「菜々助けて、死ぬ」
「諦めたらどうですか?」
勘助は昼休み、幼馴染の菜々の元で昼を食べていた。勘助は菜々に愛の事を相談したのだが、その内容が……
「そもそも勘助さんが、愛さんが勝負に勝ったら好きな人を教えるとか言うからそんなことになるんじゃないですか」
「まさかそこまで気になるなんて思ってなかったんだよ。おかげで仕事の合間にも授業の復習だけじゃなくてチェスやら将棋やらバックギャモンやら遊びの必勝法調べて練習しないといけねぇんだ」
「その割には楽しそうですけどね。て言うか、勘助さんの好きな人って結局じゃないですか」
「愛さんの事を好きになりました」
「私は勘助さんを殺せば良いんですよね?」
「菜々ちゃん落ち着いてください」
幼馴染からは出てくると思えない物騒な言葉に勘助は苦笑いを隠せない。それもそのはず、勘助に告白した菜々の目の前で別の女の子を好きになったと言ったのだから菜々本人にとっては監禁エンドもいいとこである。
「さて、私は璃奈さんに媚薬でも作って貰いますかね」
「一応聞くけど何に使うんだ?」
「私だけの勘助さんにしようかと」
「やっぱMELODYってヤンデレソングじゃねぇの?」
「なんで私のことわかってくれないんだろう?」
「言葉にしなくても行動で初めて分かり合えそう」
「まぁ、嫉妬しても言いませんし、恐らく私は溜めてから爆破するんでしょうね」
「無害型ですかね? っていうか嫉妬は間接的に言ってない?」
「さぁ? どうでしょうか? そう言えば勘助さんのいつも使ってる制汗スプレーも底をつきましたね。帰り買ったらどうです?」
「嘘でしょ? まさかのストーカー系ヤンデレですか? しかもマジで昨日無くなってるんだけど」
「璃奈さんから貰った盗聴器って凄いですよね。3個作ってましたけど」
「今すぐ家帰って外そうかな。というか絶対本人としずくさんだろ後2つの使い道」
「まぁ、璃奈さんとしずくさんは勘助さんが愛さんの事好きだと知ってから外してましたよ」
「お前も外せよ」
「幼馴染なので大丈夫です」
「大丈夫じゃないです」
そろそろ自分の幼馴染の暴走が不安になってきた勘助だが、とうの菜々本人は歩夢と同じ幼馴染LOVEである。勘助も勘助で菜々の事は好いているので許しているが、逆の立場なら盗聴器は付けない。
「でも、意外ですね」
「何が?」
「勘助さんは璃奈さんやしずくさんみたいに大人しい子が好きかと思ったのですが」
「それなら菜々も同じだろ……まぁ、私は好きになった人がタイプだと思うぞ」
「勘助さんの家にギャル物の本はありませんよ?」
「いや、確かにそうだけど……って、え?」
「ついでに言うと勘助さんの部屋ってエッチな本無いですよね。それでも男の人ですか?」
「何で怒られてるか分からんし、何で菜々が俺の寮の中の本事情を知ってるのか知りたい」
「幼馴染だからね」
「敬語やめても可愛さより恐怖が勝つよ?」
「正直に話すと寮に行く前に勘助さんの部屋漁ったことがありました、それ以降は本屋でラノベくらいしか買ってないのを知っていたので」
「成る程な」
「やっぱり女性から逆レされないとダメなんですか?」
「言い方ってもんがあるだろう!?」
菜々の言葉に納得が言った勘助だが、その後の勘助がウブである発言をした菜々に少し怒りながら突っ込みを入れるが、幼馴染同士のじゃれ合いである。
「それで、さっきの質問の回答ですが、もう良いのでは?」
「それはあれか、告れって事か?」
「はい。勘助さんの心が有耶無耶なら考える事をオススメしますが、もう迷いはないんでしょう?」
「うん。愛さんが好きなのは変わらん」
「それなら当たって砕けるべきかと、むしろ砕けてくれないですかね。応援はしますが」
「最高速度で矛盾してるけどな」
「そりゃ、こっちとしてはフラれた身ですから。愛さんにフラれて傷物になった勘助さんの心に入って頂きますしたいところですけど、勘助さんの幸せも願ってますから」
「複雑な心境なんだな」
「誰のせいですか」
じゃれ合いは続くが、コレは菜々の本心である。勘助が菜々の本心を聞いたところで嫌いになる事はないと完全に信じているからこそ、彼女はこう言った。
「願わくばムードが欲しいな」
「将棋してたら2人きりですからそのまま言ってしまえば良いんじゃないですか? お前の事が好きだったんだよって」
「菜々ってさ、頭良いのにポンコツだよな」
「どう言う事ですか!?」
「愛さんはな、乙女なんだよ。確かにギャルっぽい格好や言動してるけど、実は璃奈さんと少女漫画とかよく見てる。そんなウブな人にそんな事してみろ、呆れてものも言えないとはこの事だ」
「まぁ、確かに愛さんは純情ですよね。あの見た目で可愛いとか言われても顔真っ赤にしますし」
「それだけじゃないよ、愛さんは料理も上手いし、いつも明るいから元気をもらえる。少しコミュ力が強すぎて他の人が好意向けないかが心配だが、愛さんはそれくらい魅力的だ」
「成る程……勘助さんが愛さんの事を好きな理由がよく分かりました。それじゃあ後は本人にしっかり伝えるだけですね」
「でもなぁ……愛さんには親友の恋心を取ってるからって恨まれてるもんだからなぁ」
勘助の言葉に菜々はそうだろうかと、一言。本当に恨まれているならこうして勘助に勝負も挑まないし、本当に嫌いな人なら話しかけもしないと言った。
勘助も菜々の言葉に少し安心しながら再び決意する。
「もはやこれまでだな」
「それ死亡フラグですよ」
「案ずるな、死にはしない。なんて、カッコつけは即終了だな」
「菜々、ありがとう。私は貴方が幼馴染で良かった」
「幼馴染とかどうでも良いです」
「おい」
「嘘です。頑張れ、勘助」
「お……おう。ありがとう菜々」
突然のタメ口に驚きながらも恐らく菜々なりの本気の励まし方なんだろうと勘助は思った。勘助は時間になったので愛の元に向かう。今日はさっき話に出ていた将棋では無いが、チェスである。やるしか無いと勘助は決意した。
☆
「愛さん、一つ聞きたい事があるんだが」
「どしたのカンスケ?」
「私と勝負してて楽しいか?」
勘助は愛と同好会前にチェスをしながら質問をした。
勘助曰く、自分とこうして何かするより璃奈達と遊んだ方がいいのでは無いかと、勘助にしては消極的な言葉だった。
「確かにりなりー達と遊んだら楽しいけどさ、勘助とこうやって遊ぶのは好きだよ」
「勝負じゃなくてか?」
「正直さ……今楽しいんだよね。最初はアタシの自己満足とりなりーを差し置いてカンスケが好きになった人を探るためにやってた事だけどさ、今はなんかただ遊んでるって感じ」
「ほら、愛さんはスポーツくらいしか試合とかで戦った事無いから。頭脳戦とかのゲームってあんまりやった事無いんだよね。だからカンスケが初めてかな、ここまで勝てないのも初めてだけど」
そう言って愛は苦笑いしながら勘助に言う。勘助も少し笑いながら自分もここまで勝負事に対して熱くなれたのは初めてだと言った。
「でも、カンスケは強いね」
「軍師だからな」
「関係あんの?」
「無い」
「なにそれ、面白い」
そして愛は声を出して笑う。その笑顔を見たから、勘助は一瞬の心の隙をつかれた。
「あぁ……やっぱり好きだ」
「へ?」
「あっ……ええっと」
「今好きって言った?」
「まぁ、うん。愛さんが好きだなぁって」
「あ、あはは……照れるけどそれはカンスケの好きな人に言った方がいいよ」
「言った」
一瞬の言葉を聞かれてしまった勘助はもう止める事をやめた。ハッキリと愛の目を見て告げる。
「か、カンスケ? 何で愛さんの目をずっと見て……」
「好きだよ、愛さん」
「り、りなりーの真似? いや、真顔でそう言うこと言ってくるのは似てるけど……」
「愛さん、俺の好きな人は愛さんだよ」
「え、えっと……え? ええ!?」
「え、が多いな笑顔だけに」
「フフッ……って笑えないよ!? 本当にどう言うことさ?」
「だから俺が好きなのは愛さんなの。璃奈さんを理由に今まで勝負して来たけど、愛さんの笑顔とか引っ張ってくれる姿とか、そういうのひっくるめて俺は愛さんを愛してる」
勘助の捲し立てた様な告白に顔を赤くしながら聞いている愛。しばらく愛は混乱していた。話が終わり、勘助は混乱していた愛を詰ませるための一言を放つ。
「愛さんが良ければ付き合って欲しい」
その一手で追い込まれた愛の答えは……
「あ、えっと……あ、愛さんよ、用事思い出しちゃった! ご、ごめんカンスケ!」
「ちょ!? 愛さん!?」
逃げの悪手である。