見たまえ!青ざめた血のアーカイブだ!   作:めろんムーン

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特にフリもオチもありません


93.やり残したこと

 

 

 

 狩人の夢、その館にて。

 セイアは、テーブルに置かれたモニターを見ていた。

 

 

「そうか。やはり老婆も……」

 

『如何に街を知っていようとも、今宵出歩くのは難しかったようだ』

 

「……助けに戻れば……いや、過ぎてしまったことか」

 

 

 今、セイアが見ているのはカオリが歩くヤーナムの街並み。

 セイアの因果が断ち切られヤーナムへと赴けなくなった代わりに、カオリ自身がヤーナムの街を散策していた。

 どうやっているのか、モニターに映るカオリの姿も見えるように三人称視点……まるでゲームだ。

 

 

「ギルバートも、まさか獣になっているとは……」

 

『彼が患っていたのは獣の病ではなかった……が、後からなど幾らでも機会はあってしまうからね』

 

 

 因果が断たれたことでもはや獣たちも復活することはなく、凄惨な死体の山が築かれた街並みを彼女は歩いていく。

 オドン教会から出ればそこは聖堂街、しかしそこにももはや生き残りなどいない。

 

 

『この後は旧市街に行くとしよう。にしても、神秘が濃いな……あんなインフレをするわけだ

 

「何か言ったかい?」

 

『いや、何も』

 

 

 カオリの呟きをよそに、ヤーナムを巡る旅は続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 一方、狩人の夢の庭園にて。

 イズは、ヒトミに手ほどきを受けていた。

 

 

「イズさん、いいですか。キヴォトスでは、近接攻撃は主流ではありません。代わりに、銃を使います」

 

「銃、ですか……私もお父さんのを持っていますけど、あんまり使ったことないですね」

 

「キヴォトスの銃はヤーナムのものよりも遥かに進歩していて、それだけで獣が狩れそうなほどのものもいくつかあります……とはいえ、イズさんの持つ散弾短銃も十分オーバーテクノロジーなもの。性能は気にしなくても大丈夫ですよ」

 

「そうなんですか……」

 

「とりあえず、イズさんは当たらないように気をつけてください。身体強度は狩人基準ではありますが、普通に戻ってしまっているので当たれば十分なダメージになり得ます」

 

「わかりました!」

 

「では、実戦です」

 

 

 ヒトミが消えると同時に、遠い場所で出現する。

 その手に持つのは一般的なハンドガン、それがイズへと向けられ、弾が発射された。

 

 

「キャッ!?」

 

 

 飛んできた弾を()()()()()()、イズはしっかりと回避する。

 しかし身体は追いついていないのか、よろけそうになっていた。

 

 イズは獣ではなくなったとはいえ、その経験はしっかりと蓄積されている。

 また、名残としてその身体機能はある程度残されていた。

 音を超える程の身体能力についていけるよう、発達した動体視力は音速を超える物体でも目で追えるほど。

 遅くなったとはいえ、100m走は5秒ほどだろう。

 

 そんなスペックを無自覚な彼女は、少女時代、もしくは獣化前の感覚で動かしてしまい、身体能力に振り回されてしまっていた。

 

 

「……とりあえず慣れましょうか」

 

「は、はい……」

 

 

 この後は一般的な小学生レベルの6年間を圧縮して行われるスパルタ勉強タイムが待っている。

 残念ながら、手加減などは存在していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 ヴァルトールは狩人の悪夢にて一人歩いていた。

 もはや獣も生きていない、更地となった聖堂街を抜け、実験棟下の地下牢へと。

 

 その最奥の地下牢をこじ開ければ、そこにいたのは獣の皮を被った男。

 

 

「……ほう、これはこれは……ようこそ、寝室に、お主がはじめての賓客だよ……『連盟』の」

 

「わざとらしいな、『教会の刺客』。別に恨みはないのだが……」

「私を殺すのかね?貴様は……鐘の音が聞こえているわけではない筈だが。なぜ、私の元へきた」

 

「もはやこの街に生きているのも、お前と俺の二人だけ……殺しはするが、その前に世間話でもと思ってな」

 

「フハハハ……ハハッ!あの『獣喰らい』が世間話と!笑えるな」

 

 

 二人は互いに殺気を浴びせつつも、向き合って座った。

 獣の皮を被った男、又の名を『教会の刺客』ブラドー。

 今となっては意味のなくなってしまった、漁村という秘密を隠す存在。

 

 

「あの獣のような狩人はお前の知り合いか、『獣喰らい』。あのような形での混ざり物は見たことがない……あの偽りの英雄が持っていた欺瞞の聖剣を振り回して、いい気なものだ」

 

「負けた男の世迷言か。情けないな」

 

「……」

 

 

 基本、二人の相性は良くない。

 しかし二人とも寛容ではあるために、話が終わるまでは殺し合いもしないだろう。

 まだまだ夜は永く、朝はやってこない。

 ならば語らいも、永く続くのだろう。

 

 

「そこに幽閉されているメンシスのはどうする」

 

「あれは既に気狂いだ、ここを出たら消しておけ」

 

「ではあそこの大女は……あれはもしかして『ガラシャ』か」

 

「そうだ……『のろまのガラシャ』。最後まで矜持を貫いたようだが、結局は物言わぬ骸となった」

 

「あれが死ぬとはな……それもよりによって、獣ではなく人の手でとは……」

 

 

 そんな話を、彼らはいつまでも続けていた。

 ずっと、ずっと……いつか、ヴァルトールが飽きるまで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

「ところでだ。聖杯には行ったかね?」

 

『聖杯?いや、行っていないね』

 

 

 ヤーナムを散策しながら、カオリはセイアに問いかける。

 聖杯……トゥメル、僻墓、ローラン、そして()()から構成される、深い深い地下ダンジョン。

 終わりなき地底へと足を踏み入れる狂人たちの集う場所。

 

 

「聖杯はいいところだ。君もいずれ行くといい……イズを連れ立ってね」

 

『ふむ……そうだね、いつか行ってみることにしようか。キヴォトスのあれこれが済んだらね』

 

「落ち着けるほど余裕が生まれるといいがな」

 

 

 セイアは自身の予知夢により見た未来を、カオリは原作知識を思い出し、当分はこなさそうだと思ったのだが。

 

 

「ああ、そうだ……セイア、君に予知夢を返そう」

 

『ん?ああ、そういえば封じてもらっていたのだったね』

 

 

 今のセイアは神秘に卓越している……それこそキヴォトス1を争えるほどに。

 今更になって予知夢に振り回されるわけもない。

 

 

『ふふ、今ならば……これも使いこなせるか』

 

「遠い未来を見るのは、逆に難しくなっただろうがね。あれは神秘の暴走によるものだ」

 

『未熟な私でも暴走させれば見れたのだから、今ならばさほど難しくもないさ』

 

「……尤もだな」

 

 

 そんな雑談を交わしながらも、カオリは残党を狩りつつ街を歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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