あれから三日くらい経ち、私はまなとジバニャンと一緒にマ○オカートで遊んでいた。
「よし!また私の勝ちっと!」
「うぅ~!お姉ちゃん強すぎだよ!」
「そうニャン!ちょっとくらい手加減してほしいニャン!」
「手加減ってなんだ?」
私は某伝説の野菜人が言ってそうなセリフを口にする。
「ところでまゆちゃん。肩の調子は如何ですか?」
するとウィスパーから右肩の調子を聞かれ、私は正直に答える。
「だいぶ良くなってきたかな。激しい動きをしなかったら痛くないし」
この三日で私の右肩はだいぶ良くなってきた。
まぁ激しい動きをしたらまだちょっと痛むけどね…
「あの…」
すると部屋のクローゼットが開いて、一人の妖怪がこっちを見ていた。
「えっ?なに!?」
「そういえばまだ紹介してなかったっけ。この子はもう一人の居候のヒキコウモリ。普段は部屋のクローゼットに引き籠ってるんだよ」
「初めまして。あなたがまなさんですね?」
「うん…」
「いつもまゆさんから話は聞いてます。目に入れても可愛い妹だと言っていましたよ」
「ヒ、ヒキコウモリ!そういう事言わないでよ!?恥ずかしいじゃん!」
「お、お姉ちゃんってば!恥ずかしいのはこっちだって…///」
「…ゴホン!それよりヒキコウモリ。何か用があるんじゃなかったの?」
「そうでした!皆さん、これを見てください」
そう言ってヒキコウモリが見せてきたのはパソコンに映っているネット記事だった。
ネット記事にはアイドルグループ『電池組』のコンサートが開かれているドームにて5万人の人達と連絡が取れなくなっていると書かれていた。
…完全に忘れてた。
これは妖怪見上げ入道の仕業だ。
ひょんなことから鬼太郎君の友達?のねずみ男さんが見上げ入道の封印を解いてしまい、それからねずみ男さんの協力で5万人の人達を霊界送りしていた筈だ。
「電池組って…もしかして!」
するとまながスマホを開いて誰かにメッセージを送っていた。
「どうしたの?」
「今日、蒼真と大翔が電池組のコンサートに行くって言ってたから…ダメ、既読にならない!」
そういえばアニメでも蒼真君と大翔君が巻き込まれてるんだった…
するとまなが立ち上がる。
「行くんでしょ?」
「うん!馬鹿だけど放っておけないよ。友達だから!」
「…止めてたって無駄なのはわかってるよ…私も行く!二人は私の友達でもあるんだから」
「お姉ちゃん…ありがとう!」
「でも、どうやってドームの中に入るんでうぃす?記事には入口が中から塞がれて入れないって書いてありますよ?」
「…あ、ちょっと待ってて!」
そう言ってまなは部屋から出てどこかへ行ってしまう。
しばらくしてまなが部屋に戻ってくる。
「お姉ちゃん!これ見て!」
まなが見せてきたスマホにはあのドームの設計図のデータが表示されていた。
「ちょ、まなちゃん!それどうしたんですか!?」
「あのドーム、パパの会社が設計したの。だからパパのパソコンから貰ってきちゃった!」
「よく持ってこれたね。パスワードとかしてある筈なのに」
「実はね、パパってばパソコンの横にパスワード張ってたんだよ」
「父さんってば、セキュリティー甘すぎだって…」
今度キッチリお灸をすえないとね。フフ…
「お姉ちゃん?なんか怖いよ…?」
「気のせいだよ?」
「う、うん…」
「それで、どこかに隠し通路でもあるニャン?」
「設計図には非常用の出入口があるって書いてあったよ!」
「それじゃあ行こっか!」
「うん!」
それから私達は母さんにバレないようにコッソリ家を出て電池組のコンサートが行われる筈だったドームに向かっていった。
ドーム前に着くと大勢の人が野次馬に来ていた。
辺りを見渡してみると鬼太郎君と親父さんと猫娘さん、それとねずみ男さんらしき人を見つけた。
「鬼太郎!」
「まゆちゃんにまなちゃん!ウィスパーにジバニャンも!」
「やっぱり鬼太郎君達も来てたんだね」
「え?誰だこの子達?」
私達と面識がないねずみ男さんは首を傾げていた。
「どうして君達がここに?」
「友達が兄弟して行方不明なの!やっぱりこれって妖怪のせい!?」
「そうみたいなんじゃが…中に入れなくて困っとるんじゃ」
「それなら大丈夫ですよ。まな」
「うん!これ見て」
そう言ってまなは鬼太郎君達にドームの設計図を見せて非常用の出入口の存在を伝えた。
「なんという偶然力じゃ!」
「ハッキング出来るの?」
「それが父さん、パソコンの横にパスワードを張ってたんですよ。セキュリティーが甘い事は私がみっちり父さんに教えるつもりなので…」
「そ、そう…」
私がそう言うと猫娘さんは顔を引きつらせてしまう。何故…?
「…でも、人間は関わらない方が良いわよ」
「だから!友達が行方不明なんだってば!」
「あたし達に任せておけばいいの」
「この前鬼太郎を助けてあげたの、私とお姉ちゃんだから!」
「そのお姉ちゃんを手当てしたのはあたしなんだけど?」
「はいはい二人とも、今は喧嘩してる場合じゃないんだよ?」
言い争ってるまなと猫娘さんを止めてから私は猫娘さんを見る。
「確かに猫娘さんの言う事にも一理あると思います。でも、今日はジバニャンも一緒ですから大丈夫です。いざとなったら妖怪ウォッチで他の友達妖怪も呼べますから」
「まゆちゃん?ワタクシもいるんですけど…」
「えっ?だってウィスパー戦えないでしょ?」
「そんなハッキリ言わなくても…」
どうやら私の一言でウィスパーは落ち込んだようだ。ごめんウィスパー…
「まゆちゃんの言う通り、今は争っている場合ではない!どちらにせよ、まなちゃんが持つ設計図がなくては中には入れん。まゆちゃんにまなちゃん、一緒に来てもらってもい良いかな?」
「はい」
「うん!」
そういう訳で、私達も一緒に中に入る事になった。
私達は非常用の出入口から中に入って設計図を持つまなに案内してもらっていた。
「蒼真…大翔…」
まな…蒼真君達とはよく喧嘩したりしてるけど、やっぱり心配なんだね…
「大丈夫。きっと助けられるから」
私はまなの肩に手を置いて、優しくそう言う。
「お姉ちゃん…」
「…いたぞ!」
しばらくして私達は見上げ入道がいる会場まで辿り着いた。
「デッカイニャン…」
流石見上げ入道って名前なだけの事はあるね…
「ちょうどいい所に来た…」
「見上げ入道センセーイ!」
ねずみ男さんは見上げ入道の所へ走っていった。
「あいつら俺達の仕事の邪魔するんです!」
「なんニャンあいつ!」
「ああいう奴なのよ…」
ジバニャンが怒っていると猫娘さんは呆れた表情でそう口にする。
「見上げ入道!5万人の人間をどこにやったんだ!」
「フフフ…全員霊界送りにしてやったわ!」
「返してもらおうか。5万人も行方不明になって大騒ぎになってるんだぞ」
「おかしいな?年間8万人以上の人間が行方不明になっている。なのに誰も騒がないではないか。誰が行方不明になろうと、人間は他人の事など気にしていないのだ!」
「それは違うと思うよ、見上げ入道」
見上げ入道の言葉を聞いた私は見上げ入道に向かってそう言った。
「なに?」
「確かに人間のほとんどは行方不明のニュースを見ても他人事だと思ってると思う。だけど中には心配してくれる人もいる。それに行方不明になった人の友達や家族は心から心配してる筈だよ」
「彼女の言う通りだ」
私が話していると鬼太郎君も自分の考えを述べる。
「必ず誰かが気にかけてくれている…それが人間っていうものだ」
「鬼太郎君…」
「見上げ入道。そんなに沢山の魂を霊界に送って何を企んでいるんだ?」
「…全部で4万9993人だ。後7人で5万になる。5万の魂を霊界に送れば、わしは無限の力を手に入れて日本の頂点に君臨することが出来るのだ!そしてあと少しでという所でお前達が来てくれたというわけだ!」
確かにねずみ男さんを除けばここには私、まな、ウィスパー、ジバニャン、鬼太郎君、親父さん、猫娘さん。ちょうど7人いる事になるね…
すると見上げ入道が口から大きな空気を出してこっちに飛ばしてきた為、私達はすぐに退避する。
「鬼太郎!見上げ入道は空気を自由に操れるんじゃ!」
「はい父さん!」
鬼太郎君は髪の毛針とリモコン下駄で対抗するけどどっちも見上げ入道には効かなかった。
「秘技・霊界送り!!」
「うわっ!」
「鬼太郎!」
見上げ入道が口から出した色付きの風に鬼太郎君が呑み込まれる。
親父さんは無事だったけど鬼太郎君はそのまま霊界に送られてしまった。
「こうなったらオレっちが行くニャン!ひゃくれつ肉球!!」
「秘技・霊界送り!!」
「ニャ~~ッ!?」
ジバニャンも応戦しようとしたけどあっさりと霊界送りにされてしまった。
「これで4万9995人目…」
「先生!あそこにピチピチの魂を持った妖怪と人間がおりますぜ!」
「人間…そうじゃった!」
ねずみ男さんの言葉で何かを思い出した親父さん。
わかってる。見上げ入道は人間が『見上げ入道見越したり!』って言うと倒すことが出来る。
だけど今それを言ったらまなと猫娘さんの関係がアニメよりかけ離れたものになるかもしれない…それだけは変えたくない!だってこの後の二人の関係は私も大好きだし!
みんなには悪いけど、もうちょっと黙ってるね。
「ねずみ男、よくやってくれた!」
「そりゃもう!見上げ入道先生が日本を支配する為なら何でもしますよ!」
「では…秘技・霊界送り!!」
「わっ!てめぇ騙しやがったなぁ~!」
ねずみ男さんも霊界に送られてしまった。
「ププッ!あの人情けないですね~!あんな妖怪の言いなりになって霊界送りにされるなんて「ウィスパー避けて!」うぃすー!?なんでワタクシまで~!?」
あちゃ~、遅かったか…
「これであと三人!」
そう言って見上げ入道は私達を見てくる。
すると猫娘さんは私達を庇う様に前に出てくる。
「鬼太郎なら大丈夫。あんた達は早く逃げな!」
そう言って猫娘さんはしばらく目を閉じ、化け猫を彷彿させる顔つきになる。
そして唸り声を上げながら見上げ入道に向かっていった。
猫娘さんは見上げ入道の体をよじ登り、長い爪で見上げ入道の目を引っ搔いた。
「ぐっ!」
見上げ入道は手で猫娘さんをはたき落そうとしたけど目が見えなくなっていたから簡単に避けられた。
「シャーッ!」
続けて猫娘さんは見上げ入道の顔にキックをしたけど目を開けていた見上げ入道は口から空気を出して猫娘さんを吹っ飛ばそうとする。
「お返しニャン!ひゃくれつ肉球!!」
「ぐわっ!」
そこへ戻ってきたジバニャンが見上げ入道の目にひゃくれつ肉球をお見舞いした。
「大丈夫ニャン?」
「あんた!なんでここにいるの!?」
「どうなっている!?貴様は霊界送りにしてやった筈だ!」
「残念だったね。この妖怪ウォッチを使えば私の友達妖怪を呼び出せるんだよ。例えどこにいたってね!」
そう言って私は妖怪メダルを取り出した。
「私の友達、出てこいふぶき姫!妖怪メダルセットオン!!」
「ふぶき姫!」
妖怪ウォッチから光が飛び出し、そこから召喚されたのはその名の通り吹雪を操る妖怪ふぶき姫だった。
「ね、ねぇ…なんだか寒くない?」
「なるほど。まゆちゃんが呼び出した妖怪は雪女の類の様じゃな」
「久しぶりね、まゆ!」
「久しぶり!ふぶき姫。あいつの動きを止めて!」
「フフッ、任せて!」
ふぶき姫は口から息を吐き、それは見上げ入道の元まで飛んでいった。
「なにっ!?」
見上げ入道は足から凍り始め、あっという間に全身が凍って動かなくなった。
「凄い!一瞬で凍っちゃった!」
その光景を見ていたまなは驚いてしまっていた。
「見て!」
猫娘さんが見上げ入道を指差すとあいつの頭の氷が少しだけ溶けていた。
「この感じだと、1分もしない内に動くようになるわね…」
ふぶき姫は見上げ入道を観察しながらそう口にする。
「まゆちゃん!まなちゃん!今のうちに伝えておく!」
親父さんが私とまなに耳打ちをしてくる。もちろん内容は見上げ入道の弱点についてだ。
「おのれ~!」
そこへ見上げ入道の声が聞こえてくる。見てみるとあいつの顔の部分にあった氷が砕けていた。
「ヤバッ!あんた達!早く逃げな!」
「逃げられては困る!秘技・霊界送り!!」
見上げ入道は私とまなに向かって霊界送りの風を送ってきた。
そこにやってきた猫娘さんが私達を突き飛ばし、代わりに風に包まれてしまった。
「猫娘さん!」
「くっ…逃げな!」
猫娘さんは私達に向かって逃げるように促す。だけど私は逃げない!
それに、この後の事を知っている私には逃げる理由もないんだよ。
「後は人間の娘達、それにそこのチビ目玉を霊界送りにすれば、わしの野望は達成される!秘技。霊界送…」
「待て!見上げ入道!」
待ってたよ…鬼太郎君!
「リモコン下駄!!」
「ぐおぉっ!?」
戻ってきた鬼太郎君は見上げ入道の目にリモコン下駄をぶつけた。
すると猫娘さんを包んでいた風は消滅し、間一髪で猫娘さんは霊界送りにされずに済んだ。
「鬼太郎!」
「鬼太郎って…あの有名な!?」
ふぶき姫は鬼太郎君の事を知っていたらしく、盛大に驚いていた。
「よく頑張った、猫娘」
「もう、遅いよ…」
鬼太郎君からの労いの言葉に猫娘さんは頬を赤く染めながらそう言う。
「君達も、僕がいない間戦ってくれてありがとう」
「別に褒められるような事はしてないニャン!」
「まぁ、友達に頼まれたからね」
ふぶき姫は私を見ながらそう口にする。
なんだか嬉しいな…
「どういう事だ!?何故貴様も戻ってこられた!?」
「僕は幽霊族の末裔。霊界とは自由に行き来出来るんだ。僕に霊界送りをしても意味がないぞ!」
「ぐぐぐ…ならばこうしてやる!」
見上げ入道は自身を更に巨大化させ、辺りを大きく吸い込み始めた。
鬼太郎君と猫娘さん、それにジバニャンとふぶき姫はあっという間に見上げ入道に食べられてしまった。
「嘘っ!?みんな食べられちゃった!」
「…」
まなが慌てている一方、私は黙って見上げ入道を見ていた。
「ハハハ!お前達の魂はわしの体内でじっくりすり潰してくれるわ!…しかし、ちと大きくなりすぎたわい…」
そう言って見上げ入道は空気を吐き出して縮もうとしていた。
「な、何故だっ!息が吐き出せない…がが…!」
突然見上げ入道が苦しみながらうめき声を上げ始める。
見上げ入道の喉は大きく膨れ上がり、そこから鬼太郎君達が喉を突き破って脱出する。
「今じゃ!」
「行くよ、まな!」
「うん!」
「「見上げ入道見越したり!!」」
私とまなは大きく息を吸って、思いっきり叫んだ。
見上げ入道は断末魔を上げながら消滅した。
「父さん、これはいったい…?」
「見上げ入道はな、人間に『見上げ入道見越したり』と言われると妖力を失うんじゃよ。二人とも、お疲れ様じゃったな…」
親父さんから労いの言葉を受け取った私とまなは息を整える。
やがて霊界送りにされた人間達とウィスパーが戻ってきた。もちろんその中には蒼真君と大翔君の姿もあった。
「蒼真!大翔!」
「あれ?まな?それにまゆも…お前らも来てたのか?」
何が何だかわかっていないのか、蒼真君は呆けた表情をしていた。
あまりに緊張感のない蒼真君にまなが目に涙を浮かべながら彼に詰め寄る。
「バカッ!」
そう言いながら泣きじゃくるまなの頭に私はポンと手を置く。
「な、何だよバカって!なぁまゆ、一体どうなってんだ?」
「う~ん…強いて言うなら、蒼真君達は私とまなに心配かけたって事かな?」
「はぁ?何だよそれ…?」
私の言葉に蒼真君は疑問符を浮かべてるみたい。
するとウィスパーが私の所に飛んできた。
「どうやら、一件落着のようですね」
「うん」
それから私達はドームを後にし、鬼太郎君達と一緒に歩いていた。
「中々手強い相手じゃった」
「そうですね」
「あんな奴に苦労するなんて、鬼太郎もまだまだね」
「でも猫姉さん、超カッコよかった!」
そう言ってまなは猫娘さんの腕に抱き着いた。なんだか猫娘さんが羨ましいです…!
「猫…姉さん…そ、そうかな~?」
猫娘さんも満更じゃないのか、顔がニヤけていた。
「ねぇ!お姉ちゃんも猫姉さんって呼んであげなよ!」
「私は良いかな」
「えぇ~!でも猫姉さん、超カッコよかったでしょ?」
「まぁ確かにね。猫娘さんの戦い方ってなんか綺麗だったね。上手く言えないけど…うん。カッコよかったですよ、猫娘さん」
「そ、そう?…まぁ、あんたがこの子…まなみたいに猫姉さんって呼びたいんなら好きにしたらいいでしょ?…まゆ」
そう言って猫娘さんは私の名前を呼ぶ。そういえば初めて名前呼ばれた気がする。
「考えておきます」
猫姉さんか…何か呼ぶのは恥ずかしいな~。
ねずみ男さん?いつの間にかいなくなってたけど、確かアニメだとこの後天罰が下ってたんだっけ…
まぁ大丈夫でしょ。