虹ヶ咲のシンガーソン軍師 ifルート編   作:初見さん

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愛ルート3

「璃奈さん、準備は出来た?」

「むぐ……んん!?」

「うん。バッチリ、璃奈ちゃんボード『仕事だぜ』」

「むむむ! むぐ!!」

「それじゃあ始めましょうか」

「愛さんを袋叩きの刑に処す」

 

 刑罰を言ったのはしずく、璃奈、せつ菜の3人同時である。対して、縄で縛られて口をテープで塞がれてるのは宮下愛被告。

 事の発端は、愛が璃奈に勘助に告白されたと相談したところから始まった。

 愛が恥ずかしさと混乱で勘助から逃げた。その言葉を言ったときには愛は璃奈に縄で身体を縛られていた。

 恐るべきスピードであった。因みに口にテープをしようと提案したのはせつ菜である。本当に袋叩きにはする気はないが、縛る気はあった。同好会の活動が休みの日の出来事である

 

「愛さんがなんか言ってるからとりあえずテープ外すね」

「……ちょ、りなりーアタシ死ぬって!?」

「少なくとも殺す気でいったけど」

「怖いよ!?」

「怖くもなりますよね、勘助さんの告白から逃げたんですから」

 

 しずくの言葉に愛は言葉に詰まった。その後顔を赤くしながら、恥ずかしかった、と言った。

 

「愛さんの気持ちは分かりますが、一番恥ずかしいのは告白したのに逃げられた勘助ですよね」

「ぐっ……せっつーの言う通り……だね」

「愛さん、今回ばかりは流石に庇えない」

「うぅ、りなりーにも見捨てられた……」

「愛さん、もう一度勘助さんと向き合ってくれませんか?」

 

 三者三様愛に説教まで行かなくても、勘助の告白に逃げた事を少しながらも非難してもう一度考えて欲しいと言った。

 愛も愛で、自身の行動を見つめ直しながら反省していた。それでも、勘助から突然告白された愛からすれば恥ずかしさと焦り、そして急な事に対して耐性が無かったと考えれば、逃げの一手も出て来てしまうのかもしれない。

 

「ねぇ……りなりー達はさ、知ってたの?」

「うん、勘助さんが愛さんに好意を持ってたのは知ってる」

「私も最近愛さんと一緒にいるので、少しだけそう思ってました」

「私は愛さんが好きって相談受けたので確定申告されてます」

「マジかぁ……」

 

 またも三者三様に答えられたが、ほぼ勘助が愛の事を好いているという事だったため愛は天井を見上げてしまった。

 

「アタシどうしたらいいんだろう」

「愛さんの気持ち次第、愛さんが勘助さんといてどう思うかだと思う」

「盗聴して勘助さんがどれだけ愛さんの事好きか聞いてみては?」

「ついでに勘助さんが愛さんとの妄想恋愛台本を書いてるか聞いて来てください」

「りなりーはさておき2人なんかおかしいこと言ってなかった? しずくに関しては何さアタシとカンスケの台本って!?」

「男の子ですから勘助さんも好きな人と色んなことする妄想くらいするかなと思いまして」

「ちなみにもし書いてたらどうするのさ?」

「次回のライブの糧にしようかと」

 

 しずくの冗談なのか本気なのか分からない回答に頭を抱えた愛がいた。気を取り直して愛は璃奈の言った事を考えてみる。

 勘助とはライバルである。親友である璃奈が勘助に告白した時、璃奈が勘助と付き合って、もう自分と遊んでくれないと思った時寂しさを感じた。だからこそ……だからこそなんだ? 

 

「あれ? 何で愛さんカンスケと戦ってたんだっけ?」

 

 璃奈を勘助に取られたと思ったとしても、璃奈が遊んでくれなくなったとしても、勘助に戦いを挑む意味が見つからない。愛の持ち前のコミュニケーションで璃奈に遊んで貰えばいいし、璃奈も璃奈で愛の事は大切に思っているはずである。彼氏ができたからと言って愛を蔑ろにするかと言うとそうでもない。

 だから、愛が勘助と戦う意味が分からない。

 宮下愛は考える。勘助と戦った時の自身の気持ちを。楽しかった、勘助と戦うのが。楽しかった、勘助と話をするのが。

 

「カンスケと戦って……遊んで……楽しかったのは……アタシ?」

「愛さんは私が遊んでくれないかもって言ってたけど、私は愛さんが言ってくれたら一緒に遊んでるよ」

「まぁ、璃奈さんの場合は愛さんに言われなくても遊ぶよね」

「愛さんはそもそも勘助さんと戦う必要なんてないんですよ。それでも、貴方が勘助さんと戦って……遊んでいた理由は何ですか?」

「楽しかった……カンスケといるのが……好きだったから……」

「愛さんは既に勘助さんと勝負するのはただの口実になっているんだと思います」

 

 好きな人と一緒にいるのは楽しいと言う菜々の言葉に愛は下を向いて考え込むフリをした。こうでもしないと、愛の心が持ちそうに無かった。

 少し時間をおいて、愛は話し出す。

 

「アタシはさ……正直恋愛とか分からなくてさ。恋する気持ちとか少女漫画みたいな胸のドキドキとか全く分からないんだよね」

「でも……アタシはカンスケとずっと一緒にこうやって遊べたらいいなぁって思ってるよ」

「それじゃあ……勘助さんの告白は断ると言う事ですか?」

「それは……えっと」

 

 愛の言葉にしずくは言葉を返すと静かに唸る。その時、コンコンという音と共に誰かが、部屋に入って来た。

 

「やっぱあの場面で告白は無理があったよなぁユニコーン」

「勘助さん!?」

「え!? カンスケ!?」

「え? 何してんだ4人とも……ってか何で愛さん縛られてんの!?」

 

 部屋もとい、教室に入って来たのは話の中心である山本勘助本人であった。何も知らない勘助は愛が縛られている状況を見て驚く。とりあえず、勘助は縛られている愛のロープを解くのが面倒なので力技で千切った。

 それに対して化け物を見る様な眼で勘助を見て驚いたり、ドン引きしたりする人がいたが、勘助からしたら愛が縛られていた状況にドン引きである。

 

「んで、どういう話だ?」

「言いづらい」

「愛さんと私の話か?」

「正解。というか、勘助さんはどうしてここに?」

「愛さんの告白ミスったから誰もいない部室で反省会をと思って」

 

 勘助は一番冷静に見えた璃奈に話を聞いたが、すぐに話を理解した。璃奈は隠したかったのだが、勘助が真剣に聞いて来たので答えるしか無かった。

 

「愛さん、話するか」

「え、えっと……」

 

 勘助は愛以外の3人に眼をやった。勘助の思いを汲み取った3人はゆっくりと部室を出た。

 

「あ、ちなみ後で愛さんを縛った事に対して裁くから」

 

 失礼、3人は勘助の言葉にゆっくりと恐怖して部室を出た。

 愛と勘助しかいなくなり、しばらく沈黙が訪れる。最初に切り出したのは勘助。

 

「ごめん、愛さん」

「へ?」

「いや、本当なら手紙で屋上に呼んで告白ってのが一番良いんだろうけど、少し急ぎすぎた。混乱させたなって」

「い、いや愛さんこそ逃げてごめんね。びっくりして……ていうのは言い訳か……うん。ごめん、勘助がせっかく勇気出してくれたのに」

「焦ったけど、私にも原因はある」

 

 そして、勘助は言葉を続けた。

 

「正直なところ、告白の返事はいらないんだ」

「え?」

「愛さんが私を生理的に無理ですとか、ごめんなさいって言葉を言わない限り可能性はあるからな。それまでに惚れさせれば良いんだ」

「アタシそんな事言わないよ!? ってか、勘助今日なんか消極的じゃない?」

「告白した女に逃げられたら誰でも消極的になる」

「うっ……返す言葉がない」

 

 まぁ、冗談とは言えないなと、勘助は愛に返す。勘助の心は自分に惚れてくれれば良いのだが、そういうわけにもいかない。愛の想いもある。だからこそこの言葉を言った。

 

「でも、いいの? アタシそういうの分からないけど」

「分からせてやるよ。それくらい愛さんが好きなんだ」

「アハハ……なんかここまで求められると照れるね」

「愛さんは嫌か? 私とは」

「ううん、嫌じゃないよ。むしろ愛さん自身が許せないだけ」

「許せない?」

「愛さんもね、カンスケの事好きなんだ。でもそれは恋愛的な意味じゃないから、ここまで想ってくれるカンスケに申し訳なさと、ここまで心が揺れてる自分に対して許せない」

「だが、それでいい」

 

 愛の話を聞いた勘助が口にした言葉に驚いて勘助を見た愛。勘助は少し笑っていた。

 

「心が動かないならそれまでだ。それでも愛さんの心は動いてる。今はまだそれでいい。これから私が惚れさせる」

「それって女の子のセリフじゃないの?」

「女だろうが男だろうが言うセリフだよ。行き過ぎればストーカーだが、程々にするつもりだ」

「これからは恋愛心理戦。俺が愛さんを惚れさせるか、愛さんが俺を拒絶して俺が諦めるか。それが、愛さんとの最後の勝負だ」

「これが済んだら、これからは遊びだ」

「遊び?」

「もう璃奈さんを巻き込む必要ないだろ。ここからは私と愛さんの遊びだよ。何をするでもな」

 

 その言葉に愛は眼を見開いた。勘助の想いだけでなく、自分のためにここまで言ってくれる男を見たからである。完全にとはいかないが、これで心を少し奪われた。

 

「愛さん、好きだ。俺と付き合ってもらうために、今度は俺が遊びに付き合わせて貰うぞ」

「カンスケ……」

「天才軍師は諦めんよ。そんなわけで放課後タピオカ食べない?」

「ちょっとブーム過ぎたかな……でも、ありがとうカンスケ」

「え? タピオカってブーム過ぎてんの? 美味いじゃんあれ」

「まさかの好物だった!?」

 

 勘助の言葉に突っ込んだ愛だが、勘助はただ笑うだけだった。こうして、勘助と愛の恋愛心理戦が行われる事になったのは、ここからすぐの事である。

 

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