込まれる。

 最初の数回は、一瞬で殺された……だけど、私が何度もやってくるうちに、彼と、上から弾丸を放ってくる人は私を諦めさせる風に戦い方を変えた。

 

 目覚め直しを、彼らは知っているみたいだった。

 

 

「獣は……狩らなきゃ……」

 

 

獣を狩れ

 

 

 ぼんやりと、でも確かに獣を狩らなきゃいけないと感じる。

 彼らが獣たちを獣ではないと言っても、彼らは私に襲いかかってくるし、獣にしか見えない。

 なら、狩るしかない。

 

 

「こんな幼い少女を狩人に仕立て上げるとは...…相変わらずだな、『助言者(ハンドラー)』ゲールマン」

 

 

 彼はそう呟くと、ノコギリ槍を構え直す。

 

 

「お前には同情する。生き方が違えば、もう少し長生きできただろうに……まあいい、何度でも殺してやろう」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 寒い。

 息が白く、空気は肌を刺すような冷たさがある。

 周りの人々もまた白く、透けていて、しかし()()()()は全く冷たさを感じないようだった。

 

 それも当然か。

 彼女たちは、亡霊なのだから──

 

 

「ふっ」

 

 

 ()()()宿()()()聖剣が閃き、亡霊がその輪郭を崩した。

 ここ、『廃城カインハースト』はその名の通り滅んだ城……亡霊が舞い、主人を失った召使たちは意味もなく床や壁、窓を磨いている。

 ヤーナムにそう遠くはないというのに、この城だけは吹雪の中にあり、異常な寒さがあった。

 

 

「っと、ここかな?」

 

 

 レバーを引けば、本棚が動いて梯子が出現した。

 この城は入り組んでいるから先に進む道を探すのが大変だったよ……

 まあその代わりに、元城というのもあってか探索はかなりの成果を得られたけどね。

 「処刑人の手袋」という、新たな神秘を得られたのが一番の収穫かな……怨霊を放つというのは本能的に恐ろしく、放つ度に正気が削れるような気がするけど。

 あとは武器強化のための素材……血石の塊だったり、死血や智慧を拾えたのも大きいか。

 

 

 

 そんなことを考えつつ、私は城の最上階……そのさらに上、屋根を乗り継いで、一番大きな城の頂点へと辿り着いた。

 城の頂上は他とは比べ物にならないほど吹雪いていて、一寸先も見えないほど。

 その、吹雪の先に……誰かが、座っているのが見えた。

 

 

パキッ バギリッ

 

ゴキッ バキャッ! バガンッ!!

 

 

 何かが砕ける音が聞こえる。

 音の主を注視すれば、そこには椅子に座り凍りついた老人がいた。

 否、凍りついて()()と言うべきだろう。

 

 

ヲヲ……ヲヲヲ……

 

 

 黄金を冠るその老人は、その凍てつく身体を起こし、傍にあった鎌杖を支えに椅子から立ち上がる。

 一歩、また一歩と歩を進めるうちに、その身は健常へと近づき、数歩も歩くうちに先ほどまで凍りついていたとは思えぬほどの覇気を伴う。

 

 

 『殉教者』ローゲリウス。

 

 

 かつてこの城を滅ぼした無銘の英雄達、処刑隊の長。

 

 それはこの城を封じ込める礎か、はたまた護る守護者か──

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 なんとか上層の狩人を欺いて、旧市街の下層へと降りれた……

 黒犬を狩りつつ、急かされるように先へと進んでいく。

 斧も、私の身体も、血に濡れて真っ赤。

 道中にあった教会の中には、大きな獣が吊るされていて、その周りにたくさんの獣がいたから、片っ端から狩った。

 

 

獣を狩れ

 

 

 それでも、獣は、狩らなきゃ……

 

 

 

 そうして辿り着いたのは、一つの大きな古教会。

 そこから感じる圧力に、私は迷わず飛び込んだ。

 

 

キシュアアアアアアアアア!!!!

 

 

 古教会の祭壇、その前に、大きな一体の獣がいる。

 皮が捲れ上がって、血を撒き散らすその獣は、咆哮を上げて私へと向かってきた。

 それは、まるで()()()()()()()()()()……だからこそ、私はそれを狩らなきゃいけないと、思った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

「貴公、訪問者……月の香りの狩人よ」

 

 

 荘厳な間にて、一人の女性の声が響く。

 

 

「私はアンナリーゼ……この城、カインハーストの女王」

 

 

 その女性はドレスを身に纏い、玉座へと腰をかけている。

 しかしその貌は、鉄面を被っていることにより見通すことは叶わない。

 


「フフフ……血族の長。すなわち教会の仇。しかし一族すべてを戮し、孤牢鉄面の虜としてなお
私に何用かな?」

 

 

 そう、彼女は私へと問いかけた。

 

 

「いや、私は君に用があるわけではないよ」

 

「ほう……いや、無礼は赦そう。そのような特異な風貌、貴公、この街の外からの者か……貴公は何故、この城へ参ったのだ?」

 

 

 そう問いかける彼女は、鉄面の奥から鋭い威圧感を私へと向ける。

 私自身がここに来たのは、前から一貫して力を得るためなのだけれど……ここに来たきっかけは、唐突に現れた馬車だ。

 

 

「ほう……迎えの馬車が、貴公の元に……そのようなこともあるのだな。此処に封じられた我が身では、最早知り得ぬ事柄もあるということか……招待状の不手際か……?」

 

 

 彼女は少し思案した後、徐に広間の隅へと手をやった。

 

 

「貴公、そこにある招待状を持っていくといい」

 

「……ふむ?どういうことだい?」

 

「馬車が来た、ということは招待状が貴公に送られているということ。しかし貴公は血族ではなく、またそれに連なる者でもない……となれば、貴公の他に血族に連なる者がまだいるのだろう」

 

 

 そう言うと、彼女はゆるりと頭を振り、此方を見据える。

 

 

「貴公、血族ではないが特異な力を持つようだな?そして、刺客でもなしにこの間へと現れたということは、あの殉教者めをも斃したのだろう。であるならば、貴公は相応の実力者……まだ見ぬ血族に連なる者を探すことなど、訳は無い」

 

「……ふむ。つまり、君は私に、同族を探せということかい?」

 

「然り。我らカインハーストの血族は、畏れられ、悍ましがられ、疎まれる。故に、一族に連なる者はもう数少ない……だからこそ、貴公、その芽を我に運ぶのだ」

 

「ふむ、構わないが……」

 

 

 何やら最初とは打って変わって喜色を浮かべる彼女に、不思議な感覚を覚える。

 彼女がその血族を呼びたがるというのはなんとなくわかるが、なぜそれで私に対して喜んでいるのか……

 

 

「貴公、その招待状を然るべきものに渡した後、戻るがいい。貴公は血族ではないが、努めた者を労うのは我の、そしてカインハーストの礼であるために」

 

「……わかった、そうしよう」

 

 

 

 こうして彼女から招待状を受け取り、私は玉座の間を後にした。

 

 血族……やはり、彼女かな……

 

 

 

 

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