「お、お待たせしました!」
「構わんさ、何かあったか?」
かすみからデートの約束をされた当日、勘助はかすみと待ち合わせしていた。かすみが少し遅れて来たので勘助が心配に思ったが、どうやら髪型が決まらなかったそうだ。
「本当にすみませんでした」
「いや、事故でないならいいさ。それに、私のために髪型決めてくれたんならお礼を言わないといけないからな」
「勘助先輩って……いつか女の子に騙されそうですよね」
「何でさ?」
「せつ菜先輩が悪徳セールスで借金背負ったらどうしますか?」
「払ってやるよ、必ず。そして菜々を私の家に閉じ込めておく。更生するまで」
「やってる事がヤンデレ彼女なんですけど」
「ヤンデレってのは歩夢さんみたいな人を言うんだ。私は菜々が心配なだけだ」
「予備軍って知ってます?」
「なんか無性に菜々と会いたくなって来たな」
「かすみんとのデート中に言います!?」
勘助は冗談めかして言った言葉だが、かすみにとっては真剣だった。勘助は謝りながらも、かすみに歩くことを提案した。
「あ、かすみさん。その髪飾り新しいやつか? 似合ってるぞ」
「ちょ……不意打ちは卑怯です。でも、かすみんは可愛いですから気がつくのも仕方ありませんね」
「ああ。可愛いぞ本当に」
「本当に……だから……この人は」
「どうした?」
「いえ、なんでも無いです!」
「なんか怒ってる?」
☆
「なぁかすみさん。本当にここで良いのか?」
「はい、確かにジョイポリスとかで身体を動かすの考えましたけど、たまにはこういうところもいいかなと」
「にしても……図書館って……」
かすみが行きたいと提案したのは図書館という事に違和感を覚える勘助。しずくに相談した時、かすみは遊べるところが好きだと聞かされたが、ここを選ぶのはありえない話だった。
そんな勘助をよそに、かすみは適当に本を取っていく。
「これを読もうかな」
「それってラノベか?」
「はい。せつ菜先輩達の話を聞いてたまには読んでみようかと」
「無理すんなよ」
「どういう事ですか!?」
「まぁ、眠かったら寝てていいぞ」
「寝落ち確定されてる!?」
「かすみさん」
「今度は何ですか!?」
「いや、普通にうるさい」
「あ……ごめんなさい」
冷静になったかすみを見ながら、勘助も適当に取った本を読み漁る。正確にいうと本を読み漁りながらかすみの心情を考えていた。結論から言うと全く分からない。
「何が何やらだな」
「勘助先輩でも分からない本があるんですか?」
「あ? ああ……いや、本は分かるけど……まぁ、こっちの話だ」
勘助の言葉に疑問しか残らなかったかすみだが、途中から結局本を読んでいる途中で意識を失った。
勘助が本を読み始めて2〜3時間経っただろうか、ふと、かすみが頭を隣にいる勘助の肩に乗せて来た。ドキッとする勘助だったが、このまま首をやられても困るので、少し強引にかすみを寄せて、頭を膝で受け止める事にした。かすみはかすみでかなり熟睡していたので、気づく事はなかったが、勘助は起こさないか不安だった。
「何とか体制変えられたな……それにしても……」
「ふふっ、やっぱ可愛いなかすみさん。そろそろかすみさんの真意を聞きたいけど、無理に聞くのはアレだから黙っておくか」
結局、かすみが起きるのに5時間ほど時間を有したのは言うまでもなかった。
☆
「本当にすみませんでした」
「いや、私も起こせばよかったんだが、あまりにも気持ち良さそうに寝てたから起こせなかった」
「でもせっかくのデートなのに……もう夕方ですよ」
「また、出かければいいだろ」
「また一緒に出かけてもいいんですか?」
「かすみさんがいいなら別に。私もかすみさんと出かけたいしな」
勘助の言葉に照れながらも、かすみは少し考える素振りをして口を開く。
「勘助先輩……かすみんは勘助先輩と一緒にいていいんでしょうか?」
「はぁ? 良いに決まってるだろ?」
「私は、勘助先輩が好きです。でも、勘助先輩みたいに頭も良くないし、あんまり釣り合わないんじゃないかって思ってます」
「知らん、勝手にしろ」
「大体、そんなこと言う奴がいたら私とユニコーンが黙ってない。あのエレキギターが勝手に私の手元に収まって、勝手に相手を殴りに行く」
「どんなギターですかそれ」
勘助の冗談にも聞こえない言葉を聞いて苦笑するかすみだが、表情は嬉しそうだった。少し考えてからかすみに言う。
「もしかして……勉強してたのもそれか?」
「まぁ、そうです。勘助先輩頭良いんで、少しでも追いつかないとダメかなって」
「人には人の乳酸菌だと、前から言ってるだろう? 人には色々得意不得意がある。かすみさんは勉強こそ苦手だが、料理とかそれなりの家事が出来るんだからそれを伸ばせばいい」
「確かに勉強しないと困るとはみんな言うが、それは大人になって知らないですって言った時、そんなことも知らないのかと怒られるのを防ぐためだ」
「結局は自己防衛なだけだと私は思う」
「なんか……凄い解釈ですね」
そう言ったかすみに対して、ただの子供の妄言だが、間違ってもないだろと、ドヤ顔で返した。
「話は戻すが、かすみさんが私に見合う女性として無理して脳を鍛える事はしなくても構わない。だってそんな事しなくても私はかすみさんの事好きだからさ」
「勘助先輩……本当にいつか刺されますよ?」
「何でさ!?」
「当たり前です。かすみんだけに可愛いって言えば、好きだって言えば良いのに、せつ菜先輩もりな子も果林先輩にだって……同好会全員に言ってるじゃないですか!」
「い、いや、だってみんな可愛いし……」
「先輩は! かすみんのことどう思っているんですか! 愛してますか!?」
「あ、愛してるって……」
「私は勘助先輩が好きです! 愛してます! だから付き合って欲しいんですよ! そのためならやった事ないギターだって、大嫌いな勉強だって、やってやりますよ!」
「勘助先輩は、同好会の中で誰よりもかすみんの事を気にしてくれて、可愛いって言ってくれて、部長だって認めてくれた、ただ1人の男の人なんですから!」
かすみは叫んでいるような形で、勘助に大声で告白した。勘助は途中照れながらも目は真剣にかすみの方を向いていた。
かすみがひと通り言いたい事を言った後、勘助は少し黙って、ゆっくりと口を開いた。
「私は正直。恋愛とか分かってない。でも、かすみさんがスクールアイドルで努力してる姿を見ると支えたくなるし、普段話しかけてくる姿にも愛おしさは感じる」
「だから、かすみさんが良いならだけど、私と付き合いたいって言ってくれるなら私に恋を教えて欲しい」
「かすみんも分かりませんよ、誰かに恋するなんて無かったですしスクールアイドルだからって抑えてましたから」
「でも、せつ菜先輩が始まったとなら貫くのみだって言ってましたから、私も止まるわけには行かないんですよ」
「なら、お互い知っていこうか。少なくとも私はかすみさんが好きだから収まるところには収まると思う」
「収まるだけじゃ足りません。かすみんだってアイドルですからその心を奪った勘助先輩には責任持って貰わないと」
かすみの言葉に照れながら、勘助は頷く。そしてこれから勘助とかすみは恋人とらしく振る舞えるようにお互いに努力するのだった。