「ご馳走様でした」
「うわぁ、せつ菜ちゃんの言った通りだった」
「勘助さんお腹大丈夫なんですか!?」
遥の言葉に平気だと言った勘助は100皿を超える寿司皿をたべきり満足気にお腹をさする。
遥と彼方は勘助を誘って、お寿司の食べ放題に来た。勘助と話し合って割り勘にはしたものの、勘助の食べる量を信用してなかった彼方は驚愕した。
「私にご飯を与えないで下さい。家計が死にます」
「食い尽くされそうだよねお姉ちゃん」
「遥さん、安心しろ。食い尽くし系にはなりたくないから、遠慮を重ねているのだ。理性で抑えるのは慣れてる」
「彼方ちゃんもパクパクされそうだよぉ」
「流石に人肉はちょっと……遥さん、指貰っていい?」
「私ですか!?」
勘助の冗談に遥は本気で驚くが、彼方は分かりきった表情で、微笑ましく2人の会話を見た。
「遥ちゃんと勘助君仲良いよね」
「たまに彼方さんが家に誘ってくれるので、仲良くなってるだけですよ」
「勘助さんが優しく教えてくれるから楽しいんですよ」
料理の事である。彼方はニヤニヤしながら、遥に勘助の事が好きなのかと聞くと、笑顔で肯定した。
「私も遥さんは好きだぞ」
「あ、ありがとうございます……」
「遥ちゃん照れてる〜」
「お、お姉ちゃん! からかわないで!」
「彼方さん」
「どうしたの?」
「愛してますよ」
「え……へ!?」
勘助の発言に急に顔を赤らめる彼方だが、少しばかり笑みを浮かべた勘助に対して自分が揶揄われていると考えた彼女は少しばかり怒った。
「もう、年上を揶揄ったらダメだよぉ」
「本気だと言えば、揶揄ってませんよね?」
「か、勘助さん! 私とは遊びだったんですか!?」
「遥さんはどこで覚えたそんな言葉」
「ちょ、ちょっと待って、全然話が見えないんだけど……」
「彼方さんは気にしないで下さい」
「お姉ちゃんは黙ってて」
「えぇ……」
急な理不尽を食らった彼方である。
☆
「遥さん、彼方さんを私にくれ」
「あげません!」
「じゃあ近江家のゴールデンレトリバーを貰う。よく寝てるけど」
「結局お姉ちゃんじゃないですか!?」
勘助のゴールデンレトリバーに対してすぐさま自分の姉を示した遥に見事だと彼は返した。
「か、勘助さんは……お姉ちゃんの事好きなんですか?」
「うん。ふわふわしてる性格もあってか、彼方さんといると落ち着くし、守ってあげたい」
「お姉ちゃんいつも寝てますけど」
「可愛いよな。私なら飯作って起きるの待ってる」
「お姉ちゃんバイトで忙しいですけど」
「私のバイト代あげるからシフト減らして欲しい」
「お姉ちゃん私の事大好きですけど」
「遥さんも可愛いし優しいし話しやすいし好きだから問題無いな」
「お姉ちゃん鬼族ですけど」
「ギターで高跳びした私を舐めないでくれ。鬼も仏も懐かせる」
「お姉ちゃん……もし、お姉ちゃんが勘助さんの事嫌いと言ったら?」
「関わらない。というか、嫌いな男の膝に頭乗せないだろ」
「お姉ちゃん……私だけのお姉ちゃん……」
「遥さんが暴走しとる」
彼方の事で相談したいと思った勘助が遥をカフェに連れて想いを言ってみたのが運の尽きである。遥は無事ヤンデレに覚醒した。
「お姉ちゃん……勘助さん……お姉ちゃん……勘助さん……」
「何を天秤にかけてるか知らんが、遥さんが嫌なら私も手を引くぞ。姉に懐かれても家族に懐かれないと話し合っていけんしな」
「例えば……お姉ちゃんが勘助さんとキスをしたとしましょう」
「お、おう!?」
「なんで顔真っ赤なんですか?」
「ご、ごめん。キスとか……慣れてない……」
「ウブすぎません!?」
勘助のウブさを初めてみた遥は驚愕しながらも話を続ける。
「それで、お姉ちゃんと私が、そして勘助さんと私がキスをすればお姉ちゃんも勘助さんも私の恋人ですよね?」
「なんだそれたまげたなぁ」
暴論である。そもそもの話、遥も勘助が好きであるので、この提案をしたのだが、勘助にとっても天才軍師にとっても大層暴論だった。
「というわけで勘助さん、お姉ちゃんとキスして下さい」
「それを聞いて私がキスをするとでも?」
「お姉ちゃんの事好きですよね?」
「彼方さんとは恋人になりたくても遥さんとは親友でいたいんだが」
「今の時代は親友と書いて恋人ですよ?」
「そんな時代来たら世も末だよ」
「世も末りょうこさんとか古いですね」
「遥さん生まれる時代間違ってね?」
段々と話が脱線していく2人だがとても楽しそうである。
「それで、お姉ちゃんの事どうするんですか?」
「遥さんが彼方さんと私にキスをしないなら告白しようかな」
「私はお姉ちゃんも勘助さんもイケる口です」
「その口は縫っておけ。多様性の時代と言っても近親はまずいですよ」
「妹だけど愛さえあれば退かない、媚びない、関係ないってやつです」
「結構前のアニメ知ってるな。現実で起こってほしく無いが」
「紅蓮の剣姫面白いですよね」
「あれ? 私今菜々と喋ってる?」
「菜々って誰ですか?」
「え? せつ……あぁっと……私の幼馴染だよ。中川菜々って元虹ヶ咲の生徒会長」
「せつ? えっと、その方なら知ってますよ。優木せつ菜さんですよね?」
「あれ? 前に見学来た時はせつ菜だから菜々のことは知らないと思ったんだけど?」
「同一人物である事は第二回のスクールアイドルフェスティバルで虹ヶ咲の生徒から聞きました。お姉ちゃんも言ってたので」
勘助は遥が菜々はせつ菜である事を知らないと思っていたが、そうでは無い事を知って少しばかり安心する。
「そうか、まぁ今更隠す必要もないか」
「隠してたんですか?」
「昔の菜々の親がガリ勉でな。毒親ではないし普通にいい人達なんだが、菜々が本当に好きな趣味を話せない関係だったんだよ。だから、2人で隠れてスクールアイドルしてた」
「なるほど……って勘助さんスクールアイドルだったんですか!?」
「言い方が悪かったな。菜々の曲を作詞作曲してたのは私なんだよ」
「サイン欲しいです」
「話ぶっ飛んだんだけど」
どうやら遥はせつ菜の事も大好きであり、彼女の曲に惚れたとか。その作詞作曲者である勘助から自身が惚れた曲を自分が作りましたと言われたら興奮どころの騒ぎではない。
「実は私スクールアイドルだけじゃなく勘助さんが好きなんですよ」
「彼方さんとのキス関連で?」
「シンガーソングライターとしてです。ユニコーンの叫び方があのアニメの主人公とそっくりで、情熱が伝わってくるんです」
そう熱く語る遥を少し声で抑えながら適当は一枚のノートにサインを書いた。遥はサインを受け取ると目を輝かせて大声で言った。
「勘助さん! 大好きです!」
「今のすげぇせつ菜っぽい」
そんなやりとりをしながら、遥と勘助は優木せつ菜について熱く語っていたのだった。