9.遭遇
トリニティの寮、そのうちの俺に宛てられた一室。相部屋ではないようでよかった。
そこに入り、備え付けの椅子に座る。
「ふぅ……」
ナギサとの対面はかなり体力と精神を使った。飄々として掴みづらい印象を与えられてればいいんだけど。
とりあえず、狩人の夢に帰ろうか。
補足しておこう。
狩人は脳内に刻まれた逆さ吊りのルーンを強く思い描くことで狩人の夢に帰れるという。これが、『狩人の徴』だ。これは脳裏に刻まれているので、厳密に言えばアイテムではないが、アイテム欄にセットすることで使うことができる。
ただし、脳内に刻まれた逆さ吊りのルーンを思い出すというのは普通に難しいため、『狩人の徴』というのは不完全な夢への帰還となる。よって、血の意志を全て捨てることになるのだ。
これを補助するのが、『狩人の確かな徴』。逆さ吊りのルーンを刻んだ呪符を見ることで、「ああ!そういえばこんな形だった!」みたいな感じにはっきりとイメージができる。だから、完全な夢への帰還に成功するため、血の意志を捨てずに帰ってこれるわけだ。
ならば、俺の場合はどうか。ブラボを何百周と回り、理論値の血晶石をかき集め、あらゆる情報を集め、考察するのが大好きな俺の場合は。当然、逆さ吊りのルーンなんて聖杯ダンジョンで目に焼き付いている。
さらに、この肉体は上位者。脳の構造からして違うらしい。軽く「こんなもんだったかな…」と記憶を探るだけで、脳裏に映像が浮かぶような詳細なイメージが浮かび上がってくるのだ。
何が言いたいのかというと、『狩人の徴』と『狩人の確かな徴』がいらない子になってしまった、というわけだ。かわいそうに……世の中の地底人が聞いたら殺しにきそうだな。やめてね?世界を超えて殺しにこないでね?
そんなこんなで、狩人の徴を強くイメージして夢に帰還する。
モワァァァァァン……
……ふう、いつもの狩人の夢に来れた……な?
「やあ、遅かったね、狩人」
狩人の夢に訪れた俺の目に入ってきたのは、水盆の前の空間に設置された鏡の近くの椅子に座った、SEXY FOX だった。
「…………ほう?先客がいるとは……」
「先客もなにも、私はもうここに数週間は体感でいるのだがね?先生と楽園について語った後、ここに迷い込んでから君が戻ってくるまで待っていたんだよ」
……?先生と楽園について語ったということは、エデン条約編1章1話じゃね?俺はおそらく本編9話前後でこの世界に来てるから時系列が合わないんじゃないかな?
「この鏡は不思議なもので、先生の周りとごく限られた一部しか見通せないみたいなんだ。私としては余計なものまで見ずに済んでいるから助かっているのだけど、先生ばかり見ていても暇でね」
「……その鏡は、私が人形に与えたものだな。なるほど、人形は目覚めているのか……」
そう言って少し目線を上にずらせば、『Lady Maria』と書かれた墓(DLC転送用の墓)に祈りを捧げている人形の姿が。
DLC……なるほど。夢は時間と隔離された存在だから、俺が未来で狩人の夢を作った後、セイアのいた時間軸に狩人の夢が未来から移動して、セイアが外の世界を見ている間に、見た時間と同じ時間がこの夢で経過し、俺の時間軸に追いついたということかな?だからセイアがこの狩人の夢にいた時間の分、数週間経っている。
「生憎と発狂事件の犯人を特定することはできなかったが、十中八九君だろう?」
「ああ、そうだが……見なくてむしろよかっただろう。君が見ていれば君もまた発狂していた」
「そうか……恐ろしいものだな」
なんかセイアからこちらを見定めているような感じがする。未来視で俺のことを知ったりして警戒しているのか?あとなんか冷や汗かいてない?汗ばんでるように見えるんですけど!?
「それで?貴女は何を望んでいるのだ、百合園セイア。私にわざわざ話しかけたということは、用件があるのだろう?」
「ああ。そうだな、聞きたいことは多くあるが……君はこの先どうするつもりなんだい?君の力はここを創造したというだけでも十分に人智を超えた存在だ。キヴォトスを滅ぼすつもりかい?」
「ふむ……答えは否だ。このキヴォトスを滅ぼすこと自体は確かに造作もない。しかし、この素晴らしい世界をみすみす壊すのは、些か勿体無いのさね……」
「素晴らしい……?」
滅んだ未来でも見過ぎて疑ってんな?というかなんか怯えてないですかセイアさん……俺まだ何もしてないんですけど……
「そうだとも……この、青春の世界は外と比べてはるかに素晴らしい。貴女は世界が滅ぶことを夢見てしまったのかもしれないが、
「っ…!!なぜ私の力を……」
「招き入れてもいないのに入ることができている時点で、貴女は夢に関する何かしらの能力を持っている。その上で、貴女のような賢き生徒がそう厭世的になるということは、世界が滅ぶくらいのことを夢見たのであろうことは想像に難くないのだがね?」
本当は原作知識です。
「そうか……」
「それに、先生は素晴らしい……あの人は特異点、運命に縛られぬ存在。すでに
「……そうなのか?」
「ああ……私は、あれを観察するのが面白いと思っていてね……彼ならば滅びの運命程度、如何とでもなるだろう」
「そうか……」
なんかさっきからセイアが相槌しか打ってねえぞ?
「それに、なによりも私がいるのだ。救える可能性のある世界の滅びの運命など、私からすれば児戯にも等しい」
救いようの無い世界に比べたら世界救済は簡単だよね!(ダクソやACの一部)
「君が見た滅びがどのような経緯かは知らないが……まあ、その鏡で最後まで見ておくといい。君には、その責任があるはずなのだ」
「……わかった。やってみよう」
「ふむ、それと未来視なんかはこの夢の中では発動しないようにしておこう」
「ああ…………まて、そんなことができるのか!?」
「当然だろう。ここは私が造ったのだぞ?」
セイアが驚いてる顔可愛い!早く実装してね!!
それはそうと、上位者に近づいてない存在なんて自分の領域内ならチョチョイのちょいよ!
原作の『幼年期のはじまり』エンドで戦う月の魔物はおそらく主人公が『3本目のへその緒』を使うことで上位者に近づいてたから、自分の領域内なのに上手く干渉できなくて、実力行使に出てきたんだと思う。セイアはそんなことないからね!未来視封じる程度は簡単だぜ!!
「これで、君の未来視は封じた。望まぬ夢に干渉することもないだろう」
「……ありがとう」
「なに、気まぐれに過ぎない。礼を言われるまでもないさ」
そうしてその後もセイアと少し話した後、俺は狩人の夢に戻ってきた本来の目的を果たしに行くのだった。
この狩人の夢に戻ってきた理由は、二つある。
一つ目は、武器の選別だ。明らかに生徒に使ってはいけないものも混じっているし、整理しておかないとな。
まず、ノコギリ系はダメだ。【ノコギリ鉈】【ノコギリ槍】【獣肉断ち】【回転ノコギリ】。他は刃引きや、鈍器としての運用でどうにかなるが、ノコギリ系の真価は相手の肉を引き裂くこと。生徒にやったらスプラッタ待ったなしだ。これを使ってもいい相手は、大決戦BOSSやツルギ、ネルなどの一部の大怪我を許容されるタイプの生徒だけだろう。ツルギやネルにもあんまり使いたくないけど。
例外として、【仕込み杖】は生徒に使う場合は刃引きをして変形後は完全に鞭として運用する。もともとノコギリ特性はおまけみたいなものだし、獣肉断ちが使えない今は広範囲を制圧できる非常に強力な武器だ。それにこの武器は変形後の技量補正が真価だし。
次に、ゲテモノ系の【ゴースの寄生虫】と【小アメンの腕】もダメ。単純に、生徒に使えば発狂されたり【恐怖】に反転したりするかもしれない。世界の敵になるつもりはないから使用禁止だ。同じ理由で、秘技の【エーブリエタースの先触れ】【処刑人の手袋】【呪詛溜まり】もダメ。【夜空の瞳】や【彼方への呼びかけ】は綺麗だから大丈夫だと思うけどね。
【ロスマリヌス】【火炎放射器】は大丈夫だろ。火炎放射器はメグが使ってるし。【ローゲリウスの車輪】も回して怨霊出さなければいいかな。【千景】【瀉血の槌】も血エンチャ使わなければ、ヨシッ!あとはいくつかの武器も変形攻撃をしないようにすれば大怪我はないだろう。
というわけで、ノコギリ系とゲテモノ系以外の武器を使うことにする。『対生徒じゃない敵用』、『対一般生徒用』、『対最強格用』で分けておく。血晶石をつけるのは生徒じゃない敵用と最強格用の武器だ。銃はどのくらい効くのかわからないからいくらかセットしておこう。
そして、工房道具で刃引きをしておく。この工房道具は俺が作り出した、『夢の中でなら刃引きも研ぎも自由自在』な優れもの、『刃加工の工房道具』だ。これで、一般生徒用の武器の刃引きを行っておく。
まぁ、くらえばじんわり血が滲む程度には怪我するだろうけど……それぐらいは勘弁してください。リゲインしたいし……俺と戦うのが悪い。
これでまだ力が強すぎるなら、どうにかステータスを下げる方法を探すか、新しく新品の武器を使者から買うしかない。まぁ、なんとかなるやろ!
狩人の夢に来た二つ目の目的は、自分の本体がどうなっているか理解すること。
と言っても、前世の自分の体を本体と呼んでいるわけではない。この場合の本体とは、【上位者としての本体】のことだ。
このボディの過去が『幼年期のはじまり』ということは、少なくとも人形ちゃんに抱きしめられた【青いイカのようなナニカ】がこの体の元のはず。にもかかわらず、このボディは俺の理想の女の子の見た目をしている。
つまり、これは分体か化身のようなもので、本体がどこかにあるのではないか?と考えたわけだ。そして、その仮説が正しければ、本体と繋がりがあるはずなので、それを探れば本体に辿り着けるはずだ。
早速やってみよう。ムムムムム……
…………
ん……感覚が変わったな。成功したかな?
目を開けると飛び込んできたのは、万華鏡のように、しかし万華鏡とは違い不規則に組み合わさった光と鏡の世界だった。
あらゆる色、あらゆる明るさの光が存在し、数千、数万枚もの鏡がギラギラと光を乱反射して輝いている。
鏡の中一つ一つに何やら違う光景が映り込み、違う人物が表示され、次々と切り替わっていく。
……なにここ?
実はこの世界のセイアちゃん、世界の滅びをたくさん見ているせいで【啓蒙10】くらいはあります。
なので狩人くんちゃんを見ても気分が悪い程度ですみました
だから、バッドエンドスチルを見ておく必要があったんですね
生徒じゃない敵用
・全て使用可能
最強格用
・【ノコギリ鉈】【ノコギリ槍】【獣肉断ち】【小アメンの腕】【ゴースの寄生虫】の使用禁止
・【葬送の刃】【千景】【ローゲリウスの車輪】【回転ノコギリ】【瀉血の槌】の変形禁止
一般生徒用
・血晶石を事前に外し、刃引きをしたもののみ使用可能
・【ノコギリ鉈】【ノコギリ槍】【獣肉断ち】【小アメンの腕】【ゴースの寄生虫】の使用禁止
・【葬送の刃】【千景】【ローゲリウスの車輪】【パイルハンマー】【教会の杭】【シモンの弓剣】【回転ノコギリ】【瀉血の槌】の変形禁止
となります。血晶石を外しているか、刃引きしたかは狩人の気分次第です。人気があった【葬送の刃】は出そうと思ったんですけど……変形後の形状が殺意高すぎて……生徒には使えんて……
前回、【ゴースの遺子】をゴースの『遺児』と表記していたようです。本当に申し訳ない。誤字修正、指摘などはどんどんしてくれると助かります。
推しの誕生日(伊落マリー、9/12)を勘違いと体調不良で逃し、弊シャーレのマリーちゃんを祝えなかった大馬鹿者は私です……全国のマリーファンの方に殴られても仕方ない……今年に入って一番悔しい……
だから作者に祝いの声を
感想と高評価、ずっと先の『ここすき』まで
狩人くんちゃんの名前は
-
月乃カオリ
-
我脳ヒトミ
-
人形ソラメ
-
月極チカ
-
生駒ナナ
-
朱月ミコラ
-
月詠チサキ
-
変若水トモエ
-
狩人エア
-
人識ヒトミ
-
能野ヒトミ
-
盛付似チハナ
-
盛付似チサキ
-
栗本ガラシャ