「勘助君、アメリカデビューおめでとう」
「いきなりご飯に誘われた理由はこれか……まぁ、ありがとう侑さん。デビューしたわけでは無いと思うけどな」
アメリカから帰国した勘助が侑と話す。あの後同好会のみんなからお帰りと歓迎会をされて、日本のありがたみを知った勘助。
侑にお礼を言いながらも、少し暗い顔をしながら勘助は言った。
「賞は取れなかったのは残念だ」
「確かにミアちゃんも言ってた……それは残念だけど、ほら、この前の新聞見たでしょ?」
新聞というのはあのステージの後に新聞記事に記載された内容である。
『テイラー家の1人娘と白き一角獣を操る謎の日本人』
そんな記事で書かれたのはミアと勘助のステージが思いのほか好評だったという内容である。
あのステージはかなりの実力者でも客の好みに合わなければ帰って行くことや、トイレ休憩などの時間に費やされてしまう厳しいステージ。だが、勘助とミアのステージは誰1人外に出す事なく、ステージを終わらせた。
「私達は本当に凄いと思うよ」
「ミアさんを宥めるのは大変だったが、まぁ、私から見てもそこそこだったと思う。ここからが勝負だがな」
「ミアちゃんのお父さんに挑むんでしょ?」
「挑むか……正確には勝ちに行くがな」
勘助の決意に少しばかり苦笑いしながらも、侑はもう一つの話を切り出した。
「後さ、ミアちゃんの事もおめでとう」
「えっと……え? 何それ?」
「ミアちゃんと付き合ったんでしょ?」
「ちょっと待って、誰から聞いた?」
「聞いてないよ。でも雰囲気でみんな分かってると思うけど」
「付き合っては無いんだよな一応」
「え? どう言う事?」
侑の言葉に勘助は頭を抱えた。実を言うと帰国の時に、勘助はミアから告白されていた。
『勘助、僕は君の事を愛してる』
『今、返事はいらない。僕は君が側にいてくれればそれで良いんだ。数日間、ありがとう。それじゃあ、僕はこの寮だからまた明日ね。Bye』
そう一方的に言われた台詞を勘助は忘れられない。代わりと言ってはアレだが、ミアが勘助との距離が近くなっていたのは同好会のみんなが知っていた。だが、返事を返してないと言うと侑は驚いた、ただ勘助が凄く苦くも、辛くも、そんな感じの顔をしていたので何も言えなかった。
「ミアさんが好き。それは分かってんだけどさ……ミアさんは私を愛してるんだよな?」
「いや、愛してるってハッキリ言われてるんならそうなんじゃないの?」
「というか、勘助君はどう思ってるの?」
「言っただろ、ミアさんが好きだと」
「好きなのと愛してるは別でしょ。一生一緒にいたいって思う? ミアちゃんが勘助君をまたアメリカに連れてっても嫌な顔しないで着いて行くの?」
「着いて行くよ。私はミアさんに必要とされたい。あの人が行く道は私も行く道だ」
「じゃあ決まってるじゃん。言いに言っといで」
「そう……だな。よし、ミアさんに気持ち伝えてくるわ」
そして勘助は侑の言葉も聞かずにそのまま同好会の部室に歩いて行った。侑がやれやれと言いながらベンチから立つと
「ミア! 俺は貴方を愛してるぞ!」
「What’s!?」
「勘助先輩がミア子に告白したぁ!?」
「と言うか勘助さん達まだ告白してなかったんですか!?」
そんな声がわんさか聞こえたのを侑は聞き逃さず、笑いながら少し勘助を止めてやろうと思ったのだった。
☆
「全く勘助は! 何してんだよ!?」
「すまん、この前ミアさんに告白されたから俺の気持ちを伝えようと……」
「それなら2人きりに言ってくれよ! 何も同好会のみんなの前で言わなくても良いじゃないか!」
「すみませんでした」
学生寮までの帰り道。勘助はミアに怒られていた。ミアは顔を赤くしながら勘助を怒り、時には勘助の理解不能な英語を話す。
「そもそもどうして急に?」
「いや……日本では告白しあってから付き合うからさ……あのままで俺も納得しないし、俺もミアさんの事好きだから」
「全く……勘助は真面目すぎるんだよ」
そんなところも好きだがと、ミアの言葉に照れる勘助だが、ミアがふいに自分の手を勘助の手に当てて来たので、握り返すことにした。
「よく分かったね」
「今回はな。次から口で言ってくれ。日本語でな」
「OK」
「日本語でな」
「I’m crazy about you」
「だからなんだそれ?」
「私は狂おしいほど勘助を愛してるって事だよ。本当に鈍いんだから」
「うっ……英語なんて知るか」
「僕と付き合うなら英語くらいやってもらわないと」
「ミアが教えてくれるんだろ? 任せるよ」
「わ、分かったよ! 教えれば良いんだろ? その代わり……」
「その代わり?」
「これからはずっと僕について来てもらうからな!」
「ああ、分かってるよミア。I love you.しか言えない俺だが、よろしく頼む」
「Don't cheat on me, OK?」
「はい?」
「簡単に言うと浮気するなよって事」
「しねぇよ」
「ま、勘助が僕の事しか見れなくなれば良いのか。だったら簡単だ……」
そして、ミアは勘助にキスをする。勘助の顔を両手で押さえて、一言。
「この僕だけを見てろ勘助」
「うっ……言われなくても見ててやるよ。ミアも浮気するなよ」
「とんだjokeだね。笑わせないでよ、するわけないだろ。一緒に世界の端までついて来てもらうんだからさ」
そして2人は笑い合う。結局寮で別れるまで5回ほどキスをした2人だった。
☆
「Good morning.勘助、ベイビーちゃん」
「おはようミアちゃん!」
「Good morning.ミア」
その翌日、ミアが侑と勘助よりも遅く登校して来た。軽く挨拶をする侑だったが、勘助も挨拶を返した後、ミアに近づいて行くのを見て少し疑問に思ったのだが……
「んっ……これで良いか?」
「うん……I love you.勘助」
「I love you.ミア」
「2人ともここ教室だよ!?」
「アメリカは普通ってミアが言ってたぞ?」
「ここ日本でしょ!?」
「ベイビーちゃんうるさい」
勘助がミアにキスをした。音楽科教室のど真ん中である。それを見ていた侑は顔を赤くしながら注意するも、勘助も少し顔を赤くして、ミアは呆れたように普通だろと言い張った。
「まぁ、とりあえず侑さん、そう言う事だからよろしく頼む」
「ベイビーちゃん、勘助に手を出すなよ」
「いや、出さないけどさぁ……うん、やっぱりお似合いだと思うよ」
「ミアは天才なのにか?」
「勘助は僕よりSmastなのに?」
「私からしたら2人とも天才でしょ」
「まぁ、僕は世界のテイラー家だし当然だけどさ」
「私は一応天才軍師背負ってるからみっともない真似は出来んしな」
「あれ? 私もしかしてヤバい人たちに囲まれてる?」
侑の言葉に笑った2人、その後に言われる言葉は以下の通りである。
「まぁ、ベイビーちゃんが困ったら僕が教えてあげるよ」
「侑さんは頑張ってるからすぐついて来れるさ」
「うわぁ、余裕ある人たちだ……音楽科最強の2人じゃん」
「最強はミアだろ」
「Geniusは勘助でしょ」
3人の話のせいもあり、先ほどのキスの件が有耶無耶になった音楽科の教室にいた生徒から休み時間に質問責めにあった。