虹ヶ咲のシンガーソン軍師 ifルート編   作:初見さん

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菜々(せつ菜)ルート4

「ねぇ、ユニコーン。勘助君はいつ帰ってくるんだろうね?」

「せつ菜ちゃん?」

「生徒会と事務所のお仕事両立してるのは分かるけどもう3日も会えてないよ……寂しいな」

「ねぇ、せつ菜ちゃん? 大丈夫?」

「うん。ユニコーンも寂しいよね」

「せつ菜ちゃん戻ってきて!?」

「あ……侑さんお疲れ様です。今ユニコーンに愚痴を聞いてもらってたんですよ」

「それ勘助君のエレキギターだよね? ってか言葉わかるの?」

「それが何も話さないんですよね」

「だよね」

 

 とある日の部室内で、侑が見たのはせつ菜が勘助の持っていたエレキギター(通称ユニコーン)に話しかける姿であった。

 そもそもエレキギターに話しかけることすら分からないのに、何で会話が成り立ってないのに話してるのかよく分からない侑である。

 彼女から事情を聞くと、どうやら勘助は生徒会と事務所での仕事をこなしているのもあり、同好会の曲作りなどは寮で行っているらしく、しばらく部活どころか2人で会っていないらしい。

 

「せつ菜ちゃんから学食とかで会ったりしてないの?」

「勘助さんの恋人である以上、勘助さんの夢を私の我儘で壊すわけにはいきませんから」

「勘助さんは一度本気出すと終わるまで手を抜きませんし、ですから私はこういう時は我慢してます。いつも甘えているので」

「有名人の恋人も大変だね。まぁ、せつ菜ちゃんも有名人だけど」

「まぁ、それでも勘助さんが好きなので。だから勘助さんが仕事で使わないエレキを借りて、こうして話かけているんです」

「それは意味がわからないかな。ってか勘助君左利きなのにユニコーン置いていって良いの?」

「アコギの依頼らしいので仕方なく右手で弾くらしいですよ」

「よく考えたら両方の手でギター弾けるって凄いよね……」

 

 勘助の仕事はアコギを使う物だったらしいのでエレキをせつ菜に貸しておいた。こうすれば寂しくないだろうとぬいぐるみ代わりに勘助が置いていった物だが、30万はくだらない代物をぬいぐるみ代わりに置いていくなと、せつ菜が言った話をすると侑があまりの値段に何度も聞き返して意識を失いかけた。

 

「ええと、そもそもさ、勘助君がいなくて寂しいのは分かったけど、いくらエレキギターに話しかけても答えてはくれないんじゃ?」

「それは確かにそうですが、この前勘助さんがはんぺんと話してたのでもしかしたらと思いまして……」

「勘助君がはんぺんと?」

「お疲れ様です」

 

 侑がせつ菜の言葉に疑問を持った瞬間、同じ同好会である天王寺璃奈が部室に来て挨拶をする。璃奈といつも一緒にいる宮下愛は部活の助っ人で遅くなると2人に言った。

 

「侑さん、せつ菜さん、どうしたの?」

「ねぇ、璃奈ちゃん。はんぺんって喋るの?」

「侑さん、何言ってるの? 璃奈ちゃんボード『頭大丈夫?』」

「侑さんの頭は正常ですよ。実は勘助さんがはんぺんと話してたのを私が目撃しまして……」

「あぁ、そういうこと……えっと、結論を言うとはんぺんは猫だから喋らない。にゃー、とは言うけど」

「じゃあ勘助さんはどうして?」

「勘助さん曰く、何となくはんぺんが何言ってるか感覚で分かるんだって。音楽を学んでいるからフィーリングが強いんだって言ってたけど信じられない」

「うん。私も音楽科だけど意味がわからないかな。それで動物と話せるなら苦労しないし」

「そういえば勘助さん少し前ですけど心霊の撮影したらしいんですよ」

「え……れ、霊?」

 

 せつ菜の言葉に侑が恐る恐る聞いた。どうやら勘助がプロフィールに苦手な事を書いた時、驚かせる系のホラーと書いたことで心霊企画に参加することになったらしい。

 

「その時霊能者の人に勘助さんの霊を見てもらったらしいんですけど……」

「よ、良くない霊がついてたの?」

「いえ、父親と母親の霊と良い意味で無数の動物の霊がいたらしいんです。勘助さんが動物に好かれる理由はそれらしくて」

「まさか生きてる動物だけじゃなくて死んじゃってる動物にも懐かれるなんて。璃奈ちゃんボード『びっくり』」

「しかも動物の霊に紛れて1匹だけ伝説上の生き物がいるらしいです。それが何なのかは霊能者の人でもはっきり分かってませんが、少なくとも勘助さんに何かあってもご両親と無数の動物が助けてくれるって言ってました」

「だからはんぺんとも話せるの? いや、それでもよくわからないよ!?」

「もしかして伝説上の生き物って勘助さんがよく言ってるユニコーンなんじゃ……璃奈ちゃんボード『それでも!』」

「ユニコーンって本当にいるの?」

「あくまで伝説上なので分かりません。でも、勘助さんはユニコーンだけは信じてるらしいですよ。後、麒麟とかも」

「勘助君ってオカルト好きなのかな?」

「割と都市伝説とかの本は見てるらしいですよ。私もラノベの影響でそういうのも見てますけどね」

「せつ菜さん、私にも見せて欲しい。興味ある」

「良いですよ、何なら勘助さんにも頼んで貸してもらいますね」

「うん。ありがとう、楽しみ。璃奈ちゃんボード『にっこりん』」

 

 そんな会話をしていたら同好会のみんなが次々と部屋に入ってきたので、そのまま活動を始めることにした。

 

 ☆

 

「俺のいない間にそんな話が……」

「うん。だから璃奈さんにも貸してあげて欲しいんですけど」

「良いぞ。最近読んでないしな」

「ありがとう勘助君」

「それにしてもユニコーンか……」

「勘助君は何でそこまでユニコーンを信じてるの?」

「えっと、そもそもユニコーンはアニメの影響でもあったんだがな、親父がギターをくれた時に言った言葉がそのままユニコーンだったんだ」

「どういうこと?」

 

 勘助は菜々の質問に対して父親の言葉を思い出して伝えた。

 それは、勘助が父親である山本信玄からギターを貰った時に遡る。

 

『勘助、コレをプレゼントしよう』

『コレってギター? しかも2つも……』

『コレはね勘助。獰猛なんだ』

『獰猛? 暴れたりするの?』

『使い方次第ではね。でも、ちゃんと使いこなせば力強い音が鳴り、どれだけ凄い音楽家がいても立ち向かえる音色を持っている。勘助の使い方次第で毒にも薬にもなるんだ』

『こんなの使えるかな?』

『使えると信じてるからプレゼントするんだ。俺は勘助がコイツを使って、どれだけ凄い音楽家でも伝説の音楽家でも、この音色で己の信念だけではなくそいつらまでも貫いて圧倒させると信じてる』

『信玄様……ありがとう!』

『因みにこのギターは俺が官能小説から学んだ歌を歌って稼いだお金で買った物だ。大事に使ってくれ』

『おい最後どうなってんだ』

 

 そんな過去からこのギターを手に入れた勘助。それからしばらくして、獰猛だとか力強さだとかそんなワードを考えてながらそんな象徴の動物がいたと考えて調べた結果、出てきたのが近しい動物でユニコーンだったのだ。丁度好きなアニメのロボットの名前もユニコーンだったため、このエレキギターをユニコーンと呼んだ。アコギはそれにちなんでデストロイ。

 

「そこからエレキとアコギの区別をつけるためとか、やっぱ本気で掻き鳴らせるならエレキだなとか考えた結果、アコギをデストロイモード、エレキをユニコーンって呼んでるんだよ」

「だから、まぁ厨二病だなぁくらいで捉えて良いぞ」

 

 勘助は笑うが、菜々は笑わなかった。というのも、勘助が両親を亡くして彼の支えになったのは間違いなくギターである。菜々のおかげも確かにあるが、どちらかと言うと勘助に勇気を与えたのはギターだった。

 だからこそ菜々は笑わなかった。誰かが厨二病だと言っても、勘助にとって大切な家族の様なものだと信じているからだ。

 菜々が手短にこの話をすると勘助はお礼を言った。

 

「今の家族はこのユニコーンだけだとしたら、いつか菜々も家族にしたいな」

「いつでも待ってるよ。勘助君の家族になれば不安になる事もないから」

「先日は悪かったな。まさか同じ事考えてるとは思わなかった」

 

 先日というのは菜々と勘助が自分は恋人として釣り合っているかを侑に相談して、勘助が菜々に物理的に愛されまくったあの日である。

 菜々はその事を思い出しながらも少し照れながら勘助に

 

「案外似た物同士なのかな、私達って」

 

 そう言ったが、菜々はせつ菜の時、炎系の演出を好むので、時には本気系スクールアイドル。時には燃える闘魂の様なイメージが強い。対して勘助は冷静沈着でライブの時こそは力強い歌声と勢いのあるギター演奏を見せる青い炎のようなものが菜々と同じイメージかと言われるとそうではなかった。

 

「どうだろうな。俺はよくみんなに新緑の強風って言われるぞ」

「新緑の……強風?」

「緑のイメージならエマさんだけど、あの人は無風の穏やかな緑だから心を穏やかにする。だけど俺は強風で草木などの新緑を操り、周りの士気を高めるってイメージが強いんだとさ。前に軽音部の人達に言われた」

「確かに衣装は緑色のフード被ってるよね、しかも演奏に勢いがあるから……うん。なんか納得できるかも」

「勢いって意味では菜々と同じなんだろうな」

「それでも別に菜々とタイプが違うからと言って俺がお前を嫌いになるわけじゃないよ」

「それでも不安だよね。勘助は大人しくて真面目で胸が小さい人が好きだもんね。同好会で言うと……まぁ悪気はないけど璃奈さんみたいな子?」

「璃奈さんちっちゃくて可愛いよな……痛い、蹴るな」

「勘助君のロリコン」

「それ言うなら璃奈さんに謝れよ。あの子も高校生だぞ」

「じゃあ変態さん」

「菜々には負けるでしょ」

「襲うよ」

「どんな脅しだよ!?」

「えへへ」

 

 結局、なんやかんやくだらない話をしている時が、1番幸せだと感じる2人であった。

 

「勘助君、好きだよ」

「俺も好きだぞ」

「ここ数日会ってなかったから明日から手繋いでね」

「良いぞ」

「キスもして」

「人がいなければな」

「ベロチューは?」

「ダメに決まってんだろ」

「栞子さんに見せたら顔真っ赤にするよ」

「もしかしなくても菜々ってドS?」

「勘助君は私のものってアピールしようかなって」

「元生徒会長が風紀乱してんじゃねぇよ」

「恋は盲目だよ」

「うるせぇな、純愛に謝れ」

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