「勘助さん、こちらの書類をお願い致します」
「会長、書類はこれだけですか?」
「はい。それ以外は右月さんと左月さんがやってくれましたので」
「分かりました。副会長は後どれくらいです?」
「私もこれしかありませんので、残りは勘助庶務にお願いします」
「OK、把握した」
生徒会室でいつものように仕事をする山本勘助、三船栞子、そして本名不明の副会長。今日に関しては右月と左月がいないので3人で作業をしているが、右月と左月2人の仕事は終わっていたため、楽な作業であった。
勘助が高速消化という人間とは思えないスピードで書類を片付け、すぐに仕事が終わった。
「それじゃあ、今日は解散でいいか?」
「ええ、2人とも今日はお疲れ様でした。副会長は先に帰っても構いません」
「会長と庶務は?」
「私達は戸締りした後同好会に顔出すから、先に帰っていいぞ」
「なるほど、それではお先に失礼します」
そう言って速やかに帰る副会長を栞子と勘助は見送った。扉が閉まってしばらく経ってから……
「勘助さん」
「どうぞ、栞子」
栞子が勘助を声をかけると、すぐに勘助に抱きついた。生徒会のメンバーには言っていないが、2人は付き合っている。正確には同好会メンバーにも言っていない。
そもそもの話は勘助が栞子に2人きりの生徒会室で好きだと伝えた事から始まる。栞子も勘助の事が好きだったのもあり了承して恋仲になったのだが、伝えるタイミングを忘れていた。
こうして誰もいないところで抱きしめてるのは、単純に見られるのが恥ずかしいだけである。後、みんなにバレた時説明するのに時間も手間もかかるので、ゆっくりと一人一人に言っておけばそこまで疲れないと2人は考えたからだ。
「勘助さん、私たちの事どうしますかね?」
「ゆっくり伝えていけばいいさ、一気にバレたら質問責めだし。菜々とかから伝えていくか」
「そう……ですね。でも、今はこうしてもいいですか?」
「いいも何も、彼女が抱きしめてくれるなら俺は嬉しいよ」
「私もずっと勘助さんの事、お慕いしてました。あの時友達だと言ってくれた時から勘助さんの事が忘れられなかったんです」
「俺もな、陰ながら努力してる栞子にいつのまにか惚れてたよ」
「そう言って頂けて嬉しいです」
そして、栞子は勘助の名を呼び彼の手の甲にキスを落とす。勘助は少し照れながら、栞子の手の甲に自分もキスをした。
栞子も顔を赤くしたが、少し申し訳なさそうな顔をしていたのに気づいた勘助が声をかける。
「勘助さんは……私で良いんですよね?」
「栞子じゃないとダメだけど? どうした急に……」
「い、いえ。そう言って頂けると嬉しいです……私も勘助に見合う女性になります」
「栞子はそのままで良いよ」
「えぇ……」
栞子は困惑した。
☆
「というわけで、私は勘助さんに見合う女性になりたいのです」
「というわけでの前にいつから付き合ってたのか詳しく聞きたいんですけど……」
「二週間前くらいですかね?」
「結構前でした!?」
「お伝え出来てなくてすみません。タイミングが合わなくて……」
栞子は勘助の幼馴染である中川菜々に付き合っている事と、自身の持つ悩みを伝えた。
急な交際宣言に焦りながらも菜々は一応祝福の言葉を告げる。
「そ、それで……栞子さんは何に悩んでいるんですか?」
「はい、私は勘助さんと交際する上で心配な事があるのです」
「心配な事?」
「正直、私はスクールアイドルとして活動していた際に、自分自身の硬さ……のような物に悩んでました」
「えっと、真面目過ぎて堅物になっているという事ですか?」
栞子は菜々の言葉に頷く。栞子は誰よりも真面目である。菜々のようにゲームやアニメが好きであったりするならば多少なりとも男性から見て楽しい女性だと思うだろうが、栞子は違う。
三船家に生まれた身として、そこまでゲームもアニメも触れなかったし、音楽だって日本舞踊の影響でそこまでメジャーな曲も聴いていない。勉学のし過ぎや礼儀作法も厳しい環境もあり、一言で言うと彼女はお堅い女性になっていた。
そのせいもあり、男性と付き合う上で楽しいとか一緒にいても飽きない女性となると栞子は合わないのではないかと感じた。
勘助がどう思っているかは分からないが、自分といて幸せだと言う言葉は本心なのか不安であったのだ。
「それに……その、私は……身体も……その」
「身体?」
「えっと……そこまで肉付きが良いわけでも無いので……中川さんみたいに胸とか……大きければ良いんですけど……」
「あ、あはは……そ、そう言う事ですか……」
スクールアイドルをするにあたって時折マネージャーの侑からスリーサイズを聞かれる。その時に栞子はいつも胸部に関して他のメンバーに嫉妬していた。
「ええ、ですので勘助は本当に私を愛して下さるのか不安なんです」
「そうですか……栞子さん。今から貴方にとても良い話がありますよ」
「良い話……とは?」
首を少し曲げる栞子に対して、菜々は勘助の秘密を伝えた。
「勘助さんが好きなタイプは栞子さんなんです」
「え……ええっと?」
「勘助さんとアニメや漫画のキャラについて語る時、いつも勘助さんが好きになる女性のタイプが栞子さんと一致してるんですよ」
「どんなタイプですか?」
「背が少し高くて、真面目で、大人しくて、落ち着いていて、敬語系キャラで、髪が黒髪で、胸が控えめ、八重歯は……まぁ、何も言ってなかったですけど、この特徴の時点で既に栞子さんの事だなぁとは前から思ってました」
「ど……ドンピシャってやつですか?」
「ええ、ドンピシャです」
情報を聞いて、自分と似ていると考えた栞子だが、菜々や自身の言った通り、勘助のタイプは栞子でドンピシャだった。その事実に多少の恥ずかしさよりも、嬉しさが勝る。
「それに、勘助さんは栞子さんの身体目当てで付き合ったわけでは無いのでしょう?」
「は、はい。陰ながら努力している真面目な姿が素敵だとおっしゃってました」
「そういう人なんです。人を外じゃなくて中で見る。少なくともそういう男性は絶対に手放してはいけませんよ」
「そう……ですね。中川さん、ありがとうございます」
菜々の言葉にお礼を言う栞子だが、その後菜々からみんなにバラして良いかと問われた時は焦りながらもこう言った。
「え、えっと、質疑応答が長期的で無ければ……問題無いです」
「とりあえずかすみさんは抑えときますね。後、勘助さんを泣かせたら、栞子さんを燃やしますから」
「中川さんってそんなキャラでしたか?」
「少なくとも勘助さんは私の大切な幼馴染なんです。傷つけられたら私でも烈火の如く怒りますよ」
「分かりました……任せてください、勘助さんは三船家の名にかけて幸せにします」
「普通逆ですけどね」
「貴方がおっしゃったんでしょう!?」
菜々の言葉に突っ込むことしか出来ない栞子だった。
「ところで、中川さん……その……性的なふれあいって……いつからすれば……?」
「勘助さんは奥手なのでストレートにヤりましょうで良いと思います。私は特に幼馴染なので仮に付き合ってたら、付き合った瞬間合体しますから。早くしないと誰かに取られますよ」
「分かりました、それは困るのでやってみます」
不純異性行為に対して堂々と実行宣言する現生徒会長栞子に、元生徒会長の菜々はノリノリであったのは勘助は知る由もない。