「コレなんか歩夢に似合ってるぞ」
「わぁ……可愛い髪飾りだね」
歩夢と勘助は付き合って数日経ち2人でデートしていた。アクセサリーショップで手頃なプレゼントをしようと思った勘助は、歩夢に似合う桃色の花柄が入っている髪飾りを勧める。歩夢も気に入ったようだ。
「これ買おうか、歩夢に似合ってるからさ」
「うん、ありがとう勘助君。えっとお金……」
「俺が払うからいいよ」
「え!? そんな、もう散々貰ってるのに……」
歩夢は焦る、デートの時は勘助が基本的にお金を払ってくれるのだが、その数があまりにも多かった。今回も勘助は払うと言って聞かない。
「言っちゃ悪いけどそこまで高くもないしな。歩夢にプレゼントって考えるとやっぱ嬉しくて」
「え、えっと……ありがとう……」
そう言って勘助からまたもプレゼントを貰ってしまう歩夢なのだった。
☆
「勘助君のお金使いが荒い?」
「えっと、別に無駄遣いが激しいってわけじゃなくてね……」
歩夢は勘助の話を幼馴染の侑に言った。デートの時は毎回勘助がお金を払ってくれて自分も払いたいが、どうにも出来ないことを伝えた。
「うーん……コレばかりは歩夢と勘助君が話し合って考えないといけないからなぁ」
「でも、確かにずっと勘助君にお金を払わせるのは問題だよね。今度私からも聞いてみるよ」
「うん、ありがとう侑ちゃん」
「それにしても歩夢が徐々に私離れをしてるって考えたら感慨深いなぁ、嬉しいよ」
そう言って笑う侑に対して頬を膨らませる歩夢。どういう意味と、聞くと侑は歩夢が自分にベタベタだった事を言ったところ歩夢も顔を赤らめた。
「だって、侑ちゃんは大切な幼馴染だから。勘助君がいなかったら、侑ちゃんと結婚する予定だったし」
「それ勘助君に絶対言ったらダメだよ、私も許さないから」
「わ、分かってるよぉ。確かにあの時は色々言ってたけど、もう私は勘助君がいるから」
「その様子だと大丈夫そうだね」
そう言って侑は歩夢に一言言って勘助の元に向かったのだった。
☆
「というわけで勘助君はお金使うの禁止です」
「それはキツイぜ侑さん」
侑の言葉に勘助は肩を落とした。そもそもの原因は勘助にあるので侑は歩夢の話もしながら彼に注意をした。
「うーん……分かってはいるんだけど」
「そもそも何で歩夢とのデート代全部出すのさ、もうそんな時代じゃないって言ったらアレだけどさ、歩夢だって払おうとしてるんだから割り勘でいいじゃん」
「可愛いんだよ」
「は?」
「歩夢が可愛いの見て喜んでる姿を見たらなんかこう……純粋な娘みたいに見えてな、ついついお金を出してしまうんだ」
「歩夢は勘助君の娘じゃないんだけど」
「ごもっともです。でも、歩夢が可愛すぎてなんでも買ってしまうんだ」
「重症過ぎない!? それ1番ダメな彼氏のパターンだよ!」
「お、おう……」
さらに反省する勘助だが、歩夢が可愛いのは分かると侑も納得するところは納得した。
「それにさ、私の我儘なんだけどさ」
「今度は何?」
「その、歩夢にプレゼントしたやつを付けてもらって、コレ勘助君が買ってくれたんだって自慢してくれたら、歩夢の中に私はまだ恋人としているんだなって安心できるから」
「勘助君……もしかして嫉妬?」
「まぁ、歩夢の中にはいつも侑さんがいるからな。幼馴染が1番大切なのも分かるけど、恋人になってくれたんだからもっと私の事も見て欲しいなぁって」
「勘助君、本当に歩夢の事好きなんだね」
「まぁな。だからさ、何かをプレゼントした時の歩夢の笑顔は精神安定剤なんだよ」
「それを言われたら……私にも責任はあるのかな?」
「侑さんは悪くないさ、歩夢だって悪くない。ただの私の醜い感情のせいなんだよ」
そう言い終わって、勘助は少しため息を吐く。侑も侑で勘助の心を知ってしまいなんとも言えない気持ちになった。だが、それを破ったのは……
「勘助君のバカ! 私はもう勘助君と共に生きる覚悟があるのに!」
「え? 歩夢!?」
「ごめんね、私が呼んだんだ。歩夢には外で待っててもらったの」
「侑さん……」
「勘助君こっち見なさい!」
突如現れた歩夢は勘助の首を両手で持ち自分の顔の方に振り向かせる。そしてそのまま勘助を抱きしめる。
「勘助君、ごめんね。私が優柔不断だからこんな事になったんだよね?」
「別に歩夢が悪いわけじゃない、私が……俺が弱いだけだよ。1人が怖いんだ、せっかく恋人になれた歩夢が何処かに行くのが怖いんだ。侑さんの方が好きだからって離れられるのが怖かった、だからっていうのもアレだけど、俺があげた物を付けてくれれば歩夢の心の中に俺がいるって安心できたんだ」
「そうだったんだ……本当にごめんね」
歩夢に抱きしめられながら勘助は少し泣いた。歩夢は勘助が泣いてるのを見ると頭を撫で出した。侑は2人きりにしたい思いがあったので静かに教室から出て行く。
「勘助君、今日家来れる?」
「大丈夫だけど……どうした?」
「勘助君は私が離れるのが不安なんだよね。だったら今日は一日中勘助君のそばにいたいなって」
「歩夢……」
「私が勘助君から離れないって口で言っても信用出来ないから行動で示そうかなって……駄目かな?」
「ありがとう、男が情けないと思うけど、今日は歩夢の言葉に甘えさせてもらう。着替えとか持ってくるな」
「うん、それじゃあ私も待ってるね」
こうして勘助と歩夢の確執たる物は消えてなくなった。
☆
「んっ……勘助君コレで足りる?」
「あ……歩夢……まさか部屋に入ってキスされるとは思わなかった……」
「だって不安なんでしょ? これくらいしないと信じてくれないかなって」
「い、いや、そうだけどその……恥ずかしい」
歩夢の部屋に入った瞬間勘助は襲われた。キスをされ口の中を舌で蹂躙され顔を真っ赤にしながら無抵抗になった勘助。
歩夢は歩夢で勘助の顔に興奮して再度キスをする。
「勘助君が悪いね、こんなに顔を真っ赤にして……私が男の子だったら取り返しのつかないところまで行ってたよ」
「い、今だってそこそこ取り返しのつかない事してるって……」
「え? もっとキスして欲しいの?」
「いや、そんなこと言ってな……」
そうして30分程歩夢が主導権を握り勘助にキスをし続けた。終わり次第勘助が顔を真っ赤にしてそのまま意識を失ったのだが、歩夢は気にせず口だけでなく首筋や腕など至る所にキスをしたのは言うまでもなかった。
結局その翌日、上機嫌で勘助の腕を組む歩夢と顔を真っ赤にしながらも登校している勘助の姿が目撃されたと言う。
☆
「この水族館結構人気だから行くか」
「うん! あ、分かってると思うけどお金は……」
「折半だろ、分かってるよ」
再びデートする事になった2人だが前回の反省も兼ねて食べ物や施設入場料金などのお金を折半してした。
勘助が少し多く払おうとも考えたが、歩夢がそこそこ怒って指摘してきたのでその考えは消えた。
水族館に入った2人はペンギンやサラマンダーなど珍しい生き物や定番の生き物を見ながら先に進んでいく。歩夢も勘助もどちらかと言うと真面目な方なので、説明文を見ながらお互いに感想を語って笑い合う。しばらく歩くとクラゲのコーナーに着いた。
「クラゲって可愛いよな」
「うん、フワフワしてて癒されるよね」
「なんかさ、クラゲを見てたら頭がぼぅっとしてきて目の焦点が合わなくなって、記憶なくなるんだよな」
「それは危なくないかな!? え? クラゲって催眠術とか使えるの?」
「分からないけどさ、もしかしたら俺は催眠かかりやすいかも」
「つまり勘助君に催眠術をかければ色んなことを……」
「化学的だが、催眠をかけても本人がやりたい事じゃないとやらないらしいぞ。やりたくないことは断るんだとよ」
「えぇ……それじゃあ勘助君に性的に襲ってもらうことできないよ」
「君は何を考えているんだ? っていうか、それなら言うこと聞くんじゃねぇかな、歩夢と……まぁ、そういうことしたいとは思ってるし」
「本当勘助君ってウブだよね。今も顔真っ赤じゃん」
「歩夢が積極的過ぎるんだよ……いや、菜々も俺の代わりに保健体育の耐性固めてたな……しずくさんはR18の脚本書きまくってるし、虹ヶ咲は変態の集まりか?」
「勘助君がウブ過ぎるだけだよ。女子校だったのもあるけど女子って意外とそう言う話に興味津々だし」
「あぁ……やっぱそうかぁ……」
「私は寧ろ勘助君の知識が心配だよ。どうしてそんなに耐性ないの?」
「親父と母さんが昔っから曲作りの一環でたまに官能小説とか読まされたから知識はあったんだが、菜々に勧められてビデオ見たら生々しくて……」
「なるほど、リアルな映像が駄目なんだね。っていうか菜々ちゃんはどんな動画見せたの……」
「ぎ……逆なやつ……女性が男性に跨ったり……鞭で叩かれてる方の……」
「とりあえず菜々ちゃんにはお仕置きしておくね。よしよし、勘助君大変だったよね」
ロマンのかけらもない話をしながら歩夢に撫でられてる勘助をクラゲ達はどんな感情で見ているか分からないが、恐らくいたたまれなかっただろう。
「ねぇ、勘助君」
「ど、どうした歩夢」
「もしね、私もそういうことがしたいって言ったら……どうする?」
「それは……まぁ好きな人のためなら気絶してでも付き合うさ……恥ずかしいけどな」
「そう、ありがとう、それじゃあ今日家でね」
「え? ちょ、ちょっと歩夢!?」
「え? なーに?」
そう言った歩夢は少し笑みを浮かべていたが、勘助から見たら小悪魔が笑っているようにしか見えなかったのだった。