「勘助先輩、この文章よく分かりません」
「これは前の文章見れば答え書いてるぞ。ほらここ」
「なるほど、それじゃあこの計算式ってどうやるんですか?」
「まずこの値が分からないからXにしとけ。そこから計算するんだ
「Xって何ですか?」
「え? そこから? えっと……『?』みたいなやつだよ」
「それなら『?』でよくないですか?」
「今回は2つ値を求めるから両方それにしたら分かりづらくなるだろ? だからわざとXとYにしてんだよ」
「成る程。これってAでもいいんですか?」
「まぁ、ぶっちゃけ区別出来ればどうでもいい。私も何回かKとか使った」
「K?」
「勘助だからな」
そんな話をしながらも、勘助はかすみに問題を教え続ける。休憩中ではあるが、他のメンバーはかすみが勉強をしている事に大層驚きながらも、勘助とかすみが気にしないで欲しいと、釘を打ったので黙っている事にした。
「おかしい。かすみちゃんが勉強してるのに台風が来ない」
「かすみさんが勉強してるのに大地が割れないよね」
「ねぇ、2人ともかすみちゃんの事なんだと思ってるの?」
侑の言葉にサボり魔と返した璃奈としずく。侑は容赦の無い2人に苦笑いをしていた。
「でも分かるなぁ、わたしも果林ちゃんが勉強してたら怖いもん」
「エマちゃんに同意かなぁ。果林ちゃん絶対勉強しないでねぇ」
「どういうことよ!? ね、ねぇ勘助。私が勉強するのはおかしいの?」
「誰かを犠牲にしてもいいなら勉強すればいいじゃないですか? 洪水警報からメンバーの誰かが溺れてもいいならですけど」
「久しぶりにキレてもいいかしら?」
「キレるなら普段から勉強して下さい。ただでさえ生徒会長コンビの栞子さんと菜々がいる部活なのに、その人達の目の前で赤点でしたと堂々と言える方がおかしな話では?」
「ぐっ……か・ん・す・けぇ……いつか覚えてなさい!」
「成績上がったら覚えてあげますね」
後輩の放つど正論にぐうの音も出ない先輩である。その様子を相変わらずほのぼのと見ている三年生組だが、果林は顔を赤らめながら威厳を後輩に持って行かれている。
「うぅ……全く分からない……」
「どこだ?」
「これって何から手をつければいいんですか!?」
「証明問題か……何から手をつけないととは?」
「えっと、この問題って確か、まず補助線だかを引いて三角形とかの図形を見つけた後に、定理? 定義? だかを使ってこれが正三角形とか証明して行ってから、この辺とこの辺が同じ長さです。この角度とこの角度は同じです。ってやるじゃないですか」
「おっ、昨日説明した事覚えてるんだな。偉いぞ」
「えへへ、ありがとうございます……それでですね、やり方は分かるんですけどその補助線っていうのは何本までとか制限が無いのでどこに何本引いたらいいのかとかが分からないんですよ」
「成る程な。そんな時には図形が分かればいいんだ作戦がオススメだ」
勘助はかすみの疑問に淡々と答えていく。補助線を引くときは見たこと聞いた事のある図形を作るとか、文章問題なら文の前後に答えあるから丸見え作戦とかなんやかんや言っていたが、かすみは勘助の話を聞くとスラスラ問題を解いていった。
「ってかカンスケ凄くない? かすかすってかなりの勉強嫌いなのに解くの早くなってるんだけど、それって教え方が良いからだよね?」
「勘助さんは昔から私に勉強教えてくれましたけど、凄く分かりやすいんですよね。教師とかに向いていたり?」
「私はシンガーソングライター以外認めん」
「っていうかかすかすって言った人誰ですか!」
「かすみさんそこ計算式違う」
そんな事をしながら、かすみは次のテストに向けて勉強を続けた。
☆
「勘助先輩。お願いがあります」
「勉強の事か?」
「いえ、まずはこれを見てください」
テストが終わった後、勘助はかすみに呼び出されていた。かすみが持ってきた紙を見てみるとテスト用紙であった。だが、普段のかすみは22点などの赤点常習犯であるが、今回は全て65点以上という数値を出していた。
「頑張ったな。嬉しいか?」
「はい。勘助先輩のおかげです」
「例え机に伏しても何度も聞いて来たかすみさんの努力だ。私が教えてもかすみさんにやる気が無いとどうしようもない」
「それでですね、勘助先輩にはご褒美が欲しいんです」
「褒美? あげられるものは無いけど?」
「いえ、次の休みに私とデートしてくれませんか?」
「ふぇ?」
かすみの言葉に勘助の疑問の声がこだました。
☆
「かすみさんが勘助さんをデートに!?」
「一応了承したが、こないだの勉強の件といい何か知っている事はないかな?」
「い、いえ。私もあまり知らなくて……」
勘助はかすみからデートに誘われた事をしずくに相談していた。黙っていても良かったが、正直かすみが喜んでくれる場所が分からなかったのでその相談でもあった。
「でも、本当に不思議なんです。あのかすみさんが勉強を続けて、勘助さんをデートに誘うなんて……」
「今もやってんのか?」
「ええ。と言っても頻度は下がりましたけど、たまにちょくちょく参考書と睨めっこしてますよ」
「一体何が何なんだ……まぁ、原因が分からないならかすみさんが言ってくれるのを待つしかないか。それで、かすみさんが喜びそうな所は何処かな?」
「そうですね……スイーツ店やゲームセンターとかジョイポリスなど遊べるところがいいと思いますよ」
「確かにそうかもしれないな」
少し話してからもしずくはずっと何かを考えていた。勘助がそれに気付き声をかけると……
「勘助さん……これは私の予想ですからかすみさんがどうとかは分からないです。でも、もしこの予想が正しければ私は勘助さんにお伝えしたい事があります」
「願わくばその予想を聞かせて欲しいんだけど」
「この予想を言ったところで答えではありませんから……今日はこれだけお伝えしますね」
「聞こうか」
耳を傾けた勘助にしずくは言った。
「かすみさんをよろしくお願いします」
「え? 全く分からない」
「今は分からなくてもいいです。ですが、どうしてかすみさんが勘助さんをデートに誘ったのかくらいは考えて下さいね」
「ジャンボパンケーキの完食助っ人」
「か・ん・す・けさん?」
「真剣に……考えるわ」
勘助にとってはまるで意味が分からなかった。