実験棟、中腹。
そこに一つの大扉があった。
道程が途切れ到達できなかったそこは、大階段の回転により接続されたどり着くことができるようになる。
おそらく、マリアはこの先にいるのだろう。
そう思い、大扉を押し開ける。
そこには、見たことのある花畑があった。
周囲は遥か下にある、空中庭園とでもいうべき場所。
それは、カオリの元にやってきたあの
しかし、一つだけ違うことがある。
中央にある、一本の大輪。
その下に、一体の異形がいた。
それは、今まで見てきた患者たちと酷似しているが、明確に『異形』。
性差のない体格に、肥大化した頭部……長く伸びた腕。
一言で示すならば、『宇宙人』、だろうか?
彼、あるいは彼女はゆっくりと立ち上がり、私へと向き直る。
それと同時に、私の脳内に
【失敗作たち】
医療教会が作り出した、宇宙人の、あるいは上位者の失敗作。
それが、
失敗作たち、というだけあり、それは複数いた。
どこからか
たまったものではない。
狩人にとって最も恐るべきは、獣でもなければ上位者でもない。
集団に囲まれることだ。
幸い、二体が遠距離攻撃……エネルギー球や光弾を飛ばしてくるのに専念し、残りの二体が近接攻撃になる、という具合に分散してくれたのは助かった。
光弾は鬱陶しいが、飛んでくる間隔はまばら。
近寄ってきている失敗作たちを盾にしたり、距離を取って避けやすくしたりなど、対策はとれた。
近接個体も、実験棟内にいた動きの読めない発狂患者たちほどの脅威ではない。
上位者に近づいている影響か膂力はあるが、もはや狂う程の思考能力もないのかその速度は緩慢。
あまり体幹が強いわけでもないのか、攻撃に合わせて水銀弾を放てば、簡単に体勢を崩せる。
倒しても補充される中、四体目の失敗作を聖剣で貫いたころ、彼らは動きを止めた。
「大技……!」
彼らはゆっくりとその手を上げる。
それと同時に、その場に神秘が満ち溢れ……空が、宙へと変貌していく。
上位者と相対した時でも感じなかったような、強大な神秘に形作られた満天の星。
失敗作たちの、
それは、上位者への呼びかけではなく────星々への呼びかけであった。
呼応した星は隕石となり、遥かな距離を越えて箱庭へと落ちてくる。
「っ!!」
堕ちてくる星は空を裂き、地を抉る。
当たれば私の命など軽く屠るそれは、雨のように降り注ぐ。
庭の中央にある大輪の花は、隕石の嵐を受けてもなお健在であり、私はその陰に入り衝撃波を堪えた。
やがて嵐は収まり、庭は無惨な姿へと変貌した。
星を呼ぶ儀式の中心であった失敗作たちは、余波をものともせず此方へと再び向かってくる。
しかし、彼らは抉れた地面に足を取られ進みが遅い。
遠距離型に注意しつつ、近距離型を狩る。
大型の神秘弾と、追尾する小型の神秘弾。
厄介だが、慣れればそれまでだった。
2度目の嵐が来るかとも思ったが、あれが切り札だったらしい。
冷静に最後の一体へと刃を突き立てれば、彼らはそれ以上出現することなく息絶えた。
溢れ出る血の遺志と共に、彼らの無念が溢れてくる。
しかし、彼らは既に
ただ、星との交信を続けられなかったことだけを、悔やんでいた。
灯りをつけ、しばらく休んだ後。
私は狩人の夢で、一人の
「……」
目を瞑り、静かに眠る老人……ゲールマン。
その神秘は、以前会った時と段違いの量。
以前の、抜け殻のようなものとは違う、中身の入ったもの。
「……助言者ゲールマン」
「いや、古狩人ゲールマン、か」
首元に据えられた刃を感じながら、私は彼を見つめる。
帽子からこちらを覗く目は人を射殺しそうなほどに鋭い。
「獣がなぜ……狩人の夢にいる?」
「一つ君は思い違いをしている。ここは君の知る狩人の夢でもなければ、私は君の知る獣でもない」
「……ほう。なるほど、夢との繋がりが希薄……しかし強固だと思えば……そうか」
何かを納得した様子で鎌を収めるゲールマン。
剣呑な雰囲気ではあるが、ひとまず話し合いはできそうだった。
「……私の知る獣ではない、というのも一先ずは認めよう。君の瞳は……うむ。
まぁ、星空のような瞳だ。
蕩けているわけではないだろう……
彼はどうやら、この世界の本来あるべき狩人の夢のゲールマンらしい。
しかし、彼は長年狩人の夢に居たためか、存在が希薄になってしまっていた……それ故に、こうして別の夢に飛んでしまうことがあるのだという。
「しかし、ここは……元の狩人の夢よりも、私の存在が濃くなる。一体どういうことだね?」
「ふむ……」
「元々、ここにもゲールマン様がいらっしゃったからではないでしょうか」
後ろから声が聞こえる。
振り向けば、紅茶を淹れた人形がそこに立っていた。
「人形……私の知っているものではないようだが。この夢にもいるのか……」
「はい、ゲールマン様」
人形は彼をまるで
彼女によると、元々この夢にあった『助言者ゲールマン』という
「ここまで元気なのは久しぶりだ」
「それはよかった……ゆっくりしていくといい」
ゲールマンと別れた後、私は人形と話していた。
「……狩人の悪夢、その先に進むべきか否か。どう思う?人形」
「セイア様は、当初と比べ格段に強くなりました。ですが、悪夢の番人……そしてその先の狩人の罪は、これまでと比べ遥かに険しい道となるでしょう」
「ふむ……一度現実に戻るのも手かな」
狩人の悪夢、そして実験棟。
どこも油断ならず、また難所だった。
失敗作たちとの決戦ではなんとか負けなかったものの、ルドウイークとの死闘や、実験棟道中では何度も死んだものだ……そう考えると、先に進むのは考えたほうがいいだろう。
血の遺志を失うことはなかったから、幸いかなりレベルを上げる余地がある。
レベル :40
体力 : 9
持久力 :17
筋力 :16
技術 :20
血質 : 6
神秘 :22
レベル :55
体力 : 9
持久力 :20
筋力 :20
技術 :20
血質 : 6
神秘 :30
『聖剣を扱うのならば、もう少し膂力があった方が良い。それと、神秘を高めたまえ』
そう言うルドウイークの助言に従い、筋力をキリ良く20。
残った血の遺志を、神秘に全て振り分けた。
内側から凄まじい力が湧き出てくる気がする……今なら、ミカのような隕石だって降らせられるんじゃないか?
……目から出るんだった。
まあいい。
今後は必要に迫られればそのステータスに振ることにしようか……
とりあえずは、時計塔に進もう。
その先の秘密を暴くかどうかはともかく……人形に良く似た彼女には、一度会っておきたい。
***
「やっと帰ってこれましたね……」
「運良く城下に小舟があって良かったです」
「アルフレートさんにずっと漕がせちゃってごめんなさい……」
「いいんですよ、貴女はまだ子供ですから」
ヘムウィックの墓地街、その崩れた橋の下。
二人の狩人が、異界からヤーナムへと戻ってきていた。
「えっと、この後は……」
「私はローゲリウス師の記念碑へと戻ります。貴女はどうしますか?」
「……ついていってもいいですか?」
「もちろん」
あの狂乱したアルフレートを見ておいて、一人にすることはイズにはできなかった。
一人になれば何をしでかすかわからないというのもあったが、あそこまで彼を狂わせた目的が完遂してしまった以上、彼が今後どうするのかを知りたくもあった。
イズには、『獣を狩る』ということしか存在意義がない。
アルフレートと似通った目的……その終着点がどこに向かうのか、知っておきたかった。
***
“ん、どうしたの?カオリ”
補習授業部の存亡をかけた最後の一週間。
その最中の夜、俺は窓際に立ち月を見つめていた。
「いやなに。こうして月を眺めながら一人想いに耽るというのは悪くはないと思ってね」
“たしかに。なんだか落ち着くよね”
まあ先生と俺ではかなり意味合いが違うが。
考えるのはセイアのことだ。
最近、使者たちがセイアのことを心配そうにしているからね。
一応、昼間にトイレだ〜などと言って抜け出し夢には帰っているが……近頃セイアはヤーナムにずっといるらしく、会えていない。
人形に近況は聞いているし、セイアの状況については観ているんだが……
なんで目からビーム出せるようになってるの?
いや隕石だけど。
ようわからん方向にセイアが進化してるよ……あれほどヤーナムの神秘と相性がいいなんて……
というかなんとなくだが、ヤーナムそのものが知っているものより
戦闘記録を見たがなんかルドウイークが滅茶滅茶強くなってなかったか?
あとエーブリエタースの先触れで出る触手が丸太みたいだったぞ??
大丈夫かなぁ……流石に直接診察しないと悪影響があるかどうかはわからないからなぁ……
というかセイアの中に
いや体感だが……意思がセイア以外に一つ……いや二つある?のか?
無事に強くなってくれるといいんだが……ううむ。
“そうだ、カオリ。インスタントでいいなら紅茶入れるけど飲む?”
「そうだな……貰おうか」
まあ考えても仕方がない。
来たる襲撃の日、どの武器を使ってアリウスを相手するか考えておかなければ……モブの耐久とかわからんのだが。
まあ、私は私の為すべき事を為すだけだ。
アリウス編どうしようかなぁ(チャートをこねこね)
最終章で〆ようと思ってたんです(全然まだまだ先)
設定とか組み込んだほうが……うーむ