果林から想いを伝えられた後、ホテルに戻って仲直りした勘助。果林は勘助の返事を聞きたいと言った瞬間果林の笑顔が困惑に変わった。
「それじゃあ覚悟は出来てますか?」
「え?」
「私の大好きを受け止める覚悟は出来てますかって聞いてるんですけど」
「え!?」
現在進行形で果林は勘助にベッドで押し倒されながら告白されていたのだ。
「ちょっと待ちなさい!? 勘助、私からの告白の返事をするんじゃなかったの!?」
「だから言ってるじゃないですか。好きだって。果林さんの事が好きだったんだよ」
「嘘でしょう?」
「果林さんなら嘘かどうかくらいわかりません? 事務所の活動通じて人の闇とか見てるでしょ?」
勘助の言葉に果林は声が出なかった。確かに果林は事務所の仕事で色んな人を見ただけでなく、そのプロポーションのせいで人から色んな視線なども向けられるため、大体どんな感情なのかくらいは察しがつくようになった。そんな果林が勘助の言葉を聞いた時、最初に感じたのが事実という感覚。
「いつからなの?」
「さぁ? でも、前からでしょうね。果林さんの事は別に嫌いではなかったですし」
「果林さんと話すのが楽しいですし、こうして果林さんの少し顔を赤くして戸惑う姿も好きですよ」
「顔、勘助も真っ赤よ」
「私の鼻血で服汚したくないなら黙ってて下さい」
「どんな脅しよ!?」
「果林さんの事見てたらドキドキして鼻血出そうなんですよ」
「それって私のことを性的に見てるって事?」
「いえ、鼻血は体質なんです。女の子に抱きつかれるとか夏場お腹壊してトイレ行くだけで熱で鼻血出たりしますし」
「結構鼻血出してるわね」
「ドキドキするのは好きな人と見つめあってるからです」
「一応聞くけど勘助は私の身体って興味ある?」
「知りません」
「知らないってなに!?」
勘助の言葉にいちいちツッコミを入れる果林。
勘助曰く、果林の事は大好きだが、身体目当てではないという事を言いたかったらしい。ただ、あまり興味無いなんて言うのも抵抗があったので、よく分からない返事になった。
「別に、果林さんが誘って来るなら全力で答えようと思いますが誘えるものなら誘ってみて下さい。私も無理なんで」
「何で上からものを言ってくるのよ」
「恐らく私も果林さんも誘う事は出来ないと思ってますから」
「分からないわよ?」
「じゃあ誘ってみて下さい。断るんで」
「断るの!?」
「まだ早いじゃないですか。付き合ってもないですし」
「貴方って言ってる事無茶苦茶ね」
「正直今何も考えられないんですよね。果林さんを倒してるせいなんですけど」
現に勘助の心臓は高鳴りすぎていた。本気で頭の中は真っ白で、何も考えられず、発した言葉がほぼ空振りに終わる。
「とりあえず、果林さんの事は私も好きです。それだけは言っておきます」
「それならもう付き合っちゃいましょ?」
「果林さんが良いなら」
「それで、どうするの?」
「何がです?」
「付き合うんなら誓いのキスの一つくらいしたらどう?」
「恥ずかしいです」
ここに来てヘタレた勘助に果林は大きく溜息を吐いた。果林は押し倒している勘助の首を両手で掴むとそのまま自分の身体に頭を引っ張る。
「果林さん、何も見えないです」
「私に身を任せておけばいいのよ」
勘助を自身の首よりも少し下に寄せた後、すぐに顔だけを引いて、無理やり唇にキスをした。
「強引ですね」
「顔真っ赤だけど大丈夫?」
「体質です」
「耐性なさすぎじゃない?」
「果林さんだって耳赤いですよ」
「初めてなんだから仕方ないでしょ」
「俺だって初めてですけど」
「え?」
「失礼ですね。何か文句でも?」
「幼馴染同士でもうしてるのかと思ったわ」
「そんな話があってたまるものですか」
果林は勘助が幼馴染の中川菜々とキスの一つくらいはしたと思っていた。幼少期の頃結婚の約束とかするのは恋愛漫画でありがちだと指摘すると、勘助は否定した。
「菜々にハグされた事はありますけど、そんなものしかないです。両親が死んで落ち込んでた俺を元気づけるためですし」
「何だ心配して損したわ」
「心配したんですか?」
「ま、まぁ、そうね。仮にも恋人がそういう経験してたら少し躊躇っちゃうわよ」
「果林さんはどうですか?」
「あるわけないじゃない。こう見えても男の人との付き合いなんて無いのよ」
果林の言葉に以外だと勘助は笑ったが、果林からしたら誤解されたくなかったのでハッキリと経験なしと答えた。
「じゃあ、俺が果林さんの初めてなんですね」
「勘助、鼻すすってるけど泣いてるの?」
「恥ずかし過ぎて鼻血止まらないだけっす」
「さっきの言葉本当だったの!?」
勘助のウブさに呆れる果林だが、すぐに微笑んで、そのまま抱きしめる。勘助は果林に血が付くかもしれないと言ったが、果林は気にしないと返した。
「仮に血で汚れたらこう言えば良いのよ。ヤリましたってね」
「俺犯罪者じゃ無いですか」
「合意の上でしょう? 犯罪もないわよ……それとも、ここで本当にシてしまいましょうか?」
「気絶するんで今日はいいです」
「本当にウブね貴方」
そう言って2人で笑う。結局その後は、普通にバラバラにシャワーを浴びて、そのままベッドに寝たのだが、寝るときだけは2人で同じベッドを使った。
☆
「勘助、今日も私達でお仕事入ってるわよ。お願いね」
「ユニコーンは入りますか?」
「インタビューだから要らないわ」
「だってさユニコーン。ごめんな、置いてくわ」
2人が付き合い始めてから事務所にはまだ公表してないのだが、2人でやる仕事が増えた。撮影やインタビュー、稀に勘助と果林が2人でレコーディングを行いCDも出すくらい、2人は一緒にいた。
プロデューサーなどは果林と勘助が合わされば番組が映えるなどと言いながらかなり仕事を持ってきてくれた。
同好会には交際を伝えたが、別に何も否定的な言葉はなく。祝福の言葉だけだった。
「こんにちは、Diver Diveです」
「そのネタもういいでしょ?」
勘助のこのボケは割と評判らしく、スクールアイドル特集として、果林と組んでいる正式メンバーの宮下愛を呼ぼうなどとの声が上がり、知らぬ間に愛の好感度が爆上がりしているのは別の話である。
「勘助、お疲れ様。お願いできる?」
「お疲れ様です。まぁ、いいですよ」
そう言って2人はキスをする。仕事が終わり、2人が学校の寮の近くまで行った瞬間、いつもこうして恋人らしくコミュニケーションを取っている。
最初はスキャンダルの話も勘助はしたのだが、寮住まいの2人はあまり2人きりになれず寂しさもあったため結局そうする事になった。
『バレたらバレたで良いのよ。何かあれば勘助は私が守るわ』
『ふざけないでください。俺だって黙ってませんよ。ユニコーンぶん投げてカメラ壊すんで』
『商売道具を投げちゃダメよ』
そんな会話もありながら、2人はまだ隠れた付き合いをしている。
「勘助、好きよ。こう言わないと、私の気が済まないから言っておくわ」
「俺も愛してますよ。ハッキリ言葉にしないと伝わりませんからね」
「勘助も言うようになったわね」
「果林さんが道だけじゃなくて言葉も迷子になったら困りますからね」
「流石に愛してるくらいは分かるわよ!?」
「アモーレって知ってますか?」
「お祭りの言葉よね、分かるわよ」
それはアミーゴである。勘助は溜息を吐いて、果林にもう一度キスをした。果林は少し驚いたが、10秒くらい長いキスをされた後、ぼぅっとしながら勘助を見つめると、勘助はにやけながら言った。
「果林さんは俺のものだって意味ですよ。今度勉強会しますので、ちゃんとテストで点とって下さいね」
「そういえば、結局アモーレって何なのよ?」
「勉強しろバカ」
勘助の言葉は果林にクリーンヒットした。