虹ヶ咲のシンガーソン軍師 ifルート編   作:初見さん

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栞子ルート3

「勘助さん、こちらの資料を片付けて頂いてもよろしいですか?」

「お任せあれ」

 

 栞子の頼みに勘助は応えるいつもの生徒会がそこにはあった。ただ一つ気になることといえば、生徒会仲間の左月と右月、副会長の3人が勘助と栞子を見ていることであった。

 

「ん? どうしました3人共?」

「えっと、1つ伺っても?」

「答えられることなら」

 

 口を開いた副会長の疑問に答えようとする勘助。

 

「何故会長は勘助庶務の隣で作業を? 自分の机があるのに」

「あ……そうだよ、栞子離れろ!」

「勘助さん。生徒会中ですよ、言葉に気をつけて頂かないと」

「あ、悪い……いや、すみません……というかそういう話ではなくてですね生徒会長」

「別に会長の机があるからといってそこに座る義務はないではありませんか。今日は勘助庶務にやって貰いたい仕事の方が多いので、隣で作業をする事で効率がいいと思っただけです」

「な、なるほど……それならまぁ」

「勘助庶務の肩に頭を預けている理由は?」

「こうでもしないとまたいつお仕事が入って生徒会を抜けられるかわかりませんから。今日は勘助庶務の仕事が多いのです」

「勘助庶務の右手にご自分の左手を置いている理由は?」

「私は猫なので気まぐれなのです」

「いや、無理があるだろ」

 

 流石の勘助もお手上げだった。結局仕事自体は高速消化で終わらせたが、生徒会のメンバーから質問にあったのは言うまでもない。

 

 ☆

 

「そんなわけでバレました」

「何をしているのうちの妹は……」

「失礼な、純愛ってやつです」

「生徒会室でそんな真似するなよ、びっくりしたわ」

「妹が申し訳ない」

「侑さんの言葉を借りるなら、そんな栞子も可愛いYO! ってやつです」

「にゃ!」

「こら、人を引っ掻くな」

「妹が猫化してる……」

 

 勘助は栞子に呼ばれて三船家に遊びに来た時、先日の出来事を薫子に話した。

 薫子は珍しく頭を抱えながら勘助に謝罪した。

 

「昔はたまに遊んでたけどさ、そこまで愛情たっぷりに育てた記憶が無いから、誰かに甘えたいんだろうね」

「にゃ」

「しおにゃんストップ。顔舐めるな」

 

 薫子の話を勘助は聞いてたが、途中で猫化した栞子が勘助の顔を舐めだしたので止めにかかる。

 無駄だった。

 

「大丈夫ですよ、薫子さん。私は栞子をいつまでも大事にできたらと思ってます。大切な人ですから」

「その大切な人に首噛まれてるけど大丈夫?」

「普通に痛いです」

「栞子そろそろ離れな」

「勘助さんの首好きです」

「俺の首は木の幹か何かか?」

「将来は猫と鳥、どちらを飼いたいですか?」

「多分栞子が猫になるなら俺はお前を飼っている事になるけど」

「そういうことは夜2人きりでベッドにいる時に言ってください」

「薫子さん助けてください」

「アタシちょっと課題やるからカフェ行ってくるね」

「逃げるな頼むから」

「イチャつくのもいいけどちゃんと対策くらいはしなさいよ。何がとは言わないけど」

「薫子さん助けてください」

「それじゃあねぇ!」

「助けろコラァ!」

「勘助さんの膝枕好きです」

「この状況でもお気楽かよ!」

 

 勘助の膝に寝そべっている栞子はまさに猫であったという。

 

 ☆

 

「にゃん!」

「にゃぁ!?」

「誰だこの栞子」

「勘助さんごめんなさい。人格入れ替わり装置を作ったら栞子ちゃんとはんぺんが入れ替わった」

「昨日のしおにゃんはフラグだったか」

 

 翌日同好会に行った勘助を待ち構えていたのは虹ヶ咲学園お散歩係である大慌てしている白猫のはんぺんと勘助の膝の上に乗って彼の顔を舐めている栞子である。

 璃奈の発明で大変な事になったそうだが、元に戻るのは1日かかるらしい。

 

「とりあえず薫子先生に私が泊めてもらって2人の世話するわ」

「ガブガブ」

「うん、ありがとう。っていうか勘助さん、栞子ちゃん……いや、はんぺんかな? 首噛まれてるけど大丈夫?」

「ああ、甘噛みだから平気だ……」

「ガブッ!」

「痛い!? は、はんぺんが手噛んだぞ!? 珍しいな、いつもは懐いてくれるのに……」

「勘助さん、それ栞子ちゃん。多分嫉妬してるか恥ずかしがってる」

「あ……そ、そうか。栞子ごめんな」

 

 そう言って勘助ははんぺん(栞子)を撫でる。すると何故か栞子(はんぺん)も勘助の頭を撫でだした。

 

「栞……はんぺんどうした?」

「にゃあ」

「多分、いつも勘助さんが撫でてくれてるからお返ししてるんだと思う」

「璃奈さん凄いなよく分かってる」

「何となくだけどね」

「ふしゃー!」

「うおっと!? ごめん栞子、撫でるよ」

「何だか不思議な光景」

「猫に怒られながら撫でている私を彼女が撫でてるからな。しかも後輩」

「うん。でも、栞子ちゃんとはんぺん幸せそう」

「璃奈さんから見てそう見えるならそうなんだろうな」

 

 璃奈の発明のせいではあるが、こうして頭を撫で合いっこするのは璃奈のおかげでもあると考えた勘助である。

 

『ごめん勘助! 突っ込みはあるけど事情は分かった。でも今日家誰もいないから栞子と猫のお世話お願いね!』

「はい?」

「どうしたの勘助さん?」

「恐らくなんだけど……はんぺんと栞子を風呂に入れないといけなくなった」

「え?」

「にゃ?」

「にゃん!?」

 

 勘助の言葉に疑問を浮かべる璃奈と栞子(はんぺん)そして驚きながら慌てたはんぺん(栞子)がそこにいた。

 

 ☆

 

「にゃ!!」

「にゃん!!」

「こら! はんぺん暴れるな! 栞子も俺の眼を塞ぐんじゃねぇ! 見えないだろ! いや恥ずかしいからあんま見たく無いけどさぁ!」

 

 鼻にティッシュを詰めながら鼻血を止血してタオル一枚腰に巻いた勘助は裸の栞子(はんぺん)と猫のはんぺん(栞子)の頭を洗っていた。猫栞子に関しては全体的にシャンプーをして簡単に流し終えたが、人間はんぺんに関してはそうはいかない。シャンプーとトリートメント、洗顔にボディを一通り細かく洗わないと行けない。

 勘助は顔を真っ赤にしながら、猫栞子に眼を塞がれながらも洗うしかなかった。

 

「ええっと……気持ちいいか? はんぺん?」

「にゃあ」

「俺は血管切れそうなんだけど」

「にゃ……」

 

 勘助の言葉を聞いて諦めた表情をした猫栞子だが、心の中では勘助は別にこの状況を楽しんでとか下心でやってる訳ではないと分かっている。だからこそ栞子はこんな状況ではなく、普通に勘助と入浴がしたかった。何なら別に裸を見られても構わない。

 あまり自分の身体には自信がないけど、菜々からは自分の身体と性格がドンピシャだったことを知ってからこの身体で勘助を虜にしたいとと思う。

 そんな訳で、栞子は自分が人間の状態で風呂に入りたかったのだ。今回の諦めた表情はそういう話である。

 

「ほら……栞……はんぺん風呂入れるぞ」

「にゃ」

「栞子もおいで」

「にゃん……」

「こらはんぺん、死んじゃうから顔を水につけるな。ってか本当に猫だよな? それとも栞子の身体だからか? 風呂を楽しんでやがる……」

 

 勘助は自分の頭と身体を洗い流しながら2人……1人と1匹の様子を見ていた。猫栞子は危ないので風呂桶にお湯を入れて乗せるだけにしている。

 

「入るぞ、はんぺん」

 

 すぐに向かい合って風呂の中に入る勘助。

 

「正直あれだな……こんな状況じゃなければ嬉しいはずなのに、今は保護者の気分だぜ」

「にゃ?」

「にゃ!?」

「ん? ああ、栞子もいるんだったな……今度こんな状況関係なしにさ、風呂くらいは誘ってくれたら入るから」

「だから、まぁ……入りたかったら入ろう。恥ずかしいけど、恋人の頼みなら喜んで聞くさ」

「にゃ……」

 

 栞子(はんぺん)の頭を撫でながら風呂桶に入っている猫栞子の顔を見て勘助は言った。

 勘助も恋人同士なのだから、一緒に風呂に入るとか、キスだとか、その先の行為とかはいつかするものであると考えてはいるのだ。耐性が無いだけで、知識ならある。

 だからこそ、お互いの合意……主に栞子が言ってくれれば話し合うとは思うが最終的には了承したいと思っている。

 

「俺から誘えればいいんだけどな……ごめんな、恥ずかしい彼氏で」

「にゃん!」

 

 そんな事ないと言った猫栞子の声は勘助が理解したかはわからないが、少し笑っていた。

 

「にゃ……」

「え? どうした? はんぺん」

「かん」

「かん? にゃじゃなくて?」

「す……け」

「かん……すけ……今、はんぺん俺の名を言ったか?」

「か……すけ」

「ふふっ……はんぺん、ありがとうな」

「にゃ……」

 

 栞子になったからか分からないが、はんぺんは栞子の身体で片言で勘助の名を呼んだ気がした。勘助と猫栞子はお互いの顔を見て笑う。

 そろそろのぼせるからと、勘助が人間はんぺんをお姫様抱っこして脱衣所に運んで、猫栞子も運び、身体を拭いてあげた。服を着せて、歯も磨くのを手伝って、そのまま栞子の部屋でベッドに腰をかけ2人が寝るのを待った。

 

「俺は床で寝るから、先に寝てていいぞはんぺん、栞子」

「にゃん……」

 

 猫栞子の方は疲れたのかそのままベッドで眠ってしまったが、人間はんぺんは目を開けたまま勘助を見ていた。

 眠れないのだろうかと勘助は考えてはんぺんの名を呼んだ……

 

「ありがとう、かんすけ」

「え? はんぺん?」

 

 瞬間、ハッキリと勘助に栞子になったはんぺんが喋った。そのまま目を閉じて、猫栞子と一緒に寝てしまったが、勘助は少し笑いながらこう言った。

 

「こちらこそありがとう。はんぺん、栞子」

 

 ☆

 

「さて……起きて見ると私とはんぺんの入れ替わりが終わっていたのでそれは良しとしますが……」

「どうしますかね、彼」

「にゃ……?」

「あ、おはようございます。はんぺん」

 

 翌朝、栞子が元に戻り目を覚ましたのだが、部屋の周りを見るとその1スペースに勘助が座りながら眠っていた。

 栞子は単純に風邪をひくことと、首を痛めることを心配していた。

 

「勘助さん、風邪ひきますよ?」

 

 返事は無い。代わりに栞子の声で反応するように、彼女の膝に頭を落として仰向けになりながら胡座をかくという、高等技術をしながら眠り続けた。

 

「どれだけ身体柔らかいんですかこの人は……全く」

「にゃん!」

 

 栞子が勘助を膝枕していると、はんぺんが勘助のお腹の上に乗って丸くなった。勘助が動物に懐かれる事は菜々から聞いていたが、ここまではんぺんが懐くのは珍しい。はんぺんとかお散歩係とか言われているが、実際は虹ヶ咲に住み着いた野良猫なのも間違いは無い。

 勘助は野良猫にめちゃくちゃ懐かれていると考えれば驚くのも無理はない。

 

「ううん……」

「はんぺんが乗ったから起こしちゃいましたかね?」

「なんで……薫子先生は……栞子の衣装着てるんですか?」

「どんな夢見てるんです? 確かに姉妹ですから背丈以外ならあの衣装着ても問題ないと思いますが……」

「栞子も可愛いけど……先生も可愛いっすね」

 

 栞子の中で何かがキレた。

 

「ガブッ!」

「痛い!? え? なんだ!? し、栞子?」

「おはようございます勘助さん。貴方の三船栞子です」

「お、おはよう? ってか首痛かったんだけど……ってなんではんぺんが俺のお腹で?」

「先に言っておきますけど、はんぺんと私は元に戻りました。勘助さんは座って寝ていましたので横にしてあげたんです」

「な、なるほど。とりあえず解決したのか?」

「ええ、とりあえずは。ですけど」

「どういう事だ? しかもなんか栞子怒ってる?」

「勘助さんが夢の中でも姉さんを溺愛していたので、少し吸血を」

「吸血は怖いて。え? 俺そんな夢見てたの?」

「寝言で姉さんを可愛いと、結婚したいと言ってましたけど」

 

 後半は嘘だが、今の浮気者にはこれくらい言ってやらないと気が済まない栞子。

 

「い、いや、それは夢の中だろ? 俺は結婚するなら栞子が良いんだけど……」

「へぇ、って事はアタシみたいなおばさんには興味ないと」

「薫子さん!?」

「姉さんおかえりなさい。用事は終わりましたか?」

「うん。栞子、昨日は大丈夫だった?」

「ええ、勘助さんが私の初めてを優しく奪ってくれましたので」

「初めて栞子を風呂に入れただけなんだけど!?」

「私の裸を見てお風呂に入れるのをだけで済まさないでください」

「うっ……そもそも薫子さんがいればこんな事には……」

「私の裸では不満ですか?」

「滅相もないです」

「負けるの早いね勘助」

「貴方が言わないでください!」

「と・こ・ろ・で。お姉さんには興味がないってどういう事だぁ?」

「頭グリグリされたら痛いですって! 違いますよ、夢で栞子の衣装着てる薫子さんに可愛いって寝言で言ったのを栞子が怒っただけです!」

「それで言ったのよね? あんなおばさんより若い栞子が良いって」

「言ってません! 栞子しか愛してないので結婚するなら栞子だと言ったんです!」

「それじゃあアタシの事は?」

「え、えっと、どちらかというと美人ですよね」

「ガブッ!」

「栞子痛いって!? どうすりゃ良いんだよ俺は!?」

「あはは、面白い! 栞子だけじゃつまんないから今度勘助を虐めるようにしようかしらね」

「勘弁してください! 栞子どさくさに紛れて吸うな!」

「勘助さん勘助さん勘助さん勘助さん勘助さん勘助さん勘助さん勘助さん勘助さん勘助さん……」

「だから怖いて!?」

 

 結局栞子の吸血はしばらく続き、勘助の首周りは血ではなく跡で真っ赤に染まったのだった。

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