夏、某日。
俺はアイスを買うために、近くのコンビニへと向かっていた。
クーラーもあるとはいえ、やはり夏はアイスを食べなければ生を実感できん。
やはりパ○コやクーリ○シュ、ガリ○リ君とか安価で気楽に食べれるものを買い込むべきだろうな。
金は、聖杯で追加で得てきた金貨や高価そうな金細工なんかを洗浄して質屋に売ったから、かなり余裕がある。
「にしてもうるさいな」
一つ向こうの大通りで戦闘が起こっているのか、先ほどから爆発音が煩わしい。
ただでさえ夏の暑さが鬱陶しいのに、騒音も加わるんだからイラつきが生まれてくるな。
ドッカンバッカン、ゲヘナでもないのにどうしてこう夏はうるさいのか。
爆発は春の季語ではなかったのか?
まあ、こちらに被害がないなら──── ダバァン!!
うぅぅぅぅぅううううみみみみみいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!
前言撤回。
被害しかなかった。
ようやく辿り着いたコンビニの壁が粉砕され、気絶した不良が、通りの向こう側からいろいろな棚を貫通しアイスケースに
店員は即座にレジ裏に隠れ、中にいた客たちは悲鳴を上げて逃げていく。
唖然としていれば、アイスケースからばらまかれた商品棚からこぼれ落ちた品物たちの海を、黒い人影が奇声を上げながら渡ってきた。
「……ツルギ……やりすぎだぞ……」
ギャハハハハ…………!!!
どうみても正義の味方とは思えない笑い声を上げながら現れたのは、みんな大好き我らが正義実現委員長、剣先ツルギ。
彼女は今日も元気だなぁ(現実逃避)
……うん、どういうことだよ。
俺の(ものになるはずだった)アイスが全滅してしまった……泣けるぜ。
そんな俺の内心を知る由もないツルギが、俺を見つけ……口を開く。
カオリィ!!海に行ぃぃくゥぞぉぉぉ!!
「……はあ?」
かくして、私は彼女と共に真夏のビーチ行きが決定したのであった。
***
時は流れ、碌な説明もないままやってきたるは真夏のビーチ。
陽は燦々と輝き、波音と観光客の喧騒があたりに満ちている。
ツルギの友人枠として参加した俺だったが、その実なにも知らされてないんだよな……
というわけで、説明を聞いてみれば。
「つまり……そこの
「うっ」
「?」
「はい……わざわざすいません、カオリさん」
「いや、構わんよ。君も災難だな、マシロ」
俺に事情を説明してくれたのは、正義実現委員会一年生、静山マシロ。
あの『はいてない』ネタを一時期持っていたおかっぱスナイパーだ。
つまり、俺が巻き込まれたのは真夏のウィッシュリストと……別に大筋には関係ないサイドストーリー、介入する気はあんまりなかったんだが……
まあいい、巻き込まれたなら巻き込まれたなりにやれることはある。
「まあ、ウィッシュリストの内容は阿呆二人に任せるとして。私
“ うん、大丈夫だよカオリ……にしても相変わらず服装は暑そうだね……”
「水着……水着なぁ、一応持ってきてはいるのだが。使うかどうかはわからん」
狩人って泳げないからなぁ……うーん、一応今回試しに来てはいるが、別に脱がなきゃ水に入れないわけでもない。
まあ……別に前世泳げなかったわけでもない、むしろ人並みだ。
泳ぐのも嫌いなわけではないし、一度くらいは試してみたって良いだろうな。
プレイヤーへのサービスシーンも兼ねて。
“ にしても驚いたよ。カオリの学校の編入生が、トリニティに二人も来るなんて”
「ん、ああ。先生には紹介していなかったな……二人とも、来たまえ」
「は、はい!」
「ええ」
俺の呼び声に応じて現れたのは、俺と瓜二つな少女と、金髪の幼い少女。
どちらも先週トリニティに到着したばかりの新入生だ。
当然、俺にとってはどちらも見知った顔。
「イズ・ガスコインです……よろしくお願いします」
「月乃ヒトミ。カオリさんの……けっこ「姉妹」…………姉妹です。よろしくお願い致しますね」
“ うん。よろしくね、二人とも”
イズ・ガスコイン。
名前をブルアカに合わせるか悩んだが、一人だけ西洋の名字というのも異質さを際立たせるからそのまま通すことにした。
ナギサは不思議な名前ですねと首を傾げていたが。
月乃ヒトミ。
こいついま俺の結婚相手って言おうとしただろ、油断も隙もない……まったく。
ナギサにもしっかり姉妹で通したんだから、紛らわしくなることはあまり言わないでほしいな。
「まだ学校にも慣れていないだろうが、まあ二人とも……
“ 外で……なるほどね”
つまりは俺と境遇は一緒だ、と暗に示すことで、先生からも便宜を図ってくれることだろう。
ああそれと、二人にも一応水着は買ってあるが……使うかは知らん。
「さて……何を怯えているんだヒフミ……と、アズサ」
「このミッションをうまく達成できなかったら、やっぱり爪を……あうぅ……」
「或いは
こいつらどんな脅され方したんだよ……
いやまあツルギが正面で暴れたりしたのか?
いやこれは何か誤解が生じているパターン……か?
爪を剥がす……のは流石にこのキヴォトスでもやるやついないんじゃ……
あとアズサ、MIAはしっかり捜索しないと正義実現委員会側の大問題になるからな?
“ そのリスト、ちょっと見せてくれる?”
「あ、はい!えっと……『砂のお城と砂風呂作り』『泳ぎを習得する』『ビーチバレー』『花火』『スイカ割り』『海の家』……全部で6つですね。これらをツルギさんと一緒に行って、証拠写真を撮らなければいけません」
“ まあ平和的なミッション……かな?”
「……相変わらず先生は素直すぎる」
「騙されるな先生、ツルギとビーチバレーなんてしたら死人が出るぞ」
俺やヒトミ、イズなら問題ないだろうが……それ以外がアタックでも受けてみろ、筋肉ゴリラのブロッコリーにボコボコにされた某野菜人のような状態になるに違いない。
というかツルギって泳げないのか?
「スイカ割り……?砂風呂……?花火……?」
「ああ、イズさんはわかりませんよね……スイカ割りは中から赤い汁が出る、頭大の物体を粉砕する競技。砂風呂は人を生き埋めにする行為。花火は爆弾です」
「えっ……えっ……?」
「ヒトミ、イズに変なことを吹き込むな」
ヒトミは大人びた様子のくせにあれで茶目っけが多い。
エロがグロに置き換わったハナコのようなものだ……例えが最悪すぎたな、流石にそれよか数段マシだ。
前提の価値観がヤーナム野郎なだけだな……むしろ住民だったイズのほうが、幼いとはいえまともな価値観なのはどういうことだよ……
「海、水着、陽射し、そして戦車!これこそ私が求めていた、イメージ通りの完璧な夏休みです!」
そのイメージはどうなんだ?
戦車は余計じゃありゃせんか?
キヴォトスだと普通なのか??
でもマシロも頷いているし、他の奴らも特段変な顔はしていないからこれが普通なのか……?
「とりあえず、まずは一つずつ、書かれた通りに進めてみましょう!」
「ヒフミがそれでいいならいいけど……あれ、どうする?」
そう言って、アズサが指し示した先。
それに釣られてみんながそっちを見れば、そこにはとても少女がしてはいけない顔をした我らが正義実現委員会委員長殿の姿が。
きひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!
海!海だぁ!!くははははは!!!
「な、なに!?怖いっ!?」
「お、お化け!?お化けよ!!みんな逃げて!!!」
きゃははははははははああぁぁぁぁ!!!!
「「「「「“……”」」」」」
浜辺で砂煙を上げながら爆走し、水面の上を駆けるように飛沫を上げる黒い影。
観光客がどんどん逃げていく中、彼女は実に楽しそうに暴れ狂っている。
「……先生……やっぱり、諦めても良いですか……?」
“ が、頑張ってヒフミ!ファイト!!”
「うわあああぁぁぁぁーん!!助けてくださいせんせぇー!!」
ううむ……これまた一波乱ありそうだ。
Unwelcome School、脳内再生余裕でした……にならなければ良いが。
それにしてもウィッシュリスト……はて、どんなイベントだったかね?
初期のイベントすぎて、あまり覚えていないのだが……
「……うん。いつもより、平和な夏休みになりそうですね」
マシロさん、本気で言ってる?
あんたはまとも枠だと思いたかったよ?俺……
「ヤーナムよりはまともそうです!」
「ですね」
ソウダネ。
君たちはそれを言う権利があるよ。
“ ……カオリ、何かあったら任せたよ”
「貴公がなんとかしたまえよ!」
そんなこんなで、我々の短くも長い夏季休暇が始まったのであった。