「勘助、少し動きの確認したいから演奏してくれない?」
「分かった。やれるな、ユニコーン」
「それにしても凄いわねそのギター、ランジュが触ろうとしたら弦が切れるのに、勘助が弾いたら素直に弾けるってどういう原理なの?」
「私も知らない、ただ嵐珠さんだろうが誰だろうが弦は切れるぞ。果林さんと菜々が触っても切れたし」
「このランジュに魅了されないなんて、やるわね」
「無機物と何争ってんだよ。ほら、踊れ」
そう言って勘助はエレキギターをかき鳴らす。ランジュも勘助の演奏に合わせて振り付けの確認をする。
「しず子、なんかランジュ先輩また動きのキレが上がってない?」
「ランジュさんだけじゃないよ、勘助さんのギターも腕が上がってる」
「ランジュさんも勘助さんも天才だから、お互いがお互いに高め合ってる。璃奈ちゃんボード『熱き決闘者たち』」
「それにさ、ランジュ先輩っていつも勘助先輩の隣にいない? ランニングもボイトレも二人三脚してる気がするんだけど……」
「そういえばこの前手を繋いでたよ、それで2人で中華料理店に入って行ったけど」
「え? しず子、あの2人付き合ってるの?」
「分からないよ、でも手を繋ぐってそういう事じゃないの?」
「りな子はいいの? ランジュ先輩に取られても」
「残念だけど、別にいい。勘助さんが幸せになるなら踏み台にされても構わない。璃奈ちゃんボード『勘助さんの家庭を壊した日』」
「めっちゃ怨んでるじゃん」
「冗談」
ランジュのと勘助をよそに一年生のかすみ、しずく、璃奈がコソコソと話す。
そんな話をしていたら、ランジュが衝撃の言葉を言った。
「勘助、今日ランジュの家に来なさい! 今夜もアタシの虜にしてあげるわ!」
「嵐珠さん、言い方を考えなさい」
「え? 勘助君……ランジュちゃんとシたの?」
「してない。たまに嵐珠さんに家招待されて夜に振り付けと歌の歌詞の確認をしてるだけだ」
「勘助ったらこのアタシに向かって我慢出来ないって言っていっつも指導してくるのよ」
「我慢出来ない……」
「新曲の確認ってのもあって嵐珠さんの音程がズレるんだよ、最初はギターしか弾いてない私だけど、我慢ならなくて私も歌ってるんだよ」
「勘助って結構体力あるのね、ランジュがヘトヘトになるまで何回もやるのよ」
「ヘトヘトになるまで……」
「嵐珠さんが必要も無いのに踊りながら歌うからだろう。振り付けと歌は別々でやって集中しろと言ってるのに」
「でも、終わったら勘助は優しくランジュのを抱きしめてくれるわ!」
「優しく抱きしめる……ねぇ、勘助君全部下ネタに聞こえるんだけど」
「嵐珠さんが抱きしめてって言ったんだろ。ってか嵐珠さん全部わざとじゃねぇか? 侑さんも脳内ピンクはそれくらいにしておけ」
楽しそうな表情で話すランジュ、少し顔を赤くして一つ一つ説明していく勘助ともっと顔を赤くして脳内ピンクの侑。その他のメンバーも誤解とは分かっていても顔だけは赤かった。
「勘助、今日は同じベッドで一緒に寝ましょう!」
「一回口閉じろ、縫うぞ」
「幼馴染の私でも勘助さんがあんな乱暴な言葉使うの聞いた事ないんですけど」
破天荒なランジュの言葉に勘助の本気の毒舌が炸裂した。それを見ていたせつ菜がこの様な言葉を発した事に勘助は気づいていない。
☆
「嵐珠さん、どういうつもりだ?」
「何の話?」
ランジュの家の中で勘助は今日はなった発言について聞いた。普段のランジュはあんなアダルトじみた発言はしないはずである。どれだけ破天荒なランジュでもスクールアイドルであり、1人の高校生。ここまで匂わせる発言はしないはずだと勘助は思った。
「決まってるじゃない、勘助はアタシのものだってみんなに牽制しただけよ」
「それが謎なんだよ。確かに恋人がどうとかそんな話をしていたけど、そこまでする理由何でないだろう」
「何で、そんな事したんだ?」
その問いにランジュは少し間を置いて、その前にと、一言言った。
「勘助の質問の前に、ランジュの質問に答えてほしいわ」
「質問を質問で返すなとよく聞く。だが、嵐珠さんがそれをするということは、私の問いよりも大事なんだよな? なら、聞くよ」
「勘助は……」
そしてランジュは話し出す。勘助にとってそれは息を呑むに相応しい内容だった。
「勘助は……アタシを、ランジュを独りぼっちにしない?」
「全て総じて結論を言うと……無理かもな」
その言葉にランジュの目に光が消える。そうなのねと、ランジュには相応しくない声の大きさで勘助に言う。
だが、勘助はそれを聞いて待てと、言った。
「なによ、勘助もランジュから離れていくんでしょ? 結局、アタシ独りぼっちになるんでしょう?」
「私には……やる事が多すぎる」
「はぁ?」
「学校で授業を受けないといけないし、同好会では作詞作曲しながら、侑さんとみんなの練習メニューとか考えて、自分もステージに立たないといけない。生徒会では栞子さんのサポートもしないといけないし、事務所の仕事では歌って曲作って、お金貰わないといけない……全く、健全な男子高校生が手を出すスケジュールじゃねぇだろ」
「何を言ってるの?」
「だから、今の私には嵐珠さんを毎日四六時中独りぼっちにさせないなんて出来ない……それでも、それでもだ」
「嵐珠さんから離れるなんて事は考えない。どれだけ離れても、私の心の中には同好会のみんながいる。その中に嵐珠さんだって絶対いるんだ」
「私は忙しいから、嵐珠さんを独りぼっちにさせるかもしれないけど、嵐珠さんからは離れてはやらねぇ」
「勘助……」
勘助は自分の考えた事を包み隠さずランジュに言った。
「嵐珠、もし俺が貴方から離れるのならその時は俺の命が貴方の命より先に尽きた時と思え。それでも、私の後に貴方が死んだらまた向こうで一緒になるからどのみち離れるのはしないけどな」
この勘助の言葉を引き金にランジュの目から涙が溢れた。何度も何度もお礼を言いながら、ランジュは泣く。そんなランジュを少し慌てながら抱きしめる。
「泣くなとは言わないが、早く泣きやめ。私が嵐珠さんを泣かせた様に見える」
「別に……家の中だから平気よ……それより勘助、ランジュ少しおかしいわ」
「どうした? 調子悪いのか?」
「違うの……勘助に離れないって言われて、抱きしめられてるだけなのに、温かい気持ちなの」
「ドキドキして、今ランジュの顔熱いわ……これって何なのかしら?」
勘助は何も言えなかった代わりにこう思った。
(あれ? もしかして私、タラシした?)
顔を赤くして、モジモジしながらも勘助に抱きしめられるランジュと、急なランジュの告白に冷や汗ダラッダラの勘助。
「ねぇ、勘助?」
「な、なんだ嵐珠さん」
「どうしたの? 凄い汗よ?」
「あ、ご、ごめん。今解くから」
「あっ……」
ランジュの言葉にすぐ抱きしめた姿勢を解く勘助だが、ランジュが物足りないと言わんばかりに声を上げて寂しそうな顔をした瞬間、勘助は頭を抱えた。
「えっと、嵐珠さん。今の嵐珠さんの気持ちなんだけど……」
「今勘助といたら心臓がドキドキするわ。ランジュの顔も赤いし、なんだか今日は1番勘助にそばにいて欲しいって思うの……」
「あぁ……えっと……そ、そうなんだなぁ」
勘助完全に白目である。
「ねぇ、勘助お願い。今日はランジュと一緒に寝ましょう? 抱きしめて欲しいわ」
「それは……やっぱり好きな人同士じゃないとダメじゃ……」
「ランジュは前にも言ったけど勘助の事好きよ?」
勘助もはやどうにもなれの精神である。結局その日は、ランジュの言葉に従い、同じベッドで共に眠る事になってしまった。健全な添い寝である。