「せつ菜ちゃん、今回の曲なんだけどどうしたら良いかな?」
スクールアイドルの曲に対して相談があると侑が菜々の元に尋ねてきた。作曲をしているのは侑と勘助、ミアの3人だが勘助が事務所の仕事でいない。
元々は勘助が担当する予定だった。一通りは完成していたのだが、サビの部分だけは間に合わず、侑に託したのだ。それでも侑はピアノで勘助はギター。同じ楽器でも音色が違うのでせつ菜も一緒に聞いて欲しいと相談した。
「なるほど、サビは1番盛り上げるのに大切なところですからね……」
「うん、ピアノでも良いんだけど音が合わなかったら困るからせつ菜ちゃんと考えたいんだ」
正直勘助がギターで作った音に侑のピアノを入れても良いのかが不安だった。そこでせつ菜が驚きの提案をする。
「私が演奏すればいいんですよ!」
「はい?」
侑の話を聞かず、せつ菜は一本のギターケースを持ってきた。侑は驚いてせつ菜にギターを買ったから聞いて見ると、
「勘助君から借りました! 無断で!」
「怒られるよ!?」
「大丈夫です! 今日の撮影ではアコギを使わないと言っていたので借りてるだけです!」
「無断だよね?」
「大丈夫です! この子は許してくれました!」
大丈夫ですとしか言わないせつ菜に苦笑いしか出来ない侑だが、せつ菜は早速ギターを取り出して演奏準備にかかる。
「あれ? せつ菜ちゃんって弾けるの?」
「恋人たる物、好きな人の魂を受け継ぐのは当然です! 最近のアニメでもあるじゃないですか、大怪我で動けなくなった主人公の武器をヒロインが使いこなして悪を倒すシーンとか!」
「勘助君は大怪我してないよね?」
「それでも! 私は勘助君からある程度習ってます。流石にユニコーンは勘助君以外には使えませんけど、デストロイモードなら許してくれました!」
せつ菜曰く、勘助に教えを請うたからギターが弾けると言ったが、侑としては誰が許してるのか疑問だった。
「ねぇ、せつ菜ちゃんの許す許さないって勘助君じゃないよね?」
「ユニコーンです!」
「ユニコーンって勘助君のエレキギターだよね? 許す許さないとかあるの?」
「ギターのボディくらいなら大丈夫ですけど、どうやら勘助君以外がユニコーンの弦に触ると必ず弦が新しくても古くても切れるらしいです」
「え? 何それ怖い、え、前から聞いてたけど本当なの?」
「本当よ」
侑の言葉に同意したのは勘助と同じ事務所のモデル兼スクールアイドル同好会セクシー系担当の朝香果林である。
「私も勘助の許可を得てからエレキギターに触ったのよ。左利き用だから勿論左手で弦に触れたの。そしたらすぐに弦が切れちゃって……勘助曰く前日張り替えたばかりだって言ってたからそう簡単に切れるわけ無いと思うけれど……」
「私も勘助君の許可を得てから左手で弾いたんですけど、切れちゃいました」
「もうそれ呪いか何かじゃない? 怖いんだけど……」
「でもこのアコギは弾けますよ?」
そう言ってせつ菜はコードを押さえて軽く弾く、普通に上手かったし、弦も切れなかった。
「ユニコーンって……勘助君のエレキギターって何なんだろうね?」
「でも勘助君がお父さんに言われたことがあるらしいです」
「何で言ってたの?」
「ええっと……『コイツはもうお前の言うことしか聞かん』って。勘助君は家族や私が右利きで左利きが自分しかいないからそういう意味で弾く人がいないって意味なのかと言ってましたが……」
「実際は勘助以外が弾こうとしてもギターがそれを許さないって事? まるでオカルトね」
「因みにかすみさんはイタズラの類でこっそり勘助君のユニコーンに触れて、弦が切れたので泣きながら謝ったそうです。その時も張り替えたばかりだったと言ってましたけど」
3人は勘助のレフティギターにある謎について話し合うが、全く持って光明が見えない。かくして勘助のユニコーンはスクールアイドル同好会の七不思議の様な形で伝えられる事になる。
☆
「そんなわけで勘助君のおかげで曲が出来たよ」
「おかげじゃねぇよな? 明らかに無許可で使ってたよな?」
「戦闘不能の主人公の武器をヒロインが使いこなすのは王道だよ!」
「俺は戦闘不能じゃないけど」
別の日、勘助と一緒にせつ菜は話し込んでいた。話は前のせつ菜と侑が解決した曲の話である。それと同時にせつ菜がギター演奏が出来たことを褒めて欲しいのもあり勘助に自慢していた。
「とりあえず、ありがとう。よくやってくれたな菜々」
「自分の曲だからね、いつも勘助君や侑さんに頼るわけにもいかないし、少しでも負担を減らしたいから」
「そうか……菜々だってスクールアイドルに専念してるんだから色んな事に手を出して怪我されても困るけどな」
「私は勘助君が部活と生徒会とお仕事やり続けて倒れないか心配なんだけど」
「そうなったら世話してくれ」
「いいよ、その代わり一生外に出さないから。私が働いて、勘助君に主夫してもらう」
「怖いな」
「失うのが怖いって自分が分かってるでしょ?」
「それもそうだな……」
勘助の言葉に菜々は笑顔でずっと離さないからと、手を握る。ふと、思い出した様に菜々は勘助に聞いた。
「ねぇ、勘助君のユニコーン……エレキギターって何で勘助君以外が触ったら弦が切れるんだろうね?」
「俺は呪いだと思ってる。普通に怖い」
「だよね」
その言葉に少し考えて、勘助は外でギターケースからエレキギターを出す。
「ユニコーン……お前、俺以外に触られるの嫌か?」
勘助のエレキギターは特注品である。色は珍しく白と水色の縞模様、その色が一瞬光った様に見えた。
「ユニコーンは勘助君以外認めないんだよ」
「そうなのかな、少し残念だが、まぁ仕方ないな」
「もし弾けるようになってしまったら勘助さんのアイデンティティが無くなりそうですけど」
菜々は笑顔で勘助に言ったが勘助は真剣に言う。
「ギターが無くても菜々がいる。歌とダンスさえ教えてくれたら、そっち方面で仕事もらうさ」
「無茶苦茶だなぁ」
「そりゃ菜々と結婚するならそれくらいやらないと。かたや伝説のスクールアイドルなんだから」
「前にも言ったけど、そんな勘助君が大した実績が無くても私は勘助君の事を嫌いにはならないよ」
「犯罪以外何をしても、どんな生き方をしても構わぬ、最後にこの中川菜々の元にいれば良いってね」
「拳王じゃん」
「勘助君の事恋人らしく特別にうぬって呼ぶ?」
「恋人にうぬって呼ばれる彼氏聞いた事ない」
結局恋人になっても幼馴染でもこうしてくだらない会話をする、勘助と菜々。それでも距離は確実に縮まっているのは確かである。その後菜々がユニコーンを触ったが、結局弦が切れるだけだったのは永久の謎である。