「ねぇ、勘助君。私の質問に答えてくれるかな? かな?」
「あ、歩夢さん? どうしてそんなに怖い笑顔を浮かべているんだ? 私なにかやりましたか?」
「ううん。大丈夫、勘助君も本意じゃ無かったんだよね? 分かってるよ。答えて」
「怖いです、何をですか?」
「侑ちゃんを誑かしたよね?」
「身に覚えがないよ!?」
完全に
勘助が同好会で作曲をしていたら、休憩入ったまごころ系スクールアイドルである歩夢に脅されたのが話の始まり。
これほど一瞬で矛盾した物騒な現状は勘助も初めてである。
「侑ちゃんの事、好き?」
「好きだよ」
「刺すね」
「なんでさ!?」
勘助も歩夢からの質問に正直に答える。その結果、刺されそうになった。勘助も(本気の)歩夢に対しては(恐怖で)タジタジである。
「いったいどうしたんだよ歩夢さん。もしかして私と侑さんが曲作ってるのが嫌なのか?」
「へぇ、それが分かるのにどうして自分の気持ちは分からないのかな?」
「自分の気持ち?」
「侑ちゃんの事、恋愛として好き?」
「はい?」
「次惚けたら火星に連れて行くからね」
「待って!?」
本気で見当が付かなかった勘助だが、先程の歩夢の質問を思い出したおかげでやっと気がつく。
「ああ……そう言うことか……要は私が侑さんと行動することが増えたから付き合ってるとか噂されてんだな?」
「違うよ、勘助君が侑ちゃんの事好きなのかなってみんなが噂してるだけだよ」
「それはだけで済まないんだよ歩夢さん。え? それやばくね?」
「勘助君はしずくちゃんたちから告白されてるのに侑ちゃんとイッチャイチャ、イッチャコラしてるから、みんな侑ちゃんの事が好きなんだねって完結してるんだよ」
「凄い粘着に言うじゃん……それ侑さん知ってるのか?」
「知ってるけどそのままで良いよって言ってたから感謝してね」
「ありがとうございます」
違う、そうじゃないと、勘助は突っ込みを一つ入れて慌てながら言った。
「それはまずいな、侑さんも私とは嫌だろうし誤解を解かないと」
「本気で言ってる?」
「眼が怖いよ歩夢さん!? え、どう言う事? マジで意味わからない」
「勘助君に質問です。正直に言わなかったら分かるよね?」
「死ぬよね」
「うん。じゃあ答えてね」
「うんじゃねぇよ」
流石の冷静沈着天才軍師も
「勘助君は侑ちゃんの事を恋愛として好きである。YESかNOかだよ」
その問いに無言になる勘助。そこで歩夢は仕掛ける。
「勘助君には難しかったかな? じゃあ別の観点から質問するね? 侑ちゃんに頼られると嬉しい?」
「うん。嬉しいぞ普通に」
「じゃあ、他の人は?」
「そりゃ嬉しいだろ、頼ってくれるのは嫌ではないしな。ただ……」
「ただ?」
「侑さんが質問してきたら他の人よりもアレだな、なんか違うんだよな」
「侑ちゃんに良いとこ見せたい?」
「まぁ、そんなとこ。勿論同好会の軍師として答えられない話は出来ないが、侑さんの場合は失敗出来んな」
「侑ちゃんと話すの楽しい?」
「コレ私どっち言っても殺されない? まぁ、楽しいよ」
「だよね」
「お願いだから最初から私の首筋につけてる刃が出てないカッターしまって。刃が出てなくても怖い」
「だめだよ?」
「流石」
歩夢の質問責めはこの状態(歩夢が勘助の後ろでカッターナイフの刃を出さずに首筋に当てている構図)のまま続いた。そして最後にこう言った。
「じゃあ侑ちゃんが勘助君じゃない男の子に……」
「……分かった、もう終わりだ」
歩夢のその質問に対して、勘助は両手をあげて敗北のセリフを言う。
「正直……あんまり自覚は無い。でも、侑さんの事は同好会のメンバーの中で1番考えてしまう」
「好きだよとは言ったけど、侑さんに告白もされてないし璃奈さん達の告白もあるからこの気持ちはなんの好きかは分からない」
「ただ、歩夢さんの最後の質問の答えは……嫌。それだけだった」
「侑さんが私以外の男と何かをすると考えたら怖くなった……これはさ、やっぱそう言う事なのか?」
「そうだよ。勘助君は侑ちゃんが好きなの」
恐る恐る聞く勘助に歩夢ははっきりと答える。
「勘助君はね怖いんだと思うよ。好意を向けるのが」
「怖い……か」
「酷いこと言うけどね、勘助君は璃奈ちゃん達なら好意を向けられているから、好きになったら付き合えるんだと思うから安心できるの。でも、勘助君が選んだのが好意を向けられた人じゃない時、自分から好意を向けるのが怖いんだよ。フラれたらとか関係が悪化するとかでね」
「そう言われたら最低だな……まぁ、そう思われても仕方ないし私も深層心理ではその気持ちがある」
「でもね、勘助君。もしも勘助君が璃奈ちゃん達を振っても気まずくならないようにするでしょ?」
「当たり前だ、向こうが本気で嫌いになるならアレだけど、振った私に情けの一つをくれるなら答えてあげたい」
「そう言う事だよ。勘助君だけじゃなく、侑ちゃんも勘助君を振ったとしても気まずくならないと思うよ?」
「その証拠は?」
「私が1番知ってるよ。侑ちゃんはそんな人間じゃないもん」
歩夢の言葉に眼を見開き、少し笑った勘助。幼馴染がこう言ってるならそうなんだろうなと、はっきり歩夢に言って、少し無言。改めて、口を挟む。
「侑さんともっと仲良くなれるかな?」
「さぁ? 知らないよ?」
「侑さんともっと曲だけじゃなく、色んな事話せるかな?」
「さぁ? 知らない」
「私は……侑さんと、付き合えるかな?」
「許せないけど……始まったのなら、貫くのみだよ」
「せつ菜の台詞じゃん、ってか怖」
「ぽむせつって知ってる?」
「え? まさかのそう言う関係?」
「大丈夫だよ、私の幼馴染は取られちゃうけど、勘助君の幼馴染を取る気はまだないから」
恐ろしいなと、ようやくカッターナイフをポケットにしまった歩夢に振り向いて言った勘助。わぁ、本当にすっごい恐ろしい笑顔。笑っているのにオーラが黒かった。
「勘助君」
「はい……なんでしょう歩夢さん」
「侑ちゃんの事大事にしないと……ね?」
「あ、はい……って待て、まだ付き合えてないぞ」
「勘助君なら振られても諦めないでしょ? まさか、みんなから慕われている天才軍師様が、1人の女の子に振られたくらいで他の女の子の元に行くとか……無いよね?」
「侑さんに振られても退きません、他の女の子に媚びません、どれだけ否定されても顧みません」
「天才軍師さんに後退は?」
「ありません、頑張ります」
「うん、私だけの侑ちゃんを手に入れるにはそれくらいしてくれないとね」
「うっす」
侑と結ばれるより先に彼女の幼馴染に自分の命の結び目を切られそうだと恐怖した勘助だった。